少し時期外れな話題になってしまいますが、秋口に新調した自転車用アウターの使い勝手が思いのほか良かったので話題にしてみます。
積雪の伴わない地域でなら、冬用サイクルジャージにウインドジャケットのレイヤリングで何とか寒さを凌げますが、北海道や北日本となると流石にそうもいきません。
数年前にファットバイクに乗り始めた当初から、冬用のサイクルウェアに関しては試行錯誤を続けていて、昨シーズンに行動保温着とも呼ばれる『化繊インサレーション』のジャケットに出会います。
一見すると、薄手のダウンジャケットのようですが機能性はフリースに近く、ダウンジャケットにありがちな『温度調節が難しい』『汗や濡れで保温性が損なわれる』といった欠点が補われています。
運動量の多い状態でも、速乾性・透湿性・防風性・保温性をバランスよく発揮してくれる、良い意味で『丁度良い』アウター兼ミドラーで、最近では目ぼしいアウトドアブランドからユニクロまで、各社からこぞってリリースされています。
因みに、ここ数年はマイクロプラスチックの害が取り沙汰され、毛足の長いハイロフトフリースは減少の一途。
高性能なポーラテックフリースの採用を見合わせるメーカーが増え、パタゴニアのR2ジャケットはとうの昔に廃番に、ノースフェイスの大人気フリース『アンタ―クティカバーサロフトジャケット』も今季モデルで販売が終了とのこと。
さて、話が少し脱線しましたが、ここからが本題です。
昨シーズンに購入した化繊インサレーションジャケットの使い勝手の良さに感心した私は、厳寒期のスノーライドにも耐えられそうな、更に高機能なジャケットが欲しくなります。
下調べした結果、アークテリスクの『アトムARフーディー』とティラックの『スバルバードジャケット』という二つの候補に絞られましたが、私がどちらを選んだかは記事のタイトルで一目瞭然ですね。
今回は『買って良かった…』と心底思えたアウター、Tilak/ティラックの『Svalbard Jacket/スバルバードジャケット』を個人的に大プッシュしてみたいと思います。
マイナーだけど凄い完成度…ティラック『スバルバードジャケット』の詳細&サイズ感
私が購入したTilak/ティラックの『Svalbard Jacket/スバルバードジャケット』ですが、世間的な認知度はイマイチかも知れませんね。
ここ数年でようやく話題に上るようになりましたが、まだ一部のアウトドア系セレクトショップや街乗り用のサイクルウェアを得意とするショップが取扱っている程度でしょうか。
ティラックはチェコ共和国のブランドで、50名程のスタッフにより製造の全てをチェコ国内の自社工場で行っています。
そのため、大手メーカーのような大量生産はできませんが、世界最高水準の縫製技術で一つ一つ丁寧に仕上げられたウェアは、ハンドメイドと見紛うばかりの完成度を誇ります。
余談ですが、製品名の『スバルバード』は北極圏のバレンツ海にある極寒の島スバールバル諸島に因んで名付けられたものです。
ノルウェー領なのでノルウェー語だと『スバールバル』という発音になり、取扱いショップによっては『スバールバルジャケット』や『スヴァールバルジャケット』といった製品名なこともあります。
さて、実際に購入してみても前評判に嘘偽りはなく、大量生産品にありがちな作りの粗さなんて微塵もありません。
10万円以上もする高級アウターでさえ、糸の始末が雑なのが当たり前なご時世なのに、細部を隈なくチェックしても、本当に隙のない仕上がりに感心させられます。
気になるお値段は化繊中綿にしては6万円オーバーとちょっとお高め、ミドルグレードのダウジャケットが買えてしまう価格帯ですが、この完成度を目の当たりにすると『適正価格では?』と思えてしまう不思議。
生地は防風性と着心地に優れる『GORE-TEX INFINIUM/ゴアテックス インフィニアム』が採用され、化繊中綿は米軍の極寒地用の防寒ウェアにも採用されている『CLIMASHIELD APEX』という構成になっています。
生地は紙のような少しカサカサした質感をしているので着始めは少し気になるかも知れませんね、重量は500g台と軽く、長時間着用しても肩が凝るなんてことはありません。
続いて細部を見ていきますが、フードまわりはこんな感じ。
フードにもしっかりと中綿が入っいてもちろん風も通しません。フィット感を調節するドローコードが備わり、矢印のように冷気で冷えたプラスチックパーツが肌に触れないように、ステルス仕様になっている拘も。
機能面に全く問題は無いものの、欲をいえば裏地はグレイ系カラーではなくシンプルなブラックの方が好みかな?
フードの背面には庇の高さやフィット感を調節する二つ目のドローコードも備わっています。
因みに、生地にシワが目立つのは開封直後に撮影したからで、使用と共に綺麗さっぱり無くなります。また、先述した生地のカサカサ感も最初だけで使っているうちに大人しくなりました。
ポケットは左右と胸部の合わせて三箇所、さらに大型の内ポケットが三箇所備わっています。
左右のハンドウォーマーポケットの内側がフリース生地になっていないのが少し残念ですが、ポケット前側にもしっかり中綿が入っているため大変あたたかく、サラサラとした生地の手触りも存外悪くありません。
また、胸部ポケットが見掛けによらず大容量で、左肩付近まで収納スペースが広がっています。大型のスマートフォンでも余裕で放り込め、財布やマスクケースを追加してもまだ余裕があるくらいです。
珍しいと思ったのが袖の作りで、画像のように手の甲側だけが伸縮性のあるシャーリング仕様になっていて、手の甲側よりも手のひら側の方が少しだけ袖が長い作りになっています。
手の甲側の袖を長くしているメーカーが多い中、着用前は何でこんな作りなんだろう?と不思議に思ったのですが、この方が手首の血管側を保温してくれてるので手が冷えづらいことに後から気が付きました。
因みに、ベルクロで絞るタイプはグローブの着脱が面倒なので袖はシンプルな方が好みですね。ベルクロ不使用なので、相性の悪いニット系インナーや手袋を気兼ねなく使えるのも嬉しいです。
フロントジップは定番のダブルジップ、おまけに止水ジップになっています。
実はアークテリクスのアトムARフーディーではなく、スバルバードジャケットを選んだ理由はココで、自転車用として使うには防風性にも優れる止水ジップの存在が不可欠でした。
内側フラップだけだと10m/s前後の風には耐えられず、どうしても冷気が内部に侵入してしまいますから。
また、画像を見るとわかりますが、裾部分は前後で長さに9cm程の差が設けてあり、前傾姿勢でも背中が出づらい仕様。この辺も自転車との相性が良くサイクルジャージに似た作りです。
ちょっと面白いのがコチラの部分、腰部分には大型のマップポケットがあり、本体をピローサイズに収納できるパッカブル仕様になっています。
収納しても厚めの週刊マンガ雑誌くらいのサイズにしかならないので実用することは少ないと思いますが、腰部のマップポケットの収納力は侮れず、アイディア次第で化けそうな予感も。
最後にサイズ感をお伝えしておきましょう。
今回購入したのはMサイズで、スバルバードジャケットは日本サイズよりもワンサイズ分大き目な作りになっているため、実質的にはLサイズ相当になります。
Mサイズを平置きした際の実寸は以下の通りで、通常のアウターよりも袖がやや長めの仕様となっています。
【身幅】60cm
【着丈】前68cm/後77cm
【裾幅】55cm(調節可)
【袖丈】67cm
【肩幅】53cm
私は痩せ型なのでサイズ的にSでも着用可能でしたが、身長を基準にしてサイズ選びをした場合は175cmあたりが分水嶺になります。
袖が長めなので安易にオーバーサイズを選んでしまうと、大き目サイズを着た子供みたいな外観になってしまうので、身長175cm未満ならSサイズかそれ以下、180cm前後でようやくMサイズの袖丈がフィットするようになります。
防寒性・防風性は如何に?『スバルバードジャケット』の使用感
スバルバードジャケットを着用し始めてから二ヶ月以上になりますが、街着や普段使いのアウターとしても重宝し、特にフードまわりの作りが秀逸ですね。
無造作にジップを上げてもフードまわりが綺麗に整い、襟も顔に干渉しない程度に立ってくれるので見栄えが良いです。
もちろん、首まわりに窮屈感はなく、それでいて強風時には風の侵入をしっかり防いでくれます。
自転車用のアウターとして着用した場合は袖丈の長さはプラスに働きますね、フラットバーハンドルで腕を手前に伸ばした状態でも手首が露出することが無く、袖口から冷気の侵入もありません。
着用感は化繊インサレーションというよりも、中綿入りで着心地がしなやかなハードシェルジャケットといった感じで、特に防風性はハードシェル顔負けですね。
また、無印ゴアテックスではないので防水性こそありませんが、ゴアテックス インフィニアムでも耐水性はあり、小雨や濡れ雪くらいなら浸水することなく難なく耐えられました。
肝心の防寒性ですが、私の体感だとインナーを全く工夫しないで無造作に着られる気温は0~5度くらいが適正でしょうか。
前述の通り防風性が大変優秀なので内部に全く風を通しませんが、流石に気温が氷点下、風速10m/sで吹雪の天候下ともなると、中綿の無い止水ジップの正中線付近から冷たい外気温が伝わってくるのを感じます。
今のところ、運動量が多く汗を掻く場合はフリースや薄手の化繊インサレーションを中間着に、運動量が少ない場合はインナーダウンを重ね着するといったレイヤリングをしていますが、特に不自由は感じていません。
別途で購入した、街着用高級ダウンの出番が全くなくなってしまったほどで、インナーの工夫次第で秋・冬・春の3シーズンを快適に過ごせます。
過去のスノーライドでは、ハードシェルとフリースのレイヤリングでは防寒性が不十分、ダウンジャケットは暑すぎて問題外…そんな経験をしてきましたが、今回のスバルバードジャケットは過去イチでしっくり来ていますね。
発汗しても『蒸れず』と『冷えず』が良い感じで機能してくれる印象でしょうか。
まとめ
普段使いからスノーライドまで、自分でも驚くくらいスバルバードジャケットをヘビロテしていますが、化繊中綿だけに汚しても普通に洗濯できる点も大きいですね。
冬場に幹線道路沿いをライドしたり散歩したりすると高確率で泥シャワーや泥ミストを浴びますから、高価だったりお手入れが面倒だったりするアウターは避けたいのが本音です。
雪の舞う真冬に自転車に乗る人はMTBやグラベルロード、ファットバイク乗りくらいだと思いますが、汗っかき&寒がりな方は、フリースよりも高機能でお手入れも簡単な化繊インサレーションジャケットを是非お試しあれ。