自転車を本格的に趣味にしてから、かれこれ五年以上になります。
現在はファットバイク、ミニベロ、フルサス29erの三台持ちですが、不思議なことにどの車種でもライド中にパンクを経験したことがありませんでした。
稼働率が高く、ロングライドも頻繁なミニベロあたりでいつかは経験しそうだなぁ~と何となく思っていたいのですが、先日ようやく初パンクの洗礼を受けます。
小さなホイール径ゆえにタイヤの消耗が激しく、ちょっとした段差にも弱いミニベロですから、そりゃいつかはパンクくらいするでしょ?
そんなふうに思うかも知れませんが、実は初パンクしたのはミニベロではなくチューブレス化したフルサス29erなんです。
チューブドで運用しているミニベロやファットバイクなら、携帯している予備チューブやパンク修理キットで問題なく対処できるのですが、チューブレスタイヤのパンクに関しては殆ど知識がありません。
当然、パンク直後は焦りに焦り、年甲斐もなく狼狽しまくった訳ですが、今回は私がチューブレスタイヤの初パンクで学んだ対処法や修理方法について話題にしてみます。
尚、正確には『チューブレス』ではなくMTBでポピュラーな『チューブレスレディ』のお話です、タイヤにシーラントを注入して使うアレですね。
心の準備がまだだった…チューブレスタイヤが突然のパンク
さて、週に数回は走る定番のコースを走っている最中にソレは起こりました。
タイミングの悪いことに自宅から最も遠い距離、加えて携帯ポンプ未所持という気の緩み様です。
ようやく咲き始めた桜に目を奪われながらのんびり走っていると、リアタイヤからバシュ!っとエアガンを発射した時のような音が響きます。
少し前にチューブレステープを貼り替えしたばかりなこともあり、チューブレスバルブ根元から空気漏れでもしたか?と横目でチラっと確認してみると……
リアタイヤがどえらいことになっていました。
タイヤのトレッド面からは、ヘアスプレーのようにシーラント混じりの空気が勢いよく噴き出し、走行中なだけに回転花火みたいになっています。
こりゃマズいと慌てて降車しますが、シーラントが注入されているにも関わらず空気漏れの勢いは収まらず、携帯ポンプを持っていないこともあって焦りに焦ります。
『そうだ!シーラントで塞がないと!』
そんな周回遅れの閃きがあり、急いでタイヤを回転させて空気が噴出している部分を下側にしてみましたが、今度は命綱のシーラントがジュブジュブと液体のまま噴出。
アスファルト上には血溜まりならぬ、真っ白なシーラント溜まりが出現します。
空気が無くなってもヤバい、シーラントが無くなってもヤバい、テンパりすぎて正常な判断ができなくなっていましたが、タイヤをどっちのポジションにもできずに右往左往していると、徐々に空気漏れの勢いが弱まり始めます。
この間、体感で3分くらいだったと思いますが、これはシーラントの働きではなく恐らく空気圧が低下したのが原因です。
大抵のトラブルなら写真撮影できるくらいの余裕が持てるのですが、今回ばかりは流石に無理でした。
こりゃダメだ……と、早々に押し歩きで帰宅する覚悟を決め、空気が漏れ続けるタイヤのまま走って自宅までの距離を稼ぐことにします。
タイヤの手触りは明らかに1.0bar程度でしたが、29×2.35のグラベルタイヤでならまだ十分に走れそう。
空気が抜け切る前に少しでも距離を減らすつもりでしたが、何故か3km以上走ってもタイヤがヘタる気配を感じません。
小休止できる場所で停車して恐る恐るリアタイヤ確認してみると、なんと!空気漏れが完全に止まっているではありませんか。
そうなんです。
今更ですし当たり前ですが、シーラントで穴を塞ぐにはそのまま走るのが一番の対処法でした。
もちろん、異物が刺さっていたり、大穴が開いていたり、表面が裂けていないことが前提となりますが、念のため患部らしき部分を確認してみると、釘や金属片の類は見当たらないようです。
上画像では辛うじてシーラントが広範囲に染み出した痕跡が確認できますが、3kmも走るとシーラントに引っ付いた土埃のせいで、殆ど判別できなくなっていますね。
少し気になる点として、シートチューブにはスプレー塗料のようにシーラントが吹付けられていました。
厄介なことに、シーラントは衣類などの繊維質な物に浸透して固まると、ゴム成分が頑固にこびり付き洗濯では落としづらくなります。
例え『そのまま走る』という対応がベストだったとしても、ヘアスプレー並みにシーラントを撒き散らしている状態で乗るには、ウェアをダメにする覚悟が必要かも知れませんね。
車体はシーラント塗れになっても拭けば済みますから、空気漏れが収まるまでその場をぐるぐる押し歩きするか、車体を持ち上げてタイヤをゆっくりと空転させるのが良さそうです。
因みに、帰宅後にウェアを確認してみると、ゴアテックス製アウターの背中部分とボトムスの裾裏部分にシーラントの飛沫が付着していました。
春になってリアフェンダーを早々に外したのをちょっぴり後悔。
一応、シーラントはシール剥がしやパーツクリーナーの類でも落とせるそうですが、高性能シーラントで知られるマックオフからは『GLUE REMOVER/グルーリムーバー』という専用ケミカルもリリースされています。
本来は車体やホイールに使用する物ですが、高価なサイクルウェアが絶望的な状態になったときは、ダメ元で試してみましょう。
スタンズ製シーラントなら主成分は天然ラテックスなはずなので、リモネン成分主体のシール剥がしなどが安全に使えるかも知ませんね。
ノーガード戦法で検証、チューブレスでもパンク修理は必要か?
結局、あれだけ勢いよく空気が噴き出していた穴は余裕で塞がり、何事もなかったように帰宅できました。
さて、ここで悩むのがチューブレスレディの修理方法です。
といいますか、そもそも修理が必要なのでしょうか?
真っ先に思い浮かんだのが上画像のプラグ式チューブレスリペアキットで自動車用と使い方は同じです。
各社からリリースされていますが、シーラントで塞ぎきれない大き目の穴にタイヤの外側から患部に補修ゴムを突き刺すようにして使います。
この製品はパンク修理というよりも自走で帰宅するための応急処置が目的で、使用後はタイヤを新しいものに交換するのが推奨されているようですね。
もちろんチューブのようにホイホイ交換する訳にもいきませんから、大半の方は何らかの補修をして使い続けるはずですけど。
どれも似たり寄ったりでシーラントとの組み合わせが必須な製品ですが、画像左下のパナレーサー製MTB用キットだけ少し毛色が異なり、ゴムシートを付属のハサミで紐状にカットしてゴムのりをたっぷり塗ってから使用する仕組みになっています。
う~ん、補修が必要なのは薄々感じるのですが、既に空気漏れは収まっていますし症状はリペアキットを頼るほど重症ではありません。
何となく高圧寄りのグラベルタイヤが災いしている気がしたので、今回はあえて何もせずにシーラントの追加とタイヤの空気圧を規定値の3.5barに戻すだけで終了することにしました。
翌日、シーラントで塞がっただけのタイヤで検証のために出走。
3kmくらいまでは快調だったものの、幅1m程度の砂利道を横切った直後に再びシーラントがバシュっとスプレー状に噴き出しました。
交通量の多い場所だったので注目を浴びて恥ずかしい思いはしたものの、今度はちゃんと撮影できる余裕がありました。
昨日の失敗を糧に、今度は慌てずにその場でタイヤを振ったり前後させたり。
短い距離を行ったり来たりと押し歩きして対応してみます。
やはり、タイヤを転がして穴が下側になるとジュブジュブとシーラントが噴き出しますね。
割と冷や汗モノですが、下手を打たなければ流出量は注入量の半分以下に抑えられそうです。
前回よりも気持ち短い時間で空気漏れが収まり、今回は完全に穴が塞がってから自走でそのまま帰宅しました。
帰宅後、真っ先にタイヤの空気圧をチェックしてみると、およそ1.9barとMTBなら十分すぎる数値。
どうやらタイヤが高圧気味だと、空気混じりのシーラントがスプレー状に噴き出してしまい、機能的にベーシックなスタンズ無印シーラントでは短時間での補修が難しいみたいですね。
例えシーラントで穴が塞がったとしても、3.5bar程度の空気圧で簡単に再発するのはいただけません。
余談ですが、30分後にお漏らししたシーラントを拭き取りに戻ると、乾燥して半分くらい透明になっていました。
主成分は天然由来なので自然に分解されますが、迷惑になるのでアスファルト上でのパンクは御免被りたいですね。
チューブと同じ?パッチでチューブレスレディのパンク修理
検証のの結果、未補修のままでは3.5barの空気圧に耐えられないことがわかりました。
さて、どう修理したものかと調べてみると、チューブレスレディの上位互換ともいえるチューブレスの場合はパッチを使った修理がポピュラーなようです。
幸い、パンク修理キットはラテックス・ブチルチューブ用から最新のTPU用まで卒なく手元に揃っていますし、チューブと同じ方法なら何の問題もありません。
早速、タイヤを外して患部を確認してみると、穿刺された2mm弱の穴がタイヤ裏側まで貫通していました。
ピンホールと呼ぶには少し大き目でしょうか。
画像左の白いポッチがシーランドで出来た栓で、割としっかり貼り付いています。
タイヤ交換をした際にも感じていましたが、この『SCHWALBE G-One Speed』はトレッド面とタイヤサイドの厚さにほとんど差がありません。
トレッド面はノブがある分だけ多少強度はありますが、画像のように密集したノブの隙間を狙われると、あっけなくパンクしてしまいます。
チューブドならトレッド面が突破されてもチューブが無傷なら首の皮一枚で持ちこたえられますが、チューブレスはタイヤが突破されたら即陥落という訳ですね。
今回パンクしたSCHWALBE G-One Speedは国内未発売の29×2.35サイズですが、一回り細い29×2.00サイズはパンク耐性に優れるV-Guard仕様になっています。
今更ですが、こちらを選んでいれば少しは耐えられたのかも知れません。
パッチはタイヤの内側から貼り付けることになり、修理作業は短時間で終了しましたが、一つ問題がありました。
このグラベルタイヤに限った話かも知れませんが、紙ヤスリで表面を軽く荒らしただけでも薄いゴム層が剥がれ、その下にある繊維層らしきものが毛羽立ってしまいます。
毛羽立ちによる接着不良が気になったので、念のためゴムのりを多めに使って対応。
※後にチューブ補修ではゴム糊マシマシは逆効果だと知りました。
タイヤ内側の補修ならパッチ以外にタイヤブートも流用できるのではと思いましたが、残念ながらタイヤブートは内側からチューブで支えられることが前提の接着力しか備えていないとのこと。
さて、タイヤ内側の補修は済んだものの、高圧時の空気漏れが防げるだけでトレッド面の強度が不十分なままです。
気になって調べてみると、タイヤ補修でよく利用さている『Shoe Goo』や『セメダイン シューズドクターN』などの靴底補修剤をタイヤ外側の患部に盛るのが良いとの情報がありました。
このことから、チューブレスレディのパンク修理方法は以下の通り。
【1】タイヤ内側の患部にチューブと同じ方法でパッチを貼る
【2】タイヤ外側の患部に靴底修理剤で肉盛りする
このやり方でタイヤを裏表の両面から補修するのがベストなようです。
他に、パッチを貼る前に患部周辺を綺麗に拭き取りするというのがありますが、恐らくシーラントの被膜が残っているとパッチの接着が上手くいかないからかも知れません。
余談ですが、前述したリモネン主成分のシール剥がしは紙ヤスリによる表面の荒らしやバフ掛けと同じ効果が得られます。
タイヤの内側はデリケートなので、上手くいかない場合に紙ヤスリの代用にするのも手でしょうか。
チューブレス対応の修理・補修キットあれこれ
一応『REMA TIPTOP/レマ チップトップ』や『Hutchinson/ユッチンソン』からは、チューブレスに対応する修理キットもリリースされています。
専用ではなくチューブと兼用なので過度な期待はできませんが、通常のリペアキットよりもタイヤ内側への適性が高いのかも知れません。
サイクルベースあ〇ひでもWELDTITE/ウェルドタイトのチューブレス対応リペアキットが売られているので、これからは普通に見掛けるようになるのかも。
より安定感のある補修を望むならLEZYNE/レザインのチューブレス用修理・補修キット『TUBELESS PRO PLUGS』が一押しでしょうか。
自動二輪や自動車用の補修キットと似たような作りになっていて、タイヤ内側のパッチ補修とタイヤ外側の穴埋めが一つのパッチで一遍に可能。
タイヤを高圧にしても再発しづらい仕組みなので、チューブレスタイヤを新しい物に交換せずにタイヤ本来の寿命まで使い続けることができます。
まとめ
自転車を趣味にして以来、初のパンクがまさかチューブレスタイヤで起こるとは思いもしませんでした。
シーラントがスプレー状に噴き出すビジュアルが強烈すぎて軽くトラウマになりそうですが、色々と勉強になりましたね。
タイヤが高圧だと穴が塞がりづらく再発しやすい、タイヤによっては内側からのパッチ修理に難アリ、小型でもリアフェンダーはあった方が良い、これらを知れただけでも大収穫です。
グラベルタイヤはMTB用タイヤよりも高圧になりがちなので、シーラントは同じスタンズでもサラサラの無印ではなく、赤いキャップの顆粒入りレースシーラントの方が良さそうですね。
蛍光ピンク色のMuc-Off/マックオフやピーティーズのシーラントも評判が良いので気になりますが、どちらも6mm程度の穴なら問題なく塞いでくれるようです。