グラベルロードのバラ完で、アッセンブルが比較的すんなり決まったのがホイールです。
完成後はチューブレスで運用することに決めていたので、チューブレスレディに対応していることが大前提、加えて面倒臭いチューブレスリムテープの貼り替えが不要なホールレスリムが理想でした。
最近はホールレスではなくテープレスと呼ぶそうですが、私が選んだのはMAVIC/マヴィックのグラベル用アルミホイールこと「ALLROAD/オールロード」です。
メディアへの露出が多いホイールなのでご存知の方も多いでしょうが、このALLROADは同マヴィックのロードバイク用ホイール「KSYRIUM/キシリウム」のグラベルロード版とも呼べる製品で、アルミ製の最上位版「ALLROAD SL DISC」は、軽量化により波打ったリム形状が特徴。
はじめは当たり前のようにSL版を購入するつもりでいましたが、ミニベロの後釜として普段使いもするグラベル&オールロードには少し過剰な装備かも知れない……と買気をひとまずクールダウンさせます。
結局、ディスクブレーキ仕様で700Cサイズ、チューブレス対応でリムテープ要らずなテープレス、これらの条件を満たしていれば別段SLに拘る必要はないのでは?とすんなり諦めがつき、ミドルグレードの「ALLROAD S DISC」を選ぶことに。
「SL」と「S」の価格差は30000円弱ですが、両者の違いは前述したリム加工による重量差くらいで、前後セットで175g程度ならタイヤチョイスで十分に埋められるだろうという目算。
因みに、採用されているエアロスポークにも僅かな違いがあるそうで、SLは楕円形、Sは丸角矩形と断面形状が差別化されているとのこと。
例によって前置きが長くなりましたが、今回はマヴィックのグラベル用ホイール「ALLROAD S DISC」の詳細やセットアップした際の感想についてまとめてみます。
安全設計のフックレスリムに注目!MAVIC「ALLROAD S DISC」の詳細
開封の儀をすっ飛ばしていきなりのお目見えですが、こちらがALLROADシリーズのミドルグレードホイール「ALLROAD S DISC」です。
公式HPによると、リム内寸が22mmで幅28~64mmまでのチューブレスタイヤに対応すると記載がありますが、ぶっちゃけ公式の数値には間違いが多いので、タイヤの空気圧も含めてリムに記載されている推奨値の方を信頼するのが吉。
アクスル軸は前後共にΦ12mm、スポーク数は24本、冒頭でも触れた通りホイールサイズは700Cとなり、ロードプラス規格の650Bホイールは今回あえて見送り、後々の楽しみに取っておくことにしました。
さて、最大の魅力はやはりここでしょうか、ニップル穴が一切存在しないホールレスリム。
気密を保つチューブレス用リムテープが一切不要なテープレス仕様になっているため、コスパの悪いリムテープを定期的に貼り替える作業とは無縁でいられます。
おまけにテープがない分だけ、リム外周が軽くなるという追加効果も。
便利すぎるテープレス仕様のリムに目を奪われがちですが、ALLROAD S DISCのフックレスリムにも注目したいところ。
ALLROAD S DISCは新規格に即したホイールだけに、Gハイトと呼ばれるリム側面の高さに余裕が見られ、走行中にリムからタイヤが外れてしまう、俗に言う「タイヤの暴発問題」が起こりづらくなっています。
上画像は街乗りMTBに使用しているカーボン製のフックレスホイールですが、両者を比較してみるとALLROAD S DISCのとの差がわかりやすいですね。
フックレスリムのGハイトは安全運用のために5.5mm以上を確保するように規格に定められていますが、旧世代のカーボンホイールはGハイトが5mm前後と少し剣呑な数値。
それに対してALLROAD S DISCのGハイトは6mmと、破裂音と共にタイヤをリムから吹っ飛ばした経験のある方にとって、少なからず安心感を覚える数値になっています。
因みに、フックレスリムにクリンチャータイヤは基本NGな組合せですが、ALLROAD S DISCはチューブレスタイヤだけでなく、クリンチャータイヤも使えるという至れり尽くせりな仕様。
チューブレス未対応の軽量タイヤをTPUチューブで運用するといった使い方もでき、実に懐の深いホイールです。
フリーボディはスタンダードにシマノHG規格、スラムのXD-Rドライバーも選べましたがドライブトレインをシマノ系でまとめる予定だったので、何となくこちらを選択。
よくよく考えると、XD-Rドライバーに1.85mmスペーサーを入れるだけで普通にXDドライバー用の軽量スプロケットが使えたので、これはミスチョイスだったかも。
HG規格はXDドライバーと比べて、フリーボディ自体もずっしりと重いですしね。
また、グラベル用とはいえロード系ホイールだけに、ディスクローターの取付けは6ボルト式ではなくセンターロック式。
センターロック式のローターは選択肢が限られていますし価格も割高なので、変換アダプターを介して手持ちの6ボルト式ローターを流用する予定です。
注意点として、スポークとニップルはマヴィック製の特注品につき破損したら少し面倒かも知れません。
しっかりとした国内窓口があるので、スペアの入手自体には困りませんが、既製品がお手軽に使えないのは残念ですね。
この大型ニップルはリムに直接加工されたスレッドにねじ込まれているので、スポーク交換時でもタイヤを外す必要はありません。
リムにニップル穴が無いので当たり前の話ですけど。
気になる重量は、フロントが835g、リアが970g、合計1805gという測定結果に。
HP上のカタログ値が、フロント830g、リア935、合計1765gですから、40gほど重いです。
フロントは個体差ですが、リアはフリーボディの重さの違いが出てますね。
ホイール中心部分の重量は走りの軽快さに大きな影響を及ぼさないので、過剰に気にする必要はありませんが、以前にクランクブラザーズのMTB用ホイール「コバルト2」でも似たような経験がありました。
学習済みなので特に落胆はありませんが、聞くところによると、この手の数値は軽い方が採用されるそうで、前述の通りフリーボディが軽量なスラムXD-Rなら数値通りの結果だったのかも知れません。
リムにはタイヤサイズ毎に推奨される空気圧やホイール自体の上限空気圧が記載されています。
対応するタイヤ幅は28~46mmとあり、怪しかった公式HPの28~64mmよりも信憑性がありますね。
幅30mmのチューブレスタイヤで空気圧の上限が3.5Bar、幅40mmのチューブレスタイヤで空気圧の上限が3.0Barという目安があり、タイヤの暴発問題に対してしっかりとした配慮が見られます。
また、リム自体の最大空気圧も4.5Barと定められていて、チューブドのクリンチャーで運用する場合はこちらの値を遵守することに。
個人的に大変有難かったのが、付属品のチューブレスバルブとスプロケット用のスペーサーでしょうか。
チューブレスバルブはマヴィック純正品だけに根元のラバーベースがしっかりとフィットしてくれますし、別途で購入すると結構なお値段になりますから。
スペーサーは1.85mm厚が付属、これがあればMTB用のスプロケットが使用でき、パーツ次第で11-42T以上のワイドレシオも実現できます。
因みに、Y字になったタイヤレバーも付属していて、先割れになっている側はニップルレンチとして使用可能。先述した特注ニップル専用なので、一本くらいはツールケースに忍ばせておくのも良さそう。
最後になりますが、個人的に非常に気になったのがこの部分。バルブ穴のちょうど反対側、リムの溶接部分に謎の黒いパッチが貼られています。
溶接部をシールしていると思いきや、割とすぐに剥がれそうな糊付け加減で、どうしたものかと判断に迷いました。
散々調べても正体が全くわからず、他の方は剥がさずにそのまま使っているのが殆ど。
シーラントを注入して使うと、遅かれ早かれ剥がれてしまうそうですが、存在意義が気になるところ。
う~ん、本当に謎ですが、折を見てマヴィックに問合せしてみるべきか。
はじめての敗北……「ALLROAD S DISC」はビード上げがムズイ?
ホイールの紹介だけでは味気ないので、届きたてホヤホヤのグラベルタイヤでビード上げに挑戦してみました。
何の捻りもないチョイスで心苦しいのですが、選んだタイヤはパナレーサー「グラベルキング」、もちろんチューブレス版です。
ノブの全く無いドノーマルなグラベルキングで、サイズは太すぎず細すぎずな700 x 38Cを選びました。
型番は同じなのにパッケージが異なる物が届いて困惑しましたが、どうやら青タグが旧パケ、紫タグが新パケのようですね。
性能差や重量差はありませんが、旧パケ版のグラベルキングにはタイヤの回転方向指示が無いといった違いも。
実のところ、ALLROAD S DISCはIRC製やテラベイル製のグラベルタイヤと相性が良く、ビードが上がりやすく気密も保たれやすいとのこと。
グラベルキングは利用者が多いせいかリムとの相性問題がそこそこ報告されていて、グラベルロードの完成車によく採用されているWTB製リムとは特に悪いと聞きます。
走行中やポンピング中にタイヤが吹っ飛ぶのは流石に勘弁ですが、タイヤビードを見る限り他社製タイヤとの違いは見受けられず、マヴィック製ホイールとの相性問題も私が調べた範囲では見当たりませんでした。
最初に新パケ版からセットアップしてみると、フロアポンプでのビード上げに成功。
タイヤ装着後にタイヤの側面を引っ張って、しっかりと左右のハンプ付近に寄せておくのが必須で、チューブレスバルブからバルブコアを取外してから空気を注入しました。
さて、ここから大苦戦の始まりです。
同様の手順で作業しても、旧パケ版のグラベルキングのビードが全く上がりません。
対応するチューブを持っていないため、チューブを入れて片側のビードだけを先に上げてしまう裏技も使えず、半日近くも悪戦苦闘。
ついにはタイヤを摘まみ過ぎで手袋越しにもかかわらず指の皮が剥けてしまい、ここで無念のDNFです。
今までフロアポンプのみでビード上げを成功させてきましたが、グラベルキングにはじめての敗北を喫しました。
結局、購入してから六年間も全く出番が無かったCO2ボンベとインフレ―ターによるチートで、あっさりとビードが上がりましたが、グラベルキングの新パケ版と旧パケ版とでは、リムとの密着加減に違いがあるのかも知れません。
その後、シリンジでシーラントを注入し、空気圧3.5Barでセットアップ完了。シーラントをリム内にいきわたらせつつ、72時間後に空気圧を測ってみると、2.7Barと上々な結果。
今まで、ビード上げなんてフロアポンプで十分だと思っていましたが、まさかファットバイクやMTBよりも苦戦するとは……
エアコンプレッサーとまではいいませんが、圧縮した空気を一気に送れるチューブレス用のエアタンクくらいは備えておきたくなりました。
まとめ
グラベルロードのバラ完用にマヴィック「ALLROAD S DISC」を購入してみましたが、ミドルグレードながらしっかりとツボを押さえた良ホイールといった印象。
記事を書いている時点でバラ完グラベルロードは完成していて、既にシェイクダウンも済ませていますが、このホイール選択で間違いありませんでした。
機会があればSL版も試してみたいですが、お次はグラベルロードに最も似合うロードプラス規格ホイール「ALLROAD SL ROAD+」が候補になりそう。
私と同様に、旧世代のフックレスリムで痛い目を見た方や、チューブレスリムテープの貼り替えが煩わしいと感じている方は、マヴィック「ALLROAD」シリーズのSL版かS版を是非お試しあれ。