ファットバイクに関しては、かれこれ三年以上もサドル沼にハマり続けています。
今まで試したサドルでも、40kmくらいまでなら何とか走り続けられるのですが、それ以上の距離となると体力の限界よりも先に尻痛に耐えられなくなり、ファットバイクでのロングライドを泣く泣くを諦めていました。
タイヤ・ホール・チューブの軽量化がようやく一段落し、ロングライドで脚にかかる負担が軽減された今、そろそろ本腰を入れてサドル沼からの脱出を目論んでいます。
正直、以前から目星を付けている三種類のサドルを試してダメだったら、素直にパッド付きのインナーパンツに手を染めるつもりでいますが、今回はその内の一つ、SELLE ROYAL/セラロイヤルの『FORUM/フォーラム』を紹介します。
乗車姿勢で選べる『SELLE ROYAL/セラロイヤル』のサドル
実は、本来選ぶはずだったのは上画像のSELLE ROYAL『Scientia/シエンティア』でした、このサドルはフィジークと同じ会社が製造していて、セラロイヤルは同社のコンフォートラインに相当します。
セラロイヤルのサドルは乗車姿勢と座面・座骨幅という二つの要素から、好みのサドルを選べる仕組みになっていて、シエンティアにも乗車姿勢が30~45度のATHLETIC/アスレチック、60度のMODERATE/モデレート、90度のRELAXED/リラックスがラインナップされ、それぞれに三種類の座面幅が存在します。
私の場合、モデレートのMサイズが最適だったので、いつか試してみようと狙いを定めていたのですが、いつの間にかシエンティアよりも安価で更にコンフォート寄りの『FORUM/フォーラム』と言う新作サドルが登場していました。
シエンティアの要素を継承しつつもコンフォートサドル寄りに設計されていて、何より価格が半分以下なのが嬉しいですね。
FORUM/フォーラムには乗車姿勢45度のアスレチックと60度のモデレートの二種類がラインナップされ、モデレートにだけ更に座面の広いレディース用が存在しています。
画像の上がメンズ用のモデレートで、下がユニセックス用のアスレチックですが、アスレチックはスポーツサドルとしても十分に通用するスッキリとした見た目ですね。
このFORUM/フォーラムは、アスレチックが453g、モデレートが521gとコンフォートサドルだけに重めの仕様ですが、500g超えのモデレートにだけサドルレールの付根部分にエラストマースプリングが備わっています。
因みに、シエンティアもフォーラムにもフィジークでお馴染みのICSクリップシステムが採用され、対応するアクセサリーならワンタッチで装着できますが、サドルレール後部の形状が特殊なので、今まで使っていたサドルバッグの大半が使えなくなる地味に痛い欠点があります。
セラロイヤル『FORUM/フォーラム』モデレートを購入
高価なサドルは合わなかった時のダメージが大きいので、初セラロイヤルとなる今回は予定していたシエンティアではなく、低価格なフォーラムを購入しました。
正直、見た目はアスレチックの方が断然良いのですが、エラストマースプリングに興味深々な私が選んだのは、一番お尻に優しそうな『FORUM/フォーラム』のモデレートです。
真上から見ると、座面幅が広くぼってりとしたフォルムなのは間違いありませんが、不思議と実物は商品画像よりもスッキリとして見えますね、イタリア製デザインの妙でしょうか。
パッケージにはサドルの仕様や属性が記載されていて、座面にはROYALGELと呼ばれる圧力分散と衝撃吸収に優れる特殊なゲルが封入されています。
私は過去に幾つかのゲル入りサドルを試したことがありますが、どれも期待した効果が得られたことはなく、ゲルの効果については懐疑的です。
一般的なゲル入りサドルはサドルの表面素材が硬すぎて、肝心のゲルが活かされていない場合が殆どですが、このフォーラムは違いました。
今までのゲルサドルとは全くの別物で、指で座面を押すと柔らかな表面素材からゲルのしっとりと吸いつく様な感覚が伝わります。
コシを持たせたビーズクッションの様な質感で、座面の印象はミニベロ用に使っているマイベストサドル『SERFAS RX アドバンス』に少し似ているかも知れません。
今までに無い指先に伝わるしっとり感から『このサドルは行けるかもしれない!』と期待に胸を膨らませつつ、試しに軽量してみるとカタログ値よりも少し重い535gでした、14gオーバーは誤差としては少し大きいでしょうか。
続いてサドル裏側を確認すると、サドルレールの終端にはエラストマースプリングがあり、レール中央にはICSクリップシステム用のアタッチメントが見られます。
さて、期待していたエラストマースプリングですが、サドルレールが固定されている最上部だけ硬質なプラスチック製で、ブロック状になった二段目以降がエラストマー素材でした。
エラストマースプリングは私が想像していたよりもずっと硬く『これで本当に効くの?』と言うのが正直な感想です、使用するまではわかりませんが重量増の割に実感できるほどの効果は見込めない気がしますね。
さて、セラロイヤルのシエンティアやフォーラムの画像を見てお気づきの方も多いと思いますが、このサドルは座面がサドルレールに対して並行ではありません。
一般的なサドルなら、水平器を使って座面が地面と平行になる様に取付けるのがセオリーですが、このサドルは特に説明が無く何を基準にして取付けたらいいのか不明瞭です。
情報を求めてネット上で使用者の画像を漁ってみると、びっくりするくらい参考になる画像が無く、やっと見つけた画像は海外の1件だけでした。
その方法が正しいのか否かわかりませんが、スペースの関係上サドルレールに水準器を使えないので、今回は海外の画像を参考にセオリー通り座面を水平にして取付ける事にします。
やっぱり角度がキモだった…セラロイヤル『FORUM/フォーラム』の使用感
ファットバイクに取付けた後、いつもの様に40kmほど試走してみました、前述の通り座面は地面と平行に取付けています。
画像では気持ちサドルの鼻先が上がっている様に見えますね…加えて黒いサドルは久々なので色々と違和感が大きいです。
見慣れないせいかサイドシルエットに違和感はあるものの、ファットバイクは車体が大柄なのでゴツいサドルでも馴染みが良いですね、見た目は十分に許容範囲です。
さて、肝心の使用感ですが…指で座面を押したときの期待感が見事に打ち砕かれました、確かに座面はしっとりとお尻に吸いつく様な感覚があり、一般的なゲル入りサドルよりも心地良いのですが、座骨からは指で感じたほどの柔らかさは得られず、位置によってはサドルのベース部分への底つき感があります。
ドロッパーシートポストを使っていたせいもありますが、試走中はお尻の落ち着き場所を終始探し続ける様な感じで、イマイチ走りに集中できません。
また、上画像の破線で囲んだ部分を見るとわかりますが、カジュアルなパンツで乗ると座面のサイドが擦れやすいです。
表面素材には殆どダメージはなく実用にも問題の無いレベルですが、偶々ジーンズを履いていたせいで薄く色が移ってしまいました、私にとってモデレートは少し座面が広すぎる様ですね。
結局のところ40km走っても、しっくると来るポジションが見付からず、事前に予想出来ていた通りエラストマースプリングの恩恵も、全くと言っていいほど実感できませんでした。
座面を指で押したときの、あの期待感は幻だったのか?と思わずにはいられませんが、とにかく落ち着かないサドルと言うのが率直な感想でしょうか。
いつもなら、ゲル入りサドルなんてやっぱりこの程度か…と潔く諦めるのですが、サドル取付け後に感じたサイドシルエットの違和感が妙に引っ掛かったので、試しに座面ではなくサドルレールを地面と平行にして取付けてみます。
こちらの方がサイドシルエットが堂に入っている気もしますが、後日にリベンジを兼ねて30kmほど走ってみると、『ああ、こっちが正解だったのか…』と確信できるくらい座り心地に変化があり、お尻の落ち着きの無さもすっかり解消されました。
ゲル以外のクッション素材が殆ど無いため、スイートスポットから外れると相変わらず座面の底つき感はありますが、推奨された乗車姿勢を守ると座骨が適切な角度で支えられている感覚があり、ゲル入りサドルでは間違いなくトップクラスの快適さです。
乗車姿勢がどうしてもアップライト気味になってしまうファットバイクでは、もう少し座面に柔らさが欲しいところですが、じっくりと時間を掛けて評価してみたいサドルですね。
因みに座面の角度はサドルレールに対して9度ほど前傾しているので、水平器を使って取付ける際はこの数値±1度くらいが座面角度の目安になると思います。
まとめ
紆余曲折がありましたが、どうやらこのセラロイヤル『フォーラム』モデレートはサドルレールを水平にして取付けるのが正解の様です。
また、エラストマースプリングの効果が実感できない、座面が広くサイドでパンツが擦れる、などの症状を見るに、フォーラム『モデレート』よりも軽量で見た目もスポーティーなフォーラム『アスレチック』を選んだ方が何かと都合が良さそうですね。
個人的にエラストマースプリング付きのサドルに淡い期待を寄せていたのですが、予想外の硬さと実感の無さに少し困惑しています。
スポーツアラーの『GARDA MAN』やトピークの『 Free SX 』など、他にもエラストマースプリングを採用したサドルはありますが、GARDA MANは次の購入候補なだけに考えを改める必要がありそうです。