少し前の記事で簡単に紹介しましたが、増車した29erプラスをチューブレス化するためにお手軽アイテムの『MILKIT/ミルキット』を購入しています。
増車したフルスタッシュ8はプラスサイズタイヤ&フルサスという重量級の車体なので、直ぐにでもMILKITでチューブレス化して足まわりの軽量化を図りたかったのですが…使用中のトレイル用タイヤが1kg超と、これまたファットバイク並みに重いのがネックです。
う~ん、どうせならタイヤもついでに軽量化しよう!と勢いで軽量タイヤを注文したのですが、そのブツが到着するまで肝心のチューブレス化が少しの間おあずけ状態になっていました。
さて、待ちに待った軽量タイヤが手に入り、ようやく人生初のチューブレス化に挑むわけですが、噂によると近頃のチューブレス対応リムやチューブレス用タイヤはやたらと密閉性が良く、何かと失敗のイメージが付き纏うチューブレス化のハードルが随分と下がっている模様です。
フルスタッシュ8もその例に漏れず、最初からタイヤとホイールがチューブレス仕様、付属のチューブレスバルブを取付け、あとはお好みのシーラントを注入するだけで簡単にチューブレス化できてしまいます。
今回はMILKITも使うのでチューブレス化なんて楽勝では?と死亡フラグに似た甘い考えを抱いた私は、いわゆる『舐めプ』をしたくなりました。
普通なら用意周到に作業を進めますが、今回は実験を兼ねて『プロアポンプのみ』『ビードワックス不使用』の縛りプレイをしてみたいと思います、果たしてチューブレス化で最難関と言える『ビード上げ』はこの条件で成功するのでしょうか?
『Bontrager XR2 Team Issue』29×3.0インチ軽量タイヤの詳細
本題に入る前に少しだけタイヤについて触れておきます。
今回購入したタイヤは『Bontrager XR2 Team Issue』で少し前までは『Chupacabra/チュパカブラ』と呼ばれていた製品ですが、29×3.0インチのプラスサイズタイヤの中では三指に入るくらい軽量な上に転がりの良さと必要十分な耐久性に定評があります。
パッケージには850g/120TPIの表記があり、試しに実測してみると847gとほぼカタログスペック通りです、交換前の『Bontrager XR4 Team Issue』が1125gですから、前後のタイヤ交換だけで550g強の軽量化に繋がりました。
余談ですが、29×3.0インチのプラスサイズタイヤで最軽量なのはPanaracerの『Fat Nimble B』です、765gとBontrager XR2よりも100g近く軽量ですが、チューブレスに未対応なのが残念ですね。
とはいえ、『Tubolito/チューボリート』などのTPUチューブメーカーからは重量110gの超軽量29×3.0用チューブがリリースされているので、チューブレス化で注入される100ml程度のシーラント量を考えると、Fat Nimble BにTubolito製チューブを組み合わせた方が軽量になるのが面白い所でしょうか。
チューブレス化に挑戦、果たしてフロアポンプでビードは上がるのか?
さて、いよいよ初めてのチューブレス化に挑みます。
手始めに旧タイヤをホイールから外して当然チューブも取外します、写真を取り損ねたので上画像だけ実際の物ではありませんが、取り外した後はリムテープに破れや剥がれが無いか確認しつつ、テープを剥がさないようにウエスで軽く拭き取ります。
加えて、リム内側の縁部分(ハンプ部分)は異物や汚れが無いように念入りに拭き取り、タイヤのビードがリムの縁にしっかりと密着するにようにお膳立てしてあげましょう。
余談ですが、前のオーナーが一年近くチューブドで使っていただけあってバルブ穴付近のチューブレステープに劣化が見られました、負担の掛かりやすい部分ですから、最初からチューブレス用のリムテープが備わっているホイールはチューブドで長期利用しない方が良さそうです。
次に、チューブレスバルブを取付けてから新タイヤをホイールにはめ込みます、ファットバイクやセミファットのプラスサイズタイヤは素手でも装着に苦労しませんが、タイヤのビードやリムのハンプを痛めて密閉性を損ねてしまう危険性があるので金属製のタイヤレバーを使ってはいけません!必ずプラスチック製を使うかオール素手で行いましょう。
因みに、ワイヤーが入っていないフォールディングビードのタイヤは、折り目などの影響で上手くビードが上らない場合があるので、事前に癖の付いたビード部分を手で揉んだり伸ばしたりして、綺麗に形を整えておくと良いです。
上画像のチューブレスバルブはMILKIT付属の物ですが、バルブナットとリムの間に傷防止と密閉性を高める目的で青色のリングが備わっています、車体に付属していたスタンズ製チューブレスバルブには見られない特徴だったので取付け位置に迷いましたが、リムの外側になるのが正解です。
チューブレスバルブはどのメーカーの製品でもバルブナットを手で締め付けてリムに密着させます、空気漏れしやすい部分なのでリム内部にあるバルブ根元のゴム部分を指で押し上げつつ、緩まない程度にしっかりと締め付けましょう、ラジオペンチなどで軽く増し締めする方もいますが、バルブ根元のゴム部分に柔軟性が無くなるのでほどほどに。
取外したチューブは実測で388gもありました、ファットバイク用チューブよりも重くて思わず苦笑いしてしまいますが、それだけにチューブレス化の恩恵は絶大ですね、シーラントとチューブレスバルブの増量分を差し引いても前後で560gも軽くなります。
さて、いよいよ準備が整い、チューブレス化最大の難関ともいえるタイヤのビード上げに挑みます。
冒頭で触れた通り、使うのはフロアポンプのみで、滑りを良くするビードワックスや石鹸水は不使用です、因みにフロアポンプは普通よりも空気注入量の多い『TOPEAK JoeBlow Fat』というファットバイクやプラスタイヤ用のポンプですが、一見有利にみえても大容量のせいでポンピングの瞬発力は一般的なフロアポンプに劣り、ビード上げに関しては実力に大きな差はありません。
フロアポンプの口金をバルブに取付け、涼しい表情のままポンピングを始めましたが…なんと!全くビードが上りません、流石に当たり前ですね、舐めプが過ぎました…反省です。
引き続きMAXパワーでポンピングを繰り返してみましたが、いたずらに腕が披露しただけでビードが上る気配もタイヤに張りが出る気配も見られず、バルブコア有・バルブコア無の両方で試しましたが結果に変化はありません。
ポンピングを一旦ストップし、リムとタイヤの密着具合を確認してみたところ、スカスカでは無いものの上画像のようにビードがリムのハンプ付近まで寄っておらず、このまま続けても徒労に終わる事だけはわかりました。
試しにタイヤ側面を摘まんで引っ張り上げて、タイヤ両サイドのビードをパンプ付近まで移動させる良く知られた方法でリトライしてみましたが、この方法でもビードは上がりません。
舐めプ、絶対ダメ!と思いつつ、チューブレス用フロアポンプやタイヤブースターの購入を考え始め、CO2ボンベで強引にビード上げる最終手段にまで手を染めたくなりました。
因みにCO2ボンベでのビード上げはタブーではありません、最近は16g/20g/25gと選べる容量も増えファットやプラスタイヤにも対応できます。
注意点としてシーラントが注入された状態ではあまりやらない方が良く、CO2ボンベを含む気圧の変化が激しい手法を使うと、シーラントが反応してダマダマになってしまうことがあるそうです。
悩みつつも途方に暮れた私はここである事を思い出します、そういえばチューブを入れてビードを片側だけ上げる裏技があったような…過去にファットバイクで多用された懐かしい手法です。
ダメもとで先ほど取外したチューブを使い、普通にチューブドとしてセットアップし、念のためリムとビードが馴染むように、この状態のまま丸一日放置します。
翌日、タイヤから空気を抜き掌でタイヤ側面を押すようにビードを片側だけ落としチューブを抜き取ります、その後はチューブレスバルブを再度取付け、ビードとリム間の隙間を少しでも減らすようにタイヤの側面を摘まみ上げるようにして片側のビードをハンプに寄せておきます。
この状態でリベンジしますが、あまり期待していなかったせいで普通よりも遅いペースでポンピングを開始します、出だしの感覚こそ失敗時と同様でしたが、途中から明らかに空気の注入音に変化があり、気が付けばパチン!パチン!とあのビードが上るとき特有の破裂音が響き渡っていました。
あっけなくビードが上がり『あれ?なんで?』と拍子抜けしましたが、成功の要因は片側のビードが完全に塞がっていた事で間違いありません、因みにバルブコア有の状態でしたが取外せば更に簡単にビードを上げられると思います。
フロント・リアともに同じ方法でビード上げに成功し、最後までビードワックスや石鹸水に頼る事はありませんでしたが、片側のビードを上げて単純に空気漏れを50%減らしてあげるのが何よりの近道だったようです、スローなポンピングで息も上がらず汗ひとつかきませんでした。
さて、紆余曲折がありましたがチューブレス化を実施するにあたり、フロアポンプでビード上げするコツをまとめると以下のようになるでしょうか。
- 一度チューブドでセットアップしタイヤをリムに馴染ませておく
- ビードは片側だけ落としてチューブを抜く
- ポンピング前にタイヤ側面を引っぱりビードをハンプに寄せておく
- 空気の流入量が増えるのでバルブコアは取外した方が良い
- ビードワックスまたは石鹸水を使えばさらに楽ちん
- シーラント無しならCO2ボンベでチートしても良い
車種やタイヤサイズによって違いはあるかも知れませんが、タイヤとリムがともにチューブレスに対応した製品ならば、これらのコツで大半はフロアポンプのみでビード上げに成功できると思います。
オマケとしてちょっとだけ触れておきますが、万策尽きてどうやってもビードが上らない…といった方はタイダウンベルトと呼ばれる荷締めベルトを活用してみましょう。
MTB用やファットバイク用の太目のタイヤ限定の方法ですが、荷締めベルトをタイヤを押しつぶすように円周に巻くと、タイヤの内容積が減り、中央部が凹むことで内向きに丸まろうとするビード両端が外側に開いてくれるようになります。
ここからは本当に簡単!『MILKIT/ミルキット』で29erプラスをチューブレス化
チューブレス化の最難関であるビード上げに無事成功し、ここからは消化試合みたいなものですが、もう少しだけMILKIT/ミルキットでのチューブレス化にお付き合いください。
付属のツールでバルブコアを外し、いよいよシーラントを注入しますが、以前の記事で説明した通りミルキットのチューブレスバルブには逆止弁が設けられ、バブルコアを外した状態でも空気が抜けません。
シリンジでシーラントを注入する際はタイヤの空気圧を最低でも1bar以下にしてあげる必要があり、間違えると内圧が強すぎてシーラントが注入しづらくなります。
今回使用するシーラントは大定番のスタンズ製タイヤシーラントです、スタンズには他にも大きな穴でも塞げるレースシーラントがありますが、バルブ穴やシリンジも詰まりやすくなるので、ミルキットと相性が良さそうなノーマルタイプを選びました。
新品のシーラントなのでキャップを外し内ブタを剥がしてから使います、プラスタイヤ一本に必要なシーラント量は100ml程度とやや多めですね、シリンジの目盛りはMAX60mlですから、50mlを二回に分けて注入します。
ミルキットはバルブコアを経由してシリンジの先端がタイヤ内にダイレクトにアクセスします、この状態でシリンジに備わった開閉弁を開きピストンに力をいれてシーラントを注入して行きます。
ピストンを手で押さえずに開閉弁が開いたままシリンジを挿入すると、内圧でピストンが押し戻されシーラントを撒き散らす羽目になるので、くれぐれも注意しましょう、1barでもピストンからは結構な反発力を感じるので油断できません。
シーラントの注入が終了しシリンジの先端を引き抜くと、逆止弁があるとはいえ抜き取る僅かな瞬間にプシュッと空気が漏れ、上画像のようにシーラントが結構飛び散ります。
色が白いので飛び散り加減がわかりやすく後始末に苦労しませんが、シリンジの先端を抜き取る際はウエスを軽く宛がって作業した方が良いかも知れませんね。
某プロショップではディスクロードのチューブレス化で、ディスクローターとスプロケットを廃ダンボールをまとめる際に便利なストレッチテープでくるんで保護していました。
新聞紙は油分を含んでいるのでディスクローターに使うのはNGですが、上画像のように不織布の使い捨てウエスでローターをくるんでから養生テープで固定するのが簡単でした、調理用のラップでも良いかも知れませんね。
ミルキットのお陰でフロント・リアともに恙なく作業が終了しましたが、リアタイヤへのシーラント注入時に空気圧を1bar以下にするのを失念し、シリンジのピストンが激しく押し返されるハプニングがありました、2barだと本当に握力ギリギリだったので忘れずに減圧しましょう。
シーラントの注入直後、フロントタイヤのバルブ付近が最も空気漏れが激しく、気になっていたリムテープ劣化が少なからず影響しているようでした。
その後、例によってタイヤをハンドルのように回したり、砂金取りの器のように回したりしてシーラントをタイヤ内部の隅々まで行き渡らせると、バルブ付近の空気漏れも落ち着きます。
仕上げとして、丸一日タイヤを放置して大幅な空気漏れがないかチェックしたところ、タイヤは十分な張りを保ちシーラントはしっかりと仕事をしてくれていました。
気になる空気の抜け具合ですが、フロント・リアともに2barにして三日間後に空気圧を測定したところ、フロントが1.5bar、リアが1.7barでした、数日後に再測定してみても数値に大きな変化は無く、現状ではこのあたりで安定するようです。
フロントの方が抜けが大きいのは、やはりバルブ付近のリムテープの劣化が影響していそうですね、今以上に症状が悪化した場合は貼り替えを考えた方が良いでしょう。
まとめ
あえて『舐めプ』で挑んだ今回のタイヤ交換&チューブレス化ですが、お陰で一気に1100gの軽量化が実現できました、コツを掴んでからはトントン拍子に事が運び『チューブレス化は面倒臭い』『チューブレス化は失敗しがち』『フロアポンプじゃダメ!』といった呪縛からようやく解放された気がします。
大柄なプラスサイズタイヤでもフロアポンプだけでビードが上ったのですから、チューブレス化に対応したそれ以下のサイズのタイヤなら問題なく成功できるのではないでしょうか。
余談ですが、今回紹介した方法はシーラント注入後にはあまり推奨できません、ビードを片側だけ上げるためのチューブがタイヤ内部に残ったシーラントでベタベタになってしまうからです。
開いたビードから直接シーラントを入れる方やタイヤをマメに交換したりする方は、やはりチューブレス用フロアポンプやタイヤブースターが便利かも知れません。
因みに前述のTPUチューブはシーラントから影響を受けないので気にせず何度でも使えます、チューブレスタイヤのトラブル用にTPUチューブを持ち歩く方が多いのも納得ですね。