ファットバイクに打って付けな降雪が続き、ようやく本格的に楽しめる季節になったと喜んでいたのですが、その出鼻を挫く様に愛車のアーガスエキスパートが何の前触れも無くパンクしていました。
3日前にタイヤの空気圧を確認した時は特に異常もなく、一ヵ月近くも乗っていなかったためパンクの原因に思い当たる節もありません。
パンクしていたのは前輪のみで、俗に言うスローパンクという症状です。
最初は前回の空気圧のチェックでバルブが緩み、単純に空気が抜けただけかな?と安易に考えていましたが、タイヤに再度空気を充填してしっかりと仏式バルブを閉めても10分ほどで空気が抜けてしまいます。
これは間違いなくパンクしていると確信し、修理のためタイヤを取り外しチューブを引き出してみると、予想していなかった原因が待ち構えていました。
リムストリップ(リムテープ)の劣化?それとも初期不良?
うろ覚えでしたが、ファットバイクがパンクする原因で意外に多いのがリムストリップ(リムテープ)の破損や劣化だという情報を知っていたので、チューブよりも先にリムを確認して見たところ…
予想的中です、リムストリップ自体は劣化も破損もしていませんでしたが、何故か片側(画像下側)にズレて取り付けられている上にリムストリップの幅が足りずにリム穴を覆いきれていません。
詳しく調べてみると、ハブを対称にして合計6箇所のリム穴が露出しています。
リム穴のエッジを手で触れてみると、それほど鋭利ではありませんがバリが残っており、この部分がチューブの内側と擦れている感じでしょうか。
続いてチューブも確認してみます。
はい、見事なまでに露出したリム穴に対応してバルブのあるチューブの内側に合計6箇所の穴が開いています。
しかも、カッターでイタズラしたかの様な切れ目がスッと入っていますね。
症状を見るにニップルパンクの亜種といった感じで、劣化または破損したリムストリップから露出したリム穴とチューブが干渉したことがパンクの原因だった様です。
さて、そうなってくると途端に気になるのが後輪の状態です。
パンクこそしていませんが、このリムストリップのズレ具合ではいささか心配になってきます。
チューブやリムストリップの状態によってはかなりの出費を迫られるため、せめて後輪だけは無傷であってくれ!!と祈りながら確認してみましたが、状態は前輪よりも悪くパンクしていないのが不思議なくらいでした。
前輪は片側しかリム穴が露出していませんでしたが後輪は両側が露出しており、前輪を上回る10箇所近いリム穴の露出とチューブ内側の傷が確認できました。
まあ、リムストリップは早ければ1年で劣化する消耗品ですし、アーガスエキスパートのリム穴はSURLYなどの様に一列に並んでいない特殊な形状をしているので、素直にリムストリップとチューブの交換で対応する事にしますが、例え劣化や変形であっても初期状態のリム幅に対してリムストリップ幅が狭すぎるのでは?と疑問が湧きます。
しかも、このアーガスエキスパートは2017年のモデルからリム穴の形状が変更になっており、私の2016年モデルよりも狭いリムストリップ幅で済むように変更されています。
加えて、タイヤの空気圧で変形しネコの肉球の様に盛り上がったリムストリップはリム穴にしっかりとフィットし、よほど長期間低圧にしていない限り後からズレてしまう気配を感じません。
この様な状況から、念のため
【1】2016年モデルのリムに既知の不具合
【2】リムに対して十分な幅のリムストリップが使用されていない
【3】取り付けられた時点、納車時点で既にズレている
【4】対応可能な85mm幅以上のリムストリップの取扱について
以上の4点について、マングースの日本代理店に当たるモトクロスインターナショナルに問い合わせをしてみることにしました。
問い合わせへの返答
さほど時間を置かずにモトクロスインターナショナル様からの返答があり、要約するとリムストリップ幅が不足していたために2017年モデルからリムを変更したというのではないという説明と、入手できるリムストリップが現行の幅(恐らくSURLY製75mm)までしかなく、対応品の用意がないといった旨の内容でした。
対策としてリムストリップのズレ(片寄ってリムの穴がはみ出すこと)を防ぐには、空気圧を常に適正に保つこと(これによりリムストリップがずれないようにする)
また、どうしてもずれる場合はテープなどでリムストリップの両幅を止めてずれないようにすることなどでご対応ください等の説明もあり
取り合えず初期不良ではありませんよ?的な内容である事は、アホな私にも理解できる回答がいただけました。
納車以来、一度も空気圧を規定値以外にしたことはありませんし、テープで対策しないとズレちゃうかもよ!!といった素敵な仕様に、少しだけ不満を感じずにはいられませんが、色々と勉強になったので今回は溜飲を下げることにしましょう。
ファットバイクのチューブとリムストリップを交換
ファットバイク用のチューブは高価ですから、6箇所全ての穴をパッチで塞いで引き続き使用することも考えましたが、まだ空気漏れしていないとはいえ10箇所以上も傷のある後輪のチューブを含めた全て補強するには流石に無理があります。
結局、前輪・後輪共にSCHWALBE(シュワルベ)のファットバイク用チューブに交換し、交換後は前後合わせて200gほど軽量化できました。
元のチューブは1本500g程で、交換したシュワルベ製はsurly ultra light tubeの340gには及ばないものの、1本390g(実測は364gでした)とファットバイク用としては十分に軽量な部類に入ります。
さて、問題となるのがリムストリップですが、前述の通り国内で手に入る最大幅は75mmが上限で、しかもSURLY製かSCHWALBE製くらいしか選択肢がありません。
仕方なく海外に目を向けると、5インチリム用で85~90mm幅のリムストリップが普通に流通していることがわかります。
国際送料と手数料が割高と聞いていたので気は進みませんでしたが、他に選択肢が無いためしぶしぶセカイモンでORIGIN8と言うメーカーのPVC製リムストリップ85mmを注文します。
また、変形していたデフォルトのリムストリップの品質が目に見えて悪く、セカイモンで注文したPVC製リムストリップの品質も不確かなため、取り付け後の変形に伴うズレ防止対策として15mm幅の汎用リムテープを3ロールほど注文しました。
そして半月後、遠路はるばるアメリカのアラバマ州から発送され、元々2本で15ドル程度のリムストリップが手元に届く頃にはその4倍近い価格になっていました…恐らくセカイモンを利用することは二度と無いでしょう。
待望の85mm幅リムストリップが到着し、ようやくアーガスエキスパートが復活する運びとなりましたが、私はこのえらくコスパの悪いリムストリップと念のため購入したリムテープ3ロールを全く使用しませんでした、なぜなら…
SURLYの新作ナイロン製リムストリップを2枚使った方が良いことに、セカイモンで注文してから気付いてしまったからです。
リム1本につきリムストリップを2枚使う方法は最終手段として考えてはいましたが、この新作ナイロン製リムストリップはチューブレス化に対応するために、今までのPVC製よりも変形しづらく、もちろん耐久性もあります。
さらにPVC製よりも軽量とあっては、使わない方が損です。
リムストリップの取り付けにかなり苦戦したものの、2枚ずらして取り付けたナイロン製のリムストリップは思いの外しっかりと5インチリムにフィットし、固定用に準備していたリムテープの出番もありませんでした。
こうして、無駄に痛い出費と紆余居曲折を経て一ヵ月ぶりにファットバイクが復活した訳ですが、SURLYのナイロン製リムストリップは本当に変形に強く、タイヤ圧を1barにしても僅かに肉球のふくらみを感じる程度です。
ファットバイクのパンクで気付いた3つの注意点
前置きが大変長くなりましたが、ここからが本題です。
今回、ファットバイクの初パンクを体験して気が付いたことが3つあります。
一つ目は、ファットバイク選びはリム穴に注目した方が良いという点です、私の様に5インチリムで尚且つ特殊な形状のリム穴をしたファットバイクを選んでしまうと、対応する85mm幅以上のリムストリップが見つからず、消耗品であるリムストリップを年に一回交換するだけでも、えらい出費と労力を伴う羽目になります。
ファットバイクを選ぶ際は出来るだけSURLY製リムか、似たような形状のリム穴を持った製品を選び、リム穴が規則的かつ一列に並んだ物が好ましいです。
とはいえ、最近のファットバイク用リムや完組ホイールには突飛な形状の製品は殆ど無いので、私のようにトラップに引っ掛かるのは稀かも知れませんね、リム幅の主流も80mmくらいに落ち着いています。
二つ目は、リムストリップが劣化していないか定期的に確認するという点で、頻繁に乗ってたり屋外保管している場合なら、一年ほどでリムストリップは劣化してしまいます。
リム穴から盛り上がった肉球部分が特に破損しやすく、そこからチューブが露出すると遅かれ早かれパンクします。
わざわざタイヤをリムから外してまで確認する必要はありませんが、肉球部分に破損がないかチューブが露出していないかなど、乗車前に軽く目視でチェックする事をおすすめします。
因みにリムストリップの色をチューブと同じブラックにするのは、目視で確認しづらくなるので、あまりおすすめしません。
寿命や耐久性を重視するなら、PVC製ではなくナイロン製のリムストリップを選びましょう。
三つ目は、予備のチューブとポンプを必ず携帯した方が良いという点です、当り前じゃない?と思うかもしれませんが、ファット用のチューブや携帯ポンプは大変嵩張りますし、滅多にパンクする筈はないと高を括って出先でのパンクに備えていない方も珍しくありません。
実はファットバイクはパンクしてしまうと、リムの形状によってはタイヤレバーが不要なくらい簡単にビード落ちしたり、タイヤが脱落したりします。
5インチタイヤに対応した100mm前後のワイドリムでは特に顕著で、アスファルト上を押し歩きするだけで、高価なファットバイク用リムをガリガリと傷め付けてしまう可能性があるのです。
ここ数年のチューブレス対応リムには、HUMP/ハンプと呼ばれるビードとの密着性を高める溝が備わっているため、パンクしても即ビード落ちする事態にはなりませんが、チューブレス未対応で80~100mm幅のワイドリムを使用している場合は、路肩にスペースを見付けてその場で速やかにパンク修理することをお勧めします。
まとめ
私自身、ファットバイクでのパンクは初めての体験でしたが、路上でパンクしなかったのがせめてもの救いでしょうか。
情報を求めて海外のフォーラムを覗き見してみると、愛車のアーガスエキスパートはチューブレス化が困難だと言われるくらいビード落ちしやすいリムが使われているそうなので、今回の3つの注意点が全てのファットバイク用リム当てはまるという訳ではありませんが
最低限、ファットバイクはリムストリップの劣化に注意!!とだけ、頭の片隅に記憶していただければと思います。
余談ですが、ファットバイクはボリュームのあるチューブと低圧でも走れる仕様から、通常のパンク程度ならそのまま数kmくらいは走り続ける事が可能です。
仮に予備チューブや修理キットを持っていなくても、大容量の携帯ポンプさえあれば、定期的に空気を注入する力技で騙し騙し帰還する事が出来るかも知れませんね…脚よりも腕が先に売り切れそうですが。