少し前の記事で軽く触れていましたが、ようやく雪道最強タイヤとして知られるSURLY「BUD&LOU」タイヤの話題です。
さて、このBUD&LOUですが、ガチのファットバイク乗りなら知らない人はいないくらい有名ですね。
世に出たのは随分昔のはずですが、その時点で既に完成されていた傑作タイヤで、現在においてもファットバイク最強タイヤの一角です。
そこそこ長いファットバイク歴の私ですが、実はこのBUD&LOUとは縁が無く、今日に至るまで未体験のままでした。
昨年に26インチホイールのファットバイクから27.5インチホイールのファットバイクへと乗り換えたため、もう試す機会は訪れないだろうな……と無関心を決め込んでいたのですが、幸か不幸かホイールとセットで販売されている掘り出し物に出会ってしまいます。
27.5インチファットの転がりの良さには満足しているものの、タイヤの選択肢が極端に少ないのが悩みの種。
保険で26インチホイールを手元に残しておけば良かった……といった後悔もあり、気がつけば悩む間もなく購入していました。
念願のSURLY BUD&LOUが手元に!でも、ホイールの方が凄かった話
新品のBUD&LOUとほぼ同じ価格で、髭の丸々残っている同タイヤだけでなく、状態の良いチューブとホイールもセットで手に入ってラッキー!なんて喜んでいたのですが、本当のサプライズはここからです。
本命のBUD&LOUは、おそらく雪道でしか走行されておらずノブの摩耗がほぼゼロ。加えて120TPIのチューブレスレディ対応版というオマケ付き。
リムはSURLY純正「MY OTHER BROTHER DARRYL」の80mmシンメトリック版。
従来のSURLY製リムよりも気密性が高く、純正キットを使えば簡単にチューブレス化できてしまうシロモノ。
リアハブのフリーボディが今一つ普及していない「シマノHG+」のマイクロスプラインだったので、てっきり手組ホイールかと思っていましたが、この組合せは何処かで目にした覚えが……
ファットバイクに詳しい方なら薄々感づいているかも知れませんが、この構成からすると手組ホイールではなく、ICTことSURLY「ICE CREAM TRUCK」の純正ホイールの可能性が出てきました。
エンド幅はフロント150mm/リア197mm、ハブはNOVATEC製でSURLYのロゴ付き、フリーボディがマイクロスプライン、標準タイヤにBUD&LOU、これはリニューアルされた2020年以降のICT純正ホイールで間違いありません。
因みに、BUD&LOUは一本1500g弱と結構な重量の筈ですが、タイヤ・チューブを含むホイール全体の重量が予想外の軽さ。
まだ未確認ですが、チューブはブチル最軽量のSURLY ULTRA LIGHT TUBEが使われているかも知れませんね。バルブを見るに、まだチューブレス化されていないようですし。
アイスクリームトラック純正ホイールをシマノHG+からスラム「XDドライバー」に交換する方法
さて、タイヤが目当てで購入したのにホイールがSURLY純正の上物だった訳ですが、いざ使うとなると障害になるのがシマノHG+のマイクロスプラインです。
お察しの通り、SRAM派のは私はマイクロスプライン対応のスプロケットなんて、当然持っていません。
ICT純正ホイールのハブは前述の通りNOVATEC製ですが、上画像のように運良く冬眠中のフルサス29erのリアハブもNOVATEC製。
フリーボディはSRAM「XDドライバー」なのでワンチャンあるかも!と調べてみると、ICTのリアハブの型番は「D202SB」、フルサス29erの型番が「D792SB-B12」、どちらもBタイプということで互換性がある模様。
これは追加出費なしで手持ちのスプロケットが使えるぞ!と勇んで交換してみると……確かにフリーハブボディ自体はフィットするのですが、ハブ軸部分がフリーボディのパッキンに干渉してしまい、この部分だけがミスマッチです。
更に深掘りしてみると、画像左下のようにXDドライバー用とマイクロスプライン用とではアクスル軸のエンド部分が異なった形状になっていて、右のマイクロスプライン用と左のXDドライバー用とでは、先端下部の段落ち部分に違いが見られます。
NOVATECのマイクロスプライン対応フリーボディは、画像右下のようにアクスル軸とセットで販売されているのが大半で、フリーボディに互換性はあってもスキュワーを通すアクスル軸に互換性が無いという顛末。
結論として、ICT純正ホイールをXDドライバー化するには、画像上段にあるフリーボディと「Axle MULTI-X12 12×197-Thru」の二つが必要となり、今どきのポン付けフリーボディとは毛色が異なることがわかりました。
そうそう美味しい話はないよなぁ~と落胆しましたが、他社製のフリーボディは手に入りづらく単体でも価格は割高、それを考えると一万円程度で両方が揃ってしまうNOVATEC製はまだ良心的な方かも知れません。
互換性は?「スラム×シマノ」のMTB系12速ミックスコンポを試す
せっかく最強のスノータイヤがあるのに直ぐに使えない歯痒さ……せっかちな私のことです、当然もう一つの可能性である「スラム×シマノ」のミックスコンポを試してみる流れに。
事前にミックスコンポでの互換性について最低限の情報収集を行い、中古で状態の良いシマノHG+対応のスプロケットを購入。
SLXグレードの「CS-M7100 10-51T」を選びましたが、ICTの標準装備もコレだった筈なので、奇跡的な確率で生き別れになっていたホイールとスプロケが再会した可能性も。
因みに、シマノ12速スプロケは最上位XTRの367gを除いて総じて重く、どれを選んでもあまり差がありません。
DEOREが591g、SLXが529g、XTが496gと価格差ほどの重量差は無く、最大ギアがスチール製で長持ちするDEORE版をあえて選んでいる方もいるくらいです。
気になる「スラム×シマノ」ミックスコンポの互換性ですが、ネット上で情報収集していて一番多かったのが、リアディレイラーに関する物です。
シマノのドライブトレイン(リアディレイラー・スプロケット・チェーンリング・チェーン)の中から、リアディレイラーだけを電動12速のSRAM GX Eagle AXSに交換している事例が殆どで、大抵の方が許容範囲の動作をしてくれると評していました。
もちろん、スラムもシマノも公式にミックスコンポでの使用を認めていませんが、中にはスラム製リアディレイラーのプーリーをシマノ製に交換してみたらシフト動作がより安定した……なんて気になる意見も。
今回試すミックスコンポは、スラム系ドライブトレインの中にスプロケだけシマノ製を混ぜるという構成となりますが、こちらも既に試している方がいて特に大きな問題は無かったとのこと。
因みに、シマノMTB用12速スプロケはスラムよりも幅が1.1mm厚く、シフターの引き量も僅かに異なるそうなので、交換後の最小・最大ギアのリミット再調整と変速のインデックス再調整は必須かも知れません。
また、これは良く知られている話ですが、12速からスラムとシマノでチェーンとチェーンリングに互換性がほぼ無くなりました。
シマノMTB用12速チェーンはリンク内側の形状が変更されて内幅が狭くなり、スラム12速用のチェーンリングと組み合わせると、辛うじて使えるものの歯の消耗が著しく稼働音もノイジーに。
ミックスコンポには内幅に余裕のあるスラム製チェーンの方がトラブルが少ないそうで、チェーンリングとスプロケの両者がシマノ製で統一されている場合を除いて、スラム製チェーンを選んだ方が無難でしょうか。
もちろん、チェーンかスプロケのどちらか一方をスラム製にしてしまうと、滑らか変速で知られるシマノ「HYPERGLIDE+/ハイパーグライドプラス」の効果は失われるので、その点には目を瞑りましょう。
わかりづらい説明になってしまいましたが、過度な期待を持たずパーツの負荷を度外視すれば、ミックスコンポでも最低限の動作はしてくれるといったお話ですね。
プチ雪道ライドでSURLY「BUD&LOU」の走行感とミックスコンポの挙動を確認
雪道最強タイヤの走破性を確かめるには積雪に乏しい状況ですが、例によってプチ雪道ライドへ出発。
この日は溶け始めた雪が路面を覆っていて、ミックスコンポによる駆動音の変化を確認しづらい状況でした。
ホイールの出所やミックスコンポにばかり話が偏ってしまい、肝心のタイヤクリアランスには触れていませんでしたが、ご覧の通りギリギリOKでした。
流石にリアフェンダーを外さないと無理でしたが、髭を未カットでもフレームに干渉せず、左右のフレームプロテクターとも共存しています。
27.5インチホイールを採用しているサルサ ベアグリースですが、26インチホイール時のタイヤクリアランスはフロントが26×4.8サイズまで、リアが26×4.6サイズまでとアナウンスされていました。
正直、フロントはOKでもリアはギリギリNGかな?と思っていたのですが、この値はSURLYの「CLOWN SHOE」に代表される100mm幅のリムを使用した際の目安だそうで、80mm幅のリムでは全く問題ありません。
また、このベアグリースと仕様的に似ているCANYONのファットバイク「DUDE」は、26インチなら前後とも4.8インチ幅までの対応を謳っています。
少し羨ましく思っていましたが、どうやらこの値はDUDE標準のDT Swiss製80mmリムを使用した際の値らしく、最大27.5×4.5インチ対応のTREK製ファットバイクを除けば、タイヤクリアランスは概ね共通しているのかも知れませんね。
因みに、リム幅が80mmでもリアエンド幅が177mmのファットバイクにはクリアランス不足になるので注意しましょう。SURLYのWEDNESDAYなんかが該当します。
あと、SURLYのタイヤは歪んでいることが多いですね……過去に三回使っていますが、これでハズレが2/3です。タイヤ自体が回転で振れているので、タイヤクリアランスが気になっている方はその辺も考慮に入れた方が良さそう。
さて、意図的に雪が残っている場所を攻めてみましたが、雪道での安定感は間違いなく過去イチ。
27.5インチタイヤと比べると転がり抵抗は悪魔のようですが、それを補って余りある走破性です。
雪に刻まれた轍の形状も独特で、ほかのファットバイク乗りに「このタイヤ跡は、間違いなくBUD&LOUだ!」なんて余裕で看破されそうなくらい個性的。
リアタイヤのLOUは7mm高の鋭利なノブが横方向に配置され、緩んだ雪道でも半凍結の道でもトラクションを稼いでくれる仕様。
80mm幅のリムに空気圧0.5BARでタイヤ幅の実寸が115mm、チューブレス化して0.3BARくらいまで下げれば更に走破性が増しそうです。
フロントタイヤのBUDには7mm高のノブが縦方向に配置され、よく恐竜やゴ○ラの背ビレみたいだといわれますね。
この縦方向のノブがとにかく強力で、融雪剤でザフザフになった雪道でもフロントタイヤが左右に流れづらく、安定したハンドリングの手助けになってくれます。
雪道を嗜むファットバイク乗りなら、誰もが雪にハンドルを取られて横滑りする経験をしている筈ですから、この安定感は本当に魅力的。
また、このBUDも80mm幅のリムに空気圧0.5BARでタイヤ幅の実寸が115mmでした。
久々の26インチホイールですが、ベアグリースの外観はこんな感じ。
誰が見ても一目でファットバイクだと理解できてしまうほどの存在感で、車種の自己紹介が一切不要です。
そしてこちらが、画像を同じ縮尺にした27.5×3.8インチタイヤ時の外観。
26×4.8のBUD&LOUタイヤを見た後だと、嫌でも普通のマウンテンバイクかプラスサイズバイクくらいに見えてしまいます。
画像を合成するとわかりやすいですが、タイヤの太さは115mmと97mmで約2cmの違いがあるものの、実はタイヤの外径は26×4.8インチと27.5×3.8インチとでほぼ同サイズです。
余談ですが、サルサによると、27.5×4.0タイヤは26×4.8タイヤより接地面が大きく転がり抵抗が少ないそうで、競合するトレックは、27.5×4.5が最適で27.5×4.0のタイヤは柔らかいコンディションでは幅が狭すぎると、それぞれ持論を展開している模様。
実際に雪道を走り比べてみないと白黒つけられませんが、走破性と安定感を兼ね備えたBUD&LOUを体験してしまうと、サルサの意見はどうしても眉唾に思えてしまいますね……
確かに26インチよりも良く転がってくれますが、深く柔らかい雪では力不足な気がしてなりません。
タイヤのお次はミックスコンポ化したドライブトレインの感想を少々。
今後は27.5インチホイールの走破性を確認する予定もあるので、26インチホイールは未調整のポン付け状態。
シフターのアジャストボルトで走りながらのインデックス調整を軽くしただけで、特に最大・最小ギアのリミット調整はしていません。
確かに許容範囲な動作で特定ギアでのチャラつきも気にならないレベルですが、どうしても強くペダリングするのを心理的に躊躇してしまいますね。
低速のファットバイクだからこそ安心して使えていますが、無雪期のアスファルト上やMTBで試すなら、しっかりと各部の調整を煮詰めたいことろ。
私の場合、高速ギアは安定、中速ギアは極一部でチャラつき、最大ギアは若干ノイジーといった結果でしたが、中速ギアはアジャストボルトで解消され、最大ギアはリミット調整で何とかなりそう。
ほぼ無調整の割に良く動いてくれた方だと思いますが、スラム系ドライブトレインにマイクロスプラインを組み込むなら、マイクロスプライン対応のスラム・シマノ互換スプロケをリリースしているGARBARUK/ガルバラックが一番お手軽かも知れません。
さて、20kmの雪道ライドを終えて帰途に着きますが、例によって帰りはセルフラッセル泥棒。
この程度の雪なら、自分の轍をそのまま引き返すこともありませんが、恒例行事なもので……
復路は気温が上昇し、アスファルトを覆う雪面はかき氷のファイナル状態に。
フェンダーを取外したリア側が気掛かりでしたが、ファットバイクは低速なのでスプレーの被害は背中やお尻には及びません。時速10km程度までなら泥除け無しでも大丈夫の法則です。
逆にこのタイヤはフロント側が危うく、物凄い勢いでノブが水分を拾い上げてダウンチューブに打ち付けていました。
幸い8cmの幅広ダウンチューブに救われましたが、このタイヤはダウンチューブ取付けタイプのフェンダーが必須かな。
雪道最強だけど、水跳ねも最強レベル……そんなタイヤ評に落ち着きそうです。
まとめ
タイヤもミックスコンポも概ね満足できる結果でしたが、ここにきてベアグリース標準のテクトロ製油圧ブレーキ「HD-M275」に不具合が。
ライド中の大半で前後のディスクローターが引きずりっぱなしという悪夢。
キャリパーをセンタリングしてもダメ、ディスクローターの曲がりを調節してもダメ、キャリパー内のピストンをクリーニング&潤滑してもダメのダメダメ尽くし。
ブレーキング毎にピストンの出代が安定してくれず、片側だけ突出したり戻らなかったりが常態化しています。
暖かい時期は特に問題は無かったので気温が低下したことも影響していそうですが、調べてみると私と同じ症状に悩んだ先人もいらっしゃいました。
完璧に調整しても、翌日レバーを握ると再発してしまう……そんなストレスの溜まる症状につき、堪らず油圧ブレーキの買い替えを決意。
評判の良いシマノSLXを選びましたが、詳細は近いうちに記事にする予定でいます。