電動ポンプの登場により、最近はめっきり影の薄くなった手動の携帯ポンプ。
このまま電動やCO2カードリッジに駆逐されてしまうのでは……なんて思うこともありますが、それはパンク修理に限った話。
携帯ポンプにはタイヤの空気圧を微調整する役割もあり、オフロード車乗りからすると、こちらの用途の方が本筋かも知れません。
私は専ら手動ポンプ派ですが、以前から気になっていたのがウルフトゥースの「ENCASE PUMP/エンケースポンプ」という製品。

このハンドポンプはコンパクトなだけでなく、内部に工具類を収納可能なストレージスペースを備えた今までに無かった代物。
元々ウルフトゥースにはハンドル内部のデッドスペースに工具を収納する「ENCASE SYSTEM」というツールキットがありますが、そのノウハウが携帯ポンプ内部のデッドスペースにも応用されています。
何となくサバイバルナイフのハンドル部分を想起させるアイディアで、内部に隠されたサバイバルキットのように男心をくすぐりますね。

少し前までは全長244mmの「ENCASE PUMP 85CC」と全長141mmの「ENCASE PUMP 40CC」の二種類だけでしたが、新たに全長120mmの「ENCASE PUMP 30CC」が追加。
内部のデッドスペースを利用する仕組み上、これ以上のコンパクト化は無いと思っていたのですが、手のひらに収まる最小サイズでの登場です。
軽さを何より尊ぶ自転車乗りには大変魅力的に映りますが、よくよく調べてみると色々とガッカリな点も。

確かに「ENCASE PUMP 30CC」は全長120mm、直径31mm、重量87gとコンパクトですが、ワンサイズ上の40CC版と比べて格段に小さいという訳ではありません。
そして何より問題なのは、「ENCASE PUMP 30CC」と既存の「「ENCASE PUMP 40CC/85CC」とでは、内部ストレージ用の工具類に互換性が無い点です。
現在30CC用としてリリースされているのはチューブレスタイヤ用のプラグツールだけで、20mmの短小化が裏目にでてしまった印象。

ウルフトゥースのことですから、後々30CC用の工具も充実するでしょうけど、現時点ではサイズ感に差が無く工具類も三種類から選べる「ENCASE PUMP 40CC」の方が安心感がありますね。
因みに、40CCがストレージに収納できるのは「チューブレスタイヤプラグツール」、「チェーン+タイヤプラグマルチツール」、「ヘックスビットレンチマルチツール」のどれか一つで、最大サイズの85CCになら二つ収納できます。
個人的に自由に使えるフリーストレージ的な物も欲しいので、中が空洞になった汎用キットもリリースして欲しいところ。

あと、これは長所でも短所でもあるのですが、ポンプヘッドはバルブに押し込むだけのプレスオンフィットと呼ばれる方式。
レバーでクランプする必要もホースをねじ込む必要も無くスムーズな着脱ができるものの、ヘッド部分にはフィット感が求められるため、対応するバルブは仏式のみで米式や英式には未対応とのこと。
言い忘れましたが、エンケースポンプの最大空気圧は70PSI/4.8BARなので、グラベルロードやマウンテンバイク用として使うのが良さそうです。
正直な話、ストレージ用ツールの互換性を潰してまで、コンパクト化する必要はあったのだろうか?
そんな感想が漏れますが、何となく10年くらい前に流行った「air bone/エアボーン」のことを思い出しました。

エアボーンも全長99mm、直径21mm、重量49~59gとコンパクトでしたが、実用性よりもお守り的な意味合いが強かったですね。
ロード乗りがCO2カードリッジのバックアップ用として携帯することが多く、別売りの「お助けチューブ」を組み合わせることで、ギリギリ実用レベルになった覚えがあります。
私もミニベロ用として携帯していたことがありますが、小径車にならこのサイズでも十分でした。
最近見掛けなくなったので廃番になったかと思いきや、ちゃっかり販売は続けられていて、未だに根強い人気がある模様。