私はファットバイクとミニベロの二台持ちで、ウインターシーズン以外は手軽に乗れるミニベロの稼働率が圧倒的に多くなります。
愛車のミニベロ『KHS F-20R』はメンテナンス後に走行距離200kmを待たずして、リアディレイラーまわりからチリチリと耳障りなノイズを発するのが目下の悩み。
ウェットタイプのチェーンルブを使用していないので極々普通の症状にも思えますが、下手をすれば80km程度でも鳴り始める始末。
異常が無いか調べてみても、チェーンの延びは0.75%を下回っていますし、リアディレイラーのインデックス調整にも問題は見られません。
おそらく異音の発生源となっているのはプーリーで、ここはチェーンと並んで最も汚れやすい部分です。
静かな場所を走行した時に、チリチリとしたプーリーの回転音が気になるだけで実害は無く、定期的にチェーンとプーリーまわりを洗浄してあげれば良いだけなのですが
流石に100km毎にチェーンをメンテナンスするのは面倒ですし、使用するケミカルやクリーニング用品も安くはありません。
本来は回転性能や変速性能の向上を目的として交換するパーツですが、ギア鳴り・汚れ防止の効果を期待して、ベアリング入りのプーリーに交換してみることにしました。
交換用プーリーにKCNC製『ジョッキーホイール』を選んだ理由
さて、プーリーの交換にあたり気になる点がひとつ。
実はシマノ純正のガイドプーリーにはセンタロン機構と呼ばれる特殊な仕組みがあり、軸部分のZ方向にわざとガタを持たせた構造になっています。
この遊び部分があるおかげでスムーズにシフトチェンジできギア鳴りも軽減されるのですが、残念ながら社外製プーリーの大半はこのセンタロン機構を備えていません。
特許絡みの大人の事情があるらしいですが、センタロン機構でベアリング入り、この条件を満たしつつ評判も良かったのが、KCNCの『ジョッキーホイール』です。
迷えるほど選択肢がなかったので、私も今回この製品を選びましたが、KCNCは軽量パーツでお馴染みのブランドですね。
ミニベロのリアディレイラーは一世代前のSORAグレードで、プーリーは安価なブッシュ式ベアリング、素材は定番の樹脂製。
プーリーの交換を決めた当初は、単純にシマノ最上位グレードであるのデュラエースのプーリーに交換するのがベストだと思っていたのですが、調べてみると最近のモデルはとっくにセンタロン機構が廃止されているとのこと。
これはリアディレイラー自体の変速性能が向上したことで、遊びのあるセンタロン機構が逆効果になってしまうからだと聞きます。
実際にデュラエースのプーリーを下位グレードに使用している方も多く不具合報告も聞きませんが、一応シマノ公式ではデュラエースグレードでしか使用を推奨していません。
雑な私のことですから些細な変速性能の違いなんて気にならないと思いますが、今回は無難に9速、10速、11速に対応しつつ、センタロン機構を残したKCNC製を選んでみました。
KCNC製『セラミックジョッキーホイール』の詳細
今回、私が購入したのは程よく肉抜きされたKCNC『セラミックジョッキーホイール』。
他にもトップ画像の超軽量モデルやチタン製の高級モデルも存在していますが、流石に高額で手が出せません。
ジョッキーホイールは軽い回転と+20%の耐久性が売りで、ベアリングにセラミックを使用した上画像のモデルと、ステンレススチールを使用した低価格モデルがあります。
ぶっちゃけ、体感できるほど違いはないので安いステンレスタイプで十分でしたが、高価なセラミックタイプが運よく低価格モデルと同じ値段で入手できました。
安価で購入できた代償としてカラーを統一できていませんが、テンションプーリーとガイドプーリーの両方を交換すべきか悩んでいたので、そこには拘りませんでした。
因みに、この手のアルマイト塗装は摩耗ですぐに剥がれてしまうので、その辺が気になる方は劣化の目立たたないシルバーカラーを選ぶのがおすすめ。
セラミックジョッキーホイールの重量は単体でおよそ8g、シマノ純正のプーリーよりも2g程軽くなり、歯数は11Tで交換前と同じです。
コンポが9速のSORAなのでシマノ9速/10速用を選びましたが、現行のジョッキーホイールは9速/10速/11速の全てに対応し、歯数を10T/11T/13T/15Tから選べるようになりました。
うろ覚えですが、ロード系ならULTEGRAより下のグレードは全てブッシュ式ベアリングのプーリーで、MTB系ならDEORE XTより下のグレードが、同じくブッシュ式ベアリングのプーリーだったはず。
コンポ性能が全体的に底上げされた現在はどうなっているかわかりませんが、テンションプーリーを交換するだけでも回転性能が向上やノイズ軽減に繋がるので、クリーニング時にプーリーがどちらなのかを把握しておくのも手です。
試しにテンションプーリーだけを交換
早速プーリーを交換してみますが、とりあえずテンションプーリーだけの作業。
ガイドプーリーまで交換してしまうと回転性能が向上するかわりに変速性能に影響が出るとの情報もあり、まずは無難にテンションプーリーだけを交換してみることに。
シマノ純正プーリーはテンションプーリーとガイドプーリーで形状に違いがありますが、ジョッキーホイールはどちらも同じプーリーが使われ、この点が変速性能に影響が出ると言われる所以かも知れませんね。
交換前に細部を眺めてみると、樹脂製のシマノ純正プーリーと比べて大きな肉抜き穴が目立ちます。
純正はこの部分には砂混じりの汚れが容赦なくこびり付きクリーニング時に苦労させられるのですが、シースルー化により汚れが付着しづらくなりそうですね。
シールドベアリングということで、少し前に流行ったハンドスピナー的な回転をイメージしていたのですが、手で回してみても回転は持続せず、肝心のセンタロン機構も粘っこく動く程度でしょうか。
カバーを外して内部のシールドベアリングを確認してみると、粘度の高い赤いグリスがべっとりと盛られていました。
こんな鈍い動作で大丈夫だろうか……と不安になって調べてみると、私と同じように思っているお仲間がチラホラ。
ほぼ全員がハンドスピナー的な回転を期待してはいけないと口々に零していました。
本来は手で力を加えるような部分ではありませんし、脚力に比べたらこの粘度でも無視できるレベルです。
このまま使用しても差し支えありませんが、パーツクリーナーで軽く洗浄してから粘性の低いグリスを塗り直すことに。
使用したのはタミヤ模型のセラグリスHGで本来はRC用のグリスです。
自転車用として流用されることの多いタミヤ模型のFグリスほどではありませんが、粘度が低くペダルのベアリングをメンテする際にも使う方が多いですね。
注意点として、回転は滑らかになりますが所詮は模型用なのでシール性能は乏しく、三ヶ月くらいで軸部分から綺麗さっぱり消え去ってしまいます。
実用性無視の自己満足でしかないので、下手な真似はせず汎用か自転車用で粘度の高いグリスを使った方が良いでしょう。
余談ですが、このセラグリスを購入するために子供の頃に通った近隣のホビーショップ兼だがし屋にウン十年ぶりに足を運びました。
流石に店主は代替わりしていましたが、レジやショーケースの位置が当時のままで、短い時間でしたが少しだけ懐かしい気持ちに浸れました。
交換は3mmの六角レンチだけで簡単に出来ます。
WEB上で調べれば詳しく解説している方いるので詳細は割愛しますが、コツは以下の三つです。
【1】フロントのチェーンリングからチェーンを落してテンションを掛けないで作業する。ミッシングリンクならチェーンごと外してもOK。
【2】ガイドプーリーも交換する場合は、ボルトがテンションプーリーとは逆位置にあるので、リアタイヤを外した方が交換しやすい
【3】ボルトの締め付けトルクは3Nm以下を守る
プーリーを外してからプレートやアームの汚れをしっかり洗浄し、新しいプーリーに付け替える。
本当にそれだけのポン付け作業ですね。
お目汚しなので画像は控えますが、取り外したブッシュ式プーリーは結構マメに掃除していたにも関わらず、カバー内部が汚れまみれ。
いつの間にか侵入した砂でジャリジャリになっていましたし、植物の根っこなんかも巻き込まれていました。
ブッシュベアリングは筒状の金属に軸を通しただけの単純構造なので、グリスアップの効果が長続きしないのにも納得ですね。
まとめ
交換後に早速40kmほど試走してみると、シールドベアリングの効果からかプーリーからチリチリと聞こえていたノイズが気にならないレベルです。
これは好みの問題ですが、アルミ製だけに以前よりも金属質な少し甲高い音が聞こえますね。
試走中に鳴るテンションプーリーからのノイズが軽減された効果で、今度は未交換のガイドプーリーからのチリチリ音が妙に強調されて感じます。
後日、変速性能への影響を覚悟の上でガイドプーリーも余っているセラミックジョッキーホイールに交換してみました。
色違いですが、ガイドプーリーは目立たないので許容範囲です。
肝心の変速性能ですが、ガイドプーリーを交換した直後は違和感があったものの、しばらく走ってシフトチェンジを繰り返すと交換前との差を感じなくなります。
『慣れ』と言ってしまえばそれまでですが、金属製か樹脂製かによるフィーリングの違いの方が大きく、あからさまな変速性能の低下は感じませんね。
その後、両方のプーリーをKCNC製に交換した状態で再度15kmほど試走してみましたが、静穏効果は私の期待通り。
違いが分かりやすいように、交換の前後でチェーンの洗浄や注油は一切していませんが、ほぼ無音と言っていいくらいプーリーが軽やかに回転し、逆に気味が悪いくらいです。
因みに、今回紹介したKCNC製以外ではBBB製プーリー『ローラーボーイ』も評判が良いですね。
こちらもシールドベアリング採用で幾つかのグレードがありますが、仕様はデュラエースグレードのプーリーに似通っています。
KCNC製とは異なりシマノ純正プーリーと同様にテンションプーリーとガイドプーリーの歯の形状がそれぞれ異なっているためか、実際に使用した方からは変速性能の低下や交換後の違和感はあまり報告されていません。
本体はグラスファイバーを混合した非金属製なので、アルミ製プーリー特有の金属質な回転ノイズがなくシマノ純正プーリーと同じ使用感が得られるそうです。
デュラエース推奨の本家プーリーよりも互換性が高いという利点もあり、その辺が気になって二の足を踏んでいる方には中々魅力的に映るかも知れませんね。