納車以来、カスタマイズ&軽量化をコツコツと続けているフルサス29erですが、優先順位が低くズルズルと先延ばしにしていたスルーアクスルに、ようやく手をつけることになりました。
同じスルーアクスルでも、ディスクロードやグラベルロードでは最初から軽量なボルト式のアクスルが採用されていますが、MTBやファットバイクなどのオフ車にはメンテナンス性を重視したレバー式の物が主流ですね。
正直なところ、頻繁にホイールを取外しするならレバー式やDTswissのRWSに代表されるレバー着脱式の方が使い勝手が良いのですが、ボルト式にはそれを犠牲にしても余りある数多くの利点があります。
【1】アクスル/スキュワーの重量がおよそ半分になる
【2】締め付けトルクが安定し数値で管理できる
【3】レバーの向きや固定位置を気にする必要がない
【4】レバーが枝や岩などの障害に引っ掛からず、事故防止に繋がる
【5】ホイール着脱に工具が必要になるため、気休め程度でも盗難対策になる
ざっと思いつく限りでは上記の5項目になりますが、少しわかりづらいのが【2】の締め付けトルクに関してでしょうか。
よく知られている話ですが、スルーアクスルとほぼセットで採用されている油圧式ディスクブレーキはローター・ブレーキパッド間のクリアランス幅が大変狭く、左右の隙間を合わせても1mm程しかありません。
そのため、ホイール着脱の前後でスルーアクスルの固定トルクが異なっていたりすると、ローターとパッドがシャリシャリと干渉する『引きずり音』を招くことがあり、感覚に頼ったレバー式で扱いに不慣れだったりすると、それに拍車が掛かります。
油圧デビューして間もない頃だと『ホイールを外す前は大丈夫だったのにナゼ?』と困惑しますし、ホイールを着脱する度にキャリパーのセンター出しをやり直す…そんな悪循環に陥ります。
因みに、私がスルーアクスルに対して重い腰を上げた一番の理由は、何を隠そう【3】のレバーの向きが原因です。
二組のホイールを使い分けていると、ふたつのホイールの僅かなエンド幅の違いから、レバーの最終的な固定方向が90度くらいズレることがあり、その度にアスクル側のレバー調節機能をいじるのが面倒になったからです。
さて前置きが長くなりましたが、今回は私の購入したWOLF TOOTH/ウルフトゥース製アクスルを肴にして、ボルト式スルーアクスルの利点や欠点について話題にしてみましょう。
軽量さは並みだけど…『WOLF TOOTH/ウルフトゥース製アクスル』を選んだ理由

私のフルサス29erはTREK『Full Stache 8』というセミファット仕様で、フロントはROCKSHOX系エアサス、リアはBOOST規格のABPという仕様です。
因みに、ABPはアクティブ・ブレーキング・ピボットのことで、リアブレーキ使用時でもリアサスが機能を失わないTREK製バイクの独自機構ですね、通常のBOOST規格よりも長めのリアアクスルが必要になります。
当初はこのフロント・リア規格に合わせた軽量なボルト式スルーアクスルを探していたのですが、この構成の場合だと前後のアクスルを同じメーカーの軽量アクスルで統一するのが難しく、出費も前後アクスルだけで¥20000弱を覚悟しなければなりません。
候補として、BOOST規格用のリアアクスル1本が26gと激軽な『ASERRA』製や、30g台ながら前後アクスルのメーカーを統一できる『CARBON-TI』製なんかも考えましたが、効果の薄い前後アクスルにそこまで出費するほど軽量化に頓着できず、『すでに目的は変わっているし、軽量化は二の次で良いのでは?』と考えを改めました。
さて、そこで私が選んだのが上画像のWOLF TOOTH/ウルフトゥース製アクスルです。
重量はボルト式スルーアクスルとしては40~50g台と標準的ですが、フレームに傷を付けづらく固定も安定するワッシャー付き、おまけに左右にアクスルキャップを取付けられるなど、他社製には見られない特徴があります。

普段はあまり意識しませんが、レバー式のスルーアクスルはフレームの保護にも役立ち、大抵は上画像のようにレバーがガリガリに傷付いてしまいます。
スルーアクスルをボルト式に交換してしまうと当然この機能は失われますが、それを上手く補ってくれるのが、前述のアクスルキャップな訳です。
このアクスルキャップは左右で用途が異なり、反ドライブ側は専らフレーム保護用でドライブ側はリアハブ固定式のメンテスタンドを使用する際に必要になります。
フロント・リアのアクスルを同じメーカーで統一でき、種類が多く大半のアクスル規格に対応してくれているのも魅力ですが、個人的にアクスルキャップを取付けられるのが一番の決め手になりました。
私も車体を壁や柱などに立て掛ける際は、この部分がガリガリと対象物に触れていることが多く、普通のボルト式アクスルだと、どうしても不安を感じてしまいます。
余談ですが、利点の多いボルト式スルーアクスルにも欠点があり、目視で異変が直ぐにわかるレバー式と違って、目安のないボルト式はアクスルの緩みに気付きづらいです。
うろ覚えですが、本家SRAMや傘下のROCKSHOXが『純正のボルト式アクスルは緩むのでマメに確認してね!』と公式に発言したことがあるそうで、この辺もワッシャー付きで強く固定できるWOLF TOOTH製アクスルを選んだ理由の一つです。
前後セットで購入『WOLF TOOTH/ウルフトゥース製アクスル』 の詳細

購入したのは、ROCKSHOXフォーク対応でBOOST規格のフロントアクスル、ABP対応で同じくBOOST規格のリアアクスル、反ドライブ側用のアクスルキャップの三つです。
因みに、フロントアクスルの正式名称は『WOLF AXLE』だそうで、ROCKSHOX用、FOX用、ロード用の三種類が準備されています。
気になるお値段ですが『安い!』と飛びついてしまう程ではないものの、他社製の軽量アクスル1本分のお値段でこれら全部を買えてしまうくらいにはリーズナブルでした。
購入場所にも寄りますが、国内外で価格差が殆ど無いのも地味に嬉しいですね。

アクスルの規格は上画像の通りで、フロントアクスルよりもABP対応のリアアクスルの方がレアですね。Φ12x198mmのリアアクスルをリリースしているメーカーは本当に限られ、WOLF TOOTH製以外は入手困難な場合も多いです。
個人的にお気に入りのアクスルキャップですが、八種類から選べるカラーバリエーションの中から無難にシルバーを選びました。折角カラフルにアルマイト塗装されていても、ガリガリ擦れて直ぐに剥げてしまう箇所なので、劣化が目立たないシルバーがやっぱりイチオシですね。

違いが気になったので、交換前にレバー式スルーアクスルとボルト式スルーアクスルを比較してみます。
以前にファットバイク用のスルーアクスルもボルト式に交換した経験があるので、直径とスレッドピッチさえ正しければ、トータルレングスやスレッドレングスに数ミリの差異があっても特に問題は無いことは学習済みです。
下側のフロントアクスル2本は目視でも問題を感じませんが、リアアクスルはボルト式のスレッド(ネジ切り)部分がレバー式よりも8mmほど短いのが気掛かりですね。
『もしや間違って購入したのでは…』と気になって調べてみると、他社製のABP対応&BOOST規格用リアアクスルもスレッドレングスは17~18mmとなっていて、どうやらこのサイズで間違い無さそうです。


実重量はレバー式がフロント78g、リア93gとなり、ボルト式はフロント48g、リア47gでした。差し引き76gとなり、アクスルキャップの4gを加味すると、トータルで72gの軽量化になりました。
値の張る軽量アクスルを選べば、レバー式からボルト式に交換するだけで100g以上の軽量化も可能ですが、それはまたの機会ということで…

さて、上画像を見るとわかりますが、前後のアクスルヘッドの下にはスチールワッシャーが備わっています。
WOLF TOOTH公式の説明によると、ワッシャーによってフレームやフォークが保護されると共に、締め付けトルクがクランプの加重として、しっかり伝達される仕組みになっているとのこと。
最大締め付けトルクはフロントが15Nm、リアが12Nmですが、着脱に使用する工具が少し変則的です。
フロントアクスルは6mmの六角レンチと極々一般的ですが、リアアクスルは5mmの六角レンチ使用と、一つの工具でホイールの着脱作業を済ませられない謎の仕様になっていました。

『これは使い勝手が悪いのでは…』と呟きたくなりますが、実はリアアクスルはヘッドの逆側にある末端部分が6mmの六角レンチに対応していて、やろうと思えば6mmの六角レンチ1本で前後ホイールの着脱が可能です。
もちろん、反対側からリアアクスルを利用する場合は逆ネジ扱いとなり、時計回りでアクスルが緩み、反時計回りでアクルスが締ります。

また、WOLF TOOTHの公式HPでも説明されていますが、アクスルキャップは8mmの六角レンチを使い、上画像のように、末端を6mmの六角レンチで固定した状態で取付けます。
アクスルキャップは穴あきの素通しになっているので、取付け後もヘッド側から5mmの六角レンチを引き続き使用可能ですが、ホイールの着脱に使う工具は6mmの六角レンチに統一して欲しかった…というのが本音ですね。代わりに盗難対策には若干プラスになりますけど。
余談ですが、6mmや5mmの六角レンチ以外にも、T25のトルクスを採用しているメーカーもあり、ちょっとだけ防犯性がアップします。
『 WOLF TOOTH/ウルフトゥース製アクスル 』交換後の感想

早速、ボルト式スルーアクスルの使用感を確認してみますが、単純にスルーアクスルを入れ替えるだけの作業なので、特に難しい点はありません。因みに、前後アクスル共に締め付けトルクは10Nmに統一しました。
唯一の障害は、アクスルキャップの厚みのせいで手持ちの簡易式トルクレンチでは5mmの六角レンチ穴まで届かなかったくらいでしょうか。
代わりに6mm側から締めましたが、こちらはこちらで逆ネジ対応のトルクレンチじゃないと数値が測定できない罠があります。
さて、まずはフロントアクスルですが、締め付け加減をしっかり数値で管理できるようになったお陰で、ホイール着脱の度に高確率で再発していた、ディスクブレーキの引きずり音が随分と疎遠になりました。
以前はホイールを着脱すると高確率で再発していただけに、これは本当に嬉しい変化です。

続いて注目のリアアクスルですが、元々でっぱりのあるABPの影響で予想よりも外側に突き出した外観になりました。
ABP部分を除いた、アクルスのヘッド部分とアクスルキャップを加えた厚さが3cm程あり、元のレバーよりも防御力がアップしています。
また、ボルト式に交換したことで、ホイール毎に発生するレバー固定位置のズレも起こらなくなり、これで心置きなくホイールの使い分けが出来るようになりました。

リアアクスルの反対側はこんな感じで、6mmの六角レンチでアクスルを緩めたい場合は、こちら側から時計回しにするとホイールを外すことができます。
6mmの六角穴が開いているので、以前に紹介したKCNC製のスルーアクスル対応ディレイラーガードが使える点にも注目でしょうか。


アクルスキャップをダイレクトに接触させて駐輪することは殆どありませんが、画像の通り中々良い仕事をしてくれます。曲がりやすいローターを保護してくれるのも良いですね。
すぐに先端がガリガリになってしまうと思っていましたが、そこそこ硬質なアルミで作られているため、元のレバーよりも頑丈なくらいです。
傷んでも直ぐに交換できるパーツなので、これからは頻繁にお世話になるかも知れません。
駐輪時はもちろんのこと、転倒してもフレームに直接ダメージが及びづらくなるため、これとセットで使えるディレイラーガードもWOLF TOOTHに作ってもらいたいですね。
まとめ
ボルト式のスルーアクスルについてあれこれ話題にしてみましたが、重量面はいたって普通なものの、WOLF TOOTH/ウルフトゥース製のアクスルには一味違った魅力がありますね。
未だに5mm六角レンチの件だけが腑に落ちませんが、そもそも使い勝手を優先するなら最初からボルト式に交換しなければ良い話です。
最後になりますが、前述したようにボルト式スルーアクスルはレバー式と比べて、緩んだことに気付きづらい傾向にあります。
経験上、既にボルト式に交換済みのファットバイクで緩んだことは一度ありませんが、定期メンテナンスやクリーニング時にホイールを取外す習慣の無い方は、折を見てアクスルを確認することをお忘れなく。