ファットバイク最大の特徴といえるのが、幅10cm前後もある極太のタイヤです。
このタイヤは単に太いだけでなく、アスファルトなら高圧、トレイルなら低圧、雪道や砂浜なら極低圧といった感じに路面状況に応じて空気圧に調整することが可能で、ファットバイクの持つ走破性に更に磨きをかける事が出来ます。
ファットバイクに乗った方の感想で一番多いのが『フワフワと浮遊感のある乗り心地』だそうですが、この空気圧の部分が強く影響しているのは明らかで、タイヤを低圧で運用する事はファットバイクの醍醐味であり真骨頂とも言えるでしょうか。
私自身、ファットバイクに乗り始めた当初は空気圧管理の面倒臭さから、アスファルト主体の夏は高圧気味に、雪上主体の冬は低圧気味にといった感じで大雑把に調整していましたが
積雪が15cmを超えるような本格的な雪道を走る機会が増えたり、アスファルト上でファットタイヤの路面抵抗を強く感じる様になってからは、出発前はもちろん走行中でも携帯ポンプと携帯タイヤゲージを使って小まめにタイヤの空気圧を調整するようになりました。
数値はどれくらい?路面状況に見るファットタイヤの空気圧
タイヤの空気圧だけでなく、使用しているタイヤの種類と路面状況との組み合わせによっても走破性が変わってくるため一概には言えませんが、アスファルト・トレイル・雪道のそれぞれでどのくらいの空気圧が適切なのでしょうか?
私のファットバイクはフロントタイヤ、リアタイヤ共にKENDA製の『JUGGERNAUT 26×4.50』を使用しています。
フォールディングビードで重量は1400g程、60TPIで空気圧の調整範囲はPSI単位で5~30、bar単位なら0.35~2.0とファットバイク用のタイヤでは極々標準的な値になっています。
私の場合、アスファルト上を走るなら空気圧は上限ギリギリの1.5~2.0barくらいで運用していて、路面との接触面積を限界まで減らし、ファットバイク特有の悪魔のような路面抵抗を少しでも抑える狙いがありますが、やはりブロックタイヤのままではペダルリングが重いです。
街乗りメインでファットバイク特有の心地よい浮遊感を味わいつつ低速で走りたいのなら、空気圧を0.7~1.0barくらいでも構いませんが、積雪の無いアスファルト上を本気で走りたいと考えているなら素直にファットバイク用のスリックタイヤに履き替えましょう。
2.0barの高圧と軽量なスリックタイヤの組み合わせは、鈍重なイメージのあるファットバイクに劇的な変化をもたらしますし、それに加えて軽量ホイールへの交換やチューブレス化をすれば、ちょっとしたクロスバイク程度になら化けてくれます。
因みに、700Cのロードバイクに25Cタイヤで直径は680mmくらいですが、ファットバイクの26インチホイールに10cm近いタイヤウォールの高さが加わると直径が750mm以上にもなります。

さて、未舗装のトレイルや砂利道などの悪路を走行する場合ですが、タイヤの空気圧は切りの良い1.0barくらいを目安にしています。
舗装路にもトレイルにもバランスよく対応できますし、経験上これよりも高圧にして砂利道を走ると『マジかよ!?』と思うくらいフロントタイヤがバウンドして暴れ回ります。
フロントがエアサス仕様でもこの有様ですから、リジットフォークのファットバイクなら輪を掛けて暴れてしまうかも知れませんね。
0.5~0.7barくらいの低圧ならば、トレイルや砂利道でもソフトな乗り心地になり快適に走行できるのですが、何もない雪道とは違い予期せぬ障害物でリム打ちパンクする可能性があるので、ぬかるみなど余程の悪路でもない限り常用は避けています。
最後は空気圧調整が最も真価を発揮してくれる雪道です、少し前までは路面状況や雪質に関わらず0.7barくらいを下限にして常用し、リム打ちパンクやビード落ちが怖くて中々それ以上の低圧に踏み切れずにいましたが
20cm以上の積雪であったり雪質が柔らかくタイヤが空回りしてしまう状況では走行が難しくなってきたため、最近では一切躊躇せずにタイヤがビード落ちしない実用限界ギリギリの0.35barまで下げて走っています。
ここまで低圧だと、手で押してもタイヤが容易く凹むので少し不安になりますが、雪道の走破性に大きなアドバンテージがあることが実感できますし、タイヤの扁平率が高くなることで雪道に有利な100mm幅のリムを漸く活かせる様になった感じでしょうか。
私は超軽量なTPUチューブを利用しているのでチューブドのままで運用していますが、本気で雪道や砂浜を走るなら、リム打ちバンクのリスクが無く、より低圧で運用できるチューブレス化に踏み切る事をオススメします。

ファットバイク用の低圧タイヤゲージを携帯しよう
走行前、走行中に関わらず、ファットバイクの必需品と言えるのが1.0bar以下でも測定できる低圧対応のタイヤゲージです。
私は画像右のパナレーサーのデジタルタイプを使用していますが、画像左のアナログタイプも同じパナレーサーから最近リリースされました。
どちらも低圧の測定に対応していますし、備え付けのボタンを押せばバルブに付けたままエアーを抜いて細かな調整が出来ます。
本音を言えば、タイヤゲージを付けたままフロアポンプや携帯ポンプを使用できる機能が欲しかったところですが、ポンプで空気を入れてから少しずつエアーを抜いて調整する使い方が基本になります。
追記:TOPEAK/トピークの『Shuttle Gauge Digital/シャトルゲージデジタル』という製品なら、手持ちのポンプを接続して使用でき、ポンプとタイヤゲージの付け替えなしで微調整が可能です。
今のところ、デジタルタイプで特に不満は感じていませんが、表示や機能の切り替えが無くシンプルに使えるアナログタイプも魅力的ですね、仏式専用なので注意が必要ですがデジタルタイプよりもコンパクトなのも良いです。
因みにレザインからも『LEZYNE DIGITAL CHECK DRIVE』というデジタル式で大変コンパクトなタイヤゲージが発売されていて、後発なだけに60gと大変軽量でパナレーサー製よりも操作がシンプルです。
パナレーサー製は固形石鹸を一回り小さくした様なずんぐりしたサイズですが、こちらはスリムに仕上がっていて、ツールケースとの相性が良さそうですね。
また、以前にファットバイク用の携帯ポンプについて記事にしたことがあり、そのなかでインラインゲージ付きの携帯ポンプ、トピークの『ミニ デュアル DXG』を紹介しました。

このポンプがあれば別途のタイヤゲージが不要になるのですが、1.0bar以下の測定精度はイマイチなので、ポンプとタイヤゲージを一体化させたい場合は同じ記事内で紹介しているレザイン製の携帯ポンプ『MICRO FLOOR DIGITAL DRIVE XL』や低圧対応のマウンテンバイク用ケージ付きポンプを選びましょう。
このポンプには精度の高いデジタルゲージが標準装備され、タイヤゲージ・フロアポンプ・携帯ポンプの三つをこの一つで賄えてしまう中々の優れモノです。
サイズ的に少し嵩張りますが、フレームバッグと組み合わることで十分に持ち運びが出来ると思います。
まとめ
タイヤの種類によって多少の違いはあるものの、私の経験から路面状況別にタイヤの空気圧をまとめると以下のようになるでしょうか。
●アスファルト上で高速走行するなら 1.5~2.0bar
●凹凸の多い街乗りで低速走行するなら 0.7~1.0bar
●トレイルや砂利道を走行するなら 0.5~1.0bar
●面倒なことは考えずに走行するなら 1.0~1.5bar
●雪道や砂浜、ぬかるみを走行するなら 0.35~0.7bar
私基準なので結構アバウトな感じですが、アスファルトならば『そのタイヤの限界まで高圧に』、スタックする様な雪道ならば『そのタイヤの限界まで低圧に』といった基本は変わらないのではないかと思います。
余談ですが、雪道を走った後はリムの上に雪が乗っていたり、結構な量の雪がタイヤに付着したままになります。
積雪の無いアンダーパスやトンネルを通過する際には、車体を軽くホッピングさせて付着した雪を払い落としているのですが、タイヤの空気圧が0.7bar以下の状態でホッピングするとやたらと鈍く衝撃を吸収している感覚があります。
これ以上の低圧でやると、リム打ちパンクするのでは?と不安が頭を過りますし、極寒の季節に屋外でファットバイクのパンク修理は流石にしたくないので、極低圧で乗ったままのホッピングはしない方が良いのかも知れませんね。