アルミやカーボンのフレームが主流になっても、錆(サビ)はしつこく付き纏います。
ファットバイクに乗っているせいか錆びには割と敏感で、過剰に悩みたくないが故にカーボンフレームの車体を選んだ経緯も。
雨や雪による水分もそうですが、雪国の自転車乗りには融雪剤という天敵が存在し、これが非常に厄介。
融雪剤で溶けた雪はグズグズのシャーベット状や水溜りに姿を変え、目に見えないリスクを孕むことになります。
塩化カルシウムや塩化ナトリウムといった塩分を含む融雪剤はフレームよりもパーツ類への影響が大きく、油分や錆止め剤で保護されていない部分は、あっという間に赤茶色。
幸い田舎道や生活道路に散布されることは少ないものの、幹線道路には過剰なほど使われていて、穏やかな日は溶け残った融雪剤をアスファルト上で視認できるほど。
私自身、幹線道路沿いを走ることが増えたせいか、ここ数年でファットバイクの細部にチラホラと錆びを見付けるようになりました。
おまけにクロモリフレームのグラベルロードも増車していて、錆びがますます身近な存在になっています。
今までも最低限の錆び対策はしていたものの、恐らくそれでは不十分。
塩水の害は真水とは比較にならないので、とりあえず錆止め剤の見直しから始めてみることにしました。
錆びやすい自転車のパーツについて
錆びやすい自転車パーツと聞いて、直ぐに思い浮かぶのはチェーンかも知れませんね。
とはいえ、自転車を趣味としている方なら頻繁に注油するでしょうから、常にオイリーな最も錆びづらいパーツという見方も。
一般的にチェーン・スプロケ・ワイヤー・スポーク・ネジ&ボルト・ペダル軸といったパーツが特に錆びやすく、屋外駐輪や雨ざらしが常態化していたりすると、目も当てられないことに。
私の場合、ドライブトレインのクリーニングやメンテナンスは定期的にしていますし、簡易とはいえフェンダーも装備しています。
フェンダーには乗り手を泥跳ねや水跳ねから守ってくれるだけでなく、それらから車体を保護する役割もあり、一見無意味に思えるサイズでもドライブトレインやサスペンションへの水飛沫を軽減してくれる効果も。
ここ数年はサドルレール取付型のフェンダーを愛用していたのですが、機能性は十分なもののこれが裏目に出ます。
その性質上サドル裏が水飛沫を浴びやすく、気が付けばドロッパーポストの櫓ボルトとサドルレールの一部が薄っすら錆びていました。
前述したようにネジやボルト類はそのままだと錆びやすく、雨水が溜まりやすいトップキャップや車体の正面にあるステムボルトなんかもよく被害に遭いますね。
また、チェーンのお手入れをサボると、それに引きずられるようにスプロケットも錆びやすく、クリーニング後には何らかの処理をしたいところ。
よく知られている話ですが、KURE 5-56は簡易的なクリーナーとしても役立ち、ウエスに含ませて拭き取るとチェーンやスプロケの油汚れに効果を発揮します。
流石に本格的なディグリーザーには及びませんが、KURE 5-56は防錆効果があるため、私は簡易クリーニング用として意図的に使うようになりました。
そして、忘れちゃいけないのがディスクローターの存在。
実はこのパーツ、油分を一切使えないという性質から錆び浮きやすく、赤矢印の6ボルト穴やブレーキパッドと擦れるキワの部分でよく見掛けます。
何らかのカタチで錆止めを施したいところですが、もちろん油分を含む防錆剤の使用は厳禁。
自転車用の錆び止め剤のほぼ全てに、ブレーキまわりには使用しないように注意書がされています。
ディスクローターはステンレススチール製につき全体が錆びまみれになることはありませんが、ピンポイントで錆が出てしまった場合はあまり荒くないサンドペーパーで表面をサンディングする方法がオススメ。
この方法はディスクブレーキに鳴きが発生した際の対処法でもあり、ブレーキパッドが接触する円周部の表面を薄く削ってから脱脂すると、汚れや油分が除去され耳障りな鳴きを解消できます。
私の場合は6穴ボルトからローターに錆が移る「もらい錆」だったため、6穴ボルトをチタン製に交換した後にローター側をコンパウンドで研磨して錆を落としました。
ディスクローターは消耗品なので、グレードの高い製品以外なら素直に交換するのも手ですけどね。
どれがオススメ?効果の高い「サビ止めスプレー」あれこれ
雪国住まいということもあり融雪剤の害は重々承知していて、ファットバイクに乗り始めた当初から錆止めスプレーのお世話になっています。
今のところ、KURE 6-66とゴム・プラスチックにも使える無香性 KURE 5-66のふたつを使い分けていますが、わざわざ特殊な5-56を選んでいるのにはちょっとした事情も。
プラスチック・ゴムにも使用できるという点がポイントで、実はスパイクタイヤの錆び止めに役立ちます。
軽量なアルミ製スタッズはまだマシですが、安価なスチール製スタッズはとにかく錆びやすく、融雪剤まみれ雪道を走ろうものなら、数日を待たず錆が浮く始末。
シーズン中は気休め程度と割り切ってはいますが、保管時にはそこそこの錆び止め効果を発揮してくれます。
私は使い勝手の良さからKURE系の防錆剤を好んでいますが、効果の面で飛び抜けた特徴が無いのも正直なところ。
冒頭でも触れたように自転車と錆は切っても切れない関係あるせいか、複数の製品を比較した有益なデータを公開されいる先人もいて、これが非常に参考になります。
塩水を用いた長期テストで検証した結果によると、防錆効果に関しては上画像の製品がツートップ。
●AZ「長期防錆スプレー・オイル 216h」画像右
●EVERS/エバース「超・長期防錆剤 SUPER」画像左
両者とも防錆効果に関しては頭一つ抜けていて、KURE系とは如実に差が認めらていました。
サラサラのKURE系と比べると若干粘度があり、それが防錆効果の持続性にも繋がっている印象ですね。
例によってプラスチックやゴムに攻撃性があるので金属にしか使えませんが、どちらの防錆剤もチェーンを含む可動部に使用可能で水置換性も備えています。
自転車で通勤・通学している方や愛車を屋外駐輪している方に打って付けな防錆剤で、諸事情でメンテナスを頻繁にできない人にも積極的に役立てて欲しい製品でしょうか。
余談ですが、EVERSの長期防錆剤には容量100mlと容量220mlの二種類があり、大容量タイプはサイクルベースあさひの専売品とのこと。
100mlだと直ぐに無くなってしまうそうなので、あさひで220ml版を購入するのがオススメです。
さて、AZとEVERSの防錆剤が強力なのはわかりましたが、私を含む頻繁にメンテナンスをしている方には少し使いづらい側面があるのも事実。
あわよくばクロモリフレームのグラベルバイクにも使いたいと考えているので、どこにでも使える汎用性の高い製品が欲しくなります。
そこで注目したいのが自転車用ケミカルで支持を集めるMUC-OFF/マックオフの防錆剤で、初めてだと迷ってしまうくらいバリエーションが豊富。
画像の製品が代表的な物で、左から順にBIKE PROTECT、MO-94、HCB-1とそれぞれ得意分野が異なります。
因みに、一番右のSWEAT PROTECTは自身の汗による腐食や錆から愛車を守るというニッチ過ぎるコンセプトの製品。
真夏のライドはもちろん、三本ローラーやサイクルトレーナーといった屋内使用でも重宝しそうなので、オマケとして紹介してみました。
さて、ここからが本題。
マックオフ公式には代表的な防錆剤の違いをまとめた表があり、それぞれの違いが説明されています。
代表的な3製品には【1】水置換性がある【2】ブレーキまわりにはNG【3】ゴム部に付着してもOK、こういった機能面での共通点があり、オールラウンドに使える汎用性の高さも魅力。
防錆効果の持続性は MO-94 < BIKE PROTECT <<<< HCB-1 となり、HCB-1の最大12ヶ月という飛び抜けた性能が光ります。
あくまでも私の大雑把な解釈ですが、それぞれの得意分野は以下の通り。
●BIKE PROTECT
車体全体に使えるが、揮発性がありフレームや非可動部分への使用に向いている
●MO-94
車体全体に使えるが、成分が揮発しづらいためドライブトレインなどの可動部への使用に向いている
●HCB-1
非可動部分や電気部品に向いていて軽い錆び落とし効果もあり、高い防錆効果と持続性を持つが24時間の乾燥が必要
また、使用方法にも違いが見られ、BIKE PROTECTとMO-94は洗車後に水気を拭き取ることなく使用できますが、HCB-1は乾燥状態での使用が推奨されています。
注意点として、BIKE PROTECTはマット塗装に対応し、MO-94はマット塗装に非対応という違いもあり、知らずにMO-94を使用するとマット塗装に艶が出てしまうとのこと。
各々の特徴を見る限り、洗車と同頻度で使うならBIKE PROTECTやMO-94でも構いませんが、パーツ類の長期的な防錆効果を狙うならHCB-1を選びたいところ。
クロモリバイクのフレーム内部に使用している方も多いそうで、目の届かない部分の錆び止めにも高い効果を発揮してれます。
まとめ
ファットバイクの融雪剤対策として、効果の高い防錆剤を幾つかピックアップしてみましたが、私の用途にはHCB-1あたりが適任でしょうか。
テスト結果が良好だったAZやEVERSの錆び止めスプレーも気になりますが、どちらも使用後にべとつき感が残るため、あまり触れないような場所に使うのが良さそうです。
最後になりますが、どの防錆剤もブレーキまわりには使用厳禁なので、チェーンやスプロケに吹き付ける際はローターやパッドに成分が付着しないように注意しましょう。
一時的にブレーキパッドを外し、使い捨てウエスやラップでローターを包み込んでしまう予防法もありますが、ディスクブレーキカバーなんて便利な物も。
輪行用のディスクブレーキカバーはローターしか覆えませんが、クリーニング兼用はブレーキキャリパーもまとめて覆ってしまえるため、ローターだけでなくパッドも汚染から守ってくれます。