自転車用の工具には高価な物が多いです。
その中でも、タッピングやフェイシングに使われる「切削工具」は特に値が張り、個人では中々手の出せない代物。
そうそう工具に予算は裂けませんし、下手をすると一度しか出番のない可能性も。
正直、自前で購入するよりも最寄りのサイクルショップに持ち込むんだ方が遥かに財布に優しいですし、プロに任せた方が技術も確か。
とはいえ、何事にも例外はあって他店やオンラインで購入した自転車だと門前払いを喰らったり、田舎だとそもそも近場にスポーツサイクルを扱えるお店が存在していなかったりします。
私もこれに関しては過去に苦い経験をしていて、ディスクブレーキマウントのフェイシングが叶わず八方塞がりになったことがありました。
今は亡きフルサス29erでのことですが、精度の出ていないディスクブレーキマウントのせいでリアブレーキのセンター出しが、なかなかにシビアでしたね。

シマノからリリースされているブレーキマウント用スペーサーを加工することで何とか精度は出せたものの、Z軸方向への傾きをフェイシングなしで調整するのは至難の業。
因みに、アルミホイルをスペーサーとして流用するやり方もあり、家庭用のアルミホイルは厚さが0.01mmと薄い上に加工も容易です。
さて、ここからが本題。
高価すぎて手が出せなかったディスクブレーキマウント用のフェイシングツールにちょっとした異変が起きています。
今までアメリカの「ParkTool/パークツール」やフランスの「VAR/バール」といった有名処の工具メーカーが牛耳っていた界隈に、遂に中華メーカーが殴り込み。
価格は一気に1/10になり、条件付きながら使用感も悪くありません。

先ほども触れましたが、ディスクブレーキマウントのフェイシングツールと言えば、パークツールの「DT-5.2」が良く知られています。
底値だと8万くらいで購入できますが、それでも高価なことには変わりありません。
注意点として、このツールはそのままだとカーボンフレームに未対応。
カーボンフレームを切削する場合はヤスリ状の別売りカッターヘッドが必須です。

そして、パークツール製よりも更にお高いのがVAR/バールの「CD-14600」
国内ではほぼ取扱いの無いレア物で、お値段は割引価格でも余裕の10万超え。
パークツールとは異なり、左右ふたつのブレーキマウントを同時に切削出来る機能を備え、付属のカッターヘッドはアルミ・スチール・マグネシウム・カーボンに対応します。

更に、訳あり&激安なのがこちら。
台湾の自転車工具ブランド「IceToolz/アイスツールズ」のディスクマウントフェイシングツール、その名も「手裏剣/Shuriken E272」
実はこのツール、5000円という飛び抜けた低価格ながら……機能性は何とその値段以下!
ブレーキマウントどころか塗膜すら切削できないという、レビューで散々に叩かれている逸品だったり。
IceToolzには他の工具でお世話になっているので少しだけ擁護すると、このツールはブレーキマウントに付着した塗膜を剥がすための工具で、そもそもフレームを切削できる類の工具では無い模様。
まあ、その塗膜も見事に削れない訳ですが、原因は鋭利さの欠片も無いカッターヘッドを見れば一目瞭然です。

前置きが長くなりましたが、ようやく本命のご登場。
リリースしているのは「VELYN/ヴェリン」という中華メーカーで、大手ECサイトを通じ工場直販に近い形で自転車用工具を販売しています。
価格は1万円強と圧倒的に安く、硬質なカッターヘッドではなくダイヤモンド研磨ディスクにより、ふたつのブレーキマウントを一気に切削する仕組み。
また、切削部への注油も不要でカーボンフレームにも卒なく対応しています。
中華製なだけに価格なりの製品では?
正直そういった懸念はありますし、薄い研磨ディスクを回転させて削る仕組みにつき、円盤そのものの剛性や台座の精度にも不安が残ります。
ありがたいことに、プロモーション抜きでこの製品をレビューしている方が数人いて、概ね評価は良好。
ちゃんと切削できていましたし加工後の精度もしっかり出ていて、以前よりキャリパーのセンター出しが容易になった。
ディスクブレーキの引きずり音の解消に効果覿面だった。
そういったポジティブな評価が多く、既存のカッターヘッドと比べて削り過ぎによる失敗も少ないとの声も。
私が思っている以上に良く出来た製品なようで、一部ではゲームチェンジャーになり得る製品だと称されていました。

もちろん、良いことばかりではなく幾つか欠点や制限もあります。
懐かしのシングルCDサイズの研磨ディスクを使用する仕組み上、フレームに適度なクリアランスが必須。
特にリアエンド側のマウントはチェーンステーとシートステーが合流する「くの字」部分に近いため、フレームの形状如何では研磨ディスクがフレームに干渉してしまう場合も。
また、ブレーキマウントにもある程度の高さが必要となり、低すぎるとフレームまで削ってしまうことに。
MTBやグラベルロードなら特に問題は無さそうですが、ロードバイクで使いたいなら事前にしっかりとフレーム形状やブレーキマウントの高さを確認したほうが良さそうですね。
他社製よりも個々のフレームへの対応力に劣るのが、この製品最大の弱点かも知れません。

最後になりますが、個人的に気になったのが対応するエンド幅について。
スルーアクスルを利用して固定する仕組みは他の製品とも共通していて、対応するエンド幅はディスクロードで主流のフロント100mm、リア142mmです。
一応、付属のスペーサーを利用することで148mmのリアエンド幅にも対応し、BOOST規格のMTBにも使用可能。
ですが、私が確認した限りフロントエンド用のスペーサーが付属しておらず、BOOST規格のフロント110mmには対応していない可能性も。
リアは対応しているのに、フロントだけBOOST未対応……
単に私の見落としで、そんな中途半端なことは無いとは思いたいですが、念のため頭の隅に留めておきたい情報です。

