グラベルロードをチューブレス化してしばらく経ちますが、ちょくちょく悩まされるのがバルブまわりの不具合。
シーラントを必要とするチューブレスレディだけにバルブもその影響を受けやすく、バルブ詰まりやバルブコアの固着といった症状がその典型例です。
私自身、バルブが詰まった経験こそありませんが、コアネジの固着やバルブコアの動作不良なんかは日常茶飯事。
駐輪時にはバルブ位置を六時方向にするといった効果の不確かな努力を重ねるも、今となってはチューブレス化による持病だと諦めの境地です。
この持病はバルブまわりを定期的にメンテナンスすることで多少は軽減できるものの、主要部で固まったシーラントのしつこさは相当なもの。
正直、バルブまわりのメンテナンスと言っても効果的な方法は数えるほどしかありませんが、今回はチューブレスバルブのクリーニング方法やバルブ詰まり克服した次世代のチューブレスバルブについて話題にしてみます。
バルブコア交換が効果的!チューブレスバルブのメンテナンス方法

チューブレスバルブのメンテナンスをするにはバルブコアを外す必要があるため、私の場合は「追いシーラント」と同じタイミングになることが殆ど。
少し前の記事でもお伝えしましたが、MUC-OFFシーラントのパウチ容器を再利用して既に準備は万端です。

そしてこちらが件のチューブレスバルブで、マヴィックのグラベル用ホイール「ALLROAD S」に標準で付属していた物。
冒頭でチューブレス化するとシーラントの影響でバルブ詰まりやバルブコアに固着が起こりやすいと説明しましたが、実際はバルブが詰まることはあまり無くバルブコアにトラブルが発生するケースが殆どでしょうか。
特に赤矢印のコアネジが固着しやすく、素手では回せないことがよくあります。
工具が整っている出走前なら簡単に対処できるものの、身軽なライド中はそれが難しく、最悪の場合はパンク時にハンドポンプやインフレーターが使えないといった事態も。
この解決策として英式バルブ用の虫ゴムを使う方法があるそうで、コアネジを虫ゴムで挟み込んで回すと固着したコアネジでも開放しやすくなるとのこと。
ペンチ類は小型でも重量が嵩みますから、これはなかなか賢い方法かも知れませんね。

一応、コアネジの固着に対応できるチューブレスバルブも存在し、国内ではあまり聞かないフランスのSENDHIT/センディットというブランドからリリースされています。
いまどきのチューブレスバルブはバルブキャップがバルブコア外しを兼ねていることが多いですが、こちらは二つあるキャップの一方が固着したコアネジを回すミニツールになっているというレアな製品。
寒い季節なんかだと手がかじかんでしまい、軽度でも固着したコアネジを回しづらく感じることがあるので、バルブキャップだけ別売りして欲しいくらい。

また、先ほどのSENDHIT/センディットもそうですが、最近のチューブレスバルブにはバルブの底面だけでなく底部の側面にもエアホールが設けられています。
これはシーラントによるバルブ詰まりを軽減するだけでなく、タイヤインサートを使用した際でも空気の流れを確保できるようにする仕組み。
上画像の右側のように、一世代前のチューブレスバルブはエアホールが底面にしか存在せず、ここに入り込んだまま居座ったシーラントが不具合の原因になります。

先程のコアネジの固着に続き、バルブコアの動作不良もよくあるケース。
特に厄介なのがバルブからの空気漏れで、コアネジをしっかり締めても徐々にタイヤが減圧することがあります。
コアネジを解放して頭をワンプッシュした際にコア芯の上下動作が鈍かったり、ワンプッシュ後にバルブから小さく空気が漏れ続けているようなら、固まったシーラントがバルブコア本来の機能を阻害していると見て間違いありません。
症状が軽度なら、上画像のようにコアネジを赤矢印方向となる上部に引っ張りながら締めることで空気漏れを防ぐことができますが、単純にコアネジをきつく締めるだけでは解消できないことが多いです。

私のバルブもこの症状に該当するため追いシーラントのためにバルブコアを外してみると、プランジャーと呼ばれるパッキン部分にシーラントのカスがこびりついていました。
この影響でコア芯がスムーズに動作しないはもちろんですが、赤丸内のシール部分に糊状になったシーラントが付着することで、弁体として働くプランジャーの機能が損なわれてしまっています。
また、比較用に並べた上側のバルブコアは予備用で、バルブまわりにトラブルが多いチューブレスではバルブコア外しと一緒に備えておきたい携行品のひとつでしょうか。
因みに、ロックオングリップの「C」クランプをバルコア外しとして使うバイクハックがあるそうで、もしもの時に役立ちます。
場合によっては固着したコアネジを回すこともできるので、覚えておいて損は無いかも知れませんね。

正直なところ、バルブコアがこの状態になった場合はバルブコアを新品に交換するのが手っ取り早い対処法。
中華製のノーブランドなら10個入りで600円くらい、名の通ったブランド品でも2個入りで300円くらいですから、チューブレス派の方は消耗品と割り切ってまとめ買いするのも手です。
その他にも、上画像のようなシーラントを除去する専用ケミカルが存在していて、MUC-OFFの「GLUE REMOVER/グルーリムーバー」が有名処。
パーツクリーナーでもある程度は除去できるそうですが、グルーリムーバーのように落した糊成分を包み込んで再付着を防ぐような機能が無いため、シーラントカスを落とし切るには根気が必要になります。
少し気になる点として、本家MUC-OFFのHPではバルブまわりへの使用について特に言及が無く、「非攻撃的でほとんどの金属、プラスチック、炭素繊維の表面で安全に使用できます。」といった説明のみ。
シーラントを除去できるためゴムへの攻撃性が気掛かりですが、国内向けのHPではチューブレスバルブのラバーベースやバルブホール内に使用している画像が紹介されいて、特に制限は無さそうな雰囲気。
少し判断に迷いますが、ケミカルにドブ漬けする訳ではありませんから、チューブレスバルブやバルブコアのクリーニングにも大いに活用したいところ。

グルーリムーバーなんて当然持っていないので、今回はゴムやプラスチックにも使えるパーツクリーナーで地道なシーラント除去作業。
古歯ブラシでゴシゴシしつつ、使い捨てウエスで剥がれたシーラントカスを小まめに引き剥がします。
流石に完全復活とまではいきませんが、プランジャー部分のシーラントは綺麗に除去でき、弁体としての機能回復に期待が持てる状態に。

クリーニングしたバルブコアを元に戻す前に、忘れずに追いシーラント。
追いシーラントの適量はセットアップ時に注入するタイヤ推奨量の半分程度だそうですが、今回は一本あたり50mlと少し多めに継ぎ足してみました。
仕上げとしてシーラントの通り道となったバルブホールに綿棒を突っ込んでバルブ詰まりを予防。
後はバルブコアを元に戻し、タイヤに3.0BARまで空気を注入して完了です。
コア芯の動作は相変わらず鈍いものの、プランジャー部分の気密はしっかりと回復していて、翌日になっても減圧は確認できませんでした。
すぐ欲しい!詰まりを克服した次世代チューブレスバルブあれこれ

バルブの不具合に悩まされるのがチューブレスレディの宿命。
そんなふうに考えていましたが、知らぬ間にこの欠点を克服した次世代のチューブレスバルブが登場していました。
トップバッターはチューブレスの老舗「STAN’S/スタンズ」が手掛けた製品で、その名も「EXO-CORE VALVE」
国内ではまだ入手は難しいものの既にリリース済みで、価格は55ドル程です。
大雑把に説明すると、バルブコアを大型化することで仏式バルブの内径ではなく外径にフィットさせる仕組みになっていて、スタンズ曰く実質的にバルブ詰まりが起こらない構造とのこと。
確かにこの大きさだと固着しても容易にコアネジを回せますし、バルブホールのエアフローも増大するためバルブ詰まりも起こりづらくなります。
バルブの使用感も現行の仏式バルブとほぼ共通していますし、「EXO-CORE HOUSING KIT」を使って今までのバルブコアから簡単にアップデートできるのも嬉しいところ。

お次は国内での認知度も高い、RESERVE /リザーブ「FILLMORE VALVE」
構造が大変シンプルなチューブレスバルブで、仏式バルブの3倍にもなるエアフローがシーラント注入時にも強みを発揮します。
注目すべきはポペットバルブが採用されている点で、バルブ底部にあるディスク型のシールが開閉することにより、物理的にシーラントが侵入できない構造になっている優れモノ。
他にも、専用のバルブキャップを付けたまま空気圧の微調整ができたり、コア芯を上下動作させることで底部に付着したシーラントカスを排除できたりと、実用面での使用感も上々。
気になる価格は45ドルからで、国内価格は7000~11000円弱とバルブ長ごとに価格が異なる設定。
注意点として、底面にしかエアホールが存在しないためタイヤインサートとの相性が悪く、専用のバルブキャップを紛失すると本来の機能性を発揮できなくなる上にバルブから異物が侵入しやすくなるとのこと。
また、このフィルモアバルブは後付けでのアップデートには対応しておらず、導入にはチューブレスバルブを丸ごと置き換える必要があります。

最後はこちら、MUC-OFFの「BIG BORE TUBELESS VALVES/ビッグボア チューブレスバルブ」
個人的にすぐにでも使ってみたいチューブレスバルブで、バルブの開閉にコアネジではなくボールバルブを採用した、今までありそうでなかった製品です。
仏式バルブのLITE、仏式・米式バルブ混成のHYBRID、米式バルブのLUDICROUSの三種類がラインナップされ、LITE < HYBRID < LUDICROUSの順番で空気の流量がアップするとのこと。

ボールバルブについては上画像を見ると一目瞭然ですが、要はツマミを捻ることでバルブの開閉ができる仕組みで、バルブ内部をストレートスルーにしたことで高いエアフローを実現。
バルブコアが存在しないため固着や動作不良とは無縁なのはもちろん、ストレートスルーによりバルブの風通しが良くなっているため、仮にバルブが詰まったとしても細い棒が一本あればいつでも簡単に解消できます。
こちらも「EXO-CORE VALVE」と同様にアップデートに対応していて、バルブコアを外した仏式バルブに後付けできるのも魅力でしょうか。
エアフローの増加はハンドポンプやインフレーターの効率を高める効果もあるので、ポンピングの労力軽減や電動ポンプのバッテリー節約にも繋がるのも隠れた利点です。
気になるお値段はペアで9000円弱とお高めですが、それだけの価値は十分にありそうですね。
因みに、従来のバルブとは使用感が異なるので慣れるまでに少し苦労するかも知れません。
タイヤから空気を抜くにはツマミで流量を微調整する必要がありますし、逆止弁が無いためフロアポンプで空気を注入した後にツマミを閉じ忘れると、盛大に振り出しに戻るなんてことも……
個人的にかなり注目している製品ですが、ツマミを誤って捻ってしまった時にバルブキャップが安全弁として機能してくれるのかが気になるところです。
まとめ
チューブレス運用にありがちなバルブ詰まりやバルブコアの固着について話題にしてみましたが、次世代チューブレスバルブが気になった方も多いはず。
私以外にもバルブの不具合に悩んている方が沢山いたようで、紹介した次世代チューブレスバルブはどれも品薄で手に入らない状態でした。
説明し忘れていましたが、従来のチューブレスバルブは重量が10g前後であるのに対し、「EXO-CORE」が14g、「FILLMORE VALVE」が6g、「BIG BORE」が20gと結構なバラツキがあります。
ホイールは外周部に近いほど重量増の影響が大きくなりますが、人に寄っては「BIG BORE」の10g増が導入の足枷になるかも知れませんね。
逆に「FILLMORE VALVE」は構造のシンプルさからか従来よりも軽量なくらいで、ローバイクとの相性が良さそうな印象です。
余談ですが、「FILLMORE VALVE」は一度セットアップすると外側からはコア芯を引き抜けない構造。
ほぼ素通しの「EXO-CORE」や「BIG BORE」のようにバルブ入口から綿棒を突っ込んでバルブ内部をクリーニングすることができませんし、棒状の物でシーラント残量を確認するテクニックも使えませんので、導入の際はご覚悟を。