少し前の記事でミニベロから発生した異音について話題にしましたが、原因となったスポークの不具合は何とか治まったものの、昨年の夏ごろから徐々に異音が大きくなっているBBについては放置したままでした。
KHSのミニベロ『F-20R』にはシマノのホローテックIIに対応した中空式ボトムブラケット『BB-RS500B』が採用され、寿命は5000~10000km程度と言われているのですが、何故か3000km程度で異音が発生してしまい、現在まで騙し騙し使い続けています。
クランクを踏み込むと、結構な頻度でパキッパキッと異音が発生し、交通量の少ない静かな場所では耳障りに感じます、流石にそろそろ限界を感じ始めたので、早速BBを交換してみる事にしました。
あの専用工具が見当たらない…BB交換がいきなり頓挫
さて、上画像の工具は半年ほど前にセンターロック式のディスクローターを取付けるために購入したもので、本来の用途はホローテックII対応BBの着脱に使用します。
シマノのホローテックIIやFSAのMega EXOなどのBB用工具として使えるのはもちろん、スルーアクスル対応のセンターロック式ディスクローターの着脱にも使え、渋々購入した割には中々使用頻度の高い工具かも知れません。
この工具にはつまみの付いた謎のプラスチック製の工具が付属していて、購入した当時は用途が全くわかりませんでしたが、このつまみはホーローテックIIクランクを外すためには必須の工具で、後述するクランクキャップを外す目的で使用します。
私のおぼろげな記憶では、いつか使う日が来るだろう…としっかりと保管していた筈なのですが、丸一日探しても見付からず、既に注文した交換用の『BB-RS500B』 が手元にあるにも関わらず、出だしからいきなり暗雲が立ち込めます。
仕方なく、代替品としてシマノ純正の『TL-FC16』を購入しましたが、送料込みで¥600程度と時間を浪費した以外の損害は軽微でした。
ようやく手にした、このプラスチック製の工具をまじまじと眺めてみると、手で軽く回すだけの単純な構造になっていて、六角レンチやスパナなどの取っ掛かりが一切見当たりません。
あまりにチープな作りから、本当に専用工具が必要だったの?と思わず零してしまいますが、実際に使ってみない事には要領を得ない感じです。
続いて、先に手元にあったBBですが今回は特にアップグレードは考えず交換前とほぼ同じ68mmの『BB-RS500B』を選びました。
少し前までなら、BBだけデュラエースグレードの『DURA-ACE BB-R9100』に交換する方も多かったのですが、残念ながら価格差が広がってしまい、お得感が薄れています。
重量は92gと軽量で、他社製でもグレード別でも中空式BBの重さは横並びな印象ですね、価格差およそ2倍のBB-R9100は68gと僅かに軽いです。
因みに、どちらのBBを選んでもペダリングでハッキリとした違いを感じる事は稀だそうですが、デュラだけにプラシーボ効果だけは期待できるかも知れませんね。
順序が大切!ホローテックII対応BBの交換方法について
さて、本題のBB交換作業に移ります。
上画像が懸案のクランクキャップでキャップ側もプラスチック製です、浅慮な私にはいじり止めやいたずら防止目的くらいしか専用工具にする理由に思い至りませんが、本音を言えば10mmくらいの六角レンチで勘弁して欲しかったですね。
作業手順を下調べしてから、件のクランクキャップから取外しますが、素手で回すしかないこの工具では到底回せないくらい、キャップがきつくハマっています。
間違いなく反時計回りで緩む正ネジですし、念のためラスペネも吹いていますが、ピクりとも動きません。
不思議に思い、ネットで詳しく調べてみると『純正以外の工具でキツく締められている場合がある』などの情報もあり、取外しの手順にも人によって結構なブレがありました。
この時点でようやく合点がいったのですが、どうやらクランクキャップは上記の『純正以外の工具~』とはあまり関係なく、クランクボルトを緩めるとすんなり外れる様です。
クランクを左右から締め上げて固定しているクランクボルトを緩めると『TL-FC16』 でもあっさりクランキャップを外す事ができ、手で回すつまみしか付いていない理由にようやく納得できました。
キャップ内は密閉されているせいか、グリスはスライムチックな蛍光グリーンを湛えたままです、十分に綺麗な状態なのでクランクキャップの洗浄やグリスの再塗布は必要無さそうですね。
左右のクランクボルトを緩めクランクキャップを外した後は、マイナスドライバーなどの先端が細くなった工具で落下防止用のツメを持ち上げます。
このツメは奥側のクランクボルトを軸にして取付けられていて、手前側のクランクボルトに引っ掛ける様ロックされる仕組みになっています、素材はプラスチック製で必要最低限の機能と言った印象ですね。
ネット上では【1】クランクボルトを緩める【2】クランクキャップを外す【3】落下防止ツメを外す、この三つの手順が前後していますが、クランクキャップが外れない場合は【1】の手順を優先しましょう。
因みに落下防止ツメはクランクキャップを外さなくても、クランクボルトを緩めればロックを外せる仕組みになっています。
反ドライブ側のクランクを引き抜くとBBの左ワンが露出します、普段はクランクとBBとの狭間になっているだけに、ダストキャップの表面にはグリス混じりのジャリジャリとした砂がこびり付いていました。
ドライブ側からクランクを引き抜いた後は、ホローテックIIBB用工具で旧BBを取外します。
例によって、反ドライブ側は反時計回り、ドライブ側は時計回りで締め付けが緩み、ハイトルクタイプの工具だけにすんなり作業が進みます。
定番の作業なので説明は端折りますが、旧BBを取外した後はBBシェルの内部やネジ切り部分をパーツクリーナーで洗浄し、左右のネジ切り部分にグリスを再塗布します。
今度は取外した時とは逆方向に、反ドライブ側は時計回りに、ドライブ側は反時計回りに締め付けて新BBを取付けます、BBにはLR表記があるので左右の取付け位置を間違えない様に注意しましょう。
新BBを取付けた後はドライブ側からクランクを差し込みますが、クランクを通すと上画像の様にBB内に見えていたグリスがクランクシャフトの先端に自動的に塗布される仕組みになっていました。
交換用のBBには事前にグリスが塗布されているので、新たにグリスを塗り直す部分はBBシェルの左右ネジ切り部分と洗浄後のクランクシャフトくらいでしょうか。
反ドライブ側のクランクを取付けた後は、落下防止ツメを再び手前のクランクボルトにフックさせます。
後は取外した時とは逆の手順で作業を進め【1】クランクキャップの取付け【2】クランクボルトの締め付けとなりますが、落下防止ツメのフックはクランクキャップの取付け後でも差支え無い様ですね。
各部位の締め付けトルクは、クランクキャップが0.7~1.5Nm、クランクボルトが12~15Nm となりますが、工具に対応していないクランクキャップ部分は感覚に頼る事になります。
このクランクキャップ部分は強く締めすぎるとクランクにガタが出やすいそうなので締め過ぎに注意し、クランクボルトは左右交互かつ均等に締め上げましょう。
余談ですが、持ち手の短い標準的な六角レンチでクランクボルトを締め付けると、指定トルクに届かない事が多くこちらもガタが出やすいそうです、トルクレンチが無い場合は最低でも持ち手の長いハイトルクタイプの六角レンチを使った方が良さそうですね。
これでBBの交換は完了となりますが、ホローテックIIクランクのクランクキャップが外れない場合は今回の様にクランクボルトを先に緩めましょう。
正直、クランクキャップの強度や専用工具の必然性に疑問は残りますが、殆ど力のいらない着脱の容易さには感心させられました、ファットバイクのクランクを交換した後なので尚更そう感じるのかも知れません。
まとめ
BB交換後に軽く試走してみましたが、異音はパタリと止み、心なしかクランクの回転もスムーズに感じます。
ミニベロは年間4000km程しか乗っていませんが、私が考えているよりも中空式BBの寿命は短いらしく、小径車の場合はBBとタイヤを同時に交換するくらいのタイミングで丁度良いのかも知れませんね。
後から知った事ですが、クランクボルトを先に緩める手順さえ踏めば『TL-FC16』などの専用工具が無くても、 太目のドライバーや割り箸でクランクキャップを外せてしまうそうです…マジかよ。