チューブレスで空気漏れ!?『疑ってみる点』と『試してみる対処法』

チューブレスで空気漏れ!?『疑ってみる箇所』と『試してみる対処法』イメージ01

スポーツバイク界隈では、オン車オフ車を問わず珍しくなくなったチューブレスですが、私自身はチューブレスレディとクリンチャーを行ったり来たりしている状態。

増車したグラベルロードを久々にチューブレスで運用してみると、乗り心地の良さに感心すると共に「あれ、こんなに空気抜けが早かったっけ?」といった違和感も。

空気圧を2.5barにセッティングした後、十日後で1.25barという減圧ぶりですが、冷静に思い返してみるとチューブドでの運用時とそれほど大きな違いはなく、チューブレス化そのものには失敗していないことがわかります。

実際、この程度の減圧なら全く問題になりませんし、ライド前に空気圧チェックする習慣があるなら尚更ですが、巷ではチューブレスタイヤの空気抜けに悩まされている方も少なくないと聞きます。

私の症状なんて当たり前すぎる部類で、普通にライドはできるものの翌日にはタイヤがヘコヘコに……といったチューブレス化に成功しているのか失敗しているのかが、はっきりと判断できない中途半端な症状もチラホラ。

そこで今回は、チューブレスレディでタイヤが空気漏れしてしまう原因やその対処法について、簡単にまとめてみたいと思います。

チューブレスリムテープが劣化している

チューブレステープの選び方と貼り替えイメージ07

チューブレスレディの空気漏れの原因で、一番多いのがこのリムテープの劣化かも知れませんね。

特に、バルブ穴付近とニップル穴付近の劣化が進行しやすく、ニップル側から水分が侵入してテープの粘着力を低下させてしまうなんてことも。

チューブレス化している方は、深めの水たまりに不用意に飛び込まないのが無難です。

チューブレスリムテープは一年に一度の貼り替えが推奨される消耗品で、低圧主体のオフロード車なら一重巻き、高圧主体のオンロード車なら二重巻きが基本。

使用するリムテープは、リムの内幅と同じ幅ではなくリムの外幅プラス1~2mmくらいの幅を選ぶのがベストです。

リムテープの幅に余裕が無いと、空気注入後に生じるテープの位置ズレに対応できず、ビード付近の気密が不十分になりかねません。

また、リムテープにバルブ用の穴を開ける際に刃物で「×」に切れ込みを入れるシンプルな方法がありますが、個人的に熱した六角レンチなどで穴を開けるもう一つの方法を推奨。

チューブレスリムテープは手では容易に切れない強度があるかわりに、一度切れ込みが入るとそこからどんどん裂けてしまう性質があるので、エッジを熱処理した穴開けのほうが劣化が進みづらい気がしました。

因みに、これは海外で紹介されていた方法ですが、バルブ穴付近の仕上げ処理として、リムテープの上からカットしたゴリラテープをペタッと貼るだけという、お手軽なテクニックもあります。

ゴリラテープの裏打ちによる適度なクッション性が加わるおかげで、バルブ穴周辺の強度アップと共にチューブレスバルブの座りも良くなるとのこと。

チューブレスバルブに問題がある

高評価&親切設計なハズだけど…MUC-OFF製シーラントの使い方イメージ04

空気漏れの要因として、前述のチューブレスリムテープと双璧を成すのが、このチューブレスバルブでしょうか。

普段はあまり意識しませんが、チューブレスバルブにも寿命があり、タイヤやチューブと同じ三年前後といわれています。

金属製の本体は問題なく使えても、バルブ根元の「ラバーベース」やバルブコアのシール部分は、ゴム製だけに経年劣化は免れません。

とはいえ、これらの劣化が空気漏れの原因になることは稀で、ラバーベースのミスチョイスやバルブとホイールの相性問題の方が原因になりやすいです。

円錐型のラバーベースは大抵のリムにフィットしてくれますが、専らロード用のかまぼこ型ラバーベースを幅広リムに使ったりすると、空気が漏れたりシーラントが噴き出したりと厄介。

また、市販のチューブレスバルブは非対称リムやディープリムには未対応なものが多く、バルブナットの締め付けでしっかり気密を保つには、専用の台座が必要なことも。

チューブレスバルブの種類と非対称リム・ディープリムとの相性問題イメージ04

ちょっと文章では説明しづらいのですが、画像右にあるシュワルベ製チューブレスバルブがわかりやすいでしょうか。

バルブナットの下に専用の台座があり、バルブナットによる締め付けと固定が、上面がフラットになっていないリムでも機能しやすい作りになっています。

この台座はロード用のチューブレスバルブに付属していたり、ホイールに付属していたりするそうですが、光モール社製「品番300 ブラック丸パイプ10」で自作も可能。

最低限の加工は必要ですが、色はブラック、劣化に強い硬質ABS樹脂製、仏式バルブに通せる絶妙なサイズ感、低価格で使い放題と、至れり尽くせりな代替品です。

余談ですが、チューブレス用のバルブナットはあまり締め付け過ぎない方が良いそうで、ラバーベースが傷みやすくなる上にバルブ根元に柔軟性が無くなってしまうとのこと。

バルブナットは素手で外せないと、ライド中のトラブル対応でチューブドに戻すこともできませんしね。

タイヤビードに癖がある

フックレスでテープレス!『MAVIC ALLROAD』グラベルホイールの感想イメージ13

チューブレスの空気漏れについて、意外に盲点になりそうなのがタイヤのビード部分かも知れません。

最近のタイヤでは滅多に起こりませんが、フォールディングビードでパッケージ状態の折癖がついたままセットアップすると、ビードとリムが密着せずにチューブレスの気密を損ねてしまうことがあります。

大抵はタイヤを円形に戻し、手で揉みほぐすくらいの対処で十分ですが、ハズレを引いてしまった場合は一旦チューブドでセットアップしてから丸一日放置するなどして、タイヤについた癖を矯正してあげましょう。

他にも、メーカーによってはタイヤノブやトレッド面だけでなくビード付近にも髭があり、これが悪さを働くことがあります。

シーラントで塞がってくれる小さな隙間である場合が殆どですが、より気密を高める目的でビード部分の髭をニッパー等で下処理する方もいますね。

また、リムとビードの間からの空気漏れがなかなか収まらない時は、外側からビードライン付近の隙間にシーラントを少しだけ流し込むのも手です。

余談ですが、チューブレス運用でプラ製のレバーや素手でのセットアップが推奨されるのには、ビードやリムに余計なダメージを与えないようにする意図があった筈。

リムが変形している

チューブレス特化のMTB用ホイール『Crankbrothers Cobalt2』を購入イメージ09

リムの変形による空気漏れは、チューブレス化した直後よりもしばらく運用した後で起こりがちですね。

低圧気味で運用するチューブレスでは、走行中にリム打ちパンクに相当するような衝撃を受けると、リムそのものにもダメージが及びやすく、大抵はビードと密着するリムの両サイドが変形します。

最近はそれを防ぐ目的でタイヤインサートが人気を集めていますが、一度でもリムが変形してしまうと気密を保つことが難しくなり、せっかくのチューブレスホイールが半ば強制的にクリンチャー専用になってしまうなんて不運も。

アルミリムで変形が軽度ならば、裏からの当て木と表からのゴムハン矯正で何とか復活も可能ですが、それは本当に運の良いケースです。

聞くところによると、カーボンリムの場合はクラックというわかりやすい症状以外に、加重でリムの両サイドが僅かに膨れてしまう症状もあるそうで、見た目から判断しづらいだけにこちらの方が厄介かも知れません。

余談ですが、仮にリムが全く変形していなくてもタイヤとリムには先天的な相性問題があり、WTB製のホイールで悩んでいる方が多いと聞きます。

WTB製はグラベルロードの完成車によく採用されていますが、同じWTB製タイヤに最適化されているからなのか、一部メーカーのタイヤだと空気漏れやビード落ちの不具合が起こりやすくなるとのこと。

タイヤシーラントが不十分

プロアポンプで『ビード上げ』チューブレス化成功のコツイメージ12

このシーラント不足も、チューブレスの空気漏れではよくある原因の一つでしょうか。

セットアップ時に重量増を気にして注入量をケチったりすると、タイヤ内部に十分なシーラントが行き渡らずに、本来の効果を発揮できない場合があります。

それに加えてスキンウォールやタンウォールのタイヤはタイヤサイドからの微細な空気漏れが起こりやすい傾向にあり、使用するタイヤによってはスタンズ製などのサラサラ系シーラントでは力不足な場合も。

また、注入されたシーラントは時間経過と共に目減りしてしまうため、俗に「追いシーラント」と呼ばれる定期的な追加注入も欠かせません。

追加時期の目安は、利用者の多いスタンズ製の無印シーラントで三ヶ月、マックオフ製などの長寿命を謳ったシーラントでも六ヶ月くらいになりますが、気温の高い夏場は減少量が多くなる傾向にあります。

因みに、チューブレス化がしっかり成功していると、注入されたシーラントがゼロになってもタイヤの気密が保たれてしまい、見えないリスクを抱えたままライドに勤しんでしまう状態に陥りがち。

シーラントの残量を正確に把握するには、ビードを落してタイヤの腹を開く必要がありますが、ビード上げに苦戦したようなタイヤだと、面倒臭すぎて億劫になってしまうのが本音でしょうか。

簡易的な確認方法として、ホイールを揺すったりタイヤを空転させた際の水音で判断するやり方もありますが、バルブコアを外して棒状の物を突っ込むやり方が一般的なようです。

やり方はご想像の通りで、バルブコアを外して素通しにしたチューブレスバルブを六時方向の位置にセットし、六角レンチやドライバーなどをタイヤに触れる位置まで挿し込んであげるだけです。

そっと引き抜くと、器具の先端がどこまでシーラントに浸っているかが判断できるため、シーラント残量の目安にすることができます。

タイヤに気付かないダメージがある

チューブレスレディタイヤがパンクした時の対処&修理方法イメージ05

当たり前の話ですが、チューブレスタイヤの破損も空気漏れの原因になります。

チューブレスレディの場合、小さな刺突パンク程度なら勝手にシーラントが修復してくれますが、シーラント以上リペアキット未満、そんな中途半端な傷が悪さを働くことも。

何気なくタイヤを見た際に、トレッド面に滲んでいるシーラントや気泡で気付かされることが多いですが、走行中に補修と破損を繰り返している状態ですね。

タイヤのフレイル現象なんて呼びたくなりますが、未走行時はシーラントで塞がっていてくれても、走行時に再発して少しずつ空気が漏れしてしまう……そんな症状が続きます。

空気漏れを防ぐために補修が必要になりますが、プラグ式のリペアキットはそんな傷には過剰ですし、あくまでも応急処置用なので使わない方が無難。

最近はLEZYNE/レザインから「TUBELESS PRO PLUGS」というチューブレス用修理・補修キットも登場していますが、タイヤの裏面からチューブ用のパッチを貼り、表側から靴底補修剤を盛るやり方で補修してあげましょう。

前述したタイヤサイドの空気漏れと同様に、無印スタンズなどのサラサラ系のシーラントで起こりやすいので、6mm程度の穴まで塞げる最近の高性能シーラントに乗り換えてしまうのも手でしょうか。

季節や気温の影響を受けている

暑すぎてライドが苦痛…自転車で試したくなる冷涼アイテムの話イメージ02

最後にお伝えするのがこちら、私が空気抜けが早いと感じた原因である、季節や気温による影響です。

この記事をまとめるにあたり、気温と空気の抜けやすさに関して一通り調べてみたのですが、より疑問の深まる結果になりました。

経験則として、気温の高い夏場はチューブレスでもクリンチャーでも、本当にタイヤが減圧しやすいと感じていましたが、冬場の方が減圧しやすいという真逆の意見もあり、実際にチューブで長期テストされた方もいらっしゃいました。

夏場に減圧しやすいのは、空気やゴムの分子間構造が高温により伸びてしまうのが原因だと聞いていましたが、チューブ関していえば元から分子間が伸びる構造になっているので無関係という見方もある上、ゴム素材は高温による熱収縮で空気が抜けづらくなるという予想外な見解も。

私は真冬にファットバイクに乗っていることもあり、夏と冬とでは圧倒的に夏の方が減圧しやすいと感じています。

夏場は三日おきでも足りないくらいですが、冬場は低圧のまま一週間放置しても空気圧に大きな変化が現れません。

クリンチャーかチューブレスか?、ブチルチューブかTPUチューブか?、走行しているか放置したままか?

こういった違いで結果は変わってくると思いますし、バルブからの空気抜けも関係している可能性がありますが、季節や気温によってタイヤの空気が抜けやすくなるという点だけは確かなようです。

余談ですが、フックレスホイールでチューブレス運用する場合、気温の高くなる季節は推奨空気圧からマイナス10%程度の安全マージンを設けましょう。

空気圧MAXにしてしまうと、タイヤ内の空気が熱膨張した際に対応しきれず、走行中にタイヤがホイールから外れてしまうなんてこともあり、場合によっては命に係わります。

まとめ

チューブレスレディの空気漏れや空気抜けについて、私の知る範囲でまとめてみましたが、やはりリムテープとチューブレスバルブに関する内容が多かったですね。

チューブレスバルブの種類と非対称リム・ディープリムとの相性問題イメージ01

最後にオマケとしてバルブ付近の気密を高めるちょっとした小技をご紹介。

通常のチューブレス化では、バルブナットを締め込んだ後にシーラントを注入するため、シーラントがバルブ根元に上手く行き渡ってくれません。

このままではバルブ根元の気密がイマイチなので、セットアップ後にバルブナットを軽く緩めて、シーラントをバルブ根元に誘導してあげましょう。

やり方は簡単、バルブ根元から軽く空気が漏れる程度までバルブナットを緩め、その部分にシーラントが向かうようにホイールをシェイクしてあげるだけです。

バルブ根元からプシュッとシーラントが挨拶に来たら完了の合図で、あとは仕上げにバルブナットを元通り締め付けるだけです。

チューブレス化後なら、どのタイミングでも使える小技なので、バルブ付近の気密に不満をお持ちの方は是非お試しあれ。

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