「SRAMのスプロケットは流石に高価すぎじゃないか?」そんなふうに思っている方も多いはず。
私もその一人ですが、昨今は諸々の理由からミドルグレードのGX EAGLEですら、もはや高級品の域。
スプロケはリアホイールの中心部分に位置するパーツにつき、軽量化してもそれほど走りに影響しませんが、押し歩きや担ぎ上げが当たり前なオフ車乗りにとって、少しでも軽い方が嬉しい……というのが本音です。
純正に手が届かなくても、我らには社外製があるじゃないか!と数年前に「GARBARUK/ガルバラック」の互換スプロケを試してみましたが、これが中々の優れモノ。
因みに、GARBARUKは現在渦中にあるウクライナのキーウで産声を上げたパーツメーカーですが、既に本拠がポーランドに移っているせいか、今のところ供給体制に大きな混乱は見られません。
純正よりも軽量で低価格、おまけに変速性能もGXと比べて遜色なし、今回のカスタマイズにもGARBARUK製で特に不満はありませんが、それはそれで面白味に欠けます。
悩んだ末に白羽の矢が立ったのが、競合する「e*thirteen/イーサーティーン」のスプロケット、こちらの製品も評価が高く、何よりトップギアが9Tなのが最大の魅力。
増車したファットバイク用として随分前に購入してみましたが、今回はe*thirteen/イーサーティーンの12速スプロケット「Helix R 12-speed」のインプレや取付方法について話題にしてみましょう。
魅惑のトップギア9T!e*thirteen「Helix R 12-speed」の詳細
現在は既に解消されているようですが、私が購入した頃は自転車用パーツが何から何まで手に入りづらい時期で、とにかく苦労させられました。
購入時の価格は€200弱でしたが、たった四ヶ月で価格は10%増し、為替レートも財布に厳しい状況になってしまったため、逆に運が良かったのかも知れません。
選んだのは9-50Tの12速用、カラーは全5色から最もシックなグレーを選びました。
ギアコンビネーションは 9, 11, 13, 15, 17, 20, 23, 27, 31, 36, 42, 50となり、カタログ重量は384gです。
取付け可能なフリーハブボディはSRAM XDドライバーですが、シマノ12速・SRAM12速の両方と互換性があり、ミックスコンポも可能。
流石にシマノ最新の「HYPERGLIDE+」には対応していませんが、レビューによると変速性能はHYPERGLIDE+の90%程度だそうで、HYPERGLIDE+未対応の11速DEORE M5100系に近い感覚なのかも知れません。
パッケージには、スプロケット本体、ステッカー、スモールパーツ、グリス、マニュアルの五つが同梱されていました。
スモールパーツの小袋には、取付け用のイモネジ、XDRドライバー取付け用のスペーサー、HOPE製XDドライバー用のプレートが封入されていて、ロード用のXDRドライバーにも取付けが可能な模様。
また、「Helix R 12-speed」には9-45T、重量319gのグラベルロード用もラインナップされていますが、こちらもXDとXDRの両方に取付け可能とのこと。
GARBARUKを購入した時も感じましたが、未使用のスプロケットには独特な美しさがありますね。
e*thirteen製スプロケは、汚れが目立たない代りに歯の摩耗が目立つ黒一色の製品が多いですが、Helix Rだけは例外なのが嬉しいことろ。
Helix Rは主流のスチール&アルミのセパレート構造で、それぞれのパーツを分離でき個別に購入も可能。
例によって左がスチール製、右がアルミ製、交換時に別カラーにする楽しみ方もできます。
シマノ製ほどではないにせよ、こういったユーザー目線の配慮は嬉しいですね。SRAM製スプロケは摩耗や破損で丸ごと交換しなければなりませんから。
実重量は384gとカタログスペックと全く同じ値で1gのブレもありません。交換前の11速DEORE CS-M5100が630gでしたから、スプロケットだけで約250gの重量差です。
因みに、Helix R 9-50Tの初期モデルはカタログ重量が345gと現在よりも軽量で、後期版から何らかの仕様変更があった可能性も。
重量増は残念ですが、同じ12速スプロケで比較すると、GARBARUK 10-50Tが328g、シマノXTR 10-51Tが369g、SRAM XX1 EAGLE 10-52Tが362g、SRAM GX EAGLE 10-52Tが452g。
価格を加味するとGARBARUKのコスパが光りますが、Helix Rはやはり9Tを使えることが強味でしょうか。
個人的にトップギア9Tによる高速化よりも、フロントチェーンリングを30Tから28Tに小径化できる方が嬉しいですね。
チェーンリング30Tでリア最大52Tのギア比が0.58、チェーンリング28Tでリア最大50Tのギア比が0.56ですから、ファットバイクで深い雪道を走る際や、最も苦手とする登坂の際などに少しだけ有利に働いてくれます。
【グリスに注意】e*thirteen「Helix R 12-speed」の取付方法
親切な紙製マニュアルが付属していますが、要注意な点があったので取付方法を簡単に説明します。
取付け前にスプロケ本体やマニュアルをしっかり確認したところ、かなり特殊な構造になっていることがわかりました。
SRAM XDドライバーに対応しているのは間違いありませんが、XDドライバーに備わっているスレッド部分は一切使用しませんし、スプロケ側には見慣れたロックリングも存在していません。
固定の要になるのが上画像のクランプ構造で、この部分が取付けの起点となります。
手始めにSRAM XDドライバーにグリスを塗布しますが、画像右上の挿絵にあるように塗布するのは根元の凹凸部分だけで、横溝のスレッド部分には特に指示はありません。
パッケージには青色の純正グリスが付属していましたが、今回は全ての工程でシマノ プレミアムグリスを使いました。
続いて、アルミ製のワイドコグを溝に合わせて押し込みます。
二段階くらい押し込めるので、しっかりと奥まで押し込めているかを確認するのが吉。
その後、指定の3Nmでクランプ部のボルトを締めますが、クランプ位置がXDドライバーのスレッド部分の真上なので、ネジ山が潰れてしまわないか少し心配です。
そして、かなり重要なのがスチール製コグの中央部分に位置するプラスチック製のブッシュです。
このパーツはブッシュベアリングのように回転はせず、先ほどのXDドライバーの頭にピッタリ密着して、スチール製コグがXDドライバーに固定される仕組み。
付属の紙製マニュアルには、ブッシュの内側にグリスを塗布するように挿絵で指示があるのですが、上画像右の公式最新マニュアルの挿絵では特に指示がなく、どちらにも「プラ製ブッシュは捨てちゃアカン!」的な文言が記述されています。
最初は混乱しましたが、どうやらグリスを塗り過ぎると不具合が出るらしく、固定の際に塗り過ぎたグリスの厚みが災いしてプラスチック製のブッシュが割れてしまうとのこと。
公式HPでは交換用のブッシュが販売されていましたし、現時点ではグリスを塗らないで取付けるのが正解ですね。
後述しますが、スチール製コグをXDドライバーに押し込む作業はそこそこパワーを必要とし、旧マニュアルの指示通り、薄くグリスを塗る必要性を感じました。
また、スチール製コグとアルミ製コグ、両者の接続部分にもグリスを塗布する必要があり、実際の作業前にどの部分が接触するのかをしっかり確認しておきます。
別に大雑把にグリスを塗っても構わないのですが、スプロケは嫌でも汚れる部分なので、埃や鉄粉を吸着するグリスは必要最低限にしたいところ。
まずは、スチール製コグに全部で六箇所ある赤丸部分に綿棒を使ってグリスを塗布。
この部分はアルミ製コグにスライドしてフックされる部分なので、裏も表も忘れずに。
続いて、アルミ製コグの赤矢印部分にもグリスを塗布。
この部分は既に仮組みによる傷ができているので、塗る場所がわかりやすいです。
グリスの塗布が完了したら、▲マークの付いた歯を南京錠が開錠されているアイコンに合わせてスチール製コグを押し込みます。
前述した通り、XDドライバー先端に密着固定されるプラスチック製ブッシュには一切グリスが塗布されていないので滑りが悪く、密着させるには結構な力が必要になります。
画像右下の挿絵のように隙間ができないようにしっかりと奥まで押し込みますが、私はグローブ越しの掌底でようやく叩き込めました。
スチール製コグの押し込みが完了したら、画像左のようにスプロケット用のロックリングツールを使い、南京錠が施錠されているアイコンの位置に、時計回りでロックします。
因みに、画像右はスプロケットを外す際の手順で、以前はチェーンウィップが二つ必要でしたが、現在は通常のスプロケに使う工具だけで済むようになりました。
一応、スチール製コグの取付け時にもチェーンウィップが使えますが、12速スプロケットにはウィップ付属のチェーンは太すぎるので、正直おすすめしません。
私は手持ちのロックリングツールでカチッと固定しました。
スチール製コグが奥まで押し込まれ、尚且つロックリングツールでしっかり時計回りにスライドされていると、赤矢印のように二つのコグを固定するためのネジ穴が露出します。
小袋に入っていたイモネジが上手くはまらない場合は、位置が合うようにロックリングツールで増し締めしましょう。
最後は、イモネジの頭がギアの側面とツライチかそれ以下になるように1Nmで締めて終了です。
このイモネジは恐らく規格品が市販されていないので、取り外しの際は無くさないよう注意した方が良さそう。
まとめ
グリスの使用箇所で少し悩みましたが、取付け作業自体は短時間で済みました。
ロックリングを回すだけで固定できる一般的なスプロケットとは随分と毛色が異なりますが、XDドライバーで9Tを実現するにためには必要な工夫なんでしょうね。
この記事を書いている時点でファットバイクのカスタマイズは完了していますが、都合により28Tのチェーンリングがまだ手に入っていません。
現状のフロント30Tでも特に不満はありませんが、Helix Rと28Tのコラボレーションを体感するのは、もう少し先の話になるのかな。
ほぼパーツ総とっかえのカスタマイズ後ということで、ファットバイクのフィッティングとドライブトレインの不具合確認を兼ねて試走してみましたが、調子いいですねコレ。
変速のインデックス調整は実際に走りながらじゃないと決まらないことが多いですが、室内での仮調整から全くの手付かずで小気味よく変速してくれました。
最大52T対応の新SRAM GX EAGLEとも相性が良く、どのギアでもチャラつき音は感じません。
SRAM系でこのレベルなら、シマノ系12速のHYPERGLIDE+で変速性能が90%程度というレビューにも合点がいきます。