今年の夏はとうとう梅雨が明けずに終わりましたが、私の住む地域は秋口の今更になって体温超えの猛暑に襲われています。
夏場は長雨の影響で自転車に乗れる機会が殆ど無く、ようやく一段落したと思ったら今度は周回遅れの暑さです…そんな状況でも時間を見付けてはライドに勤しんでいるのですが、最近ハマりつつあるのがフルサス29erでのロングライドです。
人によってはトレイルまでの自走以外でロングライドするなんて馬鹿じゃないの?と思うかも知れませんし、フルサスマウンテンバイクを街乗りやオンロードで使うなんて無駄遣いすぎ!なんていわれてしまいそうですが、条件さえ整えば街乗りを含むロングライドでも快適な走行感を味わてしまうのが面白いところ。
賛否は当然あるでしょうが、切れ味が鋭いならサバイバルナイフで毎日髭を剃ってもイイじゃない!といった頭の悪い発想が個人的に好みだったりします。
ロードバイク並みにロングライドが快適!なんて大袈裟なことはいいませんが、今回はフルサスマウンテンバイクでロングライドする際のちょっとしたコツや、カスタマイズの方向性について話題にしてみたいと思います。
だって楽だもの…フルサスMTBで街乗り・ロングライドし始めた理由
ロードバイクは元よりクロスバイクや流行りのグラベルロードなど、ロングライド向きの車種がいくらでもあるのに、何故あえて鈍重なフルサスMTBでのロングライドに拘るのか…ハイ、ぶっちゃけ私はミニベロ・ファットバイク・フルサス29erという非常に偏った種類の自転車しか保有していないからです。
この中で唯一オンロードに適性があるのが、走れるミニベロこと『KHS F-20R』でロングライドの際は好んで使っていました。出先でトラブっても輪行で帰宅できる強みがあるものの、小径車ゆえに路面の凹凸に滅法弱くロングライド時は脚よりも先に上半身が疲労でガタガタになってしまうことが多いですね。
さて、次点としてロングライドに適性を持つのが意外にもフルサス29erです。車重や足まわりが重いのでミニベロと比べて脚への負担は増すものの、前後サスペンションのお陰で大変乗り心地が良く、舗装路上を長距離走っても上半身を含む体全体の疲労感が格段に少ないです。
因みに、ファットバイクのようにタイヤを太くしたり空気圧を下げたりすることでもフルサスと似たような効果が得られますが、転がり抵抗を含めて足まわりがもっさりと重くなるので、段差の多い街乗りには向いていても、ロングライドにはイマイチ馴染みません。軽量・細目・高圧なタイヤを使いつつも、フルサスで体への負担を減らせるという組み合わせがミソなのですよ。
唯一の難点は『おい見ろよ、アイツ街中でフルサスに乗ってるぜ~』みたいな場違い感があることで、スポーツウェアやアウトドアウェアが快適過ぎて、いつの間にか街着や普段着になってしまう現象に少し似ています。
やっぱりタイヤが最優先!ロングライド仕様のフルサスMTBのお話
ハードテイルやフルサスに限らず、マウンテンバイクで街乗りやロングライドをしたいなら、まずはタイヤから手を付けます。
ロングライドや街乗りに使うなら、細目でノブの低いXC/クロスカントリー用のタイヤがオススメですね、私はMTB用タイヤでは随一の転がり抵抗の低さ見せる『Continental RaceKing ProTection』を使っていますが、密集したセンターノブのお陰で評判通り良く転がってくれます。
最近はグラベルロード用のタイヤが豊富にリリースされているので、リム幅が適合するならセミスリック仕様で40c~50cくらいのグラベルタイヤを使うのもアリでしょうか、XC用タイヤよりも軽量で転がりも良く、アスファルトやちょっとした未舗装路でならこちらの方が相性が良いですね。私も過去に使用したことがありますが、XC用タイヤでは味わえない軽快さがありました。
因みに、どちらもタイヤのチューブレス化は必須です。これをするだけで600g前後は足まわりが軽くなりますし、乗り心地の向上や必要以上にパンクに怯えなくても済むなど、ロングライド時には多くの利点があります。
続いてはサスペンションのロックアウト機能です。よく知られているテクニックですが、フルサスMTBでロングライドする際に前後のサスペンションをロックアウトして、サスの沈み込みを無効化するのが一般的ですね。
この機能は目的地のトレイルまで自力で向かう『自走』の際によく使われますが、ほぼ平坦かつ舗装路メインのロングライドの場合ではペダリングロスをハッキリと感じるスタンディング&ヒルクライムという状況は殆ど無く、私は乗り心地を優先してロックアウト機能を全く使わないことが多いです。
状況によって小まめに切り替えるのがベストかも知れませんが、細目のタイヤを高圧寄りで使うならロックアウトせずにサスの機能を活かしたまま走った方が好みですね。
ペダリングロスによる体力の消耗か、それとも路面からの突き上げによる体力の消耗か…100kmを超えるロングライド時にどちらを軽減するかは人それぞれですが、ロックアウトすることで乗り心地がカチッとするのは確かで、特に加速時はクロスバイクに近い乗り心地を実感します。
さて、意外に見落としがちなのが、ハンドルやグリップなどハンドポジションに関わる部分でしょうか。ロングライドでの快適さを追求した場合、サドルの次ぐらいに拘った方が良いパーツかも知れません。
マウンテンバイクはストレートバーハンドルゆえに、ロードバイクと比べるとどうしてもハンドポジションが限定されてしまいます。特に上半身の腕・肩・掌には疲労が蓄積しやすく、ロングライド時に痛みが出て走りに集中できないなんてことも珍しくありません。
ハンドルについては各々の体格や姿勢が関わってくるので何ともいえませんが、私の経験上グリップは手に馴染むエルゴグリップよりも、弾力があって柔らかいフォームグリップの方がロングライドに向いていると感じます。
画像ではハンドポジションを増やす目的で、角状の『TOGS/トグス』を取付けていますが、グリップを肉厚なESI Gripsの『Extra Chunky』に交換して以来、殆ど出番が無いくらいに快適になりました。
過去にエルゴグリップとフォームグリップをロングライドで使い比べてみたことがありますが、エルゴグリップはライド後半になるほどグリップの硬さが響くようになり、グローブ無しの条件だと40kmくらいから痛みを意識します。逆にフォームグリップはライド後半になるほど心地良く、掌に痛みを感じることは殆どありません。
フォームグリップには取付け&取外しが少し面倒な特徴がありますが、一度使うと後戻りできないくらいの心地良さがあり、ストレートバーハンドルのロングライドには欠かせない逸品です。
お次は多くの人が悩むサドルですが、車種を問わずロングライドの快適さを大きく左右する最重要パーツです。
私は散々試行錯誤した末にサーファスの『MH-RX ハイパフォーマンス』に落ち着きましたが、この製品は見た目のスマートさと尻への優しさを絶妙なバランスで両立させた、サーファス最高峰のコンフォートサドルです。
ロード乗りの方がブルべで使うこともあるそうで、このサドルでロングライドに耐えられない場合は素直に500g超の肉厚サドルを使うか、後付けのサドルカバーを頼った方が良いです。
見た目を気にする方は普段はお気に入りのサドルを使い、お尻が痛くなった時だけサドルカバーを使うといった方法が特にオススメですね、バックパックにでも忍ばせておきましょう。
また、個人的に予想外の恩恵を感じたのがドロッパーシートポストです。
最近のマウンテンバイクには当たり前のように装備されていますが、手元にあるレバーを操作することで事務椅子のようにシート高を自由に変えられる仕組みを備えています。
本来は不安定な路面で足つきを良くしたり、山道の傾斜に合わせてシート高を調節する目的で使われますが、この機能はロングライドでも役立ち、シート高を定期的に変化させることでお尻を労ったり、上半身をアップライト気味にしてリラックスさせてみたりと、同じ乗車姿勢を続けることで疲労しがちな体を養生させることができます。
因みに、シート高が低すぎるとペダリングで逆に膝に負担が掛かってしまうので、サドルをベタ下げのまま長時間走るのは極力避けましょう。
最後に、ロングライトには欠かせない携帯品の収納方法に触れておきます。実のところフルサスMTBは他のスポーツ車と比べて圧倒的に携帯品の持ち運びや収納が苦手です。
ダボ穴なんて当然ありませんし、リアサスにスペースを奪われたフレームのトライアングル部分はボトルケージを一つ取付けるのが精々、おまけに頼みの綱のサドルバッグはドロッパーシートポストの上下動作とリアサスの稼働範囲の影響で殆どの製品が使えません。
私は画像のようにフェアウェザー製のコーナーバッグをメインで使い、収納できなくなったドリンクボトルや小物は前述したハンドルまわりの画像を見てわかる通り、同じくフェアウェザー製のステムバッグに振り分けています。
今のところ、この組み合わせで不自由することは無く、ドリンク用にはボトルケージよりもステムバッグの方が便利に感じるくらいですね。オフ車乗りの方はコンパクトなバックパックを愛用していることが多く、こういった装備は転倒必至のトレイルでは邪魔になるだけですが、街乗りや舗装路メインのロングライドでは中々使い勝手が良いです。
余談ですが、トピークからはドロッパーシートポストにサドルバッグを取付け可能にする『DP Mount』というアクセサリーがリリースされています。相性問題はありますが上手くすればドロッパーポスト車でもサドルバッグが使える可能性があり、結構オススメのアイディア商品です。
まとめ
私の場合、気の向くままに何処でも走れる!といった万能感が好きなのでフルサスMTBで躊躇無くロングライドをしちゃってますが、常識的なオフ車乗りの方からは間違いなく良い顔はされないでしょうね…折角のフルサスが泣いているぜ!なんてお説教されそうです。
軽量で転がりの良いタイヤに交換し、自分に合ったサドルとグリップを装備、オマケでドロッパーシートポストがあれば、大抵のクロスバイクよりも快適に街乗りやロングライドが可能です。
何気に路面状態を神経質にチェックしながら走る必要がなく、トラブルが致命傷になるロングライドで精神的に楽でいられるのも隠れた利点かも知れません。