ファットバイクは冬に乗る自転車というイメージが強く、実際に雪解けの伴う3月以降はファットバイクの出走頻度が一気に低下します。
私はミニベロとファットバイクの2台持ちなので、舗装路で路面の見える状態ではどうしても軽快に走れるミニベロの出番が多くなり、特に夏場はファットバイクの出番は数える程しかありません。
舗装路で無理にファットバイクに乗る必要はないのでは?と思うかも知れませんが、ミニベロは軽快で小回りが効く半面、路面から振動を拾いやすく、お世辞にも乗り心地が良いとは言えません。
ファットバイクは数センチの段差なら無視できるくらい乗り心地が良いですし、極太のブロックタイヤから生み出されるペダリングの重さを無視できるなら、個人的にオールシーズン乗っていたい自転車なのです。
ファットバイクのオールシーズン化に向けて情報収集していると、去年のウインターシーズン突入直前というバッドタイミングで、高速&軽快化を実現できるファットバイク用スリックタイヤの存在を知ります。
評判も上々ですし、直ぐにでも試してみたいという欲望に駆られましたが、これから積雪が続くこのタイミングでスリックタイヤに交換するのは自殺行為です。
結局、逸る気持ちを抑えつつ雪解けシーズンまでひたすら待ち続け、ようやくファットバイク用スリックタイヤに相応しい季節が巡ってきました。
当初はファットバイク用のスリックタイヤでは一番入手性の良い、VEEタイヤのspeedster(スピードスター)を購入予定でしたが、幸運にもファットバイク用スリックタイヤの元祖ともいえるSURLY(サーリー)のBLACK FLOYD(ブラック フロイド)がオークションで安く落札出来ました。
何気にSURLY純正のタイヤは初体験ですが、早速ファットバイクに装着してみます。
本当に軽量だったSURLYのBLACK FLOYD(ブラック フロイド)タイヤ
馬鹿でかい海苔巻きの様に見えますが、上画像がSURLYのBLACK FLOYD(ブラック フロイド)タイヤです。
未使用ではありませんが、使用感は少なく髭もしっかり残っています。新品一本分くらいの価格で前後セットが落札でき、某北の大地にお住いの出品者様には感謝の言葉もありません。
カラーはBLACK WALLとTAN WALLの2色展開ですが、私が交換前に使用していたKENDA製 JUGGERNAUT SPORT 26×4.50はサイドウォールがタンカラーなので、交換後もイメージの変わらないTAN WALLをゲットできたのはラッキーでした。
サーリー製以外のファットバイク用リムはブラックカラーの地味な物が多いので、アクセントとしてはもちろん、レトロ感を出したい街乗り用のファットバイクにもTAN WALLは良い選択肢だと思います。
タイヤパターンはこんな感じで、低いノブがレンガ状に並んでいます。
タイヤ表面がフラットではないので正確にはスリックタイヤではありませんが、ブロックタイヤと比べると見るからに良く転がりそうですね。
タイヤ表面に全くパターンの無いファットバイク用スリックタイヤには、VEE Apache Fatty Slick(ヴィー アパッチ ファッティ スリック)があり、現時点では入手困難な上に重量は1220gと少し重いです。
このタイヤは5インチファットバイクと相性抜群な4.5インチ幅の極太スリックで、さながら黒い浮輪の様なインパクト抜群の見た目をしています。
ノブの無いスリックタイヤな上に接地面がだだっ広いファットバイクなので、リリース当初はパンクしやすいという評価でしたが、最近のモデルはトレッド面が厚くなり、その欠点がある程度解消されているみたいですね。
重量は公称値で1050gとあり、事前に軽量であることは知っていましたが、実重量は1014gと確かに嘘偽りは無いようですね、ケブラービードはやはり軽量です。
因みに、競合するVEEタイヤのspeedster(スピードスター)も公称値でケブラービードが1010gと大変軽量ですが、個体差が大きいらしく、実重量が約1100g程度の場合もあるそうです。
今まで使用していたJUGGERNAUT SPORT 26×4.50が1450gですから、今回のタイヤ交換で前後合わせて一気に800gも軽量化できることになり、走りに最も影響を及ぼす回転部分なだけに転がり抵抗の軽減以外の効果も期待できそうです。
BLACK FLOYD(ブラック フロイド)タイヤで試走
早速、タイヤを交換した後に10kmほど試走してみました。
前述の通りサイドウォールのカラーが交換前とほぼ同じなので、パッと見では外観に大きな違いは感じません。下画像のタイヤの方がサイドウォールの幅が若干狭いくらいでしょうか。
交換後はタイヤ幅が4.5インチから3.8インチになるので、少しはファットバイク特有の威圧感が軽減されるのでは?と思いましたが、タイヤの直径が一回り小さくなった事がわかる程度で、見た目のボリューム感はそのままです。
サイドウォールが少しだけ黄色寄りになったので、以前よりもゴールドのリムとの一体感が増した印象でしょうか。
下調べをした段階で、同タイプの100mm幅リムにブラックフロイドを使用している方を確認できていたので、あまり不安はありませんでしたが、幅広なリムにも思いのほかしっかりとフィットしています。
これなら、100mmリムに装着できるか確証の持てなかった、VEEタイヤのスピードスターでも問題ないかも知れません。
転がり抵抗を減らし、アスファルト上を快適に走行するためにタイヤの空気圧は上限いっぱいの2.0barにしますが、低圧が真骨頂のファットバイクを所有して以来、タイヤがこれ程パンパンになるのは初めての経験です。
手で触れると、この太さのタイヤではあり得ないくらいの硬さで、走行中に破裂してしまわないか不安になる程でした。
スタート時は強い向かい風からか全くタイヤ交換の恩恵を感じず、『この程度か…』とかなり落胆したのですが、状況が改善すると徐々にタイヤ交換の影響を実感できるようになります。
明らかにスピードの乗りが良くなっていますし、ペダリングを止めてもなかなかスピードが落ちません。
私はファットバイクでの必要性を感じないため、フロントギアを滅多にアウターにしませんが、あまりにもスピードが良く乗るため、あっという間にリアのトップギアまで使い切り、初めてアウターが必須だと感じました。
元来タイヤまわり重量級のファットバイクでは、タイヤ交換をして少しばかり軽量化しても、ストップアンドゴーで感じる走り出しの重さにそれほど変化はありませんが
ただでさえ極太タイヤによる慣性というポテンシャルを秘めたファットバイクが、転がり抵抗の足枷を外される事により、『ハブにモーターでも入ってるのか?』と思えるくらい、小気味よい速度維持を発揮してくれるようになります。
忘れがちですが、スリックタイヤに交換したことでタイヤの走行音も随分と大人しくなりましたね。
タイヤに髭が残っていることもあり全くのゼロではありませんが、他人に背後から迫っても驚かれないレベルの走行音にとどまっています。
まとめ
まだ10kmほどしか走行していないため、ロングライドではどれほど影響するのか分かりませんが、トレイルを走らず舗装路メインの場合なら、冬以外のスリーシーズンはこのタイヤだけで十分かも知れません。
ブラックフロイドを使用した方によると、前述したVEE Apache Fatty Slickと同様に他のファット用タイヤよりパンクしやすいとの事ですが、私の用途で頻発する様ならばブラックフロイドよりも転がり抵抗に優れるVEEタイヤのspeedster(スピードスター)を試してみる予定です。
余談ですが、ファットバイク用ブロックタイヤで最も転がり抵抗が少ないのはSCHWALBE JUMBO JIMです。タイヤノブが低いため雪道では力不足になりますが、積雪がそれほど多くない地域ならオールシーズンこれ一本で済ませられる大変評判の良いタイヤでしょうか。
【追記】2021年時点でサーリーの公式ページからBLACK FLOYD(ブラック フロイド)の扱いが消えています。
このタイヤは過去に一度廃番になり、ファットバイク人気で復活した経緯がありますが、再び廃番になった模様。
個人的に好きなタイヤだけに大変残念ですが、国内での入手性を考えるとファットバイク用のスリックタイヤはspeedster(スピードスター)が今後の定番になりそうです。