ファットバイク待望のウインターシーズン到来!
そんな喜びも束の間、出鼻を挫くようにファットバイクのフロントタイヤがヘコヘコに。
数日前にタイヤの空気圧を確認した際には特に異常はなく、一ヵ月近くも乗っていなかったためパンクの原因に思い当たる節もありません。
念のためバルブコアの緩みも疑いますが異常は見当たらず、空気を再充填すると10分ほどでヘコヘコ状態に逆戻り。
これはチューブに起因するパンクで間違いない……
しぶしぶ修理のためにタイヤからチューブを引きずり出してみると、予想もしていなかった事態が待ち構えていました。
リムストリップ(リムテープ)の劣化?それとも初期不良か?
一見パンクとは無縁に思えるファットバイクですが、普通の自転車とパンクする条件に大きな違いはありません。
ボリュームのあるタイヤなので低圧にし過ぎない限りリム打ちパンクはしづらいものの、リムストリップと呼ばれるファットバイク用のリムテープが剥き出しになっているため、普通車と比べてここが弱点になりがち。
ファットバイクがパンクする原因として意外に多いのが、このリムストリップの破損や劣化という話を知っていたので、チューブよりも先にまずはこちらを確認。
まじまじと確認してみると、リムストリップ自体に破損は見られないものの、変形によりリム穴を覆いきれていません。
画像からもわかりますが、リム内幅に対してリムストリップの幅が不十分になっていて、全部で6箇所の露出が確認できました。
リム穴のエッジはそれほど鋭利ではありませんが、チューブが触れ続けると何らかの影響はありそうです。
この時点でパンクの原因に確信が持てていましたが、続いてチューブも確認。
やっぱりそうか……
露出したリム穴を転写したかのように、チューブ側にも6箇所のダメージがありました。
ご覧の通り、カッターでイタズラしたかのような切れ目がスッと入っています。
症状を見るにニップルパンクの亜種といった感じで、リムストリップから露出したリム穴とチューブが干渉したことがパンクの原因と見て間違いありません。
さて、そうなると途端に気になるのが後輪の状態。
まだパンクこそしていませんが、このリムストリップのズレ具合ではいささか心配になってきます。
修理費用が嵩んでしまうため、せめて後輪だけは無傷であって欲しい……
僅かな望みに縋りつつ確認してみると、状態は前輪よりも悪くパンクしていないのが不思議なくらいでした。
前輪は片側しかリム穴が露出していませんでしたが、後輪はなんと両側が露出。
前輪を上回る10箇所近いリム穴の露出とチューブの傷が確認できました。
リムストリップは材質によっては一年程度で劣化してしまう消耗品。
その点は朧げに理解していたものの、完成車付属のリムストリップがリム内幅に対して狭すぎるのでは?そんな疑問が湧きます。
また、このファットバイクは翌年のモデルからリム穴の形状が変更されていて、私が所有している旧モデルよりも狭い幅のリムストリップで覆えるように改良されていたりと、少し疑わしい部分もチラホラ。
何となく腑に落ちないので、マングースの日本代理店に当たるモトクロスインターナショナルに、以下の三点について問い合わせをしてみることに。
・旧モデルのリムに不具合があるのでは?
・どうのように対策すれば良い?
・交換用の85mm幅リムストリップの取扱いは?
問い合わせへの返答
さほど時間を置かずにモトクロスインターナショナル様からの返答があり、要約すると以下の通り。
・不具合があったため、翌年モデルからリムを変更した訳ではない!
・リムストリップのズレ対策には空気圧を適正に保ち、解決しない時はテープ等で両幅を固定して対応してね!
・入手できるリムストリップは現行品の75mm幅までで、対応品の用意はないよ!
こういった丁寧な回答がいただけました。
おいおい、空気圧を適正にって具体的にどのくらい?
ファットバイクだから常に低圧にしろってこと?
それに85mm幅のリムストラップなんて、国内じゃまず手に入らないだろ……代理店の存在価値は?
疑問符だらけで少し混乱するも、私にはリムストリップとチューブを交換するしか手段は無さそうです。
ファットバイクのチューブとリムストリップを交換
ファットバイクのチューブは割高なのでパッチ補修での延命も考えましたが、流石にこれは却下。
合計16箇所の修理はかなりの手間ですし、ただでさえ重いチューブが補修により益々重くなってしまいますから。
結局、フロント・リア共にSCHWALBE/シュワルベのファットバイク用チューブに交換。
元のチューブは一本500gと激重でしたが、交換したシュワルベ製は一本390gと悪くないカタログスペックです。
ブチル最軽量とされる「surly ultra light tube」の340gには及びませんが、実重量は364gと更に軽く交換後は前後で200gほど軽量化できました。
因みに、ファットバイク用で最軽量のチューブはREVOLOOPの150gで標準的なチューブの実に1/3という軽量さ。
TPUチューブなので制限も多いですが、足まわりがチューブレス並みかそれ以上に軽量化できるので、走りの質が激変します。
さて、お次は問題だらけのリムストリップです。
前述の通り国内で手に入る最大幅は75mmが上限で、選択肢はSURLY製かSCHWALBE製くらい。
仕方なく海外に目を向けると、5インチリム用で85~90mm幅のリムストリップが普通に流通していました。
国際送料と手数料が加わるので気は進みませんが、他に手段が無いため某セ〇イモン経由でORIGIN8と言うブランドのPVC製リムストリップを注文。
また、注文したPVC製リムストリップの品質が不確かなため、取付け後のズレ防止対策として15mm幅の汎用リムテープも3ロールほど確保。
こちらは国内通販で普通に購入できました、本来の用途はもちろんリムテープです。
そして半月後、遠路はるばるアメリカのアラバマ州から到着。
元々2本で15ドル程度のリムストリップが、手元に届く頃にはその4倍近い価格になっていました……
恐らく、某セ〇イモンを利用することは二度と無いでしょう。
さて、待望の85mm幅リムストリップが到着し、ようやくファットバイクが復活する運びとなりました。
ですが、私はこのえらくコスパの悪いリムストリップと念のため購入したリムテープ3ロールを全く使用しませんでした。
なぜなら、某セ〇イモンで注文した直後にSURLYの新作ナイロン製リムストリップを2枚使った方が色々と都合が良いことに気が付いたからです。
リム一本につきリムストリップを2枚使う方法は最終手段として考えてはいましたが、この新作リムストリップの登場がそれを後押ししました。
リムストリップにはPVC(ポリ塩化ビニル)製、ポリウレタン製、ナイロン製の三種類があり、その中でもナイロン製リムストリップは軽量な上に今までのPVC製とは耐久性や寿命が段違いなんです。
こうして、無駄に痛い出費と紆余居曲折を経て一ヵ月ぶりにファットバイクが復活。
SURLYのナイロン製リムストリップは本当に変形に強く、空気圧を1.5barにしても肉球のふくらみを僅かに感じる程度でした。
ファットバイクのパンクで気付いた3つの注意点
前置きが大変長くなりましたが、ここからが本題です。
今回、ファットバイクの初パンクを体験して気付いたことが3つあります。
一つ目は、パンクしたままの押し歩きが困難かも知れないという点です。
パンクしたファットタイヤはリムから外れやすい傾向にあり、リムとタイヤの相性次第では押し歩き中にタイヤのビードが外れてしまう場合も。
元々、ファットバイクはタイヤレバーを使わずにタイヤ交換ができるくらいですから、空気圧ゼロ状態で強い刺激を与えるのは極力控えた方が良さそうです。
また、タイヤがゴツすぎる故に接地で凹んだ部分がその状態のまま回転するという珍現象も発生。
押し歩きすると凹んで扁平したままのタイヤがフレームやフェンダーに干渉するので、押し歩き中にストレスを感じます。
これは普通の自転車では見られない症状だったので、私も驚かされました。
二つ目は、リムストリップにも注意を払うという点です。
消耗品であることを他のスポールサイクルよりも強く意識する必要があり、リム穴から露出した部分が特にダメージを受けやすい部分。
盛り上がった肉球部分が特に破損しやすく、剥き出しゆえに紫外線で変色したり劣化したりもします。
ナイロン製だと数年は余裕で持ってくれますが、それ以外は寿命が一年程度だと思って間違いありません。
因みに、現在のファットバイクは75mm幅のリムストリップで十分に賄え、リム穴の存在しない完成車も増えています。
実は強度が十分ならリムストリップは代替が利き、3Mのリフレクトテープで光らせるカスタマイズが有名。
チューブレス用のリムテープで裏打ちすればいいだけなので、アイディア次第で色々と面白いことができます。
三つ目は、予備チューブよりも大容量ハンドポンプを携帯した方が良いという点です。
どちらも携帯するのが理想ですが、ファットバイク用チューブはサイズが握りこぶし大で重量も500g前後、携帯するだけでもかなりの負担。
ファットバイクはパンクしたままでも数kmは普通に走れてしまうため、私が思うに優先順位はハンドポンプの方が上です。
大容量のハンドポンプさえあれば、空気の継ぎ足しで騙し騙し走行を続けられますし、実際に予備チューブの世話になる程の大ダメージには滅多に遭いません。
パンクした際は大容量のハンドポンプで凌ぎつつ、状況に応じて携帯しているリペアパッチを頼る。
この方法が最もファットバイクに向いている気がしました。
因みに、ハンドポンプはトピークのマウンテンTTあたりがオススメで、ワンストロークあたりの注入量が91mlと多く重量も200g以下とバランスが良いです。
まとめ
私自身、ファットバイクでのパンクは初めての体験でしたが、路上でパンクしなかったのがせめてもの救いでしょうか。
真冬の路上でパンクしようものなら寒さで手がかじかんでしまい、当たり前にできる作業ですら難しくなります。
ファットバイクに限っていえば、その場で修理するよりも騙し騙し走行を続ける方が良い場合もあり、自走で帰宅するだけなら後者の方を勧めたいところ。
あまり知られていませんが、ファットバイクは16gのCO2カードリッジ一本でもギリギリ空気圧ゼロからのリカバリーが可能です。
大容量ハンドポンプにリペアキット、余裕があればインフレーターと25gのCO2カードリッジ。
ファットバイクのパンクに、この三つは備えておきたいところ。