油圧ブレーキは面倒臭い?ピストン清掃とパッドクリアランスの話

油圧ブレーキのピストン清掃とパッドクリアランスの話イメージ01

このブログでも過去に何度か触れた話題ですが、今回は良くも悪くも巷を賑わす『油圧式ディスクブレーキ』についてです。

私は油圧デビューは数年前に購入したファットバイクで、当時はその凄まじいストッピングパワーにとにかく驚かされました。

今になって思うと、前後とも直径180mmのローター、パッドはローターへの喰いつきの良いメタルタイプと、リムブレーキしか使ったことのない初心者には、いささか持て余し気味のスペックだったでしょうか、2ピストン仕様だったのがせめてもの救いですね。

さて、油圧ブレーキの性能自体には満足していたものの、立て続けのトラブルで嫌気が差し、その後は同じディスクブレーキでも調整が楽な機械式にあっさりと交換しています。

調整方法が超簡単に!機械式ディスクブレーキ"TRP SPYKE"の感想
機械式ディスクブレーキ『TRP SPYKE/SPYRE』に交換した感想をまとめています。油圧式と同じ対向2ピストンが採用され、ローターの歪みやパッドの片減りがありません。クリアランス調整も簡単で引きずり音や音鳴り解消にもオススメな製品です。

このことで、ローターがパッドに擦れる『引きずり』、ブレーキングでローターが耳障りな音を奏でる『鳴き』、オイルラインに空気が混入しレバーがスカスカになる『エア噛み』などの油圧ブレーキあるある問題から距離を置くことができていたのですが…三年の月日を経て再び奴が私の前に現れました。

言わずもがな、少し前に増車した29erプラスのトレック フルスタッシュ8がその『奴』で、当然の如く油圧式ディスクブレーキが採用されています。

個人的にあまり良い思い出はありませんが、三年前とは油圧ディスクブレーキに関する知識量に雲泥の差があり、今回ばかりは心に余裕をもって付き合えるだろうと淡い期待を抱いていたのですが…そんな都合の良い話はありませんでした。

悲しいかな、ブレーキキャリパーとブレーキパッドをクリーニングした後に、あの嫌な引きずり音がまたしても聞こえ始めたのです。

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悪夢再び…油圧ディスクブレーキで『引きずり』発生

油圧ブレーキのピストン清掃とパッドクリアランスの話イメージ02

さて、上画像は油圧式ディスクブレーキのキャリパー部分を大まかに説明した物ですが、何らかの原因でブレーキパッドとローター間のクリアランスがゼロになり、走行中にシャリシャリとローターがパッドに擦れ続ける現象を俗に『引きずり』と呼びます。

因みにローターの厚みはおよそ1.5~2mmくらいですが、ローターとパッド間のクリアランス幅は左右合わせても1mm程度な上に自分で調整できる余地が殆ど無いというシビアさです。

私の経験上、引きずりが起こる原因は【1】キャリパーの取付け位置がロータに対してセンタリングされていない、【2】ローターに歪み、または6ボルトの締め付けトルクがちぐはぐ、【3】キャリパーのピストンに異常がある、【4】ブレーキパッドの極端な摩耗もしくは片減り、【5】ブレーキフルードの過多や劣化、この五通りくらいでしょうか。

今回のケースの場合はキャリパー清掃前に問題がなかった事から【3】か【4】あたりが怪しい感じですね、前後のキャリパーを掃除した際にブレーキパッドも熱湯で煮て脱脂していますが、再取付け時にパットの組み合わせがバラバラになったのも遠因かも知れません。

こういった場合は新しいパッドを取付ける手際と同様に、ピストンプレスなどの工具か傷を付けないヘラ状の物でピストンを根元まで押し戻してあげる必要があります。

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少しわかりづらいのが【3】の『キャリパーのピストンに異常がある』でしょうか?上図で解説していますが、油圧式ディスクブレーキには機械式ディスクブレーキのようにレバー解放後にパッドを元に戻すリターンスプリングが備わっていません。

ではブレーキレバーからの油圧で押し出されたキャリパー側のピストンがどうやって元の位置に戻っているのかというと…実は変形したピストンリングの復元力のみという、割と頼りない仕組みになっています。

このピストンリングは復元力以上の圧が加わるとピストンの相対位置を前側にずらしてから元に戻ることで対応しますが、それが油圧式ディスクブレーキはパッドが擦り減ってもクリアランスが自動調整されるといわれる所以ですね。

長い間ノーメンテで使用していると当然ピストンやピストンリングが汚れ、それが蓄積すると上図右のようにレバーを解放してもピストンが元位置に戻らなくなり、厄介な『引きずり』の原因になります。

私はワコーズのフォーミングマルチクリーナーでキャリパー本体を掃除し、同じクリーナーと綿棒でピストン側面もクリーニングしましたが、汚れは落ちたものの脱脂もされたため逆に動きが悪くなってしまった可能性があります…真相はわかりませんが、ネット上では石鹸水などで普通にキャリパーごと掃除しても、特に動作に問題の見られない方もいらっしゃるので判断が難しいところでしょうか。

因みにYouTube上にアップされたPARKTOOLの動画ではブレーキフルードを綿棒に付けてクリーニングしていました、理に適った方法なのでピストン側面にはこのやり方が正解かもしれませんね、シマノやマグラならミネラルオイル、スラムやホープならDOTといった感じに、使用されているフルードと同じ物で洗浄します。

4ポッドは大仕事!?油圧ディスクブレーキのピストン清掃&潤滑

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さて、実際にキャリパー側のピストンをクリーニングしてみた訳ですが、ブレーキパッドを取外した状態で上画像のようにピストンの出代がちぐはぐな場合は、ピストンが汚れ動きが悪くなっている可能性大です。

4ポッドの油圧ディスクブレーキは効きは良いものの、こういった作業の際は労力が2倍以上になり兎に角面倒でした、側面を綿棒で拭き取るために一箇所や片側だけピストンを押し出すのが難しく終始作業効率が悪かったですね…動きの悪いピストンは他のピストンを何かで押さえ付けながらレバーを握らないと中々露出してくれません。

このブレーキキャリパーは『SRAM GUIDE R』で内部のスペースが12mm×30mmくらいです、10mmの六角レンチがサイズ的に丁度良く、内部に差し込んで輪ゴムなどで固定し、どちらかの対向ポッドを無力化すると作業に集中しやすかったです。

因みに、ピストンの出代が短い場合はブレーキレバーを握ってピストンを押し出てあげる必要がありますが、過剰すぎるとピストンが一気に飛び出し、そこからフルードがドバドバと漏れてしまうので、パッドを外した状態でブレーキレバーを引く場合はくれぐれも慎重に且つ小刻みに行いましょう、他にもパッドを付けたままストッパー代わりにしてピストンを押し出す安全な方法もありますが、動きの悪いピストンにはイマイチ効果薄でした。

後述しますが、私は油断して大失敗しました…メーカーによる違いはあるでしょうがピストンの出代は4㎜を上限と考えましょう、ピストンが飛び出してフルードが漏れると高確率で『エア噛み』しますし、フルードが攻撃性のあるDOTな場合は大惨事になりかねません。

油圧ブレーキのピストン清掃とパッドクリアランスの話イメージ04

フルードでクリーニングする場合は不要ですが、中性洗剤やマルチクリーナーを使って掃除した場合は潤滑用にシリコンオイルを使いましょう。

ピストンの側面に綿棒などで少量塗布すれば十分なので付け過ぎに注意し、思わぬところに飛び散ってしまうスプレータイプも避けた方が良いですね、誤ってパッドやローターに付着してしまうとブレーキが効かなくなる上に、完全に回復するにはパーツを交換するくらいしか手段がありません、パッドやローターは遠ざけて作業したほうが無難です。

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ピストンの側面を綿棒でクリーングしシリコンオイルを塗布した後は、レバーを握ってピストンを慎重に押し出す⇒ピストンをピストンプレス等のヘラ状工具で押し戻すを3回以上繰り返して、ピストンの動作を正常化します。

正常化しても、上画像のように左右でピストンの出代が異なる場合も多いです、完璧ではありませんが『キャリパーの固定ボルトを緩める』⇒『レバーを握ってローターを挟む』⇒『キャリパーを再固定』の良く知られたブレーキキャリパーのセンタリング方法で補える程度の差異なので、これで終了しても構いません。

余談ですが、ピストンの動作に問題がないにも関わらずピストン位置が上画像のような偏った状態になっている場合は、パッドが片減りしている事が多いので、パッド側も確認してみましょう。

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上画像のように、レバーを握った際に全てのピストンが均等に押し出されるのは稀なので、あまり神経質になる必要はありません、2ポッドなら突き詰めても構いませんが、4ポッドは面倒臭すぎて作業中に何度も嫌になりました…ピストン一つだけを押し出すのがムズイです。

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因みに、先ほどから何度も触れているピストンプレスというピストンやブレーキパッド用の専用工具ですが、PARKTOOL製『PP-1.2』の使い勝手がなかなか良いですね。

他社製のピストンプレスは閉じたパッドにこじ入れたり、ピストンを押し戻すのが主目的ですが、PARKTOOL製はそれに加えてピストンの飛び出しを抑えたり、何度も押し込んて潤滑させる用途にも便利に使えます。

油圧ブレーキのピストン清掃とパッドクリアランスの話イメージ10

持ち手がしっかりしている上に先端部分が他社製よりもゴツめなので力を加えやすい構造ですが、先端の幅が25mmと一部のロードバイク用キャリパーには大きすぎる場合があるので、その辺だけは注意でしょうか。

久々の大失敗!危険が危ない『DOT5.1』フルード

前項で軽く触れましたが、今回の手法でフロントブレーキは無事回復できたものの、リアブレーキでド派手に失敗しました。

キャリパーのセンタリング、ローターの歪みチェック、ピストン清掃&潤滑、ブレーキバッドの確認、とやれることは全てやったにも関わらず耳障りな引きずりは一向に収まらず、残る疑いはフルードの入れ過ぎか劣化のどちらかです。

レバータッチがフロントと比べて緩いので、フルードが劣化している可能性が高いですが、その前にフルードを少しだけ抜いてみることにしました。

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やり方は簡単で、『レバーを握ってキャリパーのピストンを露出』⇒『ブレーキレバーのリザーバータンクのイモネジを外す』⇒『ピストンを押し戻す』⇒『レバーの穴からピストン分のフルードが漏れ出す』この作業で地味にフルードを減らしていきます。

ご存知の通り、SRAMの油圧ブレーキには攻撃性の高いDOT5.1が使われています、フレームに触れると塗装を剥がしてしまう上に、人体にも有害、目に入ろうものなら失明の危険性もある少しヤバイ代物ですね、作業中はニトリルグローブやゴーグルを装着すると安心感が段違いです。

作業時はレバーを水平位置にして、ピストンを押し込んでもフルードがレバー周囲に零れないように新聞紙などで覆いますが、押し込むピストンの容積が小さいので過度に心配するほど溢れません、因みにフレームにDOTが触れても速やかに水で洗浄すれば無問題です、拭き取り用のウエスと水道水入りのスプレーボトルは必ず手元に準備しましょう。

あまり知られていませんが、フルードの量を減らすと僅かにパッドクリアランスを増やす事が可能です、当然レバータッチも変わりますが、油圧式での数少ない調整方法なので覚えておいて損はありません。

さて、ここからが本題といいますが、失態の始まりです…フロントブレーキの引きずりが解消され完全に油断していた私は、ピストンの押し出しでレバーの操作加減を誤ります。

一箇所のピストンが出代4mmの危険域を超え、釣り上げた深海魚の目玉のように飛び出します、しまった!とレバーを緩めても時すでに遅し、該当のピストンが抜けた穴からはキャリパー内のフルードがヒタヒタと滴り落ちていました。

やっちまった…と目の前が真っ暗になりましたが、これ以上フレームに触れたら一大事と慌ててピストンを冷静に埋め直し、真っ先にフルードの流出を止めます、その後は使い捨てのウエス・洗浄水・イソプロピルアルコール50%を湯水のように使い、何とか愛車のフレームは難を逃れました。

一段落ついた後にリアブレーキのレバーを握ってみると、辛うじてレバータッチはあるもののフルード不足でローターをしっかり挟み込めない状態になっていました、皮肉にもクリアランスが広がりすぎて『引きずり』は解消しましたが、ブレーキ機能は完全にお釈迦です。

ミネラルオイル使用のシマノやマグラの油圧ブレーキならもう少し冷静に対応できたかもしれませんが、今回は流石に肝が冷えました…くれぐれもピストンの押し出し過ぎに注意して作業しましょう、重ねて言いますが4mm以上は危険です!

まとめ

私の大失敗も含めて、油圧式ディスクブレーキのピストン清掃やパッドクリアランスにについて話題にしてみましたが、油圧ブレーキは面倒事が多くて性に合わない…というのが本音でしょうか?いままで機械式に逃げていたツケが一気に回ってきたのかも知れませんが、もう少しだけ経験値が必要のようです。

余談ですが、今回の失敗は専用のキットで再ブリーディングかエア抜きをしなければ回復できません、本当なら面倒臭いな~と気が重くなるところですが、実はブレーキシステムを丸ごと交換する予定でいたので、それ程ダメージはありませんでした。

現在使用しているブレーキ『SRAM GUIDE R』には30度以上でレバー内のピストンが膨張しレバーが戻りづらくなる既知の欠点があり、生産時期的にどうやら手持ちのフルスタッシュ8も該当していそうです、加えて扱いの難しいDOT5.1も嫌なので、もともと気温が高くなる前に交換する予定でいました。

今回の失敗で少しだけ時期が前倒しになりましたが、近いうちにシマノかマグラの新ブレーキがお目見えする予定です、察しの良い方ならこの記事のトップ画像でどちらを選んだかはもろバレですけどね。

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