そろそろ買い時かも知れない……
私もそうですが、電動ポンプに対してそんな距離感でいる方も多いはず。
人気の火付け役となったのは言わずと知れた「CYCPLUS/サイクプラス」で、今や電動ポンプの代名詞的存在に。
実用レベルでありながらツールケースにすっぽりと収まるコンパクトさが高く評価され、従来のハンドポンプやCO2カードリッジから乗り換える人も増えています。
パンク後のリカバリー作業から疲労感を消し去ってくれる代物ですから、自転車乗りに受けない筈はありません。
ここ数年の自転車界隈では、間違いなくゲームチェンジャーのひとつに数えられるでしょう。
さて、そんなお役立ちアイテムだけに、いつまでもCYCPLUSの独擅場ではありません。
大手ブランドも本腰を入れ始め、市場に魅力的な製品を投入し始めました。

その代表例といえるのが「TOPEAK/トピーク」で、自転車用アクセサリーの分野では知らぬ人が居ないほど著名なブランドですね。
CYCPLUSの携帯用電動ポンプが注目を集めたのが2023年のことですから、今までリリースしていなかったのが不思議なくらい。
製品名は「E-BOOSTER DIGITAL」で、トピークが初めて手掛けたポータブル式電動ポンプとなります。

まさかのホース一体型と思いきや、これは素の姿ではなくホースを繋いでいる状態。
このホースは通常の延長用としてだけでなく、電動ポンプの発熱からTPUチューブの非金属製バルブを保護する目的も兼ねます。
TPUチューブの利用者は増加傾向にありますし、小径車のホイールやロングタイプのバルブではボックス型の電動ポンプを挿し込むスペースが確保できないこともあるので、今どきの電動ポンプには欠かせないオプションですね。
また、CYCPLUSではAS2 Proから採用のデジタル表示画面も標準装備していて、エアゲージやバッテリー残量の確認がしやすく、オートストップ機能も使えます。

口金部分はレバー操作で仏式と米式を瞬時に切り替え可能なトピークお得意のスマートヘッド方式。
充電ケーブルにはUSBタイプCが採用され、充電時間は45分ほど。
トピーク公式によると最大120PSIまで充填可能で、80PSI/5.5BARまでなら50秒で充填できるとのこと。
また、バッテリーは600mAと大容量で、こちらもCYCPLUS AS2 Pro Maxを強く意識した値。
気温などの環境にも左右されますが、容量が600mAもあれば700×25Cのタイヤを100PSI前後で4回は充填可能です。
因みに、競合するCYCPLUS AS2 Pro Maxは120PSIまで75秒で充填を謳っていますが、これはカタログ値での話。
実際に試した方によると、80PSI弱まで45~50秒ほど、100PSI以上にするには90秒前後は必要だそうで、100PSI以上の高圧では上位モデルでも下位モデルでも充填時間に極端な差は無かったそうです。

さて、携帯できる電動ポンプということで、最も気になるのがそのサイズ感でしょうか。
上画像は現行のCYCPLUS三機種とTOPEAKの「E-BOOSTER DIGITAL」を並べた物ですが、画像の中央を境にして携帯性に差があります。
左から順にCYCPLUS「AS2」「AS2 Pro」「AS2 Pro Max」、そして最後がトピークの「E-BOOSTER DIGITAL」
この中で標準的なツールケースに無理なく収納できるのは「AS2」と「AS2 Pro」だけで、「AS2 Pro Max」と「E-BOOSTER DIGITAL」には相性問題も。
「AS2 Pro Max」はシリコンケースを外したり口金を外したりといった工夫でギリギリ収納できる場合もありますが、「E-BOOSTER DIGITAL」はサドルバッグ等に収納するのが現実的なサイズ感となります。
CYCPLUSシリーズはデジタル表示画面を備えつつツールケースにも収まる「AS2 Pro」が一番人気だそうですが、やはりサイズと機能のバランスが良いからなのでしょうね。
言い忘れましたが、バッテリーの出力はAS2 Pro Maxの11Vに対して、E-BOOSTER DIGITALはAS2やAS2 Proと同じ7.4Vです。
電圧が高いほどモータの出力が高く発熱も控え目になるので、この点に関してはAS2 Pro Maxに分がありそう。

個人的にちょっと面白かったのが付属品の充実っぷり。
この辺りもライバルのCYCPLUS AS2 Pro Maxを意識していて、シリコンケースや収納バッグの他に防水仕様のジッパーバッグまで付属します。
トピーク初の電動ポンプということで良くも悪くも没個性な印象ですが、機能面は卒なくまとまっていて欠点は本体サイズが若干大きめなことくらいでしょうか。
こういった電動ポンプは小型化にどうしても限界があるのであまり無茶なことは言えませんが、次期モデルにはコンパクト化などのブラッシュアップに期待したくなりますね。
因みに、価格は税込16500円と控え目で、実売価格ならデジタル表示画面の無いCYCPLUS AS2とほぼ横並び。
機能面でCYCPLUSに大きく劣る部分はありませんし、ツールケース収納に拘らないのなら悪くない選択肢になりそうです。

最後になりますが、とにかくコンパクトな電動ポンプが欲しい方のために、GORIX/ゴリックスの「CUBE」についても軽く触れておきます。
仕様は上画像の通りで、ツールケースにもすっぽりと収まってしまうサイズ感が売り。
バッテリー容量は300mAと控え目で、これはCYCPLUS AS2と同じ値です。
デジタル表示画面もオートストップ機能もありませんし、TPUチューブ用の熱対策口金も付属しない必要最低限の作りですが、価格は8000円と非常に安価。
マニュアルによると700×25Cのタイヤに50PSIなら3回充填可能なものの、100PSIだと1回のみと高圧では力不足な印象ですね。
16GのCO2カードリッジの重量が60g程度、軽量インフレーターなら10gの製品もありますから、重量面でも機能面でもあまり利点を感じませんが、スマホ用にモバイルバッテリーを常備しているなら即再充電して使い続けるといった活用法も。
若干癖のある製品ですが、チューブド派なら一考の余地あり、チューブレス派なら緊急時のビード上げもできるCO2カードリッジを選びたいところでしょうか。