ちょっとした事情から、学生のとき以来乗っていなかった自転車を数十年ぶりに購入。
クロスバイクかミニベロなんかで十分かな?
最初はそんなふうに気楽に構えていましたが、好奇心が先に立ち、気が付けばそこそこ値の張るファットバイクに手を出していました。
購入したのはBMXの元祖ブランドとして知られるmongoose(マングース)社のファットバイク『ARGUS/アーガス』です。
久々に買った自転車がキワモノ扱いのファットバイクな上に、私が数十年前に乗っていたルック車まがいのロードやMTBとは使われている技術や規格に隔絶したものがあり、無茶と言えば無茶な選択だったかも知れません。
初心者の私が感じた『ファットバイク』の長所と短所

ファットバイクを購入してから、雪上を含む春夏秋冬すべの季節を一通り堪能してきましたが、数十年ぶりの自転車で本格的なスポーツ車。
この癖の強いファットバイクを乗り回してみるとファットバイクならではの長所や短所が見えてきます。
正直を言うと、ファットバイクを常用する上で、長所よりも短所の方が圧倒的に多いのです。
【1】やっぱり重い
【2】坂道が結構キツイ
【3】風にめっぽう弱い
【4】やたらと目立つ
【5】パーツが高い
【6】パーツの入手性が悪い
【7】携行品が嵩張る
【8】サイクルウェアに悩む
短所を大雑把にまとめるとこんな感じになりますが、私と同じファットバイク乗りなら、少なからず身に覚えがあるかも知れませんね。

ファットバイクの長所なんて、どこでも気にせず突き進める走破性、段差をものともしない浮遊感のある乗り心地、季節を問わず一年中乗れる万能性、所有欲を120%満たしてくれるゴツい外観、かなり贔屓目に見てもこれくらいが精々です。
なんとなく、アメ車や外車などの自動車オーナーと似たようなスタンスで、スポーツ自転車を完全に趣味として嗜んでいる方にしかおすすめ出来ません。
【1】の重さに関しては、見た目から判断できるので覚悟の上でしたが、電動でもない限り軽快さとは完全に無縁な乗り物ですね。
今となっては軽量化も楽しみの一つになっていて、オールカーボンなら10kg台も夢じゃありません。
また、車体がヘヴィー級な訳ですから【2】の坂道のキツさもカルマの如く付き纏います。
幸い、昨今のオフロード車はリア50T前後が当たり前になっているので、スピードされ気にしなければ、それほど体力は要求されません。
【3】の風にめっぽう弱いですが、自転車の短所としては至極真っ当なものの、ファットバイクは走行中の向風はもとより、駐輪中にも注意が必要になります。
なにせ、タイヤ側面の面積がロードバイクの3倍以上もあるため、気持ち強めの横風に煽られただけで、帆に風を受けたヨットのように車体が横転するなんて悲劇も。
因みに、私は二度ほどやらかして、ディレイラーハンガーを破損させています……キックスタンドを使っていても容赦なく倒れました。
【4】の『やたらと目立つ』は想像以上で、人によってはファットバイクでの外出を躊躇わせる理由として十分過ぎるほどです。
ファットバイク乗りの私がたまに見掛ける他のファットバイク乗りをガン見してしまうくらいですから、『そんなに見ないでくれ!!』と言うのも無理な話ですね。
ここ数年は、20インチの電動ファットバイクや26インチの街乗り用ファットバイクが普及してくれたおかげで、以前ほど注目を集めることは無くなりましたが、タイヤがデカくて目立つ……そんな異質な自転車であることは間違いありません。
【5】と【6】のパーツに関してはファットバイクを購入してから嫌というほど思い知らされました、ファットバイク専用のパーツは流通量が少なく需要も多くないため、どうしても価格が割高になりがち。

ボリュームがあるせいかタイヤの高コスト化が特に顕著で、一流どころの製品は1本10000円オーバーが当たり前の世界です。
他にも、既存品で間に合いそうな安価なパーツでも取り付け出来なかったりする事があり、私はどうしても必要だったキックスタンドを4回も買い直す羽目になりました。

ファットバイクの街乗りには欠かせない、おすすめのセンタースタンドやキックスタンドの選び方についてまとめています。
ついでなのでお伝えしておきますが、意外に見落としがちなのがファットバイク用のリムテープ(リムストリップ)かも知れません。

26インチホイール用の幅75mmまでの製品なら国内でも比較的容易に入手できますが、幅85mm前後の製品や27.5インチホイール用のリムストリップとなると、途端に国内での入手が難しくなります。
26インチや27.5インチのファットバイクはリムの肉抜き穴からリムテープが剥き出しになるので、通常のスポーツ車よりも劣化が早く、一年程度で交換が必要になる事も珍しくありません。
最近はリムに肉抜き穴のないファットバイクも増えていますが、リムストリップにはPVC(ポリ塩化ビニル)製とナイロン製の二種類があるので、交換の際は寿命が長く耐久性にも優れる後者を選ぶのがオススメですね。
さて、【7】の携行品に関してですが、ファットバイクはロードバイクのように携行品をコンパクトにまとめる事が難しく、タイヤの空気圧調整に必須となる携帯ポンプひとつとっても大柄になりがちです。

交換用の予備チューブも同様で、400g前後もあるチューブはたった1本でサドルバッグを独占する握りこぶし大のサイズ感。
因みに、CO2ボンベでパンクのリカバリーをする場合、ファットバイクは16g一本でもギリギリ走行可能です。25gなら十分に帰宅できる空気圧にできるので、緊急用のCO2ボンベは二本もあれば十分です。
私は携行品のコンパクト化が面倒になり、半年ほどで嵩張る携行品は全てフレームバッグに詰め込む方式に切り替えましたが、ただでさえ重いファットバイクなだけに余計な装備で車重を増やすのは出来るだけ避けたいのが本音でしょうか。
そして意外に盲点なのが【8】のサイクルウェアに関してです。

寒さがそれほど厳しくなく積雪が伴わない地域ならばロードバイクとそれほど変わらない装備で十分ですが、北国で本格的にファットバイクに乗るとなると、そう簡単にはいきません。
頭から足先まで、高い防寒性を備えつつも汗冷えしない装備を揃える必要があり、割高な登山用ウェアやスキー&スノーボード用ウェアの流用も一般的です。
まとめ

前述の通り、ファットバイクには短所の方が圧倒的に多く、ワイルドな見た目に惹かれて購入してみたものの、2~3回乗っただけであっさり手放してしまう方も珍しくありません。
この記事を読んでファットバイクの購入を躊躇う方もいる思いますが、個人的に【3】の『やたらと目立つ』さえ克服出来るのなら、ほかは体力と少しの財力で補える些細な問題だと言いたいです。
これだけマイナス要素が多いと、ファットバイクを選んだ事を悔やんでいるのでは?と思うかも知れませんが、意外なほど後悔はしていません。
たぶん私の住まいがそこそこの田舎で雪国だからだと思いますが、オールシーズン気ままに好きなところへ行けたり、極太のタイヤを季節ごとに履き変えて乗り味の違いを楽しんだりするのが、思いのほか気に入っているからなのでしょうね。

現在は二代目となるSALSA製のファットバイク『BEARGREASE/ベアグリース』に乗り換えていますが、ハマる人はとことんハマる……ファットバイクはそんな不思議な魅力を持った自転車な気がしています。
ロードバイク乗りの方が、冬場にファットバイクで脚トレしている……そんな話も聞くので、興味のある方はセカンドマシンから始めてみては如何でしょう?