このブログでも度々話題にしていますが、私はTPUチューブを愛用しています。
TPUチューブは熱可塑性ポリウレタンをメイン素材とする次世代のチューブで、ブチルやラテックスといった従来のチューブと比較して、超軽量&高パンク耐性といった特徴があります。
特にチューブ重量が嵩みがちなMTBやファットバイクでの恩恵が大きく、足まわりを一気に軽量化できたり、チューブレス化に対応していないホイールでも似たような効果が得られたりと、私にとってまさに夢のチューブでした…
『でした…』と微妙に過去形で締めているのには訳があり、ひと通り使ってみた経験から『流石にそんな都合の良い話ばかりでは無い』と学習済みだからです。
まだまだ発展途上の製品ということで暖かい目で見守り続けていますが、今回は使う前に知っておきたいTPUチューブの弱点やデメリットについて話題にしてみたいと思います。
知っておきたい『TPUチューブ』3つのデメリットとは?
現在、TPUチューブの代表的な製品には『Tubolito/チューボリート』『REVOLOOP/レボループ』『Schwalbe Aerothan/エアロザン』の三種類があります。
素材が熱可塑性ポリウレタンであることは共通していますが、それぞれに微妙に異る特徴を持っているため、後述する3つのデメリットが必ずしも当てはまるとは限りません。
TPUチューブはだいたいこんな感じだよ…くらいに受け取って貰えると幸いです。
デメリット【1】チューブの使いまわしが難しい
このデメリットについては割と良く知られていますね。TPUチューブはチューブでありながら、伸び縮みが苦手という生まれながらの弱点を持っています。
わかりやすく説明すると、一旦チューブが伸びると伸びっぱなしになってしまい、例えば一度29×2.4インチのタイヤで使用したTPUチューブはダルダルに伸び、それよりも小さいタイヤには使いまわしできなくなります。
これは主にTubolitoで注意喚起されいる内容ですが、他社製でも該当するのかは不明瞭ですね。私の経験上、REVOLOOPも伸びてしまいますが、ファットバイクやMTB用でプラスマイナス0.2インチ程度の範囲内なら、それほど神経質になる必要は無いでしょうか、もちろん非推奨ですけど。
因みに、TPUチューブには『タイヤに入れていない状態で膨らませてはダメ!』と共通した注意書がされています。
流石にパンク修理時はタイヤ外で空気を入れなければならないので、REVOLOOPのように『0.5barまでならOKだよ!』といった説明がされていますが、TPUチューブは従来のチューブよりもバーストしやすいという理由以外に、タイヤ外で空気を入れると使用するタイヤサイズよりもチューブが伸びてしまう恐れがあるから、というのも理由の一つだそうです。
伸びたチューブで具体的にどんな不具合が生じるのかはわかりませんが、杓子定規に使うならTPUチューブはタイヤ毎にセットで準備するのが良さそうです。
デメリット【2】バルブが破損しやすい
TPUチューブは軽量化のためにバルブコアを除くバルブ本体もポリウレタン製になっています。チューブ軽量化のブレイクスルーになった大改良点だったのですが、非金属製ゆえにトラブルも多いですね。
ロードバイクで人気のTubolito製チューブでよく聞きますが、ホースの付いていない携帯ハンドポンプで力み過ぎて、ポリウレタン製のバルブ本体が『くの字』に曲がってしまった…といった話が有名です。
そのまま何事もなく走れる場合もありますが、大抵はバルブが曲がって気密が甘くなりスローパンク、修理方法も存在しないため泣く泣く廃棄…という流れになります。
経験上、TubolitoよりもREVOLOOPの方がバルブが硬質でしっかりしていますが、REVOLOOPもバルブコアが金属製でバルブ本体がポリウレタン製であることには変わりありません。
『くの字』に曲がることはなくてもバルブコアの取扱いには注意が必要で、緩く締めると空気が漏れ、増し締めするとポリウレタン側のネジ山が舐めてしまう、といった危険性があります。
過去にバルブコアを増し締めしただけで空気漏れを起こした経験があるので、それ以来TPUチューブのバルブコアには極力手を付けないようにしています。
デメリット【3】パンク修理がムズカシイ
最後のデメリットはやはりパンク修理に関する点でしょうか。結果的に良い勉強になりましたが、TPUチューブで何度かパンクを経験したことがあります。
因みに、TPUチューブのパンク修理には専用のパッチが必要で、付属のアルコールワイプで患部を脱脂してから、シール状のパッチを貼り、5分乾燥させるだけで終了です。
初めてだと勝手がわからず混乱しますが、ワイプでの拭き取りはチューブに空気が入っていてもOK、その状態でパッチの貼り付けても構いませんが、個人的に空気を抜いてシワをしっかり伸ばした状態で行った方がパッチをしっかり圧着できるように思います。
上画像ではREVOLOOPのチューブにTubolitoのパッチを使っていますが、この組み合わせでも特に問題なく使用でき、Tubolitoのパッチは楕円形で表面が硬質な作り、REVOLOOPのパッチは2x2cmほどの正方形で柔軟性のある作りといったような特徴があります。
私は両方のパッチを試した経験がありますが、小サイズ&硬質ゆえにチューブの変形に対しての追随性に不安が残るものの、Tubolitoの方が使い勝手に優れる印象でしょうか。
パッチ自体の質はサイズが大きく柔軟性もあるREVOLOOPの方が優れていますが、こちらは使用する際にパッチが台紙から上手く剥がれてくれず、パッチの角が指の皮脂によって劣化しがちですね。
メーカーを問わずTPUチューブのパッチはどれも粘着力の強いシールみたいなシロモノですが、『簡単に貼れて剥がれづらい』といった使いやすさの部分は無視できない要素でしょうか。
さて、私が経験したパンクはチューブの内側に患部のある原因不明のスローパンクが大半だったため、全てのケースに該当する訳ではありませんが、TPUチューブのパンクは患部を水なしで特定するのが大変困難でした。
タイヤを貫通するような刺突パンクで、ようやく空気漏れを肌で感じられるレベルでしょうか。
従来のチューブと比べてパンク耐性が高いせいか、患部が綺麗なままな場合が多く空気漏れの勢いも大変穏やかです。
そのため目視はもちろんのこと、屋外では頬や唇を近づけても空気漏れを感知するのが難しく、ライド中にパンクした場合はその場でのパッチ修理がほぼ不可能です。
普通はチューブに空気を多めに入れることで空気抜けの勢いが増し、少なからず患部が特定しやすくなるのですが、前述したタイヤ外チューブの空気圧制限があるため、それもままならないというオマケ付き。
TPUチューブの場合、軽度のパンクなら数十分はタイヤが持ってくれるので騙し騙し走り続けることも可能ですが、予備チューブがあるならケチらずに素直に交換して、穴の開いたチューブは自宅でゆっくりと修理する方法がオススメですね。
また、TPUチューブは非常に薄いためチューブの噛み込みが起こりやすく、タイヤレバーで煽った際にもチューブを傷付けがちです。従来のチューブは少し空気を入れることでタイヤへの納まりが良くなりますが、TPUチューブは空気を入れると逆に失敗しやすくなる場合もあるとのこと。
特にMTB用などの太目のTPUチューブは、中途半端に空気を入れると表面のツルツルした質感が災いして、生きたウナギのようにチューブが飛び出しやすくなる印象でした。
チューブ内が真空に近いほどタイヤへの納まりが良くなるため、バルブコアを外して手っ取り早く空気を抜きたくなりますが、前項で触れた事情により面倒でも地道に手でしごいて空気を抜くのが一番です。
余談ですが、TPUチューブは使っても使わなくても変色を起こします。未使用時は全体が僅かに黄ばむ程度ですが、上画像のようにタイヤ内に入れると変色が加速し、トレッド面側の影響が特に大きくなります。
これはトレッドのコンパウンドが原因で、新しいタイヤほど変色しやすいそうですが、機能面には何ら影響はありません。白いTPUチューブだと嫌でも黄ばみが目立ちますが、Tubolitoはこれを見越してオレンジ色のチューブ色を採用しているのでは?と勘ぐってしまいますね。
『Tubolito』『REVOLOOP』『Schwalbe Aerothan』三大TPUチューブの違いについて
前項でも軽く触れ通り、TPUチューブには『Tubolito/チューボリート』『REVOLOOP/レボループ』『Schwalbe Aerothan/エアロザン』といった有名処があります。
その中でTubolitoとREVOLOOPは姉妹のような関係にあり、修理パッチの使い方や仕様など共通する点も多いです。
実際に使った経験からすると、前述したようにバルブ部分の強度はTubolitoよりもREVOLOOPの方が高いのですが、チューブ本体の強度はREVOLOOPよりもTubolitoの方が優秀ですね。
REVOLOOPはTubolitoよりもチューブの軽量化に熱心で、その影響からか原因不明のスローパンクが起きたり、タイヤレバーで簡単に穴が開いてしまったり、パンク修理が失敗しやすかったりと、普段使いするには若干扱いづらい印象があります。
ほぼ同じ仕様の29er用TPUチューブで比較してみると『Tubolito Tubo MTB Tube 29×1.8-2.4』が85g、『REVOLOOP REVO.MTB ultra Tube 29×1.6-2.4』が45gと約2倍の重量差があり、REVOLOOPはレース用またはチューブレス化の代用といった目的に向いています。
今のところファットバイク用TPUチューブをリリースしているのはREVOLOOPのみ、406・451などのミニベロ用TPUチューブはTubolitoのみ、セミファットバイク用の3.0インチ用TPUチューブはTubolitoとAerothanの両者からといった感じに、700c用TPUチューブ以外は微妙に棲み分けがされているのも面白い点ですね。
さて、TubolitoやREVOLOOPに続く最後発のTPUチューブとして期待を集めているのが『Schwalbe Aerothan/エアロザン』です。
こちらも29er用TPUチューブで比較してみると『Schwalbe Aerothan Tube SV19E MTB 29″ (54/62-622)』が87gと、軽さ重視のREVOLOOPよりもTubolitoを強く意識した作りなっていました。
また、不具合の多いバルブ部分はREVOLOOP寄りの硬質な作りになっていて、全体的にTubolitoとREVOLOOPの良い部分をミックスさせた安定感のある製品に仕上がっています。
少し気になるのがバルブ先端の形状で、特定の携帯ポンプが使えないとアナウンスされている上に、出荷状態でバルブコアが緩めに固定されいる場合も。
一部のねじ込み式ホース付き携帯ポンプとの相性が悪く、バルブコアが共回りして外れてしまう不具合があるそうで、この部分は賛否がわかれるかも知れません。
因みに、Aerothan/エアロザンもタイヤ外でチューブに空気を入れ過ぎるのはNGで、こちらは0.3barまでの上限となっています。
他のTPUチューブとの一番の違いはパンク修理の方法で、リペアキットには脱脂用のワイプが付属せず、ブチルやラテックスと同様に表面を紙ヤスリで荒してから粘着パッチを貼る方式が採用されいます。
【追記】 シュワルベHPの『よくある質問』 によると、リペアキットには『Schwalbe Glueless Patches』を使いますが、ブチルやラテックスのように表面を荒らす必要は無いそうです。他社製のTPUチューブと同様に表面を綺麗にしてからパッチを貼り付ける方式ですね。
余談ですが、海外のレビューでは耐熱性に優れリムブレーキ車でも使えるなど、チューブそのものは概ね高評価だったものの、パッチの使い勝手や機能性がイマイチだと評価されていました。これを見る限り、REVOLOOPのパッチに近い性質なのかも知れません。
まとめ
正確な情報が見つからなかったので最後に軽く触れておくだけにしますが、TPUチューブはポリウレタン製だけに経年劣化や加水分解が無縁ではありません。
ポリウレタンには加水分解に強い組成の物もあるので一概にはいえませんが、未使用なら五年、使用済みで二年程度と捉えるのが妥当でしょうか。
TPUチューブが登場した当時は『数年以内にチューブは全てTPUに置き換わってしまうのでは…』なんて思っていましたが、丸一年使ってみた結果として割とTPUチューブ贔屓な私から見てもまだまだ課題が多いと感じます。
軽量重視のREVOLOOPは別としても、シュワルベの29er用TPUチューブ『Aerothan』が87gなのに対して、同シュワルベの軽量ブチルチューブ『SV19A』が140g弱ですから、不自由な点も多いTPUチューブに魅力を感じるか否かは微妙なラインかも知れませんね。
因みに、私がREVOLOOPでスローパンクした際は、あまりに空気抜けが遅かったため、バルブの不具合なのかパンクなのか判断に迷いました。
急なパンクでも緩やかな空気抜けで安全に停車できる、という点もTPUチューブの長所だそうですが、タイヤの空気圧が2.0barから0.5bar以下になるまで半日以上という非常にスローなペースだったため、水バケツでようやくパンクなんだと理解できたくらいです。
流石にタイヤのトレッド面を貫通する刺突パンクではそうもいかないでしょ?と思ったのですが、実際に経験してみると携帯ポンプを使った一回の充填で5kmくらいなら余裕で走れました。この点は素直に評価したいです。