少し前に愛車のファットバイクをフロントシングル化しましたが、フロントディレイラーやフロントシフターが不要になった事で、ハンドルやケーブルまわりに空きスペースが生まれました。
私のファットバイクはオール外装式なので、フロントシングル化を達成した暁には空いたスペースを利用してドロッパーシートポストでも取付けてみるか!と夢想していたのですが、そのタイミングが思ったよりも早く訪れます。
レバー操作だけで瞬時にシート高を可変できるドロッパーシートポストは、雪道でタイヤを取られたりアイスバーンでスリップする事の多いファットバイクには是非とも使いたい装備。
足つきの良し悪しは転倒や落車の頻度に強く影響するため、重量増とのトレードオフでも備えておきたいギミックでした。
ご存知の通り、それなりの機能を備えたドロッパーシートポストは大変高価。
高い機能性を備えた入り中どころの製品ともなると、エントリークラスのクロスバイクが買えてしまうレベルです。
そんな中、個人的にずっと気になっていたのがコスパ最高のドロッパーシートポストと名高い『Brand-X Ascend II』で、低価格ながら油圧式の無段階調節を備え、利用者の評判も上々です。
因みに、『Brand-X』の名が示す通り謎の多いブランドで、公式のHPは元より日本国内での正規販売もありませんが、品質は折り紙付きで自転車用品版の『無印良品』的な位置付けと言えるのかも知れませんね。
さて、前置きが長くなりましたが、今回は状態の良い物をオークションで更に安くゲットできたので、コスパ最高のドロッパーシートポストこと『Brand-X Ascend II』を取付けた感想や使用感についてまとめてみます。
唯一の欠点は重量か?『Brand-X Ascend II』 の詳細
コスパ最高と囁かれるだけあって、上下動がスムーズな油圧式、好きな位置で固定できる無段階調節、軸にガタが出づらい耐久性など、本当に¥15000前後で買える価格ではありえない高機能ぶりです。
内装式と外装式の二種類があり、更にポスト径やポスト長の違いで細分化されていますが、今回私がゲットしたのは、ポスト径31.6mm、ポスト長400mm、トラベル量125mmの外装式です。
他社製の高価なモデルでも、外装式はやぐらまでケーブルが延びて不格好になっている製品が多い中、外装ケーブルがポストの伸縮部分に跨らないスッキリとしたデザイン。
内装ケーブルの取付けが面倒に感じる方や内装に空きが無い方は、あえてこの外装式を選ぶのもアリでしょうか。
さて、ドロッパーシートポストにおいて機能面と同じくらい気になるのが重量だと思います。
実際に測定してみると、本体部分が619gでリモートレバー・ケーブルを含むシステム全体で699gでした。
事前に調べていた通り、軽量シートポスト相当で三本分と確かに重いですが、ほぼ同じ仕様のTHOMSON製が592gですから、十分に健闘しているのではないでしょうか。
ミニベロとファットバイクの振動対策として効果的だった"Cane Creek THUDBUSTER/サッドバスター LT"や"SR SUNTOUR/エスアールサンツアー NCX"などのサスペンションシートポストを使用した感想のまとめ、両者の違いや設定方法、比較した結果についても説明しています。
重さは以前に紹介したサスペンションシートポスト『サッドバスター LT』と同程度で、ポスト内が中空になっていないせいか、こちらの方ずっしりとした重量感がありますね。
この重さが原因でドロッパーシートポストを躊躇する方も多く、実際に使ってみるまでは私もその一人でした。
カーボンクランクによるフロントシングル化で800g強の軽量化が出来ていなければ、未だに躊躇していたかも知れません。
さて、通常『Brand-X Ascend II 』を新品で購入すると、本体・リモートレバー・ケーブルがセットになっていますが、私はオークションで中古品を落札したためケーブルが付属していませんでした。
幸い、ケーブルはシフト用と同じとの事なので、今回はフロントシングル化で余っていたフロントシフター用のケーブルを流用。
因みにリモートレバーは三種類あり、製品には上画像左の旧式縦型レバーか、上画像右の新式シフト型レバーのどちらかが同梱されている様ですね。
操作性に関わる部分なので、リモートレバーだけWolf Tooth製やCRANK BROTHERS製を使っている方も多いですが、上画像中央の別売りBrand-X製リモートレバーも侮れません。
高価なリモートレバーはレバータッチが軽いですし破損してもパーツ交換が容易にできたりもしますが、こちらの製品は取り合えず最低限の動作さえしてくれれば良いという方に向いていますね。
価格が価格だけにレバーの剛性不足は否めませんが、取付け角度調整機能なんかも地味に備えていたりと、割と頑張っている印象でしょうか。
重さなんて些細なコト!初導入のドロッパーシートポストは利点だらけ
早速、ドロッパーシートポストを取付けて試走してみますが、ネット上には取付け方法に関する情報が沢山ありますし、マニュアル無しでも構造が簡単に理解できるシンプルな作りでした。
フロントシフターの跡地に取付けたので、ケーブルまわりを含め外観に大きな変化は無く、外装式の割に見た目はスッキリと仕上がっています。
流用したシフトケーブルはエンド側をレバーに、タイコ側をポストに取付けます。
シフトワイヤーとは逆方向となり、ポスト伸縮部分の根元にある出っ張りのカバーを外し、内部の溝にタイコを引っ掛けてインナーワイヤーを固定。
理由はわかりませんが、タイコの方が僅かに大きく、引っ掛ける溝に上手く収まらなかったので、棒ヤスリでタイコの頭を軽く削ってから取付けました。
因みに、このタイコを含むケーブルエンド部分は工具無しで取外しが可能。
ケーブルやリモートレバーを残したままドロッパーシートポストだけを引き抜く事ができる、良く考えられた仕組みになっています。
外装式ならではの長所とも言えますが、状況に応じてノーマルポストやサスペンションシートポストに交換するといった使い方もでき 、外したケーブルエンドもベルクロやタイラップでフレームに固定しておけば邪魔になりません。
前述の通り、トラベル量は125mmで実際に乗り比べてみると、最短では大人が子ども用自転車に乗っている様な感覚になり、最長では爪先立ちな状態になります。
オークションでゲットした中古品なので、不具合があるのでは?と少し心配でしたが、上下方向にも軸方向にも違和感を感じる様なガタは見られず、正常に機能してくれました。
また、サスペンションシートポストの時もそうでしたが、ドロッパーシートポストを使用すると強制的にサドルバッグが使えなくなります。
携帯品を他の場所に収納するか、サドルレールに一点どめするタイプのサドルバッグに切り替える事になりますが、個人的にドロッパーシートポストを必要とするようなオフ車乗りは、大抵バックパックを背負っているイメージでしょうか。
リモートレバーの取付けはこんな感じになりました。
旧式の縦型レバーはブレーキの上を跨ぐL字型のアーチがあり、正直なところ見た目も使い勝手も新式のシフト型レバーの方が優れていると思います。
このレバーはどちらかといえばドロップハンドルとの相性が良く、グラベルロード向きかも知れませんね。
最初はグリップとブレーキレバーの間にリモートレバーを取付けてみましたが、残念ながらL字型のアーチが、お気に入りのTOGS/トグスと干渉したため、上画像の位置に落ち着きました。
グリップからは少し距離がありますが、親指が無理なく届くので、しばらくはこのままで行こうと思います。
肝心のリモートレバーの操作感ですが、レバーの総ストロークは長く感じるものの、親指で少し押し下げただけでも素直に反応してくれるので、特に違和感はありませんでした。
因みに、ドロッパーシートポストの発案者が事務椅子の上下昇降機能を参考にしただけあって、本当にあのままの使い勝手でした。
レバーを押している間は自由に位置を調整でき、レバーを離すとその位置で固定されます。
体重を掛けるとスムーズに下降し、体重を抜くと柔らかく上昇するといった感じですね。
さて、ドロッパーシートポストを取付けて40kmほど走ってみました。
行程の3/4で少し強めの向風に晒され、しかも急場しのぎのサドルがお尻に合わないと言う悪条件でしたが、お陰で別の視点からドロッパーシートポストの有難味を実感できました。
今までは足つきの良さを優先して、ベストよりも数cm低いシート高に設定していましたが、適正値の75cm前後(座面からBB軸)にする事で、高速域のペダリングが実に滑らか。
もちろん、信号待ちや一時停止時でもシート高を簡単に下げられるため、つま先立ちで堪える、縁石に足をのせて待機、電柱や街灯を支えに使う、といった自転車乗りあるある行為とは一切無縁になれます。
私は走りの合間に結構な頻度で写真を撮影しますが、停車して自転車から降りなくても、どっしり跨ったまま撮影できる様になったのが何より嬉しいですね。
急なシャッターチャンスも逃しませんし、ひょっとしたら撮影のためだけに装備している300g強のキックスタンドとも決別できるかも知れません。
最後になりますが、悪条件だからこそ体験できたドロッパーシートポストの隠れた利点もありました。
乗りながらお尻の養生ができる。
向かい風が少しだけ楽になる。
このふたつです。
間に合わせで取付けたサドルが合わず開始5kmで尻痛に見舞われたのですが、シート高を定期的に変化させる事で痛みの緩和に繋がりました。
たぶん座骨と座面の角度を休み休み変化させられるからでしょうが、ロングライドでは中々便利に使えるテクニックかも知れません。
また、これは風に滅法弱い大柄なファットバイクならではですが、シート高を最低まで下げて車体に体を隠すようにして乗ると、強い向かい風でも意外なほど楽に走れます。
膝に負担の掛かるので多用は禁物ですが、馬鹿にできない効果がありました。
まとめ
結果的に初導入のドロッパーシートポストからは、ポスト本体の重さを帳消して余りある利点を感じました。
本格的に活躍してくれるのがウインターシーズンなので、それまでは軽量なノーマルポストを使うつもりでいたのですが、あまりの快適さに早くも考えが揺らいでいます。
残りの問題は、この強度がいつまで続くのか?と言う耐久性に関する部分ですが、低価格なだけに買い直しも視野に入れてガンガン使い倒す方向で行くのが良さそう。
軽さを何より尊ぶ自転車乗りの方には無理強いできませんが、ファットバイク・マウンテンバイク・グラベルロードあたりに乗っている方なら、試してみる価値のあるパーツだと思います。
最近のマウンテンバイク完成車だと、もう標準装備みたいになっていますしね。