なぜだ、何度やってもビードが上がらない……
チューブレスタイヤでは起こりがちな出来事なものの、私が直面したトラブルは少しばかり毛色が異なります。
下ろし立てのタイヤならフロアポンプでも難なくセットアップできるのですが、これが使用済みのタイヤとなると途端に成功率が駄々下がり。
実のところ「使用済みのタイヤで失敗する」という現象に陥ったのは今回が初めてではなく、以前も全く同じ症状で頭を悩ませたことがあります。
最初は単なる偶然だと思っていたのですが、どちらにも使用済みチューブレスタイヤの再セットアップという共通点があり、もちろん両者とも初回のセットアップは失敗知らずでした。
前回の失敗からシーラントの影響であることは薄々理解していたものの、あらためて調べてみるとどうやら原因はそれだけでは無さそうです。
あまり需要の無いニッチな話題かも知れませんが、今回は「なぜ二度目のビードが上がりづらいのか?」
その理由と解決策に迫ってみたいと思います。
使用済みチューブレスタイヤが「ビード上げで失敗しやすい」理由

冒頭で「タイヤシーラントが影響しているのでは?」
薄々そう感じていたことをお伝えしましたが、原因の八割は確かのその通りでした。
ここで言うところの「使用済みのチューブレスタイヤ」とは一度でもシーラントを注入し一定期間使用し続けたタイヤを意味しますが、再セットアップでビードが上がりづらくなる理由は大きく分けて以下の三つです。
【1】シーラントの残留物、俗に言うシーラントカスの影響
ビードが上がりづらくなることの最大要因がこちらで、タイヤのビードやリムのフックまわりに乾燥したシーラントが過度に残留していると起こります。
残留シーラントの膜やカスが形成する大小の凹凸によりタイヤとリム間の気密性が損なわれるだけでなく、シーラントの粘着成分によりセットアップ時にはビードやリム表面の滑りが悪くなるという弊害も。
【2】使用済みタイヤに特有の「癖」と「伸び」の影響
一度でもホイールに装着したタイヤは高圧により伸び、ビードの形状もリムに馴染むことで変形しています。
使用済みのチューブレスタイヤは高圧によりケーシングが全体的に伸びているだけでなく、ビード部分に生じた伸びや癖の影響で未使用品と比べてリムに対しての密着が甘くなり、ホイールへの収まりが緩くなる傾向に。
また、これは前述のシーラントにも関連しますが、タイヤの微細な隙間に浸透したシーラントが乾燥することでサイドウォールが以前より少し硬くなる傾向にあり、外した際の形状が歪んだ状態で固定されやすくなるとのこと。
【3】チューブレスリムテープの劣化や破損の影響
私の場合ニップル穴のないテープレスホイールなので該当しませんが、チューブレスリムテープの劣化や損傷も失敗の原因になります。
長期間の運用によりリムテープが浮いてしまっていたり、シーラントがテープの裏側にまで浸透していたりすると気密が損なわれ、ビード上げの妨げになってしまうことも。
普通に使用する分にはそれほど劣化を気にする必要はありませんが、深めの水溜りを走ったりするとニップル穴を通してリムテープの裏側に水分が侵入しやすく、劣化を早める一因に。
端的に言うと、使用済みのタイヤはビードが伸びてリムに密着しづらくなる上に、リムやビードに残留したシーラントカスの凹凸で気密も甘くなっている。
これが二度目のビード上げが失敗しやすい理由でしょうか。
シーラント除去は必須!二度目のビード上げを成功させる解決策

さて、既にご理解いただけたように二度目のビードが上がらない理由の大半はビードやリムに残留したシーラントです。
これを除去できればビード上げの成功率がグッと上昇する訳ですが、まずはシーラントが完全に乾燥していることが大前提。
そして以下に記す方法を丁寧に試していくのが成功への近道です。
【1】リムに付着した残留シーラントの除去
リムやチューブレスバルブに固着した残留シーラントを徹底的にクリーニングしますが、お湯と中性洗剤を混ぜたものでふやかしてから地道にウエスで除去するのが、最もシンプルな方法。
時短を望むならMUC-OFFがリリースしている「GLUE REMOVER/グルーリムーバー」が特にオススメで、他にリムや塗装に対して攻撃性の低いイソプロピルアルコールやゴム・プラスチックに使用OKなパーツクリーナーを使う方法もあります。
リムのシーラント除去は難易度が低いのでツルツルになるまでがやるのが基本となり、ビードフックや直角になった隅の部分は念入りに除去しましょう。
【2】頑固な残留シーラントは物理的に除去
ケミカル類でも落とし切れない残留シーラントは爪で地道に除去するか、リムに傷を付けないプラ製のヘラを使用するのが効果的。

使い古しのタイヤレバーを補助的に使うのも一つの手で、よくあるパナレーサー製でも十分に役立ちます。
【3】タイヤビードの残留シーラントを除去
リムと比べると効果的な方法が限られてしまうせいか、クリーニングの難易度は高め。
また、タイヤ自体にまでダメージが及んでしまうためケミカル類の使用は基本的にNGです。
ビードにこびりついたシーラントをウエスや指で剥ぎ取って行く地道な作業が求められますが、古タイヤのトレッド面やゴム手袋でゴシゴシ擦るという裏技も。
実はシーラントもラテックスの一種ゆえに、除去するには同類のゴム製品で擦るのが最も効果が高く、天然ゴム製の消しゴムやスエード用のクリーニングガムが大変役に立ちます。
【4】ビードワックス・ビードクリームで潤滑する
ビードとリム間の摩擦を低下させるために市販のビードワックスやビードクリームの利用も効果的。

使わない場合と比べると結果に雲泥の差があり、特にビードの残留シーラントが除去し切れなかった場合はかなり重宝します。
石鹸水で代用するお手軽な方法もありますが、石鹸のアルカリ成分はタイヤやリムテープを劣化させる上に、含有されている界面活性剤にはシーラントの凝固を妨げる性質があるため多用は禁物。
【5】それでもビードが上がらない時はチューブを活用
【1】~【4】の方法を試してもビードが上がらなかった場合はチューブを使う方法があります。
やり方は簡単、一旦チューブを入れてからビードを上げ、片側のビードだけを落としてチューブを抜くだけ。
その後、チューブレスバルブを取付けてビード上げに再チャレンジしますが、この方法はビードが50%塞がっている状態からスタートできるため、難易度が格段に低くなります。
【最終手段】CO2カートリッジでチートしてみる
紹介した全ての方法を試してもビードが上がらなかった場合はCO2ボンベとインフレーターで一気に空気を送り込む方法があります。
失敗しても成功してもCO2カートリッジが一本犠牲になる一発勝負ですが、フロアポンプによる人力よりも成功率が高くなるお手軽なファイナルウェポン。
使用前には油断せずにビードをハンプ付近までしっかりと寄せておくのがコツです。
これで上がらなかった場合は、出費を覚悟してエアコンプレッサーかタイヤブースターのどちらかを購入しましょう。
バルブの仏式⇒米式変換アダプターを持っているなら、エアコンプレッサーを求めて最寄りのガススタに駆け込むのも手でしょうか。
因みに、人気の携帯電動ポンプはビード上げには不向きなので悪しからず。
実際にチャレンジ、使用済みタイヤで二度目のビード上げは成功したのか?

ここからは私自身の結果報告となります。
まずはリムのクリーニングですが、粘度の高いマックオフのマウンテン用シーラントを二年弱という長期間に渡って使用していたせいか、残留シーラントの固着がかなり頑固でした。
特にリムのコーナー部分にはプラ製タイヤレバーとパーツクリーナーの併用でようやく削ぎ落せるレベルのこびり付きがあり、例えるならネジ用の緩み止めのような質感でしょうか。

そして、リムに対してもビードに対しても残留シーラントの除去に効果的だったのがコチラ。
たまたま自宅に眠っていた天然ゴム製のスエード用クリーナーで、約2cm幅のスティックタイプだけにグラベルロードのナローリムとの相性が抜群でした。
パーツクリーナーとタイヤレバーの合わせ技でも落とし切れなかったシーラントカスにも効果を発揮し、タイヤのビード部分に固着したシーラント除去にも効果覿面。
半信半疑だった、シーラントの除去には天然ゴムが最適という情報は事実でした。
さて、リムとビードのシーラント除去は無事済みましたが、肝心のビードワックスが手元に無く、ぶっちゃけ最初のビード上げには失敗します。
最終的にチューブを入れて片側のビードを上げてから、CO2カートリッジでチートすることでようやく成功しましたが、きっとビードワックスがあればフロアポンプのままでも成功していたでしょう。

最後に、無印グラベルキングの耐パンク強化版となるグラベルキングプラスでセットアップ難易度の違いを再確認してみます。
もちろん、このグラベルキングプラスは新品未使用でシーラントの影響もタイヤの変形も一切無し。

グラベルキングは第二世代モデルからどの製品も各段にビードが上がりやすくなっていますが、ビード上げは何の工夫もせずにフロアポンプだけであっさり完了。
このタイヤをしばらく使っただけで死ぬほどビードが上がりづらくなる訳ですから、本当に不思議なものですね。
まとめ
二度目のビード上げに失敗しやすい理由やその解決策について触れてみましたが、再セットアップにおける難易度の上昇はあまり語られていない事実かも知れませんね。
大雑把にまとめると、リムとビードの残留シーラントを徹底除去しつつビードワックスを併用して事に臨むべし。
これが使用済みチューブレスタイヤでビード上げを成功させる一番の近道になりそうです。
私は小まめにタイヤを交換するタイプなので、今回の件でエアコンプレッサーとまでは言わないまでも圧縮空気が使えるタイヤブースターくらいは手元に備えておきたくなりました。

