私の住む地域では数年前からクマの被害が頻発しており、趣味であるウォーキングやトレッキング、サイクリングに支障が出始めています。
季節や時間帯によってコース変更するなど最低限の対策はとっていますが、自転車に乗っている状況下ではそうそう襲われるものでは無いと何の根拠もなく思い込んでいました。
ところが先日、某県某所でサイクリング中の男性がクマに襲われるという事件があり、その考えを改めます。
状況として、合計三頭のクマが道路を横断しているのを遠間から眺めていたところ、そのうちの一頭がいきなり突進してきたとのこと。
自転車に跨ったままの状態で脚に噛み付かれ、必死で振り解いて何とか逃げ延び、辛うじて軽症で済んだそうですが、私にとって自転車に乗っている状態でクマに襲われる話は初耳でした。
現場は舗装路でしたし、どこにでもある田舎道で山間ではありません。
時間帯は早朝と共にクマの活動が盛んになるとされる夕暮れ時で、子熊を連れた母熊だったのが最大の不運でしょうか。
この事件は大変稀なケースですが、自然の多い場所でのサイクリングやウォーキングでクマ同様に危険なのがハチです。
スズメバチやアシナガバチはクマよりも遥かに身近ですし、遭遇率も比較になりません。
幸い刺されませんでしたが、走行中に衝突したハチがメッシュ生地のウェアに絡まり、軽くパニックになったことも。
また、停車中に纏わりつかれることも度々あり、出来るだけハチを刺激しないようにジッと動かずにやり過ごすのですが、この方法は恐ろしく神経をすり減らします。
クマにせよハチにせよ用心するに越したことはありませんし、ケガをした場合の治療費を考えると対策グッズの導入もやぶさかではありません。
ハチには殺虫スプレー、クマには撃退スプレーといったように、両者ともサイクリングやウォーキングに向いた、軽量かつ小型な製品が欲しいところでしょうか。
携帯に向いた小型のハチ用殺虫スプレー
ハチに対しては普通の殺虫スプレーでも少なからず効果はありますが、襲われそうになった時に使うことを考慮するとスプレーの携帯性と効果の即効性が重要になります。
大定番のハチ用殺虫スプレーとして住化エンバイロメンタルサイエンスの『ハチノック』が有名で、480mlの業務用『ハチノックV』を筆頭に300mlの『ハチノックL』と100mlで携帯に向いた『ハチノックS』と充実のラインナップ。
当然、軽量なハチノックSがオススメですが、大量のハチに襲われた時のために薬剤が広範囲噴霧される仕組のため、原則として1回の使用で全量を噴射する使い方が推奨されています。
小出しに使うことも一応は可能ですが、纏わりつく一匹だけを駆除したいなどのピンポイント噴射にはあまり向いていません。
通常の殺虫スプレーと同じ使い勝手を求めるなら、イカリ消毒株式会社の『ボタニカルジェット スズメバチ携帯用』も選択肢に入ります。
サイズはハチノックLとハチノックSの中間にあたる180mlで、缶コーヒーを少し長くしたようなサイズ感。
ハチノックSと比べると薬剤の拡散性に劣るものの12秒で全量噴射されるパワーを備え、通常の殺虫剤と同じようにピンポイントな使い方ができます。
両者ともハチへ即効性を備えた製品ですが、不意に襲われてしまった場合にはハチノックSの方が効果を発揮しやすく、こちらが先手を打てる状態ならボタニカルジェットの方が使い勝手が良い印象ですね。
実際に使用した方によると、どちらもピンポイントで使うとあっという間に無くなってしまうそうで、行動中にハチに対して先手を打つような使い方を続ける場合は、大容量のハチノックLの方が心強いとのこと。
携帯に向いたクマ撃退スプレー
命には代えられないので文句も言えませんが、本格的なクマ撃退スプレーは一本10000円以上も珍しくありません。
とはいえ、これはヒグマやグリズリーにも対応できる大型スプレーの場合で輸入品の場合が殆ど。
現在はヒグマ用の他にツキノワグマ用や防犯兼用の小型・中型サイズの選択肢が増え、以前よりも手の届きやすい価格になりました。
ツキノワグマ用の製品では、TMM社のPOLICE MAGNUM/ポリスマグナム『熊撃退スプレー 中型 B-609』が人気を集め、本体だけなら7000円以下と手の届きやすいお値段。
この製品は国公立機関・地方自治体正式採用品/JSDPA認定品と銘打ってあり、大きさは直径38mm、長さ172mm、重量163gと携帯に向いた適度なサイズ感です。
ベルトに通して使えるホルスター付きとスプレー本体のみの二種類があり、一回のみの使い切りではなく、噴射距離約5mで複数回の使用も可能。
TMM社のポリスマグナムシリーズには防犯兼用の小型スプレーも存在しますが、個人的にコンパクト過ぎる物はあまりオススメしません。
携帯に便利すぎるサイズだと手荷物の奥に収めてしまいがちで、悪い意味でただのお守りになってしまいます。
手の届く位置で常に存在を主張しているくらいが丁度良く、緊急時に確実に使えるのが理想でしょうか。
言い忘れましたが、ポリスマグナムはあくまでもツキノワグマやその他の動物用で、北海道に生息しているエゾヒグマにはヒグマに対応したクマ撃退スプレーを選びましょう。
ヒグマ用は高濃度な劇物につき、人間に使用すると失明したり皮膚がただれたりといった深刻なダメージがあるため注意が必要。
誤って屋内で噴射させてしまったり、風向きを見誤ったりすると大惨事になるので、ツキノワグマ用よりも慎重な取り扱いが求められます。
自転車用を含むクマ鈴の効果について
最近では専門家の間で効果が疑問視され始めているクマ鈴ですが、『逆にクマを呼び寄せてしまう』といったケースは好奇心旺盛な若いクマや人を襲った経験のあるクマに限られるようです。
ツキノワグマに対しては人間との距離を伝える手段になりますし、山中のシングルトラックなどで徒歩よりもスピードの出るMTBでは出会い頭での遭遇を防ぐためにも、個人的には使わないよりはマシというスタンス。
YouTube上にはクマ鈴を含む『音』に対して、野生のツキノワグマがどう反応するのかを検証した動画があり、なかなか興味深い内容でした。
ぶっちゃけクマ鈴にもラジオにも自動車の走行音にもほぼ無反応で、クマよけ・トリよけ用の爆竹や火薬玉鉄砲の破裂音に効果が見られるという結果に。
クマにも地域差があるので一概にはいえませんが、クマ鈴やラジオといった常に音を垂れ流す物よりも、ホイッスルや爆竹を一定間隔で鳴らしたほうが効果が高い傾向にあるようです。
まとめ
クマ撃退スプレーもハチ用殺虫スプレーも使うような事態に陥らないことが望ましいですが、懐に忍ばせておくだけでも安心感が違います。
クマは別としてもハチは比較的身近にいる生き物ですから、転ばぬ先の杖としてサイクリングやウォーキング時にスプレーを携帯しておくことをおすすめします。
私自身、少し前にスズメバチに纏わり付かれたことがあり、その間に何度もハチノックのことを思い出しました。
羽音を響かせなが空中で静止し、至近距離から値踏みするように観察されるのは生きた心地がしませんね。
最後に余談ですが、クマ対策として日中でも明るい3000ルーメン以上の高出力LEDライトを使う方法があるそうです。
この発想は無かった……と思う反面、いたずらにクマを刺激してしまう可能性もあるので、クマ撃退スプレー以上に勇気が必要になる方法かも。