マウンテンバイクには6穴ボルト式、ロードバイクにはセンターロック式。
何となくそんなイメージを持っていますが、今回は油圧ブレーキに欠かせないディスクローターの話題。
その名の通り、6穴ボルト式は6本のボルトでローターをハブに固定し、センターロック式はロックリングと呼ばれるパーツでローターを固定します。
センターロック式は複数のボルトを使用する必要がなく、固定する順番や締め付けトルクの均一化に気を遣わなくて済むという利点があるものの、使用するロックリングには少しややこしい面も。
件のロックリングには幾つかの種類があり、対応する工具も異なるため、事前にその特徴を知っていないと購入後に取付けできないという最悪の事態も起こり得ます。
内・外セレーションとは?三種類のロックリングと対応する工具について
結論からいうと、シマノのセンターロック式に限れば、ロックリングの種類は上画像の三つとなります。
カンパやフルクラムが採用しているAFSハブ用ロックリングも含めると四種類ですが、今回は間違いやすいシマノ製に限ったお話。
【内セレーションタイプ】
ロックリングの内側に工具用の溝がある「Y8K198010」
【外セレーションタイプ】
ロックリングの外側に工具用の溝がある「Y24698030」
【内外セレーションタイプ】
ロックリングの内側と外側に工具用の溝がある「Y8JX98020」
各々の特徴は上記の通りで、工具用に設けられたギザギザの溝に違いが見られます。
どのロックリングでもシマノのセンターロック式ディスクローターになら問題なく使用可能ですが、実質的に内セレーションタイプと外セレーションタイプの二強と考えて差し支えありません。
内外セレーションタイプの「Y8JX98020」は影が薄く、その名の通り内・外両方の特徴を備えるものの、他のロックリングが9g程度の重さに対して20gと倍以上の重量があります。
スチール製で強度に優れるくらいしか長所が無いので、重さが気になる方はアルミ製の外セレーションタイプにさっさと交換するのが吉。
さて、肝心の内セレーションと外セレーションの違いについてですが、大雑把に説明すると以下の通り。
内セレーションはΦ9mmQRとΦ12mmのスルーアクスルに使用。
外セレーションはΦ12mm/Φ15mm/Φ20mmのスルーアクスルに使用。
こういった使い分けになります。
上画像の通り、内セレーションにはスプロケット用の工具「TL-LR15」が対応し、外セレーションにはシマノ ホローテック2用のBB工具「TL-FC36」が対応。
また、内外セレーションには「TL-FC36」の他に「TL-LR11」も対応しますが、この工具は内外セレーションにしか使えないニッチな専用工具なので他に使い道がありません。
外観の似ているスプロケ用工具「TL-LR15」とは全くの別物なのでくれぐれも注意しましょう。
恥ずかしながら、私はこの罠に見事に引っ掛かった経験があり、手持ちのスプロケ用工具がどこにもフィットせず、途方に暮れたことがあります。
話が少し横道に逸れましたが、注目したいのがΦ12mmのスルーアクスルに限り、内セレーションと外セレーションの両方が使える点でしょうか。
Φ12mmスルーアクスルはディスクロードやグラベルバイクに採用されている規格で、不思議なことに完成車は外セレーションではなく内セレーションのロックリングが大半を占めます。
理由はフォークやフレームとのクリアランス問題があるからだそうで、車種によっては外周に厚みのある外セレーションのロックリングが干渉してしまうとのこと。
逆に、マウンテンバイクに内セレーションを使うと、Φ15mmやΦ20mmのスルーアクスルがロックリングの穴に対して太すぎるため、そもそもスプロケット用の工具「TL-LR15」が使えません。
結果的にオンロード車とオフロード車でロックリングが綺麗に棲み分けされることになり、ロードバイクには内セレーション、マウンテンバイクには外セレーションといった雑な括りでも、あながち間違いではなくなっています。
余談ですが、シマノのセンターロック式がお目見えしたのは2003年頃で、XTRやDeore XTといったマウンテンバイク用として登場しました。
最初のロックリングが気になって調べてみると、内セレーションタイプという事実。
当時のマウンテンバイクはまだQRでしたね、そういえば。
BB工具で外セレーションのロックリングを締める時の注意点
外セレーションと内外セレーションのロックリングには、シマノ ホローテック2用のBB工具が使えることをお伝えしました。
私も過去に内外セレーションで試したことがありますが、同じBB工具でも下手な物を選ぶとロックリングを舐めてしまがち。
画像の工具のように、先端から握り部分までが一直線になったBB工具は特に不向きで、ロックリングへの掛かりの浅さがそれを助長します。
上から押さえつけるように作業しないと工具が外れやすく、最悪の場合ロックリングの側面を舐めたり、工具と密着したローターにダメージが及ぶことも。
シマノ純正の「TL-FC36」は工具に曲げが入っているので多少は使いやすくなっていますが、予算が許すならパークツールの「BBT-69.4」が欲しいところ。
画像右を見てわかる通りカップ式のBB工具になっていて、ロックリングに対応するのは適応BBサイズが42.7mmの製品。
別途で差し込み角9.5mmのラチェットハンドルが必要なものの、BBはもちろんセンターロック式ローターも安定して取付けできます。
しかし相変わらずシマノ純正の工具は高価ですね……単体ならパークツールの方が安いくらいでした。
まとめ
スルーアクスルならロックリングは外セレーションを選ぶのが基本。
例外としてΦ12mmスルーアクスルだけは内セレーションにも対応。
ディスクロードやグラベルロードはフレームクリアランスも加味すべし。
要点をまとめるとこんな感じになるでしょうか。
因みに、シマノ製のセンターロック式ディスクローターは同じ製品でも内セレーション版と外セレーション版の二種類が準備されていて、ロード向けの高性能ローターをマウンテンバイク用としても活かせます。
パッケージを見るとアイコンで簡単に区別できますが、ロックリングは単体だと割高になるので初めから間違えずに購入したいところでしょうか。
あまり役に立たない情報ですが、シマノの商品モデル番号の末尾が「I」ならINTERNALで内セレーションタイプ、末尾が「E」ならEXTERNALで外セレーションタイプです。
一例として、RT-CL900の商品モデル番号が「IRTCL900SI」なら、これは内セレーションタイプということですね。
ネット通販ではパッケージが確認できないので、この末尾のアルファベットが参考になるかも知れません。