2024年に欧州で注目を集め、2025年には国内でも販売が開始された第四のバルブこと「Clik Valve/クリックバルブ」
ワンタッチで口金の着脱ができる使用感の良さとポンピングの軽さから、既に使用されいる方も多いのではないでしょうか?
私も遅まきながら購入するも、その動機は単なる興味本位とは別のところにあります。
一度でもチューブレス化を経験した方なら痛感していると思いますが、既存の仏式バルブはとにかくシーラントとの相性が最悪。
シーラントの影響でバルブ先端のコアネジが固着したり上下動作の鈍化により気密が甘くなったりと、あまり良いことがありません。
この問題を解決するにはバルブコアを定期的に交換するのが一番なのですが、調べてみると新規格であるクリックバルブではそういった問題が起こりづらいそうで、この悪癖の特効薬になってくれそうな有望株。
新手のクリックバルブでもシーラントによる弊害はゼロではないものの、バネにより垂直開閉する「ポペット構造」や仏式よりも大径な空気通路の採用により、チューブレス化にまつわる諸々の不具合が最小限に抑えられている印象ですね。
また、バルブ内部で起こるシーラント詰まりにも強く、ポンプの口金を押し込んだ際やポンピングした際の圧力により、こびり付いたシーラント膜が勝手に剥がれ落ちてくれる性質も持ち合わせているとのこと。
シーラントの固着や詰まりに強いバルブとしては、ボールバルブを採用しツマミで開閉可能なMUC-OFFの「BIG BORE TUBELESS VALVES/ビッグボア チューブレスバルブ」もありますが、こちらはペアで9000円と手が出しづらい価格な上に逆止弁が備わっていないのが玉に瑕。
ビッグボアも人気のある良バルブではありますが、今回は将来性と普及度を考慮してClik Valve/クリックバルブを試してみることにしました。
【仏式バルブ】から【クリックバルブ】への交換方法と使用感について

今回私が選んだのは本家「Clik Valve/クリックバルブ」ではなく、シュワルベがリリースしているの「SCV」の方。
両者は規格的に全く同じ物ですが、本家は高熱になる電動ポンプに対応するためポンプヘッドがアルミ製になっています。
私は電動ポンプユーザーではありませんし「SCV」が3000円以下とタイミング良くセール価格になっていたため、口金がプラ製のこちらで十分という判断に。
同梱品は米式口金からクリックバルブ用に変換するためのポンプヘッドアダプター。
仏式バルブコアを置き換えるクリックバルブ×2本と対応する樹脂製キャップ×2。
そして仏式・SCVの両方に対応するバルブコアリムーバーの合計6点です。

仏式とSCVの比較は画像の通りで、クリックバルブの方が外観が太く、空気通路の大径化と共に強度アップも図られています。
その弊害として、仏式よりもSCVのバルブコアの方が重い仕様で、仏式が約1.4gに対してSCVは約2.4gと1gの重量差。
クリンチャー愛用者でホイールバランスが気になる方やヒルクライム競技で1gでも車体を軽くしたい方は、仏式バルブのままのでいた方が無難でしょうか。
また、両者のスレッドの位置からもわかるように、交換後はSCVの方がバルブが10mmほど長くなります。

せっかくなので、付属の樹脂製バルブコアリムーバーで仏式バルブを取外し。
当たり前ですが、バルブコアを外せるタイプのバルブなら、チューブレスバルブだけでなく既存のチューブにも使用可能です。

続いてクリックバルブの取付け。
注意点として、仏式とSCVではバルブコアの直径が異なるためバルブコアリムーバーに互換性がありません。
クリックバルブの着脱には付属する樹脂製バルブコアリムーバーのオープンレンチ側を利用することなり、仏式用のクローズレンチ側にはSCVバルブが通らない仕様です。
また、これについては後述しますがクリックバルブの着脱は指の力だけで十分な設計になっているそうで、メンテナンスに専用のバルブコアリムーバーが必要になるシーンはまずないとのこと。
因みに、付属の樹脂製バルブコアリムーバーがなかなかの曲者。
樹脂製ゆえに強度が全く足りておらず、増し締めには不向きでした。

特に苦戦すことも無く交換は難なく終了。
前述した通り、仏式よりも10mm前後バルブ長が伸びる仕上がりとなり、バルブ根元とコア部分の直径が同一になったせいか、外観からはガッチリとして印象を受けます。

いよいよポンピングで使用感を確認してみますが、その前にフロアポンプの下準備。
クリックバルブ用のポンプヘッドアダプターを取付けるために、手持ちのフロアポンプの口金を仏式のプレスタバルブ用から米式のシュレーダーバルブ用に切り替える必要があります。

このフロアポンプの米式口金はスレッドありのクランプ式。
とりあえず米式口金のスレッドにアダプターをねじ込んで、取付けを完了。

好評を博している使用感に期待しつつ、口金をバルブに押し込んでみると……
あれ?
確かに「カチッ」と小気味良い使用感はありますが、意外に抵抗感があって思ったほど軽くない印象。
まあ、こんなものかと続け様にポンピングしてみると、アダプターの根元からシューシュー空気が漏れ始め、ここでようやくレバーをクランプするのを忘れていることに気が付きます。

レバーを上げて仕切り直し。
初回の装着感はイマイチでしたが、二回目は評判通りの軽快さで軽い力でカチッと口金が固定されます。
どうやら差し込み角度に無理があると抵抗感が増すようで、口金がホースに引っ張られていたり、無理な角度のままで挿し込もうとすると、期待するような使用感は得られない模様。
再度ポンピングしてみると、仏式とは明らかに異なる軽快さがあり、みるみる空気が注入されていきます。
それもその筈、クリックバルブの空気流入量は仏式バルブの1.5倍だそうで、所要時間が今までの2/3になる計算。
ホイールの推奨値よりやや低い3.0BARまで注入してみましたが、体感時間は今までの半分くらいの印象で低圧主体のグラベルロードでは、ポンピング後半に感じるようなストロークの抵抗感すらありませんでした。

これは利用者が増えるわけだ……
そんなふうに感心しつつも、検証したかったことがもう一つあります。
このクリックバルブはポンプの口金が仏式用のままでも注入が可能で、その際の使用感が気になっていました。
クリックバルブ用のアダプターを外し、フロアポンプの口金を米式から仏式の戻してポンピングしてみると、結果は概ね予想していた通り。
うん、やっぱり仏式バルブの時よりも重く、バルブが異物で詰まっているかのような手応え。
辛うじて許容範囲ではありますが、ストロークが最初から重くフロアポンプ以外だと実用性に不安の残る検証結果でしょうか。

ついでなのでちょっとした不満点をもう一つ。
シュワルベのSCVには本家には付属しない樹脂製のバルブキャップが付属します。
正直、キャップ無しの方が外観が良いので個人的は蛇足に思えるアクセサリーですが、コイツの使用感がすこぶる悪いです。
走行中にキャップを紛失しないための措置だとは思いますが、とにかく着脱に力が必要で勢い余って手を鋭利なディスクローターにぶつけかねない危うさ。

バルブ先端にスレッドが存在しないため、このバルブキャップも口金と同様にクリック式な訳ですが、この仕様のままならSCVにバルブキャップは不要というのが正直な感想ですね。
因みに、キャップの頭はバルブの空気栓を押す用途に役立つものの、冬場に指先が冷えないくらいの利点しかありません。
手持ちの鍵や携帯工具の先端でも普通に押せますし、華奢な仏式バルブのようにコアネジを保護する意味も無いので、使うか否かは好みの問題になりそう。
仏式口金だとツラい…【クリックバルブ】と携帯ポンプ・CO2インフレーターの相性は?

人気のクリックバルブについて、とりあえずフロアポンプでの使用感は把握できました。
ですが、これが携帯ポンプやCO2インフレーターではどうでしょう?
幾らフロアポンプでの使用感が良くても、ライド中のトラブルに対処できなければ虎の子のクリックバルブも片手落ちです。
実際、この部分を懸念してクリックバルブへの乗り換えを躊躇している方もいらっしゃるでしょうね。
私もライド中のパンクで途方に暮れるのは御免被りたいので、手持ちの携帯ポンプ二種類とCO2インフレーターでクリックバルブとの相性を確認してみることに。

まずはホース付きの携帯ポンプとしては、最小・最軽量クラスとなるレザインのポケットドライブから。
この携帯ポンプは仏式口金がねじ込み式のスレッドタイプになっているので、残念ながらスレッドの無いクリックバルブには対応できません。

幸い、このポケットドライブはホースの反対側がスレッドタイプの米式口金になっているためポンプヘッドアダプターの取付けが可能。
ポンピングも十分に可能でしたが、もともと空気注入量の少ないコンパクトタイプの携帯ポンプにつき、仏式バルブに注入した時と使用感に大きな違いはありませんでした。

続いてクランクブラザーズの携帯ポンプ「Gem/ジェム」とTNIのCO2インフレーターにポンプヘッドアダプターを取付け。
画像左のGemはスレッドの無いクランプタイプの携帯ポンプで、仏式口金のままでもクリックバルブに注入が可能な上に。切替式の米式口金にもアダプターを取付け可能。
画像右のCO2インフレーターは仏式・米式両対応するスレッドタイプの口金を有し、こちらもスレッドタイプの米式口金にはアダプターを取付け可能でした。

さて、アダプター経由だと問題なく注入はできたものの、やっぱり気になるのは仏式口金のままでもクリックバルブに注入が可能なのかという部分。
フロアポンプでもこの組合せではストロークが重かっただけに、望みは薄そうな予感がします。
実際に仏式口金のままでクリックバルブに注入してみると、携帯ポンプでは最初のワンストロークから相当な力が必要になりました。
正直な話、出先では使いたくないレベルの抵抗感があり、初っ端から高圧タイヤ注入後半のクライマックス状態といった印象ですね。

とはいえ、このGemにはハイボリュームモードとハイプレッシャーモードの切替機能があり、試しに高圧対応のハイプレッシャーモードでリトライしてみると、辛うじて合格点をあげられる使用感に。
携帯ポンプやCO2インフレーターでの対応状況や使用感は以下のようになり、スレッドの無いクランプタイプの携帯ポンプで高圧対応の製品が最も親和性が高かったです。
【スレッドタイプの仏式口金】⇒ クリックバルブには対応不可
【クランプタイプの仏式口金】⇒ 無アダプターでクリックバルブに対応可能も高圧対応ポンプでギリ実用レベル
【スレッドタイプの米式口金】⇒クリックバルブ用のポンプヘッドアダプターで注入可能
【クランプタイプの米式口金】⇒クリックバルブ用のポンプヘッドアダプターで注入可能
結局のところ、口金が対応していても携帯ポンプでの快適さを左右するのはそのポンプ本来の性能如何といった感じですね。

余談ですが、ポンプヘッドアダプターを差し込んだ状態まま、ポンプの口金を外すと空気が駄々漏れになります。
スレッドタイプなら不用意に外れることはほぼありませんが、クランプタイプだとすっぽ抜けてしまうことがあり、折角の労力が無駄になってしまうことも。
因みに、この性質を逆に利用すればバルブコアを外さずにタイヤやチューブからハンズフリーで空気を抜くことができ、時短のために覚えておきたいテクニックだったりします。
走行中に緩みそう?【クリックバルブ】少し心配な点

最後になりますが、クリックバルブで個人的に気になったのがバルブコアの緩みについて。
前述したように、クリックバルブはコア部分を素手でも回せる設計になっているのですが、心配性の私としては走行中に緩んで空気が抜けてしまうのではと、気が気じゃありません。

クリックバルブも仏式バルブコアと同様にコアリムーバー用の平面加工がされているので、増し締めすることが可能なものの、既にお伝えしたようにクリックバルブのコアリムーバーは仏式用とは互換性がありません。
おまけにSCV付属の樹脂製リムーバーは役立たずですから、とりあえずは手持ちの工具で対応することになります。

リムーバーの強度不足により、最終的にラジオペンチで増し締めを済ませるも、手でも回せる設計というのが割と厄介。
仏式バルブとは異なり、バルブキャップやコアネジ、携帯ポンプのねじ込み式ホースによる供回りとは無縁なものの、振動の多いオフロード走行では少し気懸りになる部分です。
軽く調べてみても、「クリックバルブが緩んだ」「クリックバルブは緩みやすい」「走行中にバルブから空気が抜けた」
そういった事例は報告されておらず、私の不安はどうやら杞憂に終わりそうですが、ライド中に緩んだ際の対策として専用のコアリムーバーくらいは備えておきたいことろ。
一応、本家のClik Valveからは「QUIK キャップ」といアルミ製のコアリムーバー付きバルブキャップがリリースされているので、私と同じ不安を抱いてしまった方は是非お試しあれ。
まとめ

毎年春先に行うカスタマイズの一環として人気のクリックバルブを試してみましたが、このまま固定装備にしても特に問題は無さそうですね。
人に寄っては携帯ポンプとの相性で二の足を踏むかも知れませんが、ウルフトゥースからはクリックバルブ専用の携帯ポンプもリリースされているので、こちらを頼るのも手でしょうか。
因みに、ポンプヘッドアダプターは単体でも購入できるので、自宅のフロアポンプ用とライド携帯用のふたつを準備したほうが使い勝手が良さそう。
重ねて言いますが、本家Clik Valve製はポンプヘッドアダプターがアルミ製なので、電動ポンプをお使いの方は必ずこちらを選ぶべし。

