以前から予告めいたことを呟いていましたが、グラベルロードの予備チューブをブチルからTPUへと変更。
チューブレス化しているのに、予備チューブなんて必要?
そんなツッコミも聞こえてきますが、たとえチューブレス化していても避けられないトラブルがあるのです。
走行中にビードが落ちると非力なハンドポンプではリカバリーできませんし、シーラントで塞ぎ切れない傷にはチューブを入れてしまうのが手っ取り早い対処法。
よく知られいる話ですが、チューブレスのバックアップにはブチルチューブよりもTPUチューブの方が向いています。
ブチルチューブはタイヤ内に残ったシーラントと反応して後処理が面倒になりますが、TPUチューブはゴムじゃないのでシーラントとは無反応。
ライド中はシーラントを丁寧に拭き取るといった腰を据えた作業が難しいため、予備チューブのTPU化は早期に対応したいことのひとつでした。
さて、ここからが本題。
どうせ使えばシーラントまみれになるし、TPUチューブは伸びたら伸びっぱなしという持病持ち……
常用はせず、あくまでも応急用として割り切るなら、使い捨て出来る安価な中華製TPUチューブで十分という結論に至っていました。
ところが「ついに日本企業の手掛けるTPUチューブが登場!」という気になる情報を耳にして、あっさりと心変わり。
俄然興味が湧いたので深掘りしてみると、私が感じていたTPUチューブの不満点が少なからず解消されいて、今までの製品とは一味違う雰囲気があります。
既にご存知の方も多いと思いますが、Panaracer /パナレーサーのTPUチューブこと「 PURPLE LITE/パープルライト」がそれで、細かな拘りを感じる日本企業らしい作り。
正直、予備チューブにするには惜しいくらいですが、今回はバルブまわりが秀逸なパナレーサー「パープルライト」の詳細や感想についてお伝えします。
日の丸TPUチューブ、パナレーサー「PURPLE LITE/パープルライト」の詳細
早速購入してみましたが、リリースからまだ間もないせいか、場所によっては品薄気味。
実売価格は一本2000円前後で、名の知れた海外ブランドよりも安く、中華製よりは割高といった印象ですね。
現時点ではロードバイク用の700×23~32Cとグラベルロード用の700×32~47Cの2サイズ展開で、バルブは仏式のみ。
グラベルロードにはホイールサイズが650Bの車体も多いので、早期のリリースに期待したいところ。
バルブ長は65mmと85mmの2種類で、カタログスペックによると重量はロード用が36g、グラベル用が45gとのこと。
今回購入したのは、もちろんグラベル用でバルブ長は65mmをチョイス。
日本企業のTPUなのは間違いありませんが、残念ながら製造はメイドインチャイナ……
レビューを見る限り、この点に不満を持っている方も少なからずいらっしゃいました。
また、TPUチューブはタイヤに入れていない状態で膨らませると、バーストしたり対応サイズ以上に伸びてしまたりと、気難しい側面があります。
既存のTPUチューブだと0.5BARが上限になっていることが多いですが、パープルライトは0.35BARまでと若干低めの許容量。
他にも「本製品がパンクした場合、修理はできません。」といった、目を疑うような一文もありますが、これについては後述します。
開封してみると、チューブ本体とマニュアルが帯でお洒落にまとめられていました。
手前に置いたのでわかりづらいですが、今まで携帯していたブチルチューブと比べると体積は1/3ほどになり、省スペース化にも有利に働きます。
試しに計量してみると、パープルライトの実重量は49gとカタログ値の10%増し。
ブチルチューブとの重量差は100g以上で、体積と並んで重さも1/3になりました。
TPU化するだけで100g減ですから、それだけでも交換する価値はありそう。
さて、私の心変わりを誘ったのがこちらのバルブ部分。
TPUチューブを愛用している方なら、すぐにピンと来るかも知れませんね。
一見するとチューブレスバルブに似た作りですが、今までのTPUチューブには見られなかった特徴がチラホラと。
従来のTPUチューブはバルブ本体が全て樹脂製でそれが軽量化のブレイクスルーにもなったのですが、パープルライトはバルブ本体が樹脂と金属の複合素材になっています。
赤矢印を境に素材が異なっていて、金属部分に設けられたスレッドが印象的ですね。
バルブの一部を金属製にすることで変形しやすかった弱点が克服され、現在主流になりつつある携帯電動ポンプの高温にも素で耐えられるようになりました。
また、バルブにスレッドが設けられたことにより、バルブナット/リムナットが標準仕様に。
今までのTPUチューブは米式バルブのように座りが不安定でしたが、ブチルチューブと同様にバルブをリムにしっかりと固定できるようになりました。
バルブナットの下には傷防止のオーリングも卒なく備え、ロード系リムの曲面にフィットしやすい白矢印のパーツも見逃せません。
リムナットが使えるようになったことで、バルブからの音鳴りがしづらくなったこともそうですが、一番嬉しいのはレバー式のフロアポンプや携帯ポンプが使いやすくなったことでしょうか。
空気圧が低い状態だと画像のように手で下支えしたりバルブを摘まんだりしないと、ポンプの口金を上手くクランプ出来なかったのですが、この改善点によりポンプの相性問題が綺麗さっぱり解消されました。
因みに、シュワルベのTPUチューブ「AEROTHAN/エアロザン」は、逆にクランプ式のポンプとの相性が良く、特定のねじ込み式ポンプが未対応な場合も。
試しにパープルライトにねじ込み式のホース付き携帯ポンプを接続してみると、問題なく対応していました。
パープルライトはバルブコアを交換できる仕様にもなっているので、ねじ込み式ポンプを使う場合はバルブコアを共回りさせないように注意したいところ。
ライド中にバルブコアが緩んで元に戻せなくなるケースも珍しくないので、ねじ込み式ポンプ愛用の方はバルブコアツールもセットで携帯するのがオススメです。
TPUのお約束?パープルライトには補修用のパッチが存在しない
「本製品がパンクした場合、修理はできません。」
パッケージ裏の注意書きにあった一文ですが、私も含めて「正気かよ……」と思っている方も多いはず。
じつはコレ、TPUチューブあるあるだったりします。
有名処のTubolitoもREVOLOOPもリペアキットが後発で、チューブ本体のリリースから随分と間が空いたと記憶しています。
とはいえ、パープルライトはパッケージ裏に堂々と宣言しているくらいなので、本気で使い捨てとしてリリースしている可能性も否めません。
遅かれ早かれ誰かが試すでしょうけど、現時点では他ブランドの補修パッチを流用するのが現実的なアプローチでしょうか。
TPUチューブ用の補修パッチはどれも粘着力の強いシールみたいな代物なので、互換性は過度に気にする必要はありあません。
実際、正式なパッチがまだ存在していなかった頃は、浮き輪やゴムボートを修理するためのビニール専用パッチやテープが流用されていたそうで、それでも十分に補修できたとのこと。
パープルライトの質感がTubolitoに似ているので、Tubolito用のリペアキットを流用したいところですが、知らぬ間に仕様が変わっていました。
以前はアルコールワイプでクリーニングしてから貼るだけのシールタイプでしたが、今はブチルチューブと同様に専用の接着剤を使う方式に。
シールタイプは剥がれやすいという意見が多かったそうですが、変更が見れられるということは以前よりもしっかりと補修できるということなのでしょう。
どの製品であれ素材がTPUであることには変わりないので、人柱覚悟で試してみる価値はありそうです。
お手軽なシールタイプを使いたいなら、中華製のパッチかREVOLOOP用が無難でしょう。
REVOLOOP用のリペアキットには左のMTB用と右のロード用に2種類があり、ロード用は剥がれやすいとの評判。
私はTubolitoの旧パッチもREVOLOOPのMTB用パッチも使ったことがありますが、経験上パッチが剥がれたことは一度もありません。
空気を再充填した時に、チューブの膨張にシール状のパッチが上手く追随してくれなさそうな印象があったので、軽く空気を入れた状態でパッチ貼ったり、患部をしっかりと伸ばした状態で補修した覚えがあります。
裏付けのない我流ですが、参考までに。
まとめ
パナレーサーのTPUチューブ「パープルライト」を購入してみましたが、予備チューブにするには惜しいくらの完成度。
バルブまわりの仕様を見る限り、完全にチューブレスの代替として常用を意識した作りになっているので、グラベルロードをTPUチューブ化するのも悪くなさそうです。
リペアキットが存在していないだけに常用した際の耐久性が気掛かりですが、ぶっちゃけパッチ代わりにゴリラテープで補修できそうな気も。
因みに、パープルライトの他にもバルブに特徴があるTPUチューブが続々と登場していて、TPUチューブの第二世代と呼べる様相に。
画像左がコンチネンタルの「Conti TPU」で軽量さと耐久性の両立と共に、バルブシャフトの根元を円錐状にすることで、リムへのフィット感が向上。
画像右がSURLY初のファットバイク用TPUチューブで、こちらもパープルライトと同じくバルブ本体がバルブナット付きの金属製という仕様です。