初めて購入したスポーツサイクルはキワモノのファットバイク。
それだけに思い入れは人一倍で、今でも私のサイクルライフの中心に居座ったまま。
残念ながら26インチや27.5インチといった本格ファットバイクの国内市場は斜陽の一途で、年を追うごとに取扱いのあるブランドが目減りしています。
偶然か必然か、それと入れ替わるように幅を利かせているのが20インチ小径の電動ファットバイク。
下手をすると、ファットバイクと聞いて一般の方がイメージするのは、既にこちらの電動ファットバイクになっている可能性も。
さて、なんとなく私が電動アンチのように感じる出だしですが、どちらか言えば興味深く見守っているスタンス。
これをファットバイクと呼んでいいのか?
そういった意見も確かにありますが、ファットバイクの定義は割と大雑把で、幅3.0インチ前後のタイヤを使っていればセミファットバイク、それ以上であればファットバイクといったタイヤ依存のアバウトな括り。
タイヤだけなら間違いなくファットバイクの一種ですし、製品によっては前後にサスペンションを備えている物すらあります。
個人的にアウトドア風味にアレンジされた電動アシスト自転車という受けとめ方をしていますが、ファットバイクとは似て非なるモノであるという肌感覚があるのも事実。
実際に乗ったことが無いのであまり偉そうなことは言えませんが、今回はガチファット乗りの目線で見た20インチ電動ファットバイクの気なる点に触れてみます。
長所と短所のるつぼ?「20インチ電動ファットバイク」の気になる点
海外では26~27.5インチの電動ファットバイクも存在しますが、国内では小径20インチの電動ファットバイクが主流。
フル電動化や違法改造などのアングラな面はあるものの、私の住んでいる片田舎でも頻繁に見掛けるため、そこそこの人気を獲得しているのは間違いありません。
さて、ファットバイク乗りであると同時にミニベロ乗りでもある私からすると、タイヤサイズが20インチという部分にまず注目。
ご存知の通り20インチホイールには451ホイールと406ホイールの二種類があり、電動ファットバイクがどちらを採用しているのかが気になるところ。
調べてみると、大抵は406ホイールが採用されていて、4.0インチ幅のタイヤが組み合わされています。
タイヤ幅は10cm弱でタイヤを含めたホイール径は56cm程、直径だけなら24インチのママチャリと同じくらいのサイズ感になるでしょうか。
折り畳み機能を備えた物とそうでない物に大別され、フレーム素材は前者がアルミ合金、後者がクロモリの場合が多く、重量は20~30kg程度となります。
ぶっちゃけこれだけ重いと折り畳み機能があまり意味を成さず、車載や保管時の省スペース化が主目的と捉えるのが正解でしょう。
輪行は現実的ではありませんし、自宅の二階に運ぶのですら骨が折れそうです。
電動だけにバッテリーや走行距離に興味が行くと思いきや、私が最初に気になったのはユニットを含む足まわりの仕様。
20インチ電動ファットバイクでセンターモーターを採用している製品は殆ど無く、後輪ハブにリアモーターを内蔵した製品が大多数です。
スポーツサイクルを嗜んでいる方なら薄々感づいていると思いますが、このタイプはパンク修理やタイヤ交換が面倒になりがち。
YouTube上にアップされた幾つかのDIY動画で確認してみても、ずぶの素人が手を付けられるほどユーザーフレンドリーにはなっていません。
少しでも自転車のカスタマイズ経験があるなら自前でパンク修理やタイヤ交換もできますが、自転車をいじる機会の無い一般層には間違いなくハードルの高い作業です。
自動二輪並みの極太タイヤだから、そうそうパンクなんてしないでしょ?
そんなふうに思ってしまいがちですが、ファットバイクのパンク耐性は飛び抜けて高いわけではありません。
タイヤの接地面が広いため、刺突パンクのリスクが逆に高くなってしまうなんてことも。
また、小径タイヤは摩耗しやすく、ノブ付きタイヤで舗装路上を走り続けようものなら短期間で山が無くなってしまいます。
おまけに20インチ406ホイール用のファットタイヤは、VEE製やCHAOYANG製といったアジア圏のメーカーからしかリリースされておらず、安価である代償として品質はお世辞にも良いとは言えません。
因みに、前後タイヤの交換費用は工賃を含めて20000円弱くらいが相場、DIYだとタイヤの購入費用だけなので出費はその半分くらいに抑えられます。
一目惚れで電動ファットバイクを購入する方も少なくないと聞きますが、サポート体制の整っている製品を選ばないと後々苦労するかも知れませんね。
これは自転車に詳しくない方はもちろん、自分では自転車をいじらない「乗り専」の方も意識しておきたい部分です。
続いて、少し違和感を覚えたのがバルブに仏式ではなく米式が採用されている点でしょうか。
米式バルブは素手では空気を抜きづらい構造になっていて、頻繁な空気圧調節にはやや不向き。
路面状況に合わせて空気圧を変えるのがファットバイクの醍醐味ですから、せっかくの極太タイヤを活かし切れないのは勿体ない限りです。
不思議に思って調べてみると、仏式バルブで対応するブチルチューブそのものが存在しておらず、米式チューブしか選択肢の無い状態でした。
興味深いことに、何故か中華製TPUチューブには米式と仏式の両方で20インチファットバイクに対応する製品があり、足まわりの軽量化やバッテリー持ちの改善にも期待できます。
20インチファット用の米式ブチルチューブが約350gに対して米式・仏式TPUチューブが約80gですから、一気に500g以上の軽量化が可能。
ファットバイクは足まわりの軽量化で走りが激変するので、試してみる価値は十分です。
余談ですが、自動車や自動二輪と同じ米式バルブだけにガススタで空気を入れてもらえるといったちょっとした利点も。
他にも、ミニバイク用の瞬間パンク修理剤が米式バルブ対応なので、面倒なリアタイヤの補修用に役立ったりします。
続いてバッテリーまわりや走破性についても触れてみますが、実際に試した訳ではないので話半分で受け取って下さい。
20インチとはいえ極太タイヤで電動アシスト付き、人力ファットバイクでの経験上この組合せなら積雪10cm越えでも走行可能だと思います。
雪道ではタイヤを低圧にするのが基本ですが、高圧なままでも力技で突破できてしまいそうな予感。
実際、ファットバイクで深い雪道を走るのは下りの来ないヒルクライム状態なので、アシスト機能はかなり魅力的です。
とはいえ、積雪が15cmを越えると小径ゆえの限界を迎え、降り積もったばかりの新雪以外では走行が難しくなる場面も増えてきそう。
確かにアシストによるパワーは心強いですが、雪質によってはアシストが逆効果になってしまうこともあり得ます。
ずぶずぶの根雪や滑りやすいアイスバーンでは自分で制御できないアシスト部分がマイナスに働き、リアタイヤのトラクションが不安定になる可能性も。
自動車と同様に根雪ではスタックしてバランスを崩し、アイスバーンではスリップによる転倒を招くのが容易に想像できます。
極太タイヤと強力なアシストのおかげでちょっとした悪路や砂浜なんかでもスイスイ進んでくれるのは確かですが、ピュアファットバイクと同じ感覚で雪道やアイスバーンに挑むのはあまりオススメできません。
雪道での走破性はタイヤの質も大きく影響しますし、本格的なスノータイヤやスパイクタイヤが存在しない20インチの電動ファットバイクには不利なステージです。
10cmそこそこの初雪で遊ぶには十分ですが、ガチな雪道においては24~27.5インチホイールの人力ファットバイクほどの走破性は期待できないと考えた方が良いでしょう。
20インチのファットタイヤがどこまで低圧に対応できるのかが不明瞭ですが、0.3barでも走行可能なら私の予想を少しだけ覆すかも知れません。
最後に気になるバッテリーについてですが、スマホやデジカメと同様にやっぱり寒さが苦手です。
正直、冬を主戦場とするファットバイクと電動アシストは相性の悪い組合せで、低温によりバッテリーの出力が十分に発揮されません。
バッテリーの中心部が冷えていると出力不足に拍車が掛かりますし短命化にも繋がるため、乗らない時はバッテリーを屋内で保管して温度を15~25度程度に保っておくといった対策も必要。
電動ファットバイクを真冬に乗るなら、バッテリーを車体から外せるタイプを選ぶのが良さそうです。
まとめ
乗った経験が無いのに割と言いたい放題でしたが、ファットバイクの一種とはいえ雪国で積極的に乗るのは少し怖い……これが私の正直な感想でしょうか。
また、トレイルに関しては未知数なものの、「御注意シール」の有無くらいは確認した方が良さそう。
「この自転車は一般(普通)道路専用です。悪路、荒地での使用は絶対に止めましょう。」
こういった記載のある「御注意シール」がフレームに貼られていたら、それは街乗り用でお山を走ったら壊れるヤツです。
重ねて言いますが、バッテリー、小径タイヤ、サスペンションといった要素からも、ノーメンテで長く乗り続けられるような自転車ではないので、サポートに関してだけはしっかりと確認しておきましょう。
逆に自分で対処できる技術があったり、頼れる自転車店に伝手があるのなら、最高のおもちゃになってくれるかも知れません。
余談ですが、今回の記事で電動バイクに対して従来の自転車をどう呼ぶべきかで少し悩みました。
「アナログ自転車」「非電動自転車」「人力自転車」「従来型自転車」、国内ではこのあたりが一般的らしいです。
一方海外では「アナログバイク」という呼び方が最近増えていて、中にはギターに倣って「アコースティックバイク」なんて洒落た呼び方も。
私は何となく「人力バイク」と呼んでいますが、このアコースティックバイクに一票かな。