フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ01

軽い気持ちで始めたのに、気付けばどっぷりと沼にハマっていた……今回はそんな言葉がピッタリなお話。

走行中の飛び石、駐輪や撮影中の横転、落車や転倒、チェーン落ちやメカトラ、悪意あるイタズラなどなど、自転車を趣味にしている上で愛車への傷は避けて通れない道です。

オフロード車ならそれが当たり前だと割り切って考えることもできますが、高級ロードだったり、納車されたばかりの新車だったり、自分の不注意で傷をつけてしまったりすると、傷そのものよりも精神的ダメージの方が深刻かも知れません。

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ02

少し前の記事でも触れていますが、当の私も納車早々ファットバイクでやらかします。

激重なファットバイク用ホイール、いまどきのディスクブレーキ車、久々のシマノ製リアディレイラー、これらの条件が重なったことで、ホイールの着脱時に鋭利なスプロケットの歯をカツンとフレームにぶつける痛恨のミス。

ホイール着脱でフレームに傷!ディスクブレーキの地味に嫌な欠点
何かと長所や短所が取り沙汰されるディスクブレーキですが、私が地味に嫌だなぁ~と感じているのが、ホイール着脱時にローターやスプロケがフレーム接触して傷が付いてしまう現象です。

傷の大きさはマッチ棒の頭ほどですが、塗膜の薄いカーボンフレームだけに下地を突破してカーボンの地肌が見えている状態。

因みに、自転車の塗膜は【1】防錆層【2】サフ層【3】カラー層【4】クリア層の順で構成されるのが基本で、カーボンフレームの場合は防錆層ではなくFRP用プライマーが使われているかも知れません。

一応、以前にこのブログで紹介した「QUIXX/クイックス スクラッチリムーバー」で補修を試みてみましたが、細かな線傷には効果が高いものの、画像のようなチップ傷には全くの無力でした。

この先いくらでも傷はできるだろうな……と覚悟はしていたので、当初は上から保護テープを貼るくらいの措置で済ますつもりでいましたが、不意にクイックス以外で傷補修した経験が無いことに気が付きます。

「これは逆に良い機会なのでは?」と逆張りの悪魔に従うことになりますが、これが底なし沼へと足を踏み入れる行為に他なりませんでした。

いきなりぶっちゃけますが、試行錯誤を繰り返した結果、補修開始から完了までに半年近い期間が経過しています。

撮影環境はまちまちですし、やり方も行き当たりばったり、含まれる情報も多少前後している箇所があり、説明不足な点もチラホラ。

とても一朝一夕で身に付くような技術ではなく、塗装が絡む趣味をお持ちの方や塗装を生業とされている方からすると、眉をひそめたくなる行為も含まれているかも知れません。

予め断っておきますが、今回の記事は非常に長いです。興味をお持ちの方は時間に余裕がある時にお読み下さい。

タッチアップペンの『調色・混色』とフレーム傷補修のやり方

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お手軽に傷の補修をするならば……ということで、手始めに市販されている自動車用のタッチアップペンを利用してみます。

タッチアップペン市場はソフト99ホルツの二強、どちらもラインナップに大きな違いは無くお好みで選んで構いませんが、微妙に成分が異なるので両者を混ぜるのはNG

また、今回の補修でカー用品店やホームセンターに何度も足を運びましたが、店頭に置いていあるタッチアップペンは現行車主体で品揃えは何処もほぼ共通していました。

仮にお店をはしごしても収穫は少ないので、旧車のカラーが欲しい場合は迷わずネット上でカラーナンバーを検索しましょう。

余談ですが、オート○ックスはホルツ、イエロー○ットはソフト99と派閥があるようです。

今回の補修で身をもって学びましたが、ネット上の自動車写真を参考にフレーム色に近いカラーナンバーを探す方法は正直おすすめしません。

大抵の写真画像は見栄えのためにフォトレタッチで盛られているため、実際の色とは大きく異なる場合が多く、私も何度か無駄な出費を強いられました。

駐車場や路上で肉眼で観察した自動車の方が正確なので、「この色だ!」と思ったら失礼のない範囲で撮影し、後からGoogle画像検索やGoogleレンズで車種や年式を特定しましょう。

この方法なら自動車に詳しくなくても容易にカラーナンバーに辿り着くことができます。

さて、私の求める色はオレンジに近い鮮やかなレッドいわゆる「朱色」で、特殊車両ゆえにカラーナンバーが存在しない「消防レッド」が最も近い色になるでしょうか。

とりあえず店頭在庫で最も近い色味だったニッサン「スーパーレッド 526」、ダメ元でホンダ「YR585 サンセットオレンジII」、混色用にホンダ「Y56 サンライトイエロー」を購入。

後者の二色は市場に在庫が無いためネットショップで注文し、全てホルツ製で統一しました。

念のため、上塗り用のクリアも購入しましたが、メタリック塗装やパール・マイカ塗装では必須なものの、原色だけの組合せで作られているソリッドカラーの場合は、お好みで使用するといった感じ。

まあ、後になってタッチペンタイプのクリアなんて出番が全く無いことを知るのですが……

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調色・混色することがほぼ確定なので、スペアボトルも購入。

何気に溶剤に耐えられるこの手の小瓶は模型用でしか見当たらず、入手に難儀させられました。

最寄りにホビーショップが無い場合はこちらもネット通販を頼った方が手っ取り早いですね。

因みに、ハケ付きプラボトルには撹拌用のメタルボールが付属していますが、使用すると塗料が泡立ち塗膜に気泡が含まれやすくなる印象がありました。

スペアボトルの入り口に十分な大きさがあるなら、スティック状の物で撹拌したほうが良いです。

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この時点では手元にある物で何とか作業ができたので、筆・小皿・スポイトなどは未購入。スペアボトル付属のハケや使い捨てできる綿棒で凌いでいます。

事前にある程度予想できていましたが、ホンダ「YR585 サンセットオレンジII」はやっぱり見当違いなオレンジ色で、実際はくすんだ黄昏色といった感じ。

また、ベースとなるニッサン「スーパーレッド 526」も黄色成分が足りていないため、ホンダ「Y56 サンライトイエロー」を混色して、フレーム色に近い「朱色/レッドオレンジ」を目指します。

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タミヤのスペアボトルにベースとなる「スーパーレッド 526」を適量入れて、それに少しずつ「Y56 サンライトイエロー」を加えて調色します。

イエローは混色で影響を受けやすい&影響を与えづらい特徴があるので、本来はイエローをベースにレッドを徐々に加える方が時短になるのですが、この時点の私にそんな知識は当然ありません。

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手探り調色で見苦しい限りですが、フレームに自転車用として定番の汎用保護テープ「3M スコッチ 表面保護用テープ #331」を貼り付け、その上から塗装することで定期的に色味を確認しています。

元のフレーム色が下塗りとして働いてしまうため本来は推奨できない方法ですが、スプレーやエアブラシ用の塗料と比べて、タッチアップペンの塗料は隠蔽力が高く下地が透けづらいため、こんな方法でも調色の目安にできました。

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何度も失敗を繰り返し、ようやく妥協できる色味に辿り着き、いよいよタッチアップ補修へ。

補修箇所を綿棒に含ませたイソプロピルアルコールで軽く脱脂、もちろんシリコンオフでも可。

その後、マスキングテープで塗装範囲を絞り、30分間隔で5~6回重ね塗りしました。

タッチアップペンでの補修は塗装ではなく穴埋め要素の方が強く、塗料を盛るように補修箇所に塗り重ねていきます。乾燥すると塗膜が痩せるので、重ね塗りはしっかりと。

この時点でもわかりますが、元のフレーム色よりも彩度に欠ける仕上がりですね……素人にはこれが限界でした。

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続いて、盛りに盛った塗膜を削り落としますが、乾燥後に塗膜の痩せは殆ど見られません。

ホルツ公式では塗装後一週間待ってから研磨とありましたが、72時間後に作業開始。気温や湿度の影響が大きいので、冬場なら公式に従って完全乾燥させてからの方が安全です。

画像では考え無しにマスキングテープを剥がしちゃってますが、これは運良く綺麗に剥がれただけで、本来はやってはいけない方法ですね。

タッチアップペンの厚塗りでこれをやると塗膜が割れたり、テープごと塗膜が剥がれたりします。

マスキングテープは塗料が半乾きの段階で剥がすか、サンドペーパーで塗膜を磨く際の養生テープとして活用し、塗膜が薄くなった段階で剥がしましょう。

YouTube上に公開されていた自動車の補修動画を中途半端に参考にしたせいもありますが、こういったチップ傷の場合はそもそもマスキングテープは不要かも知れません。

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ハイ、そしてここで再びテープで養生!

先ほど危険を冒してマスキングテープを剥がした意味は?と過去の自分を問い詰めたいです。

因みに、使用テープはマスキングでもセロハンでも養生でも、フレームを保護できて綺麗に剥がせれば何でもOK。

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研磨する際に、手元にある程度の道具が揃っているなら別ですが、ホームセンター等で自動車補修用のコンパウンドや耐水サンドペーパーを事前に購入することをおすすめします。

私もなんだかんだで上記の全てを購入する羽目になりました。

左からソフト99の液体コンパウンドセット、同じくソフト99のペースト状コンパウンドセット、最後がホルツの耐水サンドペーパーセットで、自転車に使うなら小サイズのセット版で十分です。

また、左の液体コンパウンドには相当するサンドペーパーの番手が3000・7500・9800と記載されていますが、中央のチューブ入りコンパウンドには一切記載が見られず、少しわかりづらい仕様。

あくまでも推測ですが、含有される粒子サイズを頼りに換算すると、【1】細目が1500程度【2】中細が3000程度【3】極細が7500程度になるでしょうか?参考までに。

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1200番 ⇒ 2000番の順にサンドペーパーで水研ぎし、その後チューブ入りのコンパウンドを【2】中細 ⇒【3】極細の順に磨いて完成、9800番相当の液体コンパウンドはお好みでどうぞ。

ソリッドカラーなのでクリア塗装はしていませんが、そこそこツライチで一体感のある仕上がりになりました。

目立たないように傷を埋めるだけなら、これで傷補修完了でも構いませんが、正直なところ調色した塗料の再現度には課題が残ります。

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剥き出しのカーボンは埋まってくれたものの、光の加減次第ではハッキリと違いが認識できますね。

色の階調が潰れてしまう画像だとそれほど粗は目立ちませんが、補修箇所の塗膜を肉眼で見ると再現率70%が精々でしょうか。

実は調色で試行錯誤を繰り返している最中に、美術を生業にしている親友の言葉が頭を過っていました……

色は混ぜるほど濁る

当たり前ですが、これが真理です。

元のフレーム色がビビットなレッドオレンジだったせいもありますが、既に調色済みのタッチアップペンをいくら混色しても、目指す鮮やかさは再現できないのです。

さて、諦めの悪い私は次のステップに進んでしまう訳ですが、興味をお持ちの方はコーヒーでも飲みつつ、引き続きお付き合い下さい。

フレームの傷補修に『純色』で調色したプラモデル用塗料を試す

どうにかして調色・混色による色の濁りを軽減できないものかと調べてみると、市販の塗料には元となる「純色」と呼ばれる塗料が存在することを知ります。

どうせ業務用だろうから、安価では手にならないだろうな……と思っていると、プラモデル用が普通に市販されていて低価格で入手できる模様。

プラモデル用の塗料なんて補修に使えるの?と不安を覚えましたが、使い方次第では自動車用の補修塗料と大差の無い代物らしく、実際の補修例も少なくありませんでした。

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比較的品揃えの良いホビーショップでしか取扱いがありませんが、ネット通販を駆使してプラモデル用の「純色」を二種類購入。

左がMr.カラー「色ノ源/イロノモト」

右がガイアノーツ「純色シリーズ」

わざわざ二種類購入しているので両者に違いありそうに思えますが、実は発売元は違えど塗料の製造メーカーは共通で相互に混色が可能とのこと。

厳密には若干の違いがあるそうですが、同様の理由から純色以外にもMr.カラーとガイアノーツの基本色も混ぜて使うことができます。

調色・混色の主役となる色はプリンター用インクでお馴染みのシアン・マゼンタ・イエローと、それにブラックとホワイトを加えた五色。

印刷業界で使われている「CMYK」のCがシアン、Mがマゼンタ、Yがイエロー、Kがキープレート(黒)、残りは印刷用紙の白って奴で、減法混色という手法ですね。

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これさえあれば、調色も自由自在だ!と喜びたいところですが、厄介な制限もあります。

色ノ源の説明画像によると確かに大抵の色は調色可能ですが、【1】三色全て混ぜると純色でも色が濁る【2】純色のみの調色では隠蔽力が皆無という性質があり、一筋縄では行きません。

特に下地が透けない隠蔽力を持たせるには、少量でもブラックかホワイトを混ぜる、隠蔽力を備えた基本色に混ぜて使用する、しっかりと下塗りする、こういった対策が必要になる模様。

画像左の内側にあるサークルが下塗りする際の色で、調色してできた色にホワイトを混ぜて作成します。

また、画像右がある程度の隠蔽力を備えた基本色に、純色を加えて調色する際の目安ですね。

プラモデルのように一から塗装する場合では問題になりませんが、元のフレームに合わせて調色する必要のある傷補修では、調整が複雑になる下塗りの概念が足枷になってしまいそうな予感。

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この時点で純色を使い一から作成するのを避け、ある程度の隠蔽力を備えた基本色を調色する方向に舵を切ります。

隠蔽力の高いMr.カラーGXのクールホワイトとウイノーブラックの他に、ベースに向いていそうな基本色を幾つか購入してみました。

プラモデルは子どもから大人まで楽しめる趣味なだけに、塗料が100円そこそこで販売されているのが嬉しいですね、思わずあれもこれもと沢山買ってしまいます。

因みに、予め純色の二色が含まれている基本色に、三色目を加えて調色すると濁ってしまうので注意しましょう。

例えば、レッド系の基本色は純色マゼンタと純色イエローを混ぜ合わせて作られていますが、それに純色シアンを加えるのはNGという訳ですね、逆に二色までなら濁ることはありません。

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本格的に調色することになるので、調色スティックと小皿、追加のスペアボトルとおそらく不要な撹拌メタルボール、塗装に必須なうすめ液とツールクリーナー、スポイトと小さめの平筆を購入。

調色をしっかりと数値化したいなら、0.1g単位で計測できるキッチンスケールも揃えましょう。

その他にも、後々必要になりそうな物や気になっていた物も購入していますが、消耗品として塗料を拭き取る際のキムワイプやキッチンペーパーも欠かせません。

また、個人的に大変重宝したのが綿棒で、気が付けば標準綿棒、太綿棒、先細綿棒、赤ちゃん綿棒、この四種類を100円ショップで全て揃えていました。

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さて、傷補修をリトライするにあたって、以前の塗膜を除去する必要があります。

タッチアップペンによる塗膜は画像左のホルツ純正うすめ液で簡単に落とすことができ、時間が経過し完全乾燥していても問題ありません。

画像中央がMr.カラーのうすめ液、画像右がMr.カラーのツールクリーナー、私見ですが溶剤としての強さは「Mr.カラーのうすめ液<Mr.カラーのツールクリーナー=ホルツ純正うすめ液」になるでしょうか。

正直、Mr.カラーのうすめ液でも十分に落とせるので、元の塗膜にこれ以上ダメージを与えたくない場合はこちらを使った方が無難です。

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マスキングテープで軽く養生してから、ホルツ純正うすめ液で塗膜を落としてみましたが、最初と比べて僅かに傷の範囲が広くなっているのがわかりますね。

フレーム純正塗装のカラー層には、おそらくウレタン塗料が使われていますが、自動車ほど塗膜に厚みのない自転車には、少しばかり溶剤が強いのかも知れません。

テープで養生しなくても、あからさまに元の塗膜が剥がれてしまうことはありませんが、以前の補修箇所をリセットする際は、太綿棒にMr.カラーのうすめ液を含ませて、優しく撫でるように塗膜を落とすのが良さそうです。

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方向性として、イエロー系のベース色に純色マゼンタを加えて調色していく方法と、レッド系のベース色に純色イエローを加えて調色していく方法の二種類がありますが、今回は後者を選択。

純色はシアン・マゼンタ・イエローの順で発色が弱くなり、混色は発色の弱い色に少しずつ発色の強い色を加えるのが基本、これは基本色を調色する場合にも当てはまります。

本来なら変化しやすいイエローに純色マゼンタを少しずつ加えていくやり方が正しいのですが、Mr.カラーの基本色「シャインレッド」が最初に試したタッチアップペン調色で作った色を少しだけ鮮やかにした色味だったため、こちらをベースに純色イエローで調色することに決めました。

色は引き算ができないので、可能な限り邪魔になる要素が含まれていないベース色を選びましょう。

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そして、調色のサポートとなるのがこちら、iPhone用アプリ「混色ガイド」です。

本来はプラモデル用らしいのですが、カメラ越しのリアルタイムでも撮影済みの画像でも使え、対象となる色の構成割合を、CMYKにホワイトを加えた五色で表示してくれるお役立ちアプリ。

撮影環境や光源に左右されて分析結果がまちまちになる弱点もありますが、元々のフレーム色にはシアン成分が含まれていなことや、マゼンタとイエローの割合が大まかに把握できたりと、少なからず調色の助けになってくれます。

また、androidにも類似のアプリがあるらしく、エミュレーターを使えばPCでも使えるとのこと。

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最初はシャインレッド6、純色イエロー1、ホワイト1の割合で混色しましたが、ホワイトを混ぜると明るさは増すものの彩度が下がったため、ホワイトは混ぜない方針に。

試行錯誤を繰り返し、シャインレッド5、純色イエロー1の割合で決まりか?と思いきや、黄色味が全然足りていません。

最終的にシャインレッド3、純色イエロー10の割合となり、凝視しないとわからないくらいの仕上がりに到達、再現率は95%くらいでしょうか。

例によって保護テープを利用して色味を確認していますが、プラモデル用塗料はタッチアップペンよりも隠蔽力が低く、クリアテープの下にある色が影響しやすくなるので、推奨できるやり方ではありません。

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調色に成功したので塗装に移りますが、タッチアップペンよりも隠蔽力の低いプラモデル用塗料ということで、今回は下地にプラサフを試してみます。

フレームの傷跡からもプラサフらしきライトグレーの下地が覗いていましたが、正直なことろプラサフは筆塗りには不向きなので、実験的な意味合いが強いでしょうか。

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ24

追加で購入したシリコンオフで脱脂した後、プラサフをチョイ塗りしてみましたが、流石に食いつきが良く重ね塗りは不要でした。

本来は傷部分をサンドペーパーで完全に均してから使うべき物で塗布後もペーパー掛けが必要。前述した通り筆塗りではあまり意味がありませんが、今回は上塗りの食いつきが僅かでも良くなることに期待。

塗装に移る前のちょっとした補足になりますが、タッチアップペンを含む筆塗りの場合は、塗料の濃度や気泡の有無を確認したり、筆先の調子を整えたりするための試し塗りが必要になります。

特にこだわりはありませんが、私は100円ショップで購入できる「トレカ用クリアスリーブケース100枚入り」を使い捨てのパレット代わりに使いました、紙コップなんかもおすすめですね。

さて、プラサフを30分以上乾燥させた後、調色した「レッドオレンジ」を塗ってみたところ……

ああ、こりゃダメだ

調色で純色イエローの割合が予想以上に高くなってしまったことが原因で、塗料に隠蔽力が殆ど残っていません。

何度重ね塗りしても、プラサフグレーの下地が透けてしまい、調色した際の発色が再現されませんでした。

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ25

そんなに透けるか?と下塗りを変えて実験してみたところ、色ノ源の説明画像で指定されていた下塗り色を使った時とでは、発色に大きな違いがありました。

冷静に思い返すと、調色の過程でベースとなったシャインレッドは全体の25%未満になっていますから、透けてくれるな!という方が無理というもの。

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下地色の調色も必要になるので乗り気ではありませんでしたが、結局のところ調色したレッドオレンジに隠蔽力の高いMr.カラーGX「クールホワイト」混ぜて下塗りする流れに。

調色レッドオレンジ1、クールホワイト5、の割合で調色し、二回の重ね塗り。下地には一応プラサフも塗ってあります。

因みに、このあたりの作業からマスキングテープを使っておらず、塗装がはみ出した部分は先細綿棒や赤ちゃん綿棒にうすめ液を含ませて、削り落とすように拭き取る方法に変更。

また、プラモデル用塗料の厚塗りだと、塗料が重力で液垂れてしまう可能性があるためフレームを水平に寝かせて作業しています。

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そして60分間隔でレッドオレンジを五回重ね塗りした結果がこちら。

今度は下塗りする塗料も調色する羽目になるのでは……と心配していたのですが、色ノ源の説明画像が指示した通りの色味で、ほぼ理想通りの発色になってくれました。

フレーム色の再現度に限れば間違いなく成功ですね、めでたしめでたし!

さて、取り合えず一段落しましたが、実はコレ成功しているように見えて失敗しているんです。

確かに調色の結果には満足できましたが、塗装方法に問題が発生しました。

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角度を変えるとわかりやすいですが、筆塗りではこれ以上塗膜を薄くすることが難しく、塗膜自体も荒れてしまいがち。

本来、筆塗りは下塗りを含む重ね塗りに不向きな手法で、無造作に重ね塗りすると上塗り塗料に含まれる溶剤と筆圧の影響で下塗りが溶け崩れてしまいます。

俗に「塗装が泣く」と呼ばれる現象ですが、たとえ下塗りが完全乾燥していても起こり、筆圧を加えるような通常の塗り方では避けるのが難しいとのこと。

解決策は下塗りと上塗とで塗料の種類を変えたり、筆圧を加えずに塗料をトントンと乗せるように塗装することですが、画像の通りその塗り方は厚塗りや塗膜の荒れを招きやすいです。

また、傷部分をピンポイントで厚塗りすると、虫刺され跡のようにそこだけぷっくりと盛り上がってしまうため、乾燥後の磨きを考慮して周囲に向けて塗膜をなだらかに拡張する必要がありました。

2000番から順に耐水サンドペーパーで塗膜の表面を丁寧に水研ぎすると、見られる程度には整ってくれますが、初回のタッチアップペン補修のようにツライチを目指してガンガン削ると下塗りのベージュが透けてしまう事態も。

残念ながら作業に夢中になり過ぎて撮影し損ねていますが、この塗り方でも下塗りが透けないギリギリまで全体をなだらかに研磨すれば、十分に許容できる仕上がりにできます。

ですが「塗装が泣く」現象があるため、手持ちの上塗りクリア用タッチアップペンで仕上げると、せっかく整えた塗膜が台無しになりかねません。

当然のことながら挑む気にはなれず、上塗りクリア用タッチアップペンは出番の無いままお蔵入りすることに。

今後はどんな補修方法を試すとしても、仕上げのクリア塗装だけは筆圧が無関係なスプレー塗装かエラブラシ塗装を選ぶのが鉄則になりそうです。

オール筆塗り補修の可能性があるとすれば、ここから続けて下地を侵さない水性塗料でクリア塗装する方法くらいでしょうか?

実はMr.カラーの「色ノ源」には水性タイプも存在していて、下塗りまでを手持ちのラッカー塗料、上塗りを水性タイプの「色ノ源」を使う方法なら、下塗りの塗膜が泣くことはなく塗膜も今より若干薄くできます。

仕上げのクリア塗装には水性スプレーを使えば良いですし、水性だからといって乾燥後に水分に弱い訳ではありません。

因みに、自動車や自転車の仕上げ塗装に使われる2液性ウレタンクリア以外は、どの種類のクリア塗装も塗膜が弱くデリケートなので、洗車に耐えられるお化粧程度に捉えておきましょう。

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さて、タッチアップペンの延長線上にある筆塗りでの傷補修に限界を感じた私は、この時点で興味が筆塗りからエアブラシ塗装に移っていました。

よせばいいのに入門者向けのタミヤ製エアブラシに手を出し、次のステップへと進むために情報収集をしていたのですが、幸か不幸か私が求めていた理想のタッチアップペンに出会ってしまいます。

まさかの原点回帰ですが、ここからが本当のスタートラインです。

記事が長すぎてそろそろ小腹がすいてくる頃かも知れませんが、おやつ片手に引き続きお付き合い下さい。

自転車フレームの傷補修『マスキング・上塗りクリア・研磨』のやり方

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ30

筆塗りの仕上がりに限界を感じたものの、「純色」を使った調色には確かな手応え……

エアブラシまで購入しておいて、いまさらタッチアップペンに出戻りしたのには、少しばかり理由があります。

一つは季節が既に秋口に差し掛かり、塗装に不向きな環境になりつつあること。

もう一つは、本格的なエアブラシ塗装するための場所が安定して確保できそうにないこと。

この二つが、方針転換をした理由です。

一つ目は住んでいる地域にもよりますが、二つ目は「言われてみれば……」という方も多いはず。特にマンション住まいなら、ベランダか屋外くらいしか選択肢がありませんし、エアコンプレッサーの電源確保や騒音問題も絡んできます。

話を本筋に戻しますが、タイミング悪く見付けてしまった塗料は、以前にこのブログでも紹介した「兵庫ペイント」の自転車用タッチアップペンです。

期待のカラー番号付き!自転車専用『タッチアップペン』を試す
フレームの傷&塗装補修に兵庫ペイント自転車専用タッチアップペンを購入。対応車種はトレック・ビアンキ・ブリヂストン・キャノンデール・ジャイアントなど。今のところトレック用が大半ですが、自動車と同じくカラーナンバー付きでオススメです。

このタッチアップペンはTREK製のロードバイクやMTBに使用されている「RADIO ACTIVE RED/レディオアクティブレッド」を再現した塗料で、素のままでも私が探していたレッドオレンジにかなり近い色味。

存在自体は随分前から知っていたのですが、自動車用タッチアップペンのミスマッチで散々な目に遭った経験から「コイツもどうせ実物は全然違う色なんだろ?」と疑心暗鬼になり、何となく手を出せずにいた塗料です。

我ながら、えらく遠回りしたなぁ……と思いますが、通常のタッチアップペンよりも高価なので、たまたまセール価格でなければ、購入していなかったかも知れません。

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ31

内容が重複するので工程を端折らせてもらいましたが、これが補修後の状態。

フレーム色の再現率は調色したレッドオレンジに及びませんが、85%程度はあるでしょうか。タッチアップペンだけに隠蔽力も十分で、下塗りやプラサフ無しの五回重ね塗りで穴埋めレベルの塗装ができます。

補修のやり方は初回の内容とほぼ同じですが、一つだけ違いがありました。

自動車用タッチアップペンの場合、ソリッドカラーに限り上塗りクリアを省けましたが、兵庫ペイントの自転車用タッチアップペンは仕上げの上塗りクリアが必須です。

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ32

さて、ここから先は初めて足を踏み入れる、仕上げ塗装の工程です。

タッチアップペンで補修後に耐水サンドペーパーとコンパウンドで塗装面を整えていますが、完全にツライチにはせず、あえて塗膜の厚みに遊びを残しておきました。

理由は塗料の食いつきを良くするための「足付け」が必要になるからで、これをやらないと化学反応により硬い塗膜を形成している2液性ウレタンクリア塗装には、上手く塗料が馴染んでくれません。

初耳の方は、足付けとは何ぞや?と思うでしょうが、パンク修理の際にチューブ表面を紙やすりで荒すのと似たような行為といえば、理解が早いかも知れません。

耐水サンドペーパーまたはウォッシュコンパウンドと呼ばれる足付け剤で、ウレタンクリア塗装の光沢がくすむ程度に表面を荒らしますが、この足付け処理によって上塗り塗膜の剥がれや研磨中の剥離を防ぐ効果が期待できます。

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ36

平面の少ない自転車には足付け剤よりも、耐水サンドペーパーによる処理の方が向いていて、ペースト状の足付け剤よりも、荒し加減の確認もしやすいですね。

塗装対象やどういった段階で使用するかで選ぶ番手も変化しますが、自転車のウレタンクリア層への足付けなら3000番くらいが妥当でしょうか。

余談ですが、3000番の耐水サンドペーパーを求めてホームセンターをはしごしましたが、どこも2000番止まりでした。

3000番は模型の範疇らしいので、最寄りのホビーショップかネット通販を頼るのが確実です。

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ34

先ほどの画像でもチラ見えしていましたが、上塗りクリア塗装用にホルツの「カーペイントスプレー 上塗りクリア」と「ボカシ剤 スプレー」、それに加えて大塚刷毛の「ぼかしテープ」も揃えました。

ボカシ剤スプレーは旧塗膜との境目やスプレーダストを滑らかにするために使用しますが、成分はシンナーと大差の無い代物ですし、あえて購入する必要は無かったかも知れません。

本当は既に購入済みの兵庫ペイント「2液性ウレタンクリア」を使う予定でしたが、硬化剤を使用する2液性ウレタン塗料は、完全硬化すると今までのような溶剤よるやり直しが利きません。

下塗りを再塗装したり、上塗りクリアをやり直したりするには、サンドペーパーで硬化したクリア層を削り落とすしか手段がなく、エアブラシ塗装にまだ未練のあった私は2液性ウレタンクリアでの仕上げに踏み切れませんでした。

また、スプレーやエアブラシ塗装でも、上塗りや下塗りなどの重ね塗りには塗料の相性が存在しています。

基本的に弱い溶剤を使用した塗料の上に、強い溶剤を使用した塗料を重ね塗りすることは厳禁で、最悪のケースとして塗膜がひび割れて剥がれてしまうことも珍しくありません。

これに関しては後述するので、今は深く触れないでおきます。

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ35

上塗りクリアはスプレー塗装になるので、他に飛散しないように補修箇所を中心にフレームをしっかりとマスキングテープと新聞紙の組合せで養生します。

先ほどは説明しませんでしたが、今回は興味本位で市販品の「ぼかしテープ」を購入してみました。

ぼかしテープは塗装面と養生面がハッキリと仕切られてしまうマスキングテープとは違い、テープ片側の接着面を浮かすことで塗膜の境目を短くグラデーションさせる効果があり、塗膜による段差を滑らかできます。

手持ちのマスキングテープの1/3を折り返して粘着面同士を貼り付ける、リバーステープと呼ばれる手法もありますが、芯材入りで評価の高い大塚刷毛のテープを試してみたくなりました。

リバーステープでも市販のぼかしテープでも、テンションを掛けずに緩めにテープを貼り付けるのがポイントです。

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ37

そして、フレーム表面を足付けして養生した状態がこちら。下方にフレームが見切れていますが、塗装時は新聞紙を被せて覆う予定。

画像ではわかりづらいですが、フレームが露出している範囲がペーパー掛けにより、表面がくすんでいますね。忘れがちですが、足付け後はシリコンオフを染み込ませたウエスで、優しく脱脂してからマスキングします。

因みに、3000番程度のくすみならコンパウンドで磨けは普通に消えるので、クリア塗装で無理に全てを覆う必要はありません。

この状態では補修箇所に対してクリア塗装面が広すぎるかな?と思いましたが、吹き付け範囲を狭く絞れないスプレー缶では、これ以上範囲を絞ると逆に仕上がりが悪くなってしまいそうな気がしました。

スプレー缶でどうしても範囲を絞りたいなら、厚紙に適当なサイズの穴を開けてペイントヘルパー的な物を自作しましょう。少し浮かせて厚紙越しにスプレー塗装すれは、適度に境目がぼやけますし範囲も小さく絞れます。

さて、フレームの養生はコピー用紙・マスキングテープ・ぼかしテープの三つで行いましたが、室内でスプレー塗装することに決めたので、塗装ブースを窓際に定め新聞紙で室内の壁面も養生しました。

塗装時は窓全開にするのはいうまでもありませんが、室内から窓方向へ扇風機サーキュレーターで排気の流れを作るのも忘れずに。

塗装は必ずマスク着用で行い、スプレー塗料の試し吹き用として口の開いたタンボール箱にクシャクシャにした新聞紙を詰め込んだ、簡易塗装ブース的な物も準備しておきましょう。

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ38

上塗りクリアは、スプレー缶を良く振って、塗装一回ごとに簡易塗装ブースに試し吹きしてから行います。

【1】バラ吹きを15分間隔で二回、【2】本塗装を30分間隔で四回、【3】ボカシ剤スプレーを一回の順で実施。その後、塗膜が乾燥する前にマスキングテープを剥がしました。※塗装時の気温は30度前後

四回目の本塗装が乾ききる前にボカシ剤スプレーを使ってみましたが、目に見える効果はなく逆に塗膜が荒れてゆず肌気味に……

ボカシ剤スプレーは粘度が低く液垂れしやすいため、スプレー缶を早く動かし過ぎたのが原因かも知れません、コンパウンドで磨く前に3000番で塗膜を整える必要がありそうです。

最初のバラ吹きは、砂吹き・捨て吹きとも呼ばれますが、予め薄い塗膜を形成しておくことで、本塗装時の溶剤が下地を侵すのを軽減する効果があります。

技術次第では下塗りよりも強い溶剤を使った塗料の上塗りが可能になる場合もあり、スプレー缶を塗装面から最低でも20cm以上離して吹き付け、ミスト状の塗料を乗せるようなイメージで塗り重ねます。

バラ吹きの次は、20cm前後の距離から光沢感を意識して本塗装を行います。

この際に手を横方向にスライドさせながら、シュッ、シュッとリズミカルに吹き付けますが、距離が近すぎたり移動速度が遅すぎたりすると、塗料の液垂れを招きます。

逆に距離が遠すぎたり移動速度が速すぎたりすると、塗膜がぶつぶつになってしまう「ゆず肌」になるので、本塗装前に簡易塗装ブースで加減を軽く練習しておきましょう。

また、薄く濡れたような仕上がりなるクリア塗装にとって塗膜に付着するホコリは大敵です。

塗装中に気付いたら、出来るだけ番手の大きいサンドペーパーで、チョンチョンと移し取るように優しく排除します。仮に半乾きの塗膜に小傷ができたとしても、重ね塗りするので影響は残りません。

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ33

ぼかし剤スプレーの影響でゆず肌になってしまったのは残念ですが、塗膜の完全乾燥を待って、コンパウンドによる磨き作業に移ります。

好天が続いたので、私は72時間しか待ちませんでしたが、ホルツ公式が推奨するように塗装後一週間は時間を置きましょう。

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ39

さて、研磨後の状態がこちら。

3000番の耐水サンドペーパーで水研ぎした後、3000番の液体コンパウンド、7500番の液体コンパウンド、9800番の液体コンパウンドの順で仕上げ。

3000番が重複していますが、ゆず肌は3000番の液体コンパウンドでは上手く消えてくれませんでした。

また、液体コンパウントは研磨剤が塗膜の状態を見えにくくしてしまうため、匙加減が必要な個所は耐水サンドペーパーの方が磨き具合を確認しやすいです。

画像を凝視すると、上塗りしたクリア塗膜が僅かに盛り上がっているのがわかりますね。左右はぼかしテープの効果が感じられる仕上がりですが、白矢印の上部は研磨前から段差が目立ち、研磨後も足付け不足から軽度の剥離が見られます。

あれ?ひょっとして、ここがお蔵入りした「タッチアップペン上塗りクリア」唯一の見せ場なのでは……とも思いましたが、この仕上がりでも満足できているので、危険を冒すのはやめにしました。

余談ですが、フレームの角になっている部分は純正塗装でも塗膜が薄いそうなので、研磨時はコーナー部分をあまり攻めないように心掛けましょう。

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ40

後で知ったのですが、プロによるエラブラシ補修でも上塗りクリアの一体感は腕の見せどころらしく、こういったフレームの場合、点線範囲を塗装して段差をできるだけ目立たなくするのもテクニックの一つです。

溶接跡のあるクロモリフレームやアルミフレームには、おあつらえ向きな方法かも知れませんね。

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ31

最後は手持ちの「プラスチック磨きクロス」で仕上げて、およそ半年間にも及んだ傷補修作業はこれにて終了。何とかファットバイクのオンシーズンに間に合いました。

磨きクロスは表面の状態を確認しながら磨けるので、微調整用としてお手軽に使えます。

ついでに注意点もお伝えしておきますが、仕上げの上塗りクリア塗装に2液性ウレタンクリアを使わなかったため、色々と制限もあります。

2液性ウレタンと比べて塗膜が弱いことは既に説明済みですが、それに加えて石油系と溶剤系への耐性も低く、メンテナンス用のケミカル類には用心が必要

自動車用のタッチアップペンが給油口付近の補修に使えないことからもわかるように、どんなに厚塗りしてもガソリンで塗膜が一撃死します。

気休め程度かも知れませんが、いつでも剥がせる「3M スコッチ 表面保護用テープ #331」を上から貼り付けて、強度や耐性を補ってあげるのも手でしょうか。

IPA50%   KURE 5-56  パーツクリーナーホルツ用うすめ液
ホルツ○落ちず○落ちず×落ちる⚠激落ち
Mr.カラー△微落ち○落ちず×落ちる⚠激落ち
兵庫ペイント△微落ち○落ちず×落ちる×落ちる

一応、上の表にあるような自転車のメンテナンスでお世話になりそうなケミカル類でテストしてみましたが、使う可能性の高いイソプロピルアルコール/IPAとパーツクリーナーは要注意ですね。

塗料の乾燥時間で結果が変わる可能性もあるので、こちらの表は参考程度に受けっとって下さい。

灯油みたいなものだと思っていたKURE 5-56に対して、塗膜が無反応だったのが意外でしたけど、そもそも自転車のメンテナンスにはあまり使いませんしね……

さて、随分と長丁場の記事となり、そろそろお開きにしたいところですが、もうちょっとだけ続くんじゃ。

注意したい傷補修の『上塗りと下塗り』塗料の相性について

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ42

既に記事中で少しだけ触れていますが、塗料には相性が存在します。

私が2液性ウレタンクリアに手を出さなかった理由は、完全硬化してしまうとやり直しが利かないということ以外に、「塗料の相性に対する理解が不十分」といった事情もありました。

大前提として、筆塗りのように下塗り塗膜を物理的に泣かすことのないスプレー塗装やエアブラシ塗装でも、下塗りよりも強い溶剤を使った上塗りは厳禁です。

溶剤の強さは、水性塗料<アクリル塗料<ウレタン塗料<ラッカー塗料の順になりますが、製造元によっては微妙な違いもあるので、取り合えず「ラッカー最強」「ラッカー上塗り注意」という認識だけは忘れずに。

ラッカー下塗りウレタン下塗りアクリル下塗り水性下塗り  
ラッカー上塗り××
ウレタン上塗り×
アクリル上塗り
水性上塗り

各塗料の大まかな上塗り・下塗りの相関関係は上表のようになりますが、△は溶剤や塗り方次第で×になってしまう場合も。

この法則を守らないと、下塗りの塗膜が溶けてしまったり、いわゆる「縮み/チヂミ」と呼ばれるリフティング現象が起こり、上塗りごと塗膜がひび割れたり、膨れ上がって剥離したりします。

厄介なことにラッカー塗料とアクリル塗料は混同されがちで、パッケージの成分表に「ニトロセルロース」の記載がある場合、「アクリル合成樹脂」と併記されていても、その塗料は溶剤の強いラッカー塗料であって、アクリル塗料ではありません。

また、今回の補修で購入したホルツのタッチアップペンとソフト99のタッチアップペンは共にニトロセルロースの成分表示がありましたが、両者のスプレータイプでは事情が異なります。

「ホルツカーペイント」はニトロセルロースを含むラッカー塗料なのに対して、「ソフト99ボデーペン」はアクリル合成樹脂を含む溶剤系アクリル塗料となり、タッチアップペンとは差別化が見られました。

プラモデル用のMr.カラーもガイアノーツもニトロセルロースを含まない溶剤系アクリル塗料ですから、「ソフト99ボデーペン」はプラモデル用塗料に近い特徴を持っていることになります。

さて、問題はここからです。

塗料の重ね塗りに関する情報収集していて気付いたのです、とにかく情報の振り幅が大きく、塗装する方の経験や技術レベルによって意見がまちまちだったり、傷補修と全塗装、業務用とDIYの情報がごっちゃになっていたりと、調べれば調べるほど混乱する羽目に。

中でも特に頭を悩ませたのが、「フレームの純正塗装に上塗りNGの塗料はどれなのか?」という点です。

恐らく今回の補修の場合、仕上げの上塗りクリア塗装が一番リスクが高かったかも知れません。

純正塗装のクリア層は間違いなく2液性ウレタンクリア塗装でしょうから、ホルツのラッカースプレーを上塗りするのは本来やってはいけない方法です。

実は、石油系にも溶剤系にも耐性を持つ2液性ウレタン塗料ですが、塗膜は溶けないものの溶剤が塗膜を通過してしまう性質があります。

端的にいうと、強溶剤のラッカー塗料を上塗りしてしまうと、その溶剤がクリア層を通過してしまい、直下にあるカラー層や場合によってはサフ層までを侵してしまうのです。

さらに面倒臭いことに、これはラッカー塗料に限らず、溶剤の強さ次第では完全硬化した2液ウレタン塗料の上塗りとして2液性ウレタン塗料を使った際にも起こる可能性があります。

おまけにウレタン塗装でラッカー塗装をサンドイッチするのは、最悪の行為といった情報もチラホラ。

でもね……これらの禁止行為の数々は、新車の純正塗装には当てはまらなかったり、乾燥時間が年単位で経過していると大丈夫だったり、DIY用の塗料に限った話だったり、塗装技術である程度誤魔化せたりと、虚々実々を交えて例外となるケースも少なくないのですよ。

ね、混乱するでしょ?

今回の補修に限っていえば、傷で露出していたカラー層がホルツのうすめ液により塗膜が膨張したり、過剰に溶け出したりしないことを、事前に確認できています。

ここからは私の付け焼刃な知識なので話半分に受け取って欲しいですが、ホルツ純正うすめ液はホルツ製タッチアップペンとほぼ同じか、少しだけ強い溶剤が使われています。

なので、当然ホルツ製タッチペンでの傷補修は○

アクリル塗料のMr.カラーとガイアノーツも○

兵庫ペイントのタッチアップペンは弱~中溶剤の1液性ウレタン塗料なので○

肝心の上塗りクリアですが、ホルツのカースプレーは△にしたいところ。

しっかりとバラ吹きすれば○にできますし実際に成功していますが、やはりラッカー塗料というのが引っかかります。

純正塗装の部分は耐えられても、補修した部分のカラー層が耐えられない組合せになる可能性が捨てきれず、正直おすすめできません。

今回の場合は上塗りクリアはホルツのカースプレーよりも、ソフト99のカーボデーを使った方が間違いなく安全だったと思います。

低リスクで上塗りクリア塗装するなら、下塗りとの相性を加味した上で、水性塗料、アクリル塗料、ウレタン塗料のどれかから選ぶのが無難ですね。

因みに、DIY用の2液性ウレタンクリアではソフト99の「ボデーペン ウレタンクリアー」が人気ですが、塗料の相性が気になる場合は、下地に影響しづらいアサヒペン「弱溶剤型2液 ウレタンスプレー」がおすすめです。

まとまりの無い内容で心苦しいですが、【1】上塗りに下塗りよりも強い塗料は使わない【2】同メーカー・同シリーズの製品で統一する【3】バラ吹きは入念に、この三つは頭の隅に留めておきましょう。

エアブラシ塗装による傷補修と業務用塗料の調色について

フレーム色を再現せよ!自転車のキズ補修で『調色・混色』する方法イメージ43

随分と長くなってしまった記事の最後に、エラブラシによるフレームの傷補修と業務用塗料の調色について触れておきます。

これは完全に私の思い込みだったのですが、調色・混色に使用できる「純色」は一般的なお店や大手ECサイトで取扱いが無いだけで、普通に塗料の専門店で販売されていました。

今回の補修で利用した兵庫ペイントのタッチアップペンには、塗膜の劣化や割れに強い「プロタッチ」と呼ばれる自動車補修用塗料が使われています。

この塗料は硬化剤を必要としない1液性ウレタン塗料で、ラッカー塗料のタッチアップペンよりもグレードの高い仕上がりを期待できます。

「プロタッチ」「純色」などのワードで検索すれば、小容量で販売しているショップが見つかりますし、タッチアップペン2本分に相当する40gが、500~800円と比較的安価で購入できます。

また、この塗料では隠蔽力のことを「透明性」という指標で表していますが、調色する際の注意点はプラモデル用の純色と大きな違いはありません。

一からオリジナルのタッチアップペンを作成しても構いませんし、兵庫ペイントのタッチアップペンをベースにして自分好みの色味に調色する使い方もできます。

今回の調色はソリッドカラーをメインにしたものでしたが、メタリック塗装やパール塗装に対応するベース塗料も販売されているので、メタリックやパール塗装の方も調色にチャレンジできます。

続いて、エアブラシ塗装による傷補修についてですが、こちらはタッチアップペンでの補修とは、根本的にアプローチ方法が異なっています。

エアブラシ塗装は塗膜が薄く仕上がるため、タッチアップペンのような穴埋めライクな補修にはならず、どんなに些細な傷であっても補修箇所をサンドペーパーで平坦に均す必要があります。

この作業はフレームの無傷な部分にもダメージを与えるため、一度進んだら後戻りができません。

傷が深い場合はパテ埋めも必要で、エアブラシでの塗装以外に下地作りの技術も要求されます。

エアブラシによる補修を下調べする過程で、様々な場所から情報収集しましたが、今回の記事で何度も名前の挙がった兵庫ペイント様のYouTubeチャンネルが最も参考になりました。

自転車の傷補修や調色に関する動画が多数アップされいて、自転車乗りなら視聴の価値アリです。

実際に自転車の傷補修用として使われた実績があるので、下地のプラサフから上塗りのクリアまで、全て兵庫ペイント製で揃える方が理に適っています。

塗料の相性問題を過剰に心配する必要もありませんし、タッチアップペンを簡易エアブラシ化できる「スイッチスプレー」も使ってみたくなりました。

また、エアブラシによる傷補修となると、塗装する場所や電源の確保にも頭を悩ませます。

エアブラシにはエアコンプレッサー以外にも、場所を選ばないガス缶という手段がありますが、連続使用したり気温が低かったりすると、安定した空気圧が発揮されなくなる欠点も。

現在は充電式エアブラシという便利な製品もあり、大半が「令和最新版」の中華製ながら2022年以降の製品は馬鹿にできない性能になりました。

通常のコンプレッサーよりも稼働音が低く、充電式なので塗装する場所も選びません。価格も10000円前後とお手頃なので、塗装場所の確保が難しい方には打って付けかも知れませんね。

まとめ

ここまで長々と自転車の傷補修について説明しておいて何ですが……

こんな面倒臭いこと、俺には無理だーーーーという方に、ちょっとした裏技ならぬ裏口をご紹介。

当然、迷惑を掛けない前提での話ですが、自動車の板金・塗装を請け負う自動車修理工場に自転車を持ち込むという最終手段があります。

経営者や従業員の方の人柄次第ではありますが、工場が綺麗に整っている、しっかりとしたHPを運営している、自動車のカスタムペイントを請け負っている、こういったところなら力になってくれる可能性が高いです。

冗談に聞こえるかも知れませんが、割と自転車の持ち込みをする方は多いそうで、もちろん有料ですがその場で調色が始まり、短時間で補修用のタッチアップペンを作って貰えた……なんて話も。

ちょっとだけ勇気が必要になる手段ですが、少しでも伝手のある方は試してみてはいかがでしょう?

長文にお付き合いいただき有難うございました、もうビールを飲んでOK、おかわりもいいぞ。

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