自転車は傷が付いて当たり前…そう頭では理解していても、いつの間にフレームにできた傷を見つける度に、深い溜息が出てしまいます。
高額なスポーツ車なら尚更で、自分のミスで傷を負わせてしまおうものなら、軽く数日は凹むでしょう。
さて、センチメンタルな書き出しからお察しいただけるように、愛車のフルサス29erのフレームにチェーン傷を付けてしまいます…
原因となったのはリアハブ軸の緩みで、ハブに固定されているスプロケットが、変速の度に1mmほどカタカタと横ずれを繰り返し、『あれ?なんだか変速が不安定だぞ…』と感じた時には既に手遅れでした。
私のフルサス29erはつや消しのマット塗装仕上げなので、フレームに傷が付いてしまうと、ほぼ修復は不可能です。
不幸中の幸いというべきか、傷のできたフレームのリアエンド内側部分は、アクセントカラーとして光沢塗装の蛍光イエローがペイントされていて、一般的な自転車のキズ補修方法が使えます。
傷はそれほど重症ではありませんし目立たない場所なので、このまま放置しても構いませんでしたが、何となくタッチアップペンでの補修に興味があったので、使えそうな製品は無いものかと調べてみることにしました。
因みに、以前に紹介した『QUIXX/クイックス』でも十分対応できそうな傷ですが、下地が透けやすい蛍光イエローだけに、少しだけ不安が残ります。
唯一無二か?兵庫ペイントの『自転車専用タッチアップペン』を発見
さて、タッチアップペンで補修するにあたって、ホームセンターなんかで見掛ける自動車用のタッチアップペンに目を付けます。
カラーは上画像の差し色を見てわかるように少し緑がかった蛍光イエローで、トレック公式ではGloss Volt Greenと呼ばれています。
この色味に近いカラーを軽い気持ちで探してみたのですが、出だしからいきなり心が折れます…自動車用のタッチアップペンは膨大な数に上り、大抵はメーカー別のカラーナンバーで管理されています。
当然、その中に自転車は含まれていないため、便利な検索機能などは一切使えず、大まかに指定してから一つ一つ目視で似た色を探すという苦行になるのです。
『自転車もメーカー別にカラーナンバーで管理されていたら簡単だったのに…』なんて思ってしまいますが、試しに自転車専用のタッチアップペンは無いものかと調べてみると、カラーナンバー付きで販売している会社が一つだけありました。
製品の大半がトレック製バイク用だったため、最初はトレック純正のタッチアップペンなのか?と勘違いしましたが、販売しているのは兵庫ペイントという自動車用のタッチアップペンをメインに扱っている会社です。
自転車用のタッチアップペンは二色入りの2トーンタイプを含めて60色ほどラインナップされていて、トレック用が8割、ジャイアント・ビアンキ・キャノンデール・ブリヂストン用が残り2割といった構成でした。
私のようなトレック乗りには嬉しい限りで、他はちょっとゴメンナサイ…ですが、ビアンキ用のチェレステカラーがラインナップされている点も見逃せません。
トレック用のタッチアップペンの中から色味が近い製品を探してみると、上画像の2021年製『X-Caliber 9』に使われているVolt Fadeがなかなか良さそうな感じ。
『Gloss Volt Green』と『Volt Fade』、呼び名が一部共通、画像を見る限り色味もそれほどかけ離れてはいません。
行事とばかりに毎年モデルチェンジしていても、コストダウンのために塗料は名前だけ変えて使いまわししてるハズ…なんて都合の良い思い込みの末に、カラーコード『TY1』の自転車専用タッチアップペンを購入してみることにしました。
余談ですが、メーカーによって『カラーナンバー』『カラーコード』『カラー番号』と呼び名はまちまちですが、どれも同じ意味です。
兵庫ペイントの『自転車専用タッチアップペン』 の詳細
パッケージは箱入りで、開封してみると中身はスティック糊くらいのサイズでした。
価格は送料込みで1100円で、容量は20mlとスプレー用の300mlの二種類があります。他にも2トーン用の二色入りや洗浄用シンナー、スプレー塗装に必要な希釈用シンナーなど、専用の物がランナップされています。
塗料に関しては、正直まったく詳しくありませんが、パッケージ裏には細々と詳細についての記載があります。
製品ページを見る限り、タッチアップペンによくある『ラッカー塗料』を使っておらず、後々ひび割れや劣化が起こりづらいとのこと。
個人的に乾燥までの時間が知りたかったのですが、公式HPも含めて何処にも記載が見られません…速乾性がウリなラッカー塗料じゃないだけに、乾燥時間は十分に取った方が良いかも知れませんね。
カラーコードは先述した通り『TY1』、そのあと続くR3.2.1にも何か意味がありそうですが、特に説明は見られません。
これらのカラーコードは兵庫ペイントのオリジナルで、本家トレックとは全くの無関係ですが、将来的に自動車と同じように、メーカーとカラー番号から簡単に探せるようになると楽なんですけどね。
今のままでは自動車用タッチアップペンの中から、似た色を必死で探さないといけませんから…
容器内にはベアリングの玉が一つ入っていて、振るとカラカラと音がします。使用前は塗料をしっかり混ぜておく必要があるので、忘れずに容器をシェイクしましょう。
キャップにはプラモデル用の接着剤のようにハケが付属していますが、こちらは専ら大きな傷用で、メーカーによると小さな傷には綿棒を使用した方が、ムラなく綺麗に仕上がるとのこと。
色味は合うのか?『自転車用タッチアップペン』で試し塗り
いきなり本番に挑むのもアレなので、色味の整合性の確認と乾燥時間&塗料の縮み具合を確認するために試し塗りをしてみます。
ターゲットは飛び石で出来たと思われる、直径3mm、深さ0.5mmほどのチップ傷で、正直タッチペンで補修するにはあまり適していない傷ですね。
クレーター状になっているので、本来は軽くパテ埋めするか、同社製のホワイト系タッチペンで重ね塗りして下地を整えた方が上手く仕上がるように思えます。
室内では色味の違いがわかりづらいと思い屋外で作業していますが、蛍光色は直射日光で白飛びするので、逆にわかりづらかったです…
わざわざ日陰に移動して、ハケに付いた塗料とフレーム色を見比べてみると、ご覧の通りかなり近い色味です。
因みに、綿棒を持参するのを忘れたので付属のハケを使い、塗料を乗せるように補修しました。ハケは塗料を多く含むので、『小さな傷には綿棒を使え!』と公式がアドバイスしていたのも納得です。
実際に塗料を乗せてみると、反射の加減で質感が違って見えるものの、色味は良い感じです。同じトレックのマウンテンバイク同士なだけに、Gloss Volt Green≒Volt Fadeでした。
既に三年目の車体で元の塗装も少しは退色している筈ですが、乗せた塗料とはそれほど差がありませんね。
今回はあくまでもテストなので、本格的に脱脂はしていませんが、一応アルコールワイプで補修箇所を拭き取ってから作業しています。
その後、乾燥目的で15分ほど走行してみると、塗料の成分が気化して画像のような仕上がりになりました。
色の加減は十分なものの、やはり乾燥後は窪むので塗装前に軽く穴埋めの処理をするか、不精してあと数回の重ね塗りで済ませるかのどちらかでしょうか。
さて、気になる乾燥時間ですが、15分程度では殆ど定着しませんね。脱脂に使用したアルコールワイプで軽く拭き取ると、プラモデルの墨入れみたいに凹んだ部分以外の塗装が綺麗に落ちてしまいました。
季節にもよりますが、重ね塗りするなら数日に渡る長期戦を覚悟した方が良さそうです。
まとめ
兵庫ペイントの自転車専用タッチアップペンを試してみましたが、私の目論見通り色味はほぼ完璧でしたね。
傷の状態に合わせて冒頭で触れたクイックスも併用すれば、パッと見ではわからないくらい綺麗に補修することもできそうです。
他メーカーのラインナップが貧弱なので、実質トレック乗りしか恩恵にあずかれないのが現状ですが、私が知る限り自転車用タッチアップペンを積極的に取り扱っている唯一無二の会社だけに、兵庫ペイントの今後に期待したいところでしょうか。