フルサスMTBからグラベルロードに鞍替えしてから数年。
移行による違和感はおおよそ想像の範疇でしたが、予想外だったことがひとつ。
毎年冬になると強く実感しますが……
グラベルロードは冷えやすいんですよ、指先が。
これはフルサスMTBはおろか真冬が主戦場となるファットバイクでもあまり感じたことのなかった症状で、どうやらハンドポジションの違いに原因がある模様。
ロード系バイクにより全体的に速度がアップしているのも一因ですが、やはりハンドル形状の違いによる握りの変化が影響していて、特にブラケットポジションではそれが顕著です。
フルサスMTBやファットバイクの場合、大抵はグリップをずっと握り込んでいるため冷えやすい指先が寒風に晒られ続けることはなく、油圧ならブレーキ操作は人差し指一本、シフト操作も親指一本だけと熱を逃すような動作も最小限。
それに対してデュアルコントロールレバーのブラケットポジションは五指すべての先端が進行方向に露出され、寒風によって絶えず熱を奪われ続けているような状態。
実際、そこそこの強度で30分以上は走行しないとグローブ内部に体温による蓄熱は起こらず、ファットバイクのスノーライドで着用している防寒グローブですら力不足に感じてしまう場面も。
正直、使い勝手や操作性の面を度外視すれば幾らでもあたたかいグローブは選べますが、駐輪時の施錠やライド中の写真撮影。
スマートフォンの操作や小物の出し入れなど、こういった日常的な行為でもたつく姿が容易に想像できます。
自転車乗りとしては「薄手でもあたたかい」そんな夢のような防寒グローブが欲しくなりますが、バッテリーが必要な電熱グローブを除くと、心当たりのある選択肢はひとつだけ。
私の経験上そんな無茶な要望を叶えてくれるのは、吸湿発熱素材「ブレスサーモ」を使用した防寒グローブしかありません。
レイヤリングで防寒性を強化!「ブレスサーモインナーグローブ」の実力

さて、私はブレスサーモについてかなり贔屓目ですが、その根拠は過去にハッキリとした効果を実感しているから、これに尽きます。
吸汗発熱素材と聞いて多くの人がユニクロのヒートテックを思い浮かべるでしょうけど、ブレスサーモはヒートテックよりもスポーツ用途との相性が良く、オーバーヒートや汗冷えを招きづらいのも魅力。
流石にカイロ並みにあたたかいとまでは言いませんが、発汗に対して明確に自覚できるレベルの発熱があり、初めて着用した際は逆に戸惑ってしまったほど。
個人的にイチオシなのが上画像の「ブレスサーモインナーグラブ」で、薄手のニット手袋です。
このグローブは単体での使用はもちろんのこと、レイヤリング前提のインナーグローブとしても流用でき、既存グローブの防寒性を底上げするような使い方も可能。
また、同じ製品でも新旧合わせて幾つかのモデルがあるようで、画像左の旧モデルは画像右の現行モデルよりも手首のカフ部分が長い仕様になっていたりと、世代によって細かな仕様変更が見られます。

実際に着用した様子は画像の通りで、薄手でフィット感が良いためインナーグローブに向いているだけでなく、細かな作業にもおあつらえ向きな作り。
私は厳冬期にカメラ撮影を頻繁にしますが、操作を優先して厚手のグローブを一時的に外すと、ほんの数分で手が冷えきってしまい、その後のリカバリーが困難なことがよくありました。
こちらのグローブをインナーとして使うようになってからは、氷点下の強風時にアウターグローブを外しても必要以上に体温を奪われることが無くなり、肝心のカメラ操作も素手に近い感覚を維持できます。
興味深いことに湿気さえあれば汗以外でもしっかり発熱するので、意図的に手を湿らせるといった裏技が使えたり。

因みに、アウターにはモンベルの「ウィンドストッパートレッキンググローブ」という、中綿の無いシンプルな防風グローブを使っていました。
残念ながら現在は生産を終了していますが、中には防寒テムレスをアウターグローブにして防寒性を底上げしている方もいるとのこと。
レイヤリング用の内部空間を確保する意味でも、アウター用のグローブは透湿・防風仕様で中綿無しの裏起毛くらいの防寒性が良バランスかも知れません。
言い忘れましたが、インナーグローブがニット製なだけにアウターグローブにはベルクロが使われていない製品を選ぶのがマスト。
ベルクロとニットはとにかく相性が悪く、軽く触れただけでも編目がほつれてしまいますからね。
防風タイプ&自転車専用のブレスサーモグローブについて

あたたかいのは良いけど、いちいちレイヤリングするのは面倒臭い……
そんな不精な方のために単体で使えるブレスサーモグローブも存在しています。
一般的にはこちらの方が重宝されそうですが、防風仕様で中綿の無い「WINDSTOPPER ブレスサーモグラブ」が自転車向きな印象。
他にも、中綿が入った「ブレスサーモ WINDSTOPPERパデットミトン」があり、防寒性に関してはこちらの方が上ですね。
五本指タイプに比べて細かな操作ができないという欠点はあるものの、ミトンタイプは内部で指がまとまっている上に外気に触れる表面積も少なくなるため、保温性に関しては他の追随を許しません。
形状的に自転車との相性がイマイチに思えますが、人差し指が独立して動かせる3フィンガータイプなだけに、ロードバイクやMTBにも慣れ次第では使えてしまいそうな気も。

最後にブレスサーモを擁するミズノとワイズロードがコラボしている、自転車専用モデルにも触れておきます。
20XX年NEWモデルといった感じに毎年リリースされていますが、ワイズロードの専売品だけあって自転車用にカスタマイズされた特別仕様。
ニット製のブレスサーモインナーグローブは前述した旧モデルのように手首のカフ部分が長いだけなものの、上画像のワイズロードオリジナルモデル「ウィンターグローブ ブレスサーモ中綿グローブ」は防寒機能がてんこ盛り。
ブレスサーモ以外にも米インビスタ社のサーモライトが中綿として採用され、内部には体からの赤外線を反射するリフレクションギアも備えます。
当然のことながら防風性や耐水性にも優れ、とことん熱を内部に閉じ込めることに拘った防寒グローブといった印象。
着用したままのカメラ操作が難しそうなので私のライドスタイルには不向きなものの、冬ライドの手冷え対策をシンプルに済ませたい方には魅力的な選択肢になるかも知れませんね。
⇒【ワイズロードオンライン】まとめ
吸湿発汗機能のあるブレスサーモグローブについて話題にしてみましたが、手先や足先といった末端の冷えは個人差や体調の影響が大きく、ライド前にしっかりと食事を摂っているか否かも見過ごせない要素のひとつ。
どんなに保温性の高いグローブを着用しても、結局のところ熱源となるのは自分の体温なので、冷え性の自覚がある方は素直にミニカイロを頼るのも手でしょうか。
冬ライドは天候や場所によってパンク修理が困難な状況にも陥りやすいため、保温ボトルにお湯入れたり未開封の使い捨てカイロを携帯するのもリスク管理のひとつです。
余談ですが、ブレスサーモに水滴を垂らす実験では約6度の温度上昇が見られたとのこと。
カイロ並みの発熱は流石に買い被りすぎだと思っていましたが、6度の温度上昇はかなりの数値。
肌から出る湿気でも安定して2~3度の温度上昇が見込めるそうで、薄手なのにグローブを着けているだけでもあたたかく感じるのは、決して気のせいじゃありません。

