自転車用の鍵において『軽量かつ堅牢』が永遠のテーマです。
日々進歩しつつも両者が並び立つ事は稀で、盗難対策を強化すればするほど、それに比例して重量が嵩んでしまうのが現実。
私の場合、新車を購入した直後は『意地でも盗まれまい』と言う思いから、出来るだけ丈夫で堅牢な鍵を選んでいました。
ですが時間とともに危機感が薄れると、最低限の堅牢さがありつつも可能な限り軽量な物を選ぶように。
鍵の重さが苦にならないなら、絶えず堅牢な鍵を持ち歩くのが確実でしょうが、TPOに合わせて使い分けるのも賢いやり方かも知れません。
そこで今回は重さと堅牢のバランスに優れるチェーンロックの中から、軽量で携帯に向いた使い勝手の良い製品を幾つか紹介してみたいと思います。
なぜ、あえてチェーンロックに拘るのか?
私がチェーンロックに拘る理由を説明すると、『バランスが良いから』の一言に尽きるでしょうか。
ワイヤーロックの場合、モノによってはニッパーやペンチでも切断されてしまいますが、チェーンロックはよほど粗悪な製品でもない限り、ボルトクリッパーを持ち出さないと歯が立ちません。
また、ワイヤーロックは長尺タイプだとワイヤーに癖が付きやすく施錠や開錠の度に取り回しや収納に苦労させられますが、チェーンロックはフレキシブルな鎖状ゆえに度重なる施錠でもストレスを感じづらいです。
堅牢さではU字ロックやブレードロックにその座を譲りますが、重量面はチェーンロックが勝り、長尺タイプでなければ収納性も悪くありません。
あくまでも私個人の意見ですが、チェーンロックは『軽量さ』『堅牢さ』『携帯性』の三つをバランスよく兼ね備えている、大変使い勝手が良い鍵なんです。
飛び抜けた長所はないけど、致命的な短所もない。
ぶっちゃけると、そういうところがお気に入り。
因みに、私は以前記事にしたように前後のホイールをクイックリリースから盗難防止用スキュワーに変更しています。
このため、通常よりも施錠する場所が少なくなり、よりコンパクトで軽量なチェーンロックを選べる様になりました。
説明不要な『ABUS(アブス)』製チェーンロック
ABUS(アブス)は自転車やバイクに乗っている方なら、一度は耳にしたことがあるブランドかも知れませんね。
もはや定番商品と行っても過言ではありませんが、自転車用として使い勝手の良いのが『ABUS1500』シリーズです。
キーロック式の製品で110cmと60cmの二種類があり、Φ4mmのチェーンを採用。
重量はそれぞれ270gと140gと公称されていますが、実測値は340gと225gとこちらの数値の方が正確です。
同じ長さでダイヤルロック式の『ABUS1200』もありますが、ダイヤルが3桁しかないのが気掛かり。
施錠の癖を見破られたり総当たり攻撃を試されると、特別な道具を使わなくても短時間で開錠されてしまうリスクがあるので過信は禁物。
古いモデルにはドライバー1本で破壊できてしまう致命的な欠点がありましたが、現在流通している製品にはしっかりと対策がなされています。
実績のあるブランドなので、迷ったときは素直にABUS製を選びましょう。
私は最初、ABUS1500の110cmタイプをミニベロの施錠に使用していましたが、盗難防止用スキュワーを使い始めてからは軽量でコンパクトな60cmタイプに変更しました。
110cmタイプは缶ジュース一本分と同じくらいの重さがあり、サドルバックに収めるとずっしりとした感覚がありましたが、60cmは軽量な上に収納スペースにも余裕が生まれます。
余談ですが、トップチューブを地球ロックする方法で施錠してロック先のパイプが直径10cmを超えたりすると、もうちょっとだけ長ければ……と思うことが偶にあります。
それでも、隙間が少ない方が防犯上は有利ですし、風に煽られた際の転倒も防げますけどね。
ホイール用に便利な『NIKKO(ニッコー)』製チェーンロック
NIKKO(ニッコー)のチェーンロックは全長120cmで、ABUS1500よりも少しだけ長い仕様になっています。
Φ4mmのチェーン、重量355gのキーロック式で使用感もアブスとほぼ同じですね。
110cmよりも、もう少しだけ長さが欲しい時に重宝する製品ですが、注目すべきは同型で長さ30cmのダイヤルロック式の製品。
普通に考えると短すぎて用途に困りますが、145gと軽量な上にホイールの盗難防止に丁度良い長さなので、フロントホイールとボトムチューブを一緒に施錠するのに役立ちます。
100cm前後のチェーンロックでリアホイールとフレームを地球ロックし、残りの届かない部分を施錠する時に便利で、長尺のワイヤーロックを車体に這わせるよりも使い勝手が良いですね。
鍵を二つ使った方が施錠がスムーズで取り回しや収納が楽になりますし、しっかり二重施錠してるぞ!的なアピールにも繋がります。
お洒落で軽量な『ADEPT(アデプト)』製チェーンロック
『ADEPT(アデプト)』は自転車やパーツやアクセサリーの輸入販売を手がける、株式会社マルイが立ち上げたオリジナルブランド。
前述したアブス1500の60cmタイプよりも、あと少しだけ長さが欲しい……こちらもそんな要望を叶えてくれる製品です。
C307はタイヤルロック式でΦ3mmのチェーン、70cm長で重量が225g
C311はダイヤルロック式でΦ3.5mmのチェーン、110cm長で重量が300g
K311はキーロック式でΦ3.5mmのチェーン、110cm長で重量が305g
カラーバリエーションにはデニム柄やカモフラ柄など、お洒落な物が多い印象でしょうか。
アブスと比較してチェーン径が少し細く実績やレビューに乏しい部分に不安はあるものの、見た目のお洒落さと軽量さは魅力ですね。
どの道、ボルトクリッパーを持ち出されたらアブスでもこちらでも太刀打ちできないので、割り切って購入するのも一つの考え方です。
長尺・ダブルループなら『kuhaku(クウハク)』製チェーンロック
耳慣れないブランドですが『kuhaku(クウハク)』は国内企業が手掛けるチェーンロックです。
販売している各鍵の名前が、稲・麻・黒檀・桜・樫・楠木・蔦・野バラ・松など、植物に因んだものになっていて大変個性的。
製品のバリエーションも中々豊富に揃っていますが、使い勝手が良さそうなのはΦ4mmのチェーンが使わているキーロック式の『稲(INE)』と4桁ダイヤルロックタイプの『麻(ASA)』でしょうか。
稲(INE)には60cm・100cm・140cm(ダブルループ)・180cm、麻(ASA)には60cm・100cm・140cm(ダブルループ)がラインナップされています。
やはり注目したいのは長尺の180cmタイプとチェーンロックでは大変珍しいダブルループタイプの140cmですね、どちらもロングタイプのワイヤーロックと同様の使い方が出来ます。
重量は稲(INE)の180cmが580g、140cmダブルループが480g、麻(ASA)の140cmダブルループが520gとなっていて、ダイヤルロック式の方が若干重い仕様になっていますね。
因みに、公式HPでは60cm・100cmタイプの重量が全く記載されていませんが、180cmの580gを元に単純計算すると、100cmが約320g、60cmが200g程になるでしょうか。
鍵自体の使い勝手はまだまだ他社製に及ばないのが実情で、鍵穴に鍵を挿したままでしかロックできなかったり、鍵のささりが軽く、施錠や解除の際に抜け落ちやすいという欠点があります。
少し厳しい評価になりますが、長尺やダブルループができるチェーンロック目当てでない限りは、他社製のチェーンロックを選んだ方が良いでしょう。
軽さイチバン!!期待の新作『OTTOLOCK(オットーロック)』
キックスターターで話題になったのでご存知の方も多いと思いますが、軽量さと堅牢さを適度に両立させているのが、こちらの『OTTOLOCK(オットーロック)』です。
正確にはチェーンロックとは言えませんが、メーカー側によると防犯能力はワイヤーロックよりも高く、U字ロックよりも低いとのこと。
セキュリティレベル的には今回紹介しているチェーンロックとほぼ同じですし、使い勝手もほぼ同じ印象ですね。
長さは用途別に3種類存在し、45cm/120g、76cm/150g、150cm/235gと最も長い150cmサイズでも250g未満と大変軽量。
鎖状のチェーンロックでは無いので環状にして持ち運ぶことになり、直径の最小値はそれぞれ8cm、10cm、12cm程度とのこと。
最も使い勝手の良さそうな76cmサイズの場合でも、直径10cm×厚さ3cmくらいの収納スペースが必要になってしまいますが、同サイズのチェーンロックの約半分程しかない150gの重量は大変魅力的ですね。
3桁ダイヤルロックなので長時間の駐輪には向かないように感じますが、側面のボタンを押しながらでないとベルトを引き抜けない仕組みになっているそうで、総当たり攻撃にも強い仕様です。
鳴り物入りで登場した直後に、鋭利な金切バサミを使えば2秒でカットされてしまうといった欠点が発覚しましたが、現在は従来品よりも耐久性を強化した『OTTOLOCK HEXBAND』もラインナップ。
内部のステンレス層が今までの二倍となる6層構造になったタフネス仕様で、使い勝手の良い76cmタイプで従来品よりも100g重い250gとなっています。
重量増により利点が薄れ、コスパの良いABUS1500/60cmタイプと競合しそうですが、ボルトクリッパーへの耐性を考えると、堅牢性はこちらの方に分があるかも知れません。
因みに、ダイヤル部分の耐久性に難があるらしく、長期使用でセットした番号が勝手にズレてしまうといった報告も。
人気の製品だけにそれだけ不具合報告も多いということなんでしょうけど、購入の際は安価な並行輸入品ではなく保証の付いた国内正規品を選ぶことをオススメします。
個人的にはメインではなくサブとして使いたいところでしょうか。
意外と便利な『HIPLOK(ヒップロック) Z LOK』
変わり種の製品として『HIPLOK(ヒップロック)』の Z LOKを紹介します。
Z LOKはタイラップをそのまま強化したような簡易鍵で、内部にはニッパー等での切断対策としてステンレスプレートが挟まった構造。
あくまでも簡易的な製品なので、事前情報と細い棒が二本あれば専用の鍵が無くても簡単に開錠できてしまいますが、サブキーとしても再利用できるタイラップとしても何かと便利に使えます。
シンプルな鍵と本体がセットになっていて、重さは一本当たり20gと見た目通りの軽量さ。
長さは40cmありますが、二つを繋ぎ合わせて使う事も可能ですし、タイラップと同様にループを絞って対象物と密着させるような使い方も。
メインの鍵としてではなく、いつもの鍵にプラスして使用すれば更に防犯性が高まりますし、ホイール・ヘルメット・サドル・バッグ等の簡易ロックとしても役立ってくれるアイテムでしょうか。
一応、長さ43cm、重量100gのダイヤルロック式もリリースされていますが、堅牢性に大差はなくメインキーとして使うには力不足な印象ですね。
また、これはOTTOLOCKと共通した欠点ですが、ヒップロックも折り曲げが苦手なので収納には工夫が必要。
小さなサドルバッグとは相性が悪いので、フレームの目立たない部分にグルグル巻きにしたり、環状に丸めてコンパクト化するなど、使う人のアイディアが試されます。
総合力なら一番?期待の『バイスガードエア』
個人的に期待を寄せているのがミツバサンコーワの『バイスガードエア』です。
私がアブス1500の他に主力としている製品で、軽量さ・堅牢さ・使い勝手、これら三つの要素をバランス良く備えた優れモノ。
チェーンロックではなくワイヤーロックという括りになりますが、特殊防刃繊維によりベルト状になったワイヤーと施錠用の南京錠がセットになった、自転車にも自動二輪にも使える製品です。
ベルト長は350mm/900mm/1500mmの三種類から選べ、紐のように結べてしまう非常にしなやかな作り。
このベルトは一種類の工具では切断しづらい特徴があり、特殊防刃繊維はニッパーやボルトクリッパーから、ステンレスワイヤーはカッターやハサミ類からといったふうに、守りの得意分野を分担する仕組み。
盗る側からは面倒臭い性質を備えつつも、ベルト部分は900mmで60g弱、南京錠が100gとトータル重量が160g以下という軽量さが一番の魅力です。
南京錠をより強固な製品に交換もできますし、ベルトで縛って車体を倒れないように対象物に密着させてから施錠するといった使い方もでき、慣れれば収納性もチェーンロックに劣りません。
まとめ
個人的におすすめなチェーンロックを幾つか紹介してみましたが、やはりアブス1500とバイスガードエアが一押しですね。
誤解の無いようにお伝えしますが、あくまでもバランス重視で携帯がしやすいチェーンロックやワイヤーロックの紹介なので、高額な自転車に乗っている方は重量増でもしっかりと堅牢な鍵を選びましょう。
昔は自転車盗難と言えば高級ロードバイクが主役でしたが、最近は電動アシスト自転車も油断できません。
エアタグやAlterLock、KNOGのSCOUTなんて便利なセキュリティデバイスもあるので、是が非でも愛車を守りたい方は、思い切ってこれらを導入するのも手でしょうか。