熱可塑性ポリウレタンチューブこと「TPUチューブ」は軽量さとパンク耐性の高さが魅力。
リリース当初は割高でしたが、今では安価に購入できる製品も増えてきました。
私もTPUチューブを使っている自転車乗りの一人で、使い始めたのは2019年。
今風にいうならアーリーアダプターかも知れませんが、そこそこ古参な方だったりします。
初めて購入したのは、Tubolito/チューボリートと並んでTPUチューブの元祖とされるREVOLOOP/レボループ。
ブチルチューブが激重だったファットバイクに導入し、足まわりの軽量化に絶大な効果がありました。
さて、ファットバイクでの好印象からTPUチューブには贔屓目な私ですが、導入当初から気になっていることが一つ。
ズバリ「寿命」です。
チューブを使い続けることにより劣化する意味での寿命はもちろんですが、TPUチューブは加水分解という時限爆弾を備えたポリウレタンが主原料。
使用頻度とは無関係に経年劣化でチューブそのものがダメになってしまうのでは?
そういった不安をずっと持ち続けていました。
いつかは白黒つけたいと思っていたのですが、おあつらえ向きに使用歴三年、熟成一年のTPUチューブが私の手元にあります。
昨年ドナドナされたフルサス29erに使用しいた物で、TPUチューブの劣化具合を確認するのに打って付けなシロモノ。
四年目のTPUチューブがどれだけ劣化しているのか興味深々ですが、今回はTPUチューブの寿命や加水分解について話題にしてみたいと思います。
まるで皮革のエイジング?TPUチューブは四年でどれだけ劣化するのか
今回のクランケはREVOLOOPで、耐久性よりも軽量さが魅力の製品。
29インチMTB用で購入当時は一本3000円くらいでした。
2020年から2023年の三年に渡って使用し、フルサス29erを手放してから丸一年ほど雑に保存していた四年物のTPUチューブ。
申し訳程度にジップロックに封入していますが、この時点で既にヤバい気配が漂っています。
チューブの黄変が著しく、パッと見では木製ローテーブルとの境目がわからないほど。
恐る恐る取り出してみると、油紙のようにもエイジングした皮革のようにも見える独特な外観。
見た目はかなりアレですが、意外にも加水分解によるベタつき・粉吹き・ひび割れといった変化は感じません。
手触りも私の記憶にある物と同じで、しなやかでツルツルなままでした。
さて、信じられないことに画像左のイカソーメンみたいなのが変色前の姿。
ファットバイク用に保存していた予備のREVOLOOPですが、並べてみると同じ素材とは思えないほどの変化です。
因みに、真っ白に見える予備チューブも実は僅かに黄変していて、TPUチューブは未使用でも変色を免れません。
未使用だと変化は僅かですが、タイヤ内に入れるとコンパウンドの影響で一気に変色が進み、新品のタイヤほど影響が大きくなるとのこと。
メーカー曰く、変色してもチューブ自体は劣化していないそうですが、TPUチューブに色つきの製品が多いのはこういった影響のせいかも知れません。
下にコピー用紙を敷くとわかりやすく、タイヤのトレッド面に接しているチューブの下側のほうが変色が激しくなります。
言い忘れましたがこのTPUチューブはパンクの修理歴があり、この部分の劣化具合も気になるところ。
修理から二年以上は経過していますが、パッチの隅が薄っすら浮いている印象も。
試しに空気を注入してみると、裂けることなく普通に膨らみました。
TPUチューブは剥き出しの状態で空気を入れ過ぎると、チューブがバーストしたり伸びすぎてしまう性質があるので、パンク修理時でも0.5bar以下に留めておくのが基本です。
見た目のエイジング感に反して表面にはキュキュっとした張りがあり、加水分解による柔軟性の低下も感じません。
丸一日放置しても張りを維持したままで、劣化による空気漏れはありませんでした。
TPUチューブはバルブの根元がウイークポイントでダメージを受けやすい部分です。
華奢なロードバイク用だと頻繁に破損の話を聞きますが、こちらはMTB用のせいか変色以外の異変は見られません。
続いて、TPUチューブ特有の接合部分。
ここもバルブ付近と並んで不具合が多く、裂けたり空気注入でチューブが不均一に変形するのが典型例です。
バルブ付近と同様に変色は見られますが、しっかりと熱接着が維持されていますね。
うろ覚えですが、TPUチューブを製品化する上でチューブ厚の均一性と高度な熱接着技術が不可欠だったそうで、リリース当初はTubolitoはオーストリア国内、REVOLOOPはドイツ国内でのみ生産されていたはず。
現在は中華製のTPUチューブも目立っていますが、その辺の事情が気になるところ。
空気注入前は危なげに見えましたが、パッチの修理箇所も問題無さそう。
TubolitoとREVOLOOPは姉妹のような関係にあるため互いのパッチを流用可能ですが、チューブへの追随性が良く広い面積をカバーしやすいのはREVOLOOP純正の方です。
四年物のTPUチューブを一通りチェックしてみましたが、見た目ほど劣化は進行していない印象でしょうか。
一年の保管で黄変が前にも増して進んでいましたし、実際にタイヤ内に入れて高圧にするとバーストする可能性もありますが、少なくとも四年であからさまな加水分解は起こっていません。
使ってみようとは思えませんし、この先の出番もありませんが、検証用のサンプルとしてもう一度ジップロックで眠りについてもらうことにしましょう……
次は一年後かな?
TPUチューブの寿命と加水分解を防ぐ保管方法について
四年は持ったけど、安心して使い続けられるかは微妙。
そんな結果でしたが、実際のところTPUチューブの寿命はどれくらいなのでしょうか?
調べてみると、チューブとしての寿命はブチルチューブよりも若干短いそうで、走行中に生じるダメージを加味すると二年くらいが目安とのこと。
空気圧が高すぎたり低すぎたりしても寿命が縮まり、ロードバイクでパンクを頻発させるケースはよく耳にしますね。
さて、ここまではあくまでもチューブとしてのガチで使用した際の寿命のお話。
長期保管を含めたTPUチューブそのものの寿命はそこそこ長かったりします。
同じポリウレタンでも加水分解しやすいエステル系と加水分解しづらいエーテル系の二種類があるそうで、自転車用のチューブに使われているのは後者のエーテル系が多いとのこと。
標準的な耐用年数は5~10年と言われているため、予備チューブをストックする際はこの期間が目安になりそう。
気になる保管方法ですが、ブチルチューブやタイヤに割と似ています。
基本となるのは【1】湿気を避ける【2】高温を避ける【3】紫外線を避けるの三拍子。
空気にも水分は含まれているので密閉するのも手ですが、カメラ用の防湿庫に乾燥剤を多めに入れて暗所で保存がお手軽かも知れません。
実際にやる人はいないと思いますが、ジップロックに入れて冷凍庫にブチ込むと全ての条件が満たされる気も。
因みに、ケミカル類や油分も劣化を早める原因になるので避けた方が良いでしょう。
最後に劣化しているか否かの判断基準ですが【1】過度な変色【2】柔軟性の有無、この二つです。
どちらかというと【2】の柔軟性の方が大切で、多少変色していてもこちらを満たしていれば使用に耐えられる場合も。
まとめ
TPUチューブの寿命や加水分解について話題にしてみましたが、ようやく長年の謎が解けました。
実用で二年、保管で五年前後、TPUチューブの寿命はこれくらいと考えて良さそうです。
高温多湿な日本とはあまり相性が良くありませんが、チューブレス用の予備チューブとして携帯するなら湿気と紫外線くらいは避けるパッケージを心掛けたいところ。
中華製のピンクやミドリのTPUなら安価なので、劣化の有無にかかわらず一定期間でざっくり交換してしまうのも手でしょうか。
余談ですが、真夏の車載なんかはどうなんでしょうね?
杞憂かと思いますが、炎天下の車内は70度を超えることもあるそうなので、サンシェード無しでの長時間放置は避けた方が無難でしょうか。