十中八九、前回のリハビリライドが原因でしょうけど、グラベルロードがひっそりとスローパンク。
このグラベルロードは諸事情からフロントタイヤがチューブレス、リアタイヤがTPUチューブをいう変則的な構成になっていて、パンクしていたのはお察しの通りTPUチューブの方です。
休日を利用してしぶしぶパンク修理に臨みますが、TPUチューブのパンク修理はこれで通算三回目。
勝手知ったる行為と油断していると、パナレーサーのTPUチューブこと「PURPLE LITE/パープルライト」が思いのほかクセモノで、一筋縄では行きません。
パンク修理自体はブチルチューブよりも容易ですが、軽量なロード用TPUチューブはMTB用と比べると強度に劣るため、チューブの噛み込みやタイヤレバーによるダメージが気掛かり。
おまけにTPUチューブ特有の性質から、水バケツを使ってもパンク箇所と特定しづらいという、知られざる問題も浮上してきました。
品質管理が甘い?パナレーサー「PURPLE LITE」ちょっとした不具合

修理作業のためリアホイールを外して室内へ。
タイヤを軽く洗浄し外周を一通り眺めてみても、目視で確認できるようなダメージは無く、スローパンクの原因が気になるところ。
目ざとい方ならお気付きかと思いますが、リアタイヤだけ旧製品であるグラベルキングの第一世代モデルを履かせていて、タイヤも前後で別仕様だったり。

使用しているTPUチューブは冒頭でも触れた通りパナレーサーのパープルライトで、国内企業が手掛けたTPUチューブとうことで比較的人気の高い製品です。
このTPUチューブはバルブ部分が金属製でリムナットを備えるという特徴があり、発熱しやすい携帯電動ポンプにも対応。
今のところ、バルブ長は65mmと85mmの二種類しリリースされておらず、リムハイトの低いグラベル用ホイールとはあまり相性が良くない印象でしょうか。

リムハイトが低いとバルブナットをスレッド部分の限界まで締めてもバルブがガタついてしまうため、私は市販のオーリングをひとつ追加してスペーサーにすることで対処しています。
因みに、この金属バルブは根元付近で樹脂バルブと接合されていて、樹脂部分がリムの外に露出してしまうリムハイトの低いホイールでは、バルブが破損しやすいとのこと。
バルブ本体が金属でも根元が樹脂製な訳ですから、バルブに横方向の強い力を加えるとパキっと折れてしまうので注意が必要。

TPUチューブのパッチ修理のため、コアネジを緩めて空気を抜き、タイヤのビードを片側だけ落としていると、何かがポトリと落ちます。
怪訝に思い、その落下物をそっと拾い上げてみると……

なんと、正体はバルブコアでした。
全く緩めていないのに、タイヤビードを落とす作業中に勝手バルブコアが落下するという不可思議な現象が起こります。

この症状は過去にどこかで……と記憶を辿ってみると。
某所のレビューでパープルライトは初期状態でバルブコアが緩んでいたという報告を幾つか見た覚えがあります。
報告者の一人が、バルブコアくらいはしっかり締めて出荷して欲しい、パナレーサーの品質管理はどうなっているの?といった厳しい言葉をぶつけていたため、朧気ながら記憶に残っていました。
新しいチューブを使う前に、バルブコアを増し締めするような方は殆どいないと思いますから、これは質の悪いトラップですね。
パープルライトはメイドインチャイナだそうですから、不良率の高さは中華TPUチューブ譲りなのかも。
因みに、最近のチューブレスバルブには上画像のようなバルブキャップ型のバルブコア外しが備わっていますが、TPUチューブには当然そんな物はありません。
今回の件はレアケースとはいえ、たとえチューブドでも増し締め用にバルブコア外しのひとつくらいは携帯しておいた方が良さそうです。

タイヤに目立った外傷がない上にバルブコアはゆるゆる。
これはもう、スローパンクの原因はバルブコアの緩みで間違いないと踏んで、サクッと増し締め。
あくまでも私の感覚ですが、パープルライトのバルブコアは強く締め込んでも緩みやすい傾向にあったため、弱めのゆるみ止め剤を塗布するのもアリな気がしました。

その後、2時間ほどテストライドしてもタイヤの減圧は見られなかったため、これにてパンク修理は無事完了!
そう思っていました、この時までは。
水バケツが通用しない?TPUチューブのパンク修理で盲点だったこと

はい、残念ながらテストライドの二日後に再びタイヤがヘコヘコです。
今回ばかりは早合点せず、しっかりと内部のTPUチューブを確認しなければなりません。
今まで、ファットバイク用やMTB用のTPUチューブは散々使ってきましたが、華奢なロード用はとにかくデリケート。
こういった軽量タイプのTPUチューブはタイヤレバーによる煽りでも容易にダメージを受けてしまうため、ビードを落としてタイヤの腹を開く際には慎重な作業が要求されます。
本来はタイヤレバー無しでの作業が推奨されるものの、このタイヤはご存知の通りグラベルキングのチューブレス版。
当然チューブドで使うことを想定していないためクリンチャー用よりもビードが硬く、フックレスリムでの使用という悪条件も重なっているため、素手でタイヤを外すのはなかなか骨の折れる作業です。

結局タイヤレバーを使う羽目になり、ようやく件のパープルライトがお目見え。
上画像を凝視するとわかりますが、表面に糊のような物が見え、これが結構なベタつき加減です。
TPUチューブだから残留シーラントとは反応しない……そう思い込んでいたのですが、チューブを抜き取る際にダメージを気にしたくなる程度には貼り付きを起していて、気が気じゃありませんでした。
一度でもシーラントを注入したタイヤは、たとえTPUチューブを使う場合でもタイヤパウダーやベビーパウダーをタイヤの内側にまぶして、残留シーラントの粘性を失わせておくのが良さそうです。

浴室で洗面器に水を張り、パンク箇所の特定を開始。
バルブを含めて全体隈なくチェックしてみると、チューブ外側のセンターライン上に空気漏れを発見。
余談ですが、私は油性ペンで容赦なくマーキングしています。
TPUチューブに油性ペンという組み合わせに若干の不安はありますが、ごく少量を一時的にマーキングする程度なら 深刻な変質は殆ど起こらず、パッチを貼る前にもアルコールワイプを使用するため、接着自体にも悪影響は少ないとのこと。
より安全を期するなら、水性ペンを使うかテープやシールでマーキングするのもオススメですね。

パープルライトには補修用のパッチが存在していないため、他社製を流用。
中華製TPUチューブですら標準で付属している補修パッチですが、未だにパープルライトに存在しないのには何らかの理由があるのかも知れませんね。
手持ちはREVOLOOP用とTubolito製のふたつで、今回は後者を利用してみました。
うろ覚えですが、このTubolitoのパッチは既に旧モデルとなっていて、現在は専用のチューブ入り接着剤でパッチを貼り付けるブチル用に似た仕様の製品に置き換わっていたはず。
シールのように貼るだけの利便性は失われてしまったものの接着力は強化されていて、裂け気味のTPUチューブにも対応してくれます。
最後に浴室で補修後の空気漏れが無いかチェックして作業は終了。
チューブを慎重にタイヤ内に戻して胸を撫で下ろしますが、何故か翌日にはまたタイヤがヘコヘコになっていました……

チューブをタイヤ内に戻す際にミスったのかも知れませんが、心当たりが全くありません。
頭に疑問符が林立する状態ですが、レビューを見る限りパープルライトはバルブまわりにトラブルが起きやすく、低評価の内容も初期不良や短期間で発生した不具合に集中している印象。
上画像の白矢印が代表的なウィークポイントとなり、この部分に関する報告が多いですね。
【1】チューブが厚くなっているバルブ根元からの空気漏れ
【2】金属バルブと樹脂バルブとの接合部分からの空気漏れ
【3】2cm強の樹脂バルブ部分の破損
これに加えて前述したバルブコアの緩みもありますから、パープルライトに期待感を打ち砕かれた方も少なくないでしょうね。
上記の他にも、チューブそのものに穴が開いていたといった意見も寄せられていましたが、これは恐らくセットアップで失敗している可能性が高く、半数程度は冤罪であることが予想されます。
重ねて言いますが、軽量タイプのTPUチューブは噛み込みやタイヤレバーでの煽りでダメージを受けやすい傾向にあるので、セットアップやパンク修理時にはくれぐれも慎重に作業したいところ。

さて、混乱を極めたのはここからです。
空気漏れの箇所を特定すべく、再び水バケツを敢行するも空気漏れは全くのゼロ。
懸案のバルブ部分もしっかりと水没させてチェックしてみましたが、ここからも空気漏れは確認できませんでした。
もう、訳がわからない。
本当にそういった気分でしたが、ここであることに気が付きます。
これはよく知られた話ですが、TPUチューブはブチルとは異なり、一度膨らむと二度と元のサイズには戻りません。
そのため、タイヤの内部にある時以外には空気圧の制限があり、殆どの製品で0.5bar/7.25PSI以下を遵守という仕様。
個人的にこの値を気にしていたため、水バケツの際は空気の注入を少なからず躊躇していたのですが、試しに0.5barギリギリまでポンピングして再び水没させてみると……
ありました!辛うじて判別できるような穴が二箇所も。
そのうち一箇所は普通に連続して漏れる空気を確認できましたが、もう一箇所は手のひらでチューブを握ってようやく空気漏れを確認できる程度。
今回は洗面器ではなく大きな浴槽を利用して水没させたため水圧が手助けしてくれたこともありますが、ダメージの程度によっては水バケツに無反応のケースもあることを初めて知りました。
それに十分なスペースの無い洗面器だと、水没させたチューブの一部がくの字に曲がることで穴が塞がってしまい、空気漏れが確認できないこともありそうです。
TPUチューブの長所として、仮に刺突パンクしても空気漏れが大変穏やかであるという特徴がありますが、今回はこれがマイナスに働いてしまった結果でしょうか。
残り湯とはいえ浴槽を使うのは流石に躊躇われますが、水バケツを使う際は大き目の物を使い、チューブの空気圧を0.5bar付近まで上げて調べるのが良さそうです。
それでもTPUチューブのバーストや変形が怖いという方は、手のひらで握るようにしてチューブを加圧してあげるのも手でしょうか。

チューブレスの面倒臭さに嫌気が差してTPUチューブに乗り換えたものの、ロード用のTPUチューブは扱いがデリケートすぎてこちらもこちらで気を使う有様。
未開封の予備チューブを再投入するか、チューブレスに出戻りするかで悩むところですが、TPUチューブを使い続けるなら、チューブレスよりも着脱が容易なクリンチャータイヤで運用する方がトラブルが少なくて済みそうです。
まとめ
華奢なロード用ということもあって、久々にTPUチューブに振り回される羽目になりました。
一連の流れからするとパナレーサーのパープルライトが問題だらけなTPUチューブに感じてしまうかも知れませんが、空気漏れの大半は私の拙さが招いたこと。
注意すべき点は、初期状態でのバルブコアの緩みとバルブ根元にある樹脂部分の強度くらいで、パープルライトは決して粗悪なTPUチューブではないと、一応フォローを入れておきます。

さて、私はというと結局チューブレスに出戻りです。
謎の空気漏れで二日間ほど悪戦苦闘したのに、チューブレスのセットアップは僅か10分というお手軽さ。
MTBの時もそうでしたが、グラベルロードもチューブレスとTPUチューブを行ったり来たりする、そんな振り子現象が続くことになるのかも。