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工具ひとつの職人技!ディスクブレーキの最もシンプルな調整方法

工具ひとつの職人技!ディスクブレーキの最もシンプルな調整方法イメージ01

あれこれ試してみたものの、結局は昔ながらの方法が一番だった……

今回はそんなお話。

さて、私の所有する自転車はファットバイク、ミニベロ、フルサスMTB、グラベルロードの計四台。

ミニベロを除く三台がディスクブレーキ仕様になっていて、時代の流れを感じます。

ディスクブレーキ導入当初は、調整からメンテナンスまで勝手がわからず嫌気が差すこともしばしばでしたが、ここ数年で知識や技術がようやく追いつき、以前ほどの苦手意識はなくなりました。

私が自転車の油圧式ディスクブレーキと向き合う上で、最も苦戦したのがディスクブレーキキャリパーのセンター出しで、並行出しやセンタリング、単にクリアランス調整なんて呼ばれ方もされます。

この部分がしっかり調整されていないと、ブレーキパッドとディスクローターが干渉する、いわゆる「引きずり」が発生し、走行中にシャンシャン、シャリシャリといった異音を奏でるのが典型的な症状。

ディスクブレーキの隙間調整に便利なオススメの『センタリングツール』イメージ04

一応、この引きずり音を解消する専用工具として「ディスクブレーキセンタリングツール」という便利な物も存在しているのですが、これだけでは解消できないケースも珍しくありません。

実のところ、ディスクブレーキのセンター出しには幾つかの要素が絡み合っていて、どれか一つでも見落としていると、しつこく症状が続いたりします。

ディスクブレーキ初心者だと特に陥りがちですが、単純作業のようにセンタリングツールに頼り切ってしまうと、何度調整しても引きずり音が消えてくれない……そんな調整沼にハマってしまうことも。

私もこういった経験を一通りしていますし、苦い思いも沢山してきましたが、ここ最近は「結局、この方法が一番なのでは?」といったやり方に落ちついています。

油圧式ディスクブレーキが本格的に普及する前から存在している方法なので、ベテランの自転車乗りからすると肩透かしを喰らってしまう内容かも知れませんが、今回はちょっとした温故知新にお付き合い下さい。

必要な工具はひとつだけ?ディスクブレーキの簡単な調整方法

工具ひとつの職人技!ディスクブレーキの最もシンプルな調整方法イメージ02

必要な工具はひとつだけ……そう啖呵をきっておきながら、画像にはふたつの工具がちゃっかりと。

このふたつは単に私のお気に入りなだけで、基本的に必要な工具は「5mmの六角レンチ」のみです。

私はとある理由から、持ち手のあるPARKTOOLのPハンドルヘックスレンチを愛用していますが、これについては後述するので、今は軽く流して下さい。

工具ひとつの職人技!ディスクブレーキの最もシンプルな調整方法イメージ03

見慣れないもう一つの工具の正体は、カメラ用の撮影ライト。サイズは7cm四方で66個のLEDが埋め込まれています。

ディスクブレーキのセンター出しをする際は、ブレーキバッドとディスクローターとの隙間を目視で確認する必要があるのですが、こういった面光源があると大変便利。

明るい場所なら白い紙でも十分ですが、他にもスマホやタブレットに真っ白な画像を表示させたり、自転車用ライトとレジ袋を組合せて面光源化する方法なんかもあります。

工具ひとつの職人技!ディスクブレーキの最もシンプルな調整方法イメージ04

さて、ここからは実際の作業に移りますが、上画像はブレーキパッドを取外してピストンを押し戻した状態のブレーキキャリパー。

以前にキャリパーのクリーニング方法につて記事にしたことがありますが、この時点でキャリパーの内部はクリーニング済み、ピストン側面も綿棒でブレーキダストを除去してあります。

ピストンの戻りが鈍かったり、左右ピストンの出代がちぐはぐ過ぎる場合は、側面をクリーニングしつつピストンを押し出す&押し戻す動作を数回繰り返して、動作を潤滑してあげましょう。

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中性洗剤やディスクブレーキ用のクリーナーで脱脂したブレーキバッドを元の位置に戻し、センタリングの下準備として、左右ふたつの固定ボルトを緩めておきます。

説明不要かと思いますが、手でキャリパーをカタカタ動かせる程度に緩めるのがポイント。

因みに、ピストンが全く押し出されていない状態でのパッドクリアランスは3mmほどでした。

ディスクローターの厚さは1.7mm前後ですから、最も広がった状態でも片側のクリアランス幅は0.6mmほどしかなく、初回のブレーキ操作でここから更に狭くなります。

工具ひとつの職人技!ディスクブレーキの最もシンプルな調整方法イメージ06

続いてブレーキレバーを握り、その状態のままキャリパーの固定ボルトを左右均等に締め上げます。

「あれ、この手順はよく聞くセンタリングの方法と一緒なのでは?」

そう思うかも知れませんが、これは下準備みたいなものです。

この作業はキャリパー自体をセンタリングするというよりも、ピストンを含むブレーキパッドが最も自然に動作した状態でキャリパー位置を固定する意味合いの方が強いですね。

少しわかりづらいですが、ピストンの動作にはキャリパーごとに癖のような物があり、定期的にクリーニングしてもピストンが左右均等に押し出されるのは稀です。

キャリパーの並行出しとよくいわれますが、この作業は左右ブレーキパッドの並行出しとクリアランス幅の安定化をしているといった方が正確かも知れませんね。

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一応、白い紙を敷いて作業していますが、面光源で下部から照らすとご覧通りブレーキパッド・ディスクローター間のクリアランス幅がハッキリと確認できますね。

余談ですが、ここ数年のシマノ製ディスクブレーキはクリアランス幅が広めに設定されていて、スラムやマグラと比べて調整に掛る労力がかなり軽減されている印象。

この状態でしっかりとブレーキが動作し、かつ引きずり音も発生しないなら、ここで作業終了で構いません。

無事にキャリパーのセンター出しは成功しています。

さて、ここからが本題。

従来のブレーキを握ってキャリパーを固定する方法でも、センタリングツールと使った方法でも、引きずり音が全く解消されない場合は、これから記す昔ながらの調整方法を試してみましょう。

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再度、固定ボルトを緩めてから、ブレーキキャリパーを矢印の方向から押し込み、ホイール側のブレーキパッドとディスクローターが軽く触れるように密着させます。

念のため注意喚起しておきますが、この時点でピストン押し戻したり、パッドをこじってクリアランスを広げるのはNG!先ほどキャリパーをセンタリングした意味が無くなってしまいます。

そして、この状態のまま左右の固定ボルトを手では動かないけど衝撃ではズレる程度に固定しましょう。

固定の力加減は実際の作業で把握していくしかありませんが、若干強く固定してから徐々に緩めて微調整する方法がおすすめ。

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ここからの内容は、本当にシンプルで物理的な方法になります。

キャリパーに傷をつけない適当な工具で側面にコツコツを衝撃を与え、キャリパー位置を微調整するだけ。

私があえてPARKTOOLのPハンドルヘックスレンチを愛用している理由を、ようやくご理解いただけたかと思います。

因みに、一つ前の手順でキャリパー本体をホイール側から外側に向けて押し込んでいますが、単純にその方がスポークに邪魔されずにキャリパー側面を叩きやすくなるから。

特に決まりは無いので、微調整する際はホイール側からもコツコツ衝撃を与えてOKです。

工具ひとつの職人技!ディスクブレーキの最もシンプルな調整方法イメージ10

衝撃を加えるのは左右の固定ボルト付近ごとに行った方が良く、よりシビアに調整を追い込めます。

パッド・ローター間のクリアランス幅を目視で確認しつつ作業しても構いませんが、ホイールを空転させて引きずり音の有無を耳で確認しながら調整した方が効率が良いですね。

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引きずり音がしない位置にキャリパーを微調整できたら、左右の固定ボルトを左右均等にちょっとずつ締め上げます。

いきなりどちらかのボルトを強く締めると、トルクでキャリパー位置が微妙にズレてしまうので注意しましょう。

最終チェックとして、ブレーキ操作で引きずり音が再発しないようならば、作業は成功。

仮に再発しても、またコツコツ側面を叩いて微調整するだけです。

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この方法は随分前から知っていましたが、こんな職人技みたいのは絶対に無理!なんて思い込んでいました。

実際に試し、やり方に慣れてくると、今までの苦労は何だったのか……と思えるくらい歩留まりが上がり、ブレーキキャリパーのクリーニング後やホイール着脱後に生じる僅かな狂いも怖くなくなりました。

流石にローターが歪んでいたり、ブレーキマウントのフェイシングが甘かったりすると、この方法でも対処しきれませんが、六角レンチ一本で完結でき、センタリングツールよりも柔軟な調整ができる点は評価に値します。

ディスクブレーキ関連のトラブルは身軽な輪行時に起こりやすいと聞くので、身につけておいて損のない技術かも知れません。

まとめ

昔からあるディスクブレーキの調整・センター出しの方法に再注目してみましたが、最後にオマケとしてちょっとした小技もお伝えしておきましょう。

工具ひとつの職人技!ディスクブレーキの最もシンプルな調整方法イメージ08

ホイールを取付けた段階で画像のようにブレーキパッドとディスクローターが接触し、それに加えてブレーキキャリパーの取付け位置で調整できる範囲を超えてしまっている……

そんな構造的に手詰まりな状態になった場合は、ディスクローターシムを頼りましょう。

工具ひとつの職人技!ディスクブレーキの最もシンプルな調整方法イメージ13

ディスクローターシムは、ディスクローターの固定位置を車体の外側にオフセットすることが可能で、厚さ0.3mmの6ボルト式用と厚さ0.1mmのセンターロック式用の二種類がリリースされています。

複数のホイールを使い分けている場合にも役立ち、ホイール毎に僅かに異なるローター位置をシムを挟むことで一定にする効果も。

ホイールを交換した後にキャリパー位置を再調整するのが面倒臭い……そんな方にもおあつらえ向きです。

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