遂に低価格化?グラベルで使える『サスペンションステム』あれこれ

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ここ数年のグラベルロード推しで注目度の高まったパーツが二つあります。

一つはサスペンションシートポスト。

もう一つは、本日の主役ことサスペンションステム

どちらも快適な乗り心地を提供してくれる代物ですが、価格が高価な上に車重もマシマシになってしまうため、導入を躊躇う人が多いです。

私も過去にミニベロの振動対策としてサスペンションステムの導入を考えましたが、価格がネックになって購入には至っていません。

そして現在……

私の愛車はサスペンションステムに打って付けなグラベルロードになっています。

クロモリフレームなので振動には強い方ですが、MTBなどのグリップと比べてブラケットポジションでの握りは悪路で不安定になりがち。

予期せぬ段差には滅法弱く、油断しているとハンドルから手が弾かれそうになってしまうことも。

悪路ではフレアハンドルでの下ハンが定石なものの、あの態勢を続けるのは中々の拷問。

上体を起こしたままのリラックスポジションで、のんびりとグラベルを楽しみたいのが本音でしょうか。

グラベルロード乗りにとって一種のロマン装備と呼べるかも知れませんが、今回は低価格モデルを交えた注目のサスペンションステムについて話題にしてみたいと思います。

意外と知らない「サスペンションステム」の違いと選び方

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前置きとして、サスペンションステムの基礎知識について触れておきましょう。

製品によって振れ幅がありますが、サスペンションステムはリジッドステムと比べて30%程の振動軽減が見込め、トラベル量は10~20mmの製品が一般的。

砂利道のように高周波な振動が続く路面を得意とし、ロングライド時の疲労軽減にも高い効果を発揮してくれます。

サスペンションステムにはコイルスプリング式とエラストマー式の二種類があり、前者はバネで後者はゴムで衝撃を吸収する仕組み。

コイルスプリング式は高周波振動への効果がより高く、エラストマー式は使用時の弾みが控えめだったりと、それぞれに特徴があります。

コイルスプリング式よりもエラストマー式の方が軽量ですが、サスペンションステムの導入はリジッドステムと比べて100~200gの重量増が目安になるでしょうか。

ここからが割と大事な内容。

サスペンションステムにはシングルピボットとマルチピボットの二種類があり、それぞれに使用感や特性が異なります。

【シングルピボットステム】は一点を軸に弧を描くように動作するため、ハンドポジションによって効き具合やトラベル量が変化し、使用するステム長にも影響を受けます。

ステムから遠いブラケットポジションの時は柔らかく動作し、ステムに近いフラットポジションの時は硬く動作すると言えばわかりやすいでしょうか。

また、シングルピボットステムは弧を描く動作の仕組み上、カモメハンドルのようにバックスィープのあるハンドルとは相性が悪く、実質ドロップハンドルにしか使えないサスペンションステムです。

【マルチピボットステム】はハンドポジションやステム長の影響を受けづらく、ハンドル本来の角度を維持したまま下方にスライドするように動作します。

構造上シングルピボットよりも重量が増えてしまいますが、ドロップハンドル以外にも問題なく使え用途はグラベルロードに限りません。

因みに、シングルピボットでもマルチピボットでもサスペンションステムは動作軸を設ける必要があるため、ショートステムを作りづらい性質があります。

最短でもステム長は70~80mmとなっていてMTBとはややミスマッチ。

ハンドルクランプ径もΦ31.8mmが殆どで、オフ車で主流になりつつあるΦ35mmとは異っています。

以上がサスペンションステムで知っておきたい基礎知識でした。

ここからは定番人気のサスペンションステムを幾つかピックアップしてみます。

REDSHIFT「ShockStop Suspension Stem」

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トップバッターは古参のサスペンションステム、REDSHIFT/レッドシフトの「ShockStop Suspension Stem」です。

国内でも入手しやすいせいか、ミニベロやグラベルロードに使っている方も多く、エラストマー式にシングルピボットというスタンダードな組み合わせ。

重量は260~280g程で、より軽量なプロバージョンも存在します。

以前よりも少し値上がりしたようで、お値段は30000円前後とシングルピボットにしては少しお高め。

5種類のエラストマーにより調整幅を細かく設定できる利点がありますが、ハンドルを外さないとエラストマーの交換ができないなど、設定を煮詰めたいこだわり派にはやや不向きな側面も。

因みに、現在リリースされているサスペンションステムでは、唯一ステムの逆付けにも対応していて、個性的なサスペンション動作をするとのこと。

grunge「RANGER AS STEM」

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コスパの良さで人気を集めているのが、こちらのgrunge/グランジ「RANGER AS STEM」です。

東京サンエスのオフ車向けブランドがリリースしているサスペンションステムで、レッドシフトと同じエラストマー式にシングルピボットという組み合わせ。

なんと言っても価格の安さが魅力で、10000円強で実用レベルのサスペンションステムが手に入ります。

ステム長は70cm/80cm/90cmに限られ、グラベルロードに的を絞った製品という印象。

重量は333gと少し嵩みますが、この辺は価格とトレードオフといったところでしょうか。

また、調節用のエラストマーは三種類付属し、ステム本体にも六角レンチで回すプリロード調整機能が備わっています。

ステムはピボット軸を抜くとヒンジ部分から二分割できる作りになっていて、レッドシフトのようにエラストマー交換時にハンドルを外す必要はありません。

実際に使用した方によると、ステムは下方向に動作するだけでなく上方向にも僅かに遊びがあるそうで、ハンドルを引きがちな方は違和感を覚えやすいとのこと。

グラベルロードでもフロントアップは頻繁にやるので、遊びにより動作がワンテンポ遅れる感じでしょうか。

他にも、シングルピボットはブレーキ時にもハンドルが沈み込むように動作するので、初めのうちは色々と戸惑うかも知れませんね。

CANECREEK「eeSilk Suspension Stem」

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続いてもシングルピボット、CANECREEK/ケーンクリークの「eeSilk Suspension Stem」です。

仕様はレッドシフトやグランジとほぼ変わりませんが、ステムのサスペンション機能をロックアウトできる唯一の製品です。

ロックアウト用のコンプライアンススイッチを備えた「eeSilk Stem CS」と簡易版の「eeSilk Stem SL」があり、前者が200ドル、後者が220ドルほど。

重量は230g前後と軽量で、ボルトを一本外すだけでエラストマーを交換できる使い勝手の良さも兼ね備えます。

値は張るものの、オンロードとオフロードの両方をシームレスに楽しみたい方には悪くない選択肢かも知れません。

余談ですが、CS版の国内価格は45000円弱とかなり高価。

その上、スイッチ無しのSL版が「eeSilk Stem WITHOUT CS」という紛らわしい名称で販売されているので、間違えて購入しないように注意しましょう。

KINEKT「Suspension Stem」

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マルチピボットステムで人気を集めるのが、こちらのKINEKT/キネクト「Suspension Stem」です。

マルチピボットだけに470g~530gと重いですが、ドロップハンドルからストレートバーまで対応し、様々な車種で使えるのが魅力。

コイルスプリング式で強度別に三種類が付属、複数のステム長の他に7度/30度/50度からライズも選べ、ハンドル位置の低い自転車のアップライト化にも役立ちます。

価格は25000円強と少しお高めですが、海外ブランドのシングルピボットステムと比べると安価という見方も。

また、コイルスプリング式につき少し跳ねるような使用感になり、強い段差ではノック音がすることがあるとのこと。

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因みに、よく似た中華製が8000円前後で販売されています。

本家キネクトのHPでも類似品に注意して!と公言されていて、その安さから手を出してしまう方も多いとのこと。

キネクトと比べると、荒れた路面でカタカタと音鳴りしやすいものの、ロングライドなどの疲労軽減には十分な効果が見込めるそうです。

同型でロゴ無しの製品も数多く出回っていますが、上画像のMEROCA/メロカが類似品では一般的かも。

本家よりもコイルスプリングの交換が容易だったり本数が多かったりと一応の差別化は見られますが、重量は485gで今のところステム長は90mmの一種類しか確認できません。

国内レビューも悪くないので、あからさまな粗悪品ではなさそうですが、「この価格なら十分……」という枕詞が付くサスペンションステムでしょうか。

VECNUM「freeQENCE suspension stem」

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最後を飾るのがこちら、VECNUM/ヴェクナムの「freeQENCE suspension stem」です。

信頼のドイツ産でヨーロッパのグッドデザイン賞的な物を獲得した、ちょっとゴツめの製品。

この外観の割に287gと軽量でマルチピボットとエラストマーを組み合わせた、良いとこ取りのサスペンションステムです。

トラベル量は少し多めの30mmで、下方に20mm上方に10mmの動作。

上方にも動作することで、トップアウト時でも底づきが起こりづらい仕組みにとのこと。

最大75%の振動軽減が見込める完成度の高いサスペンションステムで、側面にある六角穴ボルトでエラストマーの効き具合も調節可能という隙の無い仕上がり。

唯一の難点は価格で、現在の為替レートだと50000円近いお値段になってしまいます。

まとめ

グラベルロード向きなサスペンションステムを幾つか紹介してみましたが、やはりgrunge/グランジ「RANGER AS STEM」のコスパの良さが光ります。

同シリーズにはサスペンションシートポストもラインナップされているので、セットで使うのも面白そう。

グラベルロードだけでなくミニベロにも使ってみたくなりました。

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