早いもので、バラ完したグラベルロードも来春で三年目に突入。
自分好みのパーツで組み上げたおかげで大きな不満は無いものの、一つだけ妥協してしまった部分があります。
それがこちらのデュアルコントロールレバー。
油圧式ディスクブレーキにするつもりが無かったので、シマノGRXのレバーは最初から候補に入っていませんでしたが、途中で予算が尽きてしまい泣く泣く中華コンポのSENSAH/センサーに。
購入したのはSENSAH TEAM PROというシマノ11速互換の製品で、これが結構なくせ者。
レバーを内側に浅く倒すとシフトアップ、深く倒すとシフトダウンという操作方法のせいか、シフトチェンジの精度が低く、シフトダウンしたい局面でシフトアップするといった、天邪鬼な性格を発揮してくれます。
また、ブレーキレバーとシフトレバーが一体化している影響から、ブレーキレバーを強く握ると勝手にシフトチェンジしてしまうといった悪癖もあり、乗り手に優しいレバー操作を要求するデリケートな一面も。
「馬鹿な子ほど可愛い……」
今ではそんな境地に達していますが、実際に丸二年も使っていると普通に馴染んでしまい、シフトの精度が上がりレバーを強く握り込むことも無くなるのが怖いところ。
ですが、流石に私でも擁護できない点があります。
使い始めて半月もしないうちに、レバーに施されたロゴプリントやエンボス加工された滑り止めが剥がれ落ち、ノーブランドみたいなツルツルの外観に。
プリント後にトップコートをケチったのは明らかで、SENSAH/センサーには第四のコンポ―メーカーが登場したと騒がれていた時期があっただけに、細部にも拘って欲しかったところでしょうか。
何だかSENSAH/センサーのレビューみたいになっていますが、ここからが本題。
バラ完時に予算不足で購入できなかったのはシマノ105のSTIレバー「ST-R7000」です。
シマノのロード用コンポが相次いで油圧化される中で、一世代前の「ST-R7000」は11速用でリムブレーキ対応という仕様。
シマノ105のSTIレバーは同じ11速ならGRXのリアディレイラーと互換性があり、油圧オンリーなGRXのSTIを使いたくない時には代替品として役立ってくれます。
懐に余裕があるタイミングでシマノ105「ST-R7000」への乗り換えを目論んでいたのですが、SENSAH/センサーの低価格を目の当たりにした後では割高に感じてしまうのが正直なところ。
購入するかしないかで長いこと逡巡していると、シマノの新コンポーネント「CUES/キューズ」にロード・グラベル用にSTIレバーが追加されるというリーク情報が。
ドイツの自転車メーカーであるCUBE/キューブがお漏らししたそうで、この記事のトップ画像に写っているのがCUESから登場予定のSTIレバーのお姿です。
お漏らしから数ヶ月程経過しているもののまだ正式な発表は無く、カタログスペックによると製品名は「SHIMANO CUES ST-U6030」とのこと。
廉価グレードだけに外観に少し安っぽい印象を受けたのですが、シマノ11速対応の他のレバーと比較してみると、意外にそうでもありません。
左から順に、CUES ST-U6030、GRX ST-RX810、GRX ST-RX600、105 ST-R7000、と並べてみると、明らかに見栄えが良いのはGRX上位グレードのST-RX810だけで、サイドシルエットはGRX ST-RX600にかなり似ています。
当たり前の話ですが、105 ST-R7000だけリムブレーキ用につきブラケットがコンパクトですね。
リークされたのがグラベルバイクの完成車だったので、ロード用のCUESグループセットが登場するのかと思いきや、新たに追加されるのはSTIレバーと対応するブレーキのふたつだけな模様。
STIに対応するブレーキキャリパーは「SHIMANO CUES BR-U6030」で、詳細は不明なものの油圧式でフラットマウント対応なのは間違いありません。
その他のパーツは既存のCUESから採用されていて、リアディレイラーは「CUES RD-U6000-GS」
スプロケットは「CUES LG400 11-50T」といった構成になっていました。
CUESはMTB用・ロード用といった垣根が無く、CUESという括りでならパーツ同士を自由に組み合わせることができます。
ちょっと気になったのが、完成車のクランクが恐ろしく安っぽいシロモノだったこと。
これもCUESなの?と心配になりましたが、こちらはCUBE製だそうで一安心。
しかし……コンポ名がCUES、メーカー名がCUBEと少し紛らわしいですね。
CUES採用の完成車にはクランクまわりが社外製というケースも多く、SALSA/サルサのファットバイクにもクランクまわりだけSAMOX製というモデルが存在しています。
SHIMANO CUESのクランクはこんな感じのデザインで、CUES内の全てのグレードにシングル用クランクが準備されています。
CUESは街乗りや電動、通勤用自転車向けのコンポーネントを謳っているだけに、チェーンリングガードを備えたクランクが充実しているのが面白いところ。
これがあると裾バンドが不要になるので、チャリ通派やカジュアルウェア派には嬉しい配慮だったりします。
さて、SHIMANO CUESからロード・グラベル用のSTIレバーが登場するということで、気になるのはその互換性です。
現在使用しているGRXにミックスできるか否か?
これが最も気になる部分です。
結論から言うと、既存のシマノ11速コンポとCUESとでは例え同じ11速でも互換性がありません。
チェーンだけが唯一の例外で、11速チェーンならどちらのコンポにも対応するとのこと。
CUESには「LINKGLIDE」という新たな変速システムが採用されていて、同じCUES内でなら高い互換性を発揮してくれるのですが、シマノ既存の9速/10速/11速とは別物となります。
仮にSENSAH/センサーのデュアルコントロールレバーからCUESのSITレバーに交換する場合。
STIレバーとブレーキキャリパーだけでなく、リアディレイラーやスプロケットも交換する必要があります。
11速チェーンが使えることから、GRXのクランクやチェーンリングは辛うじて残せますが、本来ならこれらも交換の対象になるでしょう。
低価格でリリースされるという噂はあるものの、コンポを総入れ替えに近い対応となるため、それなりの出費は免れそうにありません。
今からグラベルロードをバラ完するなら魅力的な選択肢になったでしょうけど、CUESはかなり内弁慶な互換性を備えたコンポーネントと言えるでしょうか。
因みに、CUESのスプロケットは旧規格のシマノHG対応で新規格のシマノHG+「マイクロスプライン」には対応していません。
勘の良い方なら既にお察しでしょうが、これはCUESからは11速以上のコンポが登場しないことを意味します。
私の希望は見事に打ち砕かれましたが、ミックスコンポの可能性はちょっぴり残されていて、それはWOLF TOOTHの「TANPAN」のようなパーツを間に噛ませた場合です。
CUESのSTIレバーがGRXのリアディレイラーに使えないのは、両者でケーブル引き量が異なるのが原因ですから、TANPANのように引き量を変換できるパーツさえあればミスマッチを解消可能。
この問題さえ乗り越えれば、STIレバーへの交換とブレーキの油圧化だけで済むので、既存のパーツを無駄にしなくて済みます。
残念ながら、CUESのケーブル引き比は既存のMTB用ともロード用とも異なっているそうなので、現状ではCUES対応版のTANPANがリリースされるのを待つしかありません。
結局のところ、振り出しに戻って当初の計画通り「105 ST-R7000」に交換するのがベストという顛末でしたが、CUESのSTIレバーがリリースされるまではSENSAH/センサーで粘ってみる予定でいます。
きっとミックスコンポを試してくれるチャレンジャーが現れるでしょうから、それを見届けてからでも遅くはありません。
言い忘れましたが、TANPANを使うとロード用のSTIレバーでMTB用のリアディレイラーが引けるようになり、グラベルロードにMTB用のドライブトレインを組み込めるようになります。