先日のこと、知人からからパンク修理を頼まれます。
大得意というほどではありませんが、最低限はこなせるので深く考えずにOK。
知人の自宅を訪ねてみると、私を待ち構えていたのはスポーツサイクルではなく軽快車でした。
俗に言う「ママチャリ」って奴ですね。
幸いパンクしていたのは前輪だったので、作業は恙なく完了。
これが後輪だったら、知人の前であたふた狼狽していたかも知れません。
ママチャリをいじるなんて何十年ぶりだろう。
そんなふうに思いながら、車体から後輪を外さず器用に修理していた町の自転車屋さんの記憶がよみがえります。
学生時代は自転車で通学していましたし、パンクで遅刻することも何度かありました。
町の自転車屋には駆け込み寺のようにお世話になったなぁ~と懐かしく思い出すとともに、とある行為がフラッシュバック。
そういえば、あの頃はパンクした自転車のまま普通に走っていたぞ。
それに、タイヤからガタン、ガタンと一定周期で突き上げが来る独特な走行感だった気も。
遅刻したくないという焦りがそうさせたのか、押し歩きすらしないなんて……
自転車を趣味とする今の自分には、本当に信じがたい行為です。
とはいえ、パンクしたまま自転車に乗ると具体的にどんな悪影響があるのか?
あの一定周期で起こる突き上げの正体は何なのか?
自転車を趣味と公言しておきながら、これらについては知らないことの方が多いです。
今でこそ、パンクしたら即修理が習慣化してはいますが、パンクしたままの乗車や車体の押し歩きには、一体どのような弊害があるのでしょうか?
パンクしたまま乗車を続けると自転車はどうなる?
出だしから当たり前のことを言います。
自転車がパンクしたら、そのまま走行を続けてはいけません!
パンクした自転車は些細なハンドリングでも制御不能に陥りやすく、大事故の原因になりかねません。
さて、お約束はここまで。
気になる車体へのダメージですが、大方の予想通りパンクしたまま走行を続けるとチューブ・タイヤ・ホイールといった足まわりの全てにダメージが及びます。
振動が吸収されないため、長時間続けるとフレームにまでダメージが及ぶこともあるそうですが、影響が顕著なのはやはり足まわりの三点セット。
チューブはお察しの通りで、摩耗によってパンクの穴が大きくなったり複数の穴が新たに開いたりします。
走行中はリム打ちパンク状態が延々と続くことになるため、チューブへの追加ダメージは計り知れません。
続いてタイヤですが、接地面が増えることで摩耗が加速することに加えて、タイヤサイドへのダメージも深刻に。
これは私の経験ですが、チューブレス化したスキンサイドのタイヤでパンクし、停車までの僅か数メートルの走行でタイヤサイドの気密が失われたことがありました。
強度に乏しいスキンサイドだったこともありますが、パンクにより扁平したタイヤがリムと路面に挟まれたことが原因です。
そして最も気になるのが気軽に買い替えできないホイールへのダメージ。
タイヤがクッションとしての役割を果たさなくなるため、ホイールに直接衝撃が及ぶようになります。
ちょっとした段差を乗り越える際にもリスクを伴い、下手をすれば歪みや破損なんて顛末も。
特に顕著なのがリムへの影響で、衝撃による歪みだけでなくリムが直接路面に接触することでガリガリと削れてしまいます。
先程のタイヤの件でも触れましたが、扁平したタイヤを犠牲にしてリムを守るという考え方もあり、経験上リムとツライチなロード用よりも幅広なMTB用タイヤの方が有利に働くことが多いでしょうか。
結論として、パンクに伴う修理費用をできるだけ安く抑えたいなら、乗らずに必ず押し歩きしましょう。
そうしないと、やっとの思いで辿り着いた自転車屋で思わぬ目に遭いかねません。
『パンク修理終わったよ、傷んでるタイヤとチューブも交換しておいたから』
『料金は5000円でいいよ!(ニッコリ)』
こんなやり取りが待ち構えているかも。
ホイール・リム素材によるダメージの違い
ついでなのでリム素材の違いによるダメージ度合いと、パンク後の身の振り方にも触れておきます。
【カーボン製リム】
パンクを自覚したら即降車しましょう。カーボンリムはパンクに最も弱い素材です。
摩耗で削れやすいのはもちろんですが、衝撃でリムが割れたり繊維が分離することも。
【アルミ製リム】
軽度な衝撃にはある程度耐えられますが、強い衝撃を受けると歪みや凹みが生じがち。
歪んでも軽度なら修正が可能ですが、アルミリムは耐摩耗性が低いので路面でガリガリ削られるのは苦手です。
パンク直後はあまり長く乗らず、セーフティーゾーンまでの退避に留めたいところ。
【ステンレス製リム】
重いですが非常に強度が高く、パンクした状態で走行してもアルミやカーボンに比べて損傷を受けにくいです。
事故リスクやタイヤ・チューブへのダメージを度外視すれば、パンク走行も一応は可能。
一昔前はママチャリのホイールと言えばステンレスリムが定番で、私がパンクしたまま乗り続けていたのも間違いなくコレ。
同じママチャリでも最近はアルミ製リムも多いので、パンク時は押し歩きした方が無難でしょうか。
因みに、ステンレス製リムは全体的に光沢のある銀色、アルミ製リムは全体的にくすんだ銀色なので見た目で区別が付きます。
パンク後の「乗車」と「押し歩き」、許容される距離は?
さて、いくらバンク後の走行がNG行為とはいえ、避けられない状況に陥るかも知れません。
パンクしたまま乗車を継続する場合、【1】低速を維持【2】滑らかな路面を選択【3】リムが路面に直接触れない
これらの条件を満たすことで、数百メートルくらいの短距離を上限としてダメージを最小限に抑えられます。
ただし、カーボンリムは例外で走行しないことを推奨、理由はもうご存知ですよね?
続いて、気になる車体の押し歩き。
押し歩きはホイールやリムへの負担がずっと軽くなり、自力帰宅が視野に入る数キロメートルの移動も許されます。
こちらも路面の段差や砂利道を避けて平坦な道を選び、リムを直接路面に当てないようにするのが、ダメージを最小限に抑えるコツですね。
とはいえ、タイヤ幅によっては押し歩きでもリムに摩耗によるダメージが及びやすいので、カーボンリムだと接地させないくらいの気合と覚悟が必要になるかも。
これはチューブレス運用に限られますが、タイヤインサートというパンク時にリムを保護してくれる便利なアイテムがあるので、高級カーボンホイールを使っているなら保険として備えておいて損はありません。
余談ですが、私も過去にカーボンホイールでフロントタイヤをパンクさせた経験があります。
押し歩きでもリムが削れそうだったので、車体を垂直に立ち上げた90度ウイリー状態で押し歩きしました。
目立つので少し気恥しい思いをしますが、こうすると腕でフロント側を持ち上げて歩くよりも遥かに負担なく進めます。
「自転車のパンク走行」一定周期で起きる突き上げの正体は?
冒頭でも軽く触れましたが、ママチャリでパンクしたまま走行すると、とある現象が起こります。
走行中に一定周期でガタン、ガタンと小石に乗り上げたような突き上げを伴うようになり
自転車に全く詳しくなかった学生時代でも、何となくチューブやバルブまわりに原因あるような気がしていました。
さて、それから数十年。
おっさんになった私が真面目に原因を調べてみると……
これが意外にもハッキリしません。
私が調べた限り、巷で言われているもっともらしい原因はふたつ。
一つ目は、チューブのバルブ付近が厚くなっているからという説
画像は左から米式、英式、仏式のチューブで、確かにバルブの根元は厚く補強されています。
ですが、この程度ならリムの中にすっぽり収まるサイズですし、仏式・英式はバルブナットで固定されていためリムハイトを越えて補強部分がはみ出すのが難しそうな印象も。
因みに、チューブレス化した自転車でパンクしても一定周期での突き上げは起こらないので、チューブに原因があるという見立てに、いまも変わりはありません。
そして二つ目、これは割と納得できる説でした。
パンクによる減圧でリムへのタイヤの押し付けが減り、リムの回転に対してタイヤの追随が甘くなる。
タイヤは自由に動けてもチューブはバルブで固定されているため自由に動けない。
結果として、バルブの前方に空気の抜けたチューブが偏ってコブのようになってしまう。
なるほどな……これなら一つ目の説よりも異物としての説得力があるなぁと感心しますが、この症状はパンクしていなくてもタイヤ内でチューブが折れ曲がったり捻じれていたりしても起こるとのこと。
こちらの説の方が腑に落ちるものの、リムの回転に対してタイヤの追随が甘くなるという部分に引っ掛かりを感じるのも正直なところ。
ビードとリムが密着するチューブレスタイヤに慣れてしまったせいか、ホイールの回転にタイヤが追随しないという部分にリアリティを感じづらくなっているのかも知れません。
何とも歯切れの悪い内容ですが、この現象が車種に関係なく起こるのかも気になりますね。
まとめ
パンクしたまま走り続けると事故を招きやすくなると共に、チューブ・タイヤ・ホイールといった足まわりにも大きなダメージがあります。
安全にパンク修理ができる場所まで移動するなら、車体を押し歩きするのが基本。
仮に数キロメートルの移動でも、ホイールへのダメージを最低限に抑えらます。
注意すべきはカーボン製リム。
パンクしたら即停車・即降車を心掛け、押し歩きもほどほどにしましょう。
せっかくのカーボンホイールが台無しになってしまいますからね。