どんなタイプの自転車でも、乗り続ければ傷の一つや二つは必ずできます。
落車や転倒、接触や飛び石など原因は様々ですが、自分のあずかり知らぬところで増えた傷は、正直あまり気持ちの良いものではありません。
少し前の話になりますが、夏を思わせる強い日差しに誘われて愛車のファットバイクでポタリングする機会がありました。
その道すがら、いつも休憩に利用している公園に差し掛かり、停車して一息つきながらファットバイクを眺めていると、ボトムチューブのボトルケージマウントあたりがくすんで変色しているのが目に留まります。
出発前には気が付かず、強い日差しで違和感が露になった感じですが、最初は走行中に付着した埃か靴底から移った土埃か何かだと思っていました…
少し気になって手で撫でてみるとザラザラとした感触があり、ようやくそれが細かい擦り傷である事を理解します。
ファットバイクに傷ガガガ、原因は一体何だ?
『うぁ~なんじゃこりゃ~!!』と肩を落としつつも、原因に全く心当たりがありません。
普段、私しか乗らないファットバイクは屋内のガレージに保管していますし、ここに到着するまで何一つトラブルはありませんでした。
メンテナンスを兼ねたクリーニングをしたのがちょうど10日前で、その時には異変は無くそれ以来一度も出走していません。
不審に思いながら車体を更に調べてみると、トップチューブに小さな擦り傷、シートチューブにも泥付きで少し深い擦り傷を見付けます。
傷の位置的に、車体が倒れて出来る傷や靴底を擦って出来る傷ではなさそうです。
不自然にトライアングル部分にだけ残された傷をまじまじと観察した結果、表面に泥が付着したザラザラした物体で、ある程度の重さがあり、それが中空でブラブラしながら擦り付けられた痕跡が伺えます。
この時点で何となく察しがついたので、帰宅後に家族を軽く問いただしてみると、狭いガレージ内でガーデニング用の鉢を移動させた際に意図せず触れてしまった、趣味で採集した大量のタケノコを運搬の際に袋入りのまま擦り付けてしまった、このどちらかではないかと言う結論に至ります。
実に片田舎らしい、のどかな理由に腹も立ちませんでしたが、付着していた泥の色が自宅の庭とは異なっていたので、原因は恐らく後者でしょう。
帰宅後にクリーナーで傷部分を拭き取ってみると、ボトムチューブ、トップチューブ、シートチューブに順に傷が深く、どれも引っかいたガリ傷ではなく荒めのサンドペーパーが触れたような擦り傷です。
正直、気乗りはしませんが屋内でもサイクルカバーを使うなどして、ガレージへの保管方法を見直さなければなりません。
ファットバイクとはいえ、オフ車の擦り傷程度でイライラするのは人間としての器が小さいゾ♪と自分に言い聞かせつつも、何となくモヤモヤした気持ちを抱えたままファットバイクの傷消し補修に挑むことにします。
人気の”QUIXX/クイックス スクラッチリムーバー”を選択
さて、傷消し用の補修剤を選ぶことになりますが、傷の質的にタッチペンは過剰、コンパウンドなどの研磨剤ではやや力不足、両者を併用するには慣れが必要と、見た目の割に面倒な補修です。
先人のレビューを参考にしつつ、私が選んだのは信頼のドイツ製『QUIXX/クイックス スクラッチリムーバー』で自動車・バイク・自転車など多用途に使えます。
このクイックスは浅い傷に対して特に高い効果があり、コンパウンド系の様に塗装面を削り取るのではなく有効成分が周囲の塗装を移動し、同化させて傷を平らに変形させる優れモノなのです。
塑性変形(元に戻らない)によって周辺部と同化するので効果は半永久的に持続しますし、タッチペンの様にわざわざ色を選ぶ必要もありません。
因みに、自転車に使用する場合には少し注意が必要で、光沢の無いマット塗装のフレームや再塗装したフレームには使用できない仕様です。

QUIXX/クイックス スクラッチリムーバーを購入
クイックスを購入するために、近場のカー用品専門店やホームセンターを虱潰しに探してみましたが、お馴染みのSOFT99やHoltsの補修剤ばかりで、クイックスがどもにも見当たりません。
結局ネットで注文することに決め、パッケージが英語の並行輸入版でななく、念のため使用方法がわかりやすい日本語パッケージ版選びました。
パッケージのサイズはW6×L18×H4cm程で側面には使用箇所とともに製品の特徴が簡単に解説されています。
自動車用の補修剤が多い中、自転車のフレームにも使用できますよ!!としっかりと明記されている点に好感が持てます。
同梱されているのは【1】日本語の説明書【2】専用クロス2枚【3】耐水サンドペーパー4枚【4】ポリッシュ剤1液【5】フィニッシュ剤2液の5つで、1液と2液はそれぞれチューブにナンバリングされています。
一応、柔らかい専用クロスが二枚付属していますが、コットン製の柔らかい布で代用してもOKです。
説明書には使用方法として1~5までの工程が記載され、裏側には使用する傷の程度をA~Dまでの4段階で解説したキズ深度表があります。
傷に対しての爪の引っかかり加減と、水に濡らして元の色が確認できるかの2点がキズ深度の判断基準になっていて、QUIXX/クイックス スクラッチリムーバーだけで補修可能な傷は、以下の2パターンに限るとあらかじめ説明されています。
A『傷に殆ど爪が引っ掛からず』『濡らして元の色が確認できる』
B『傷に殆ど爪が引っ掛からず』『濡らして元の色が確認できない』
これよりキズ深度が深刻なCとDに関しては、修理専門業者への依頼やタッチペンでの補修後に使用する事になりますが、ほかの手段での補修した後でも効果が見込めるのは大変興味深いですね。
個人的に最も注目したいのが【サンドペーパーに使用時のご注意】です。
1~5まである使用方法の一番最初に行う処理ですが、自転車のフレームを補修する場合は使わないことを推奨します。
事前に購入者のレビューを確認してみたところ、失敗の殆どはこのサンドペーパーに関する内容で、かえって傷が悪化したと言う方が大半でした。
誤解を恐れずに重ねて言いますが、サンドペーパーを使わない!!これがQUIXX/クイックス スクラッチリムーバーで失敗しない一番の方法です。
【追記】因みに、クイックスは完全硬化型のガラスコーティングが施されたフレームにも問題無く使えるとのこと。
あくまでも勝手な憶測ですが、サンドペーパーはガラスコートを落すために使う可能性もあるので、気になる方はマニュアル通りに作業した方が良いかも知れません。
いざ傷消しに挑戦!!QUIXX/クイックスの使い方
上画像が実際にファットバイクのシートチューブに付いた擦り傷で、今回見つかった3箇所の中では最もハッキリした傷跡です。
キズ深度はB~Cに相当し、水で濡らしても傷の白い部分は消えず、爪でなぞると確かな引っかかりを感じます。
傷周辺は既に洗浄済みなので、鬼門のサンドペーパーをスキップしてポリッシュ剤1液を使用して表面を磨きます。
因みに二枚ある専用クロスはどちらも全く同じなので、途中で間違えない様に事前にマジックなどで印を付けましょう、1液と2液は性質が異なるので使用するクロスは完全に分けた方が良いです。
説明書では1液を直接フレームに塗るように書かれていますが、1液は粘度が低く垂直なシートチューブでは液垂れするので、専用クロスに塗ってから傷に擦り込んでいきます。
傷に対して垂直にクロスを動かしますが、事前に使用方法を調べたところ、指先にしっかりと力を入れて根気よくやるのがコツだそうです。
1~2分程度磨き上げると上画像の様な感じになり、既に5割以上は傷が消えていますね、浅い傷から順に埋まっていく感じでしょうか。
1液を一旦拭き取ってから同じ作業をもう一度繰り返し、トータル5分くらいの作業で上画像の様に傷が殆ど目立たなくなります。
傷の深さ次第では、この作業を何度も繰り返すことになりますが、やりすぎると周囲の塗装も薄くなるので注意しましょう。
ポリッシュ剤1液を完全に拭き取ってから、仕上げのフィニッシュ剤2液で円を描くように磨き上げていきます。
2液は1液よりも粘度が高いので、フレームに直接塗っても液垂れしません。
因みに、1液はあまり臭いませんでしたが2液は結構独特な臭いがあるので、換気しながらの作業した方が良いです。
2液で3分ほど磨き上げると、艶やかな光沢が出始めます。
画像では2液使用前とさほど違いは感じませんが、鈍く光っていた表面が引き締まって、シャープな見た目に仕上がる印象です。
引きの画像の方が仕上がりの良し悪しがわかりやすいですね、遠目では傷が殆ど判別できず、塗料の塗りムラに似た僅かな凹凸が残っているだけです。
正直、ここまで見事に傷が消えるとは思っていませんでしたが、傷の質は粗目のサンドペーパーでひと擦りしたような感じでしたから、慣れれば説明書の通りにサンドペーパーを使用しても余裕で補修できるのかも知れません。
例によってビフォーアフター画像を作ってみましたが、この程度の傷ならクイックスで問題なく消せる事が良くわかります。
一番最初に見つけたボトムチューブのくすんだ擦り傷はもちろん、トップチュープにあった小傷も簡単に消すことが出来ました。
実は、BB付近にはセンタースタンドを取り付けた際に出来た未補修の深い引っかき傷があり、ボトムチューブの上部にも、過去にタッチペンで補修した5cm程の引っかき傷があります。
試しに傷消しに挑んでみると、BB付近の深い傷は指先に力を入れてポリッシュ剤1液で3回繰り返して磨き続けると、完全ではありませんが7割くらいは傷が消え、タッチペンを併用すれば完全に傷を消す事も出来そうです。
既にタッチペンで補修済みの傷は流石に完全には消せませんが、5cm近かった引っかき傷も深い部分だけ飛び飛びで補修跡が残る感じになり、元々の塗装面との一体感が増した印象です。
最後に使用量についてですが、大小5箇所の傷を補修しても1液、2液ともに半分程度しか減りませんでした。
専用クロスは洗って再利用できそうですが、マイクロファイバー製の布を別途で準備したほうが指に負担が少なそうです。
まとめ
実際にクイックスを使って傷消し補修に挑戦してみましたが、予想以上の効果があり、下地が見えている様な深い傷でない限りは、単体で使用しても十分に傷を消せることがわかりました。
傷消し補修の仕上げに、二年ぶりにガラスコーティング剤を使用したのでフレームの輝きが蘇り、作業前のモヤモヤした気分が一気に晴れました。
傷が出来た時だけでなく、フレーム保護のため定期的にガラスコーティングする場合にも、下処理としてクイックスが役立ってくれるかも知れません。