少し前の記事でグラベルロードのリアタイヤにシーラントが滲む現象についてお伝えしました。
軽微ならチューブレスレディでありがちな現象なので特に対処はしませんが、スローパンクには至らないものの車体がライドの度にシーラント塗れになるという中途半端な症状に頭を抱えます。
まだ寿命を迎えるほどトレッド面が減っていないので気乗りしない決断でしたが、涙を呑んでタイヤを交換することに。
ちょっとだけ予告した通り、旧モデルの無印グラベルキングの後釜に座るのは新モデルの無印グラベルキングで、もちろんチューブレス対応版。
新グラベルキングこと第2世代ではノブ付きのX1シリーズが人気だそうですが、大幅な重量増が気になったので、結局タイヤ交換後のギャップが最も少ないノブ無し無印グラベルキングに落ち着きました。
パナレーサーによると、リニューアルによりパンク耐性・乗り心地・ビードの上がりやすさ、これらが見直されているそうですが、重量面も含めて旧モデルとの違いが気になるところ。
旧モデルの無印グラベルキングから新モデルの無印グラベルキングへのタイヤ交換ということで、正直あまり面白味はありませんが、今回は新グラベルキングの詳細や使用感について話題にしてみます。
ビードまわりが強化!第2世代「新グラベルキング」の詳細
今回購入したのはノブ無し新グラベルキング「F735-GK-D2」でチューブレスレディ対応版。
旧モデルは裸のタイヤにタグが付いただけのシンプルパッケージでしたが、新モデルはエコ風の化粧箱入りでお洒落な感じになりました。
円安やインフレの影響でタイヤも軒並み値上がりしていますが、国産タイヤだけに二本で10000円ちょっとの出費と、財布にはそこそこ優しいです。
サイズは700×35Cでサイドカラーは茶色、平均重量は370gです。
交換前のタイヤが700×38Cなので僅かにタイヤ幅が狭くなりますが、大きな影響はないものと予想。
トレッドパターンは旧モデルから大きな変更は無し。
強化されたビード部分には一目でわかる変化があり、内側には乳白色の薄皮のような加工が確認できます。
実重量は376gと僅かに平均値をオーバー。
パナレーサーのタイヤ重量は過大表示されていることが多いのでちょっぴり期待していたのですが、少し残念な結果でしょうか。
交換前の旧グラベルキング700×38Cが334gでしたから、42gの重量増になります。
外観から判断すると、タイヤが細くなっているにも関わらず重量が増えているのは、ビード部分の肉厚化が影響しているのかも知れません。
タイヤの側面には旧モデルと同様に回転方向の指示がありました。
旧モデルは黒と茶の境目部分に薄っすらと溝のようなラインがあり、そこからシーラントが滲むことが多かったのですが、新モデルは両者の一体感が増している印象。
薄暗い室内での撮影なのであまり参考にできませんが、新旧モデルでサイドカラーの違いはこんな感じ。
商材画像ではもっと明るく黄みがかって見えた新グラベルキングですが、それほど大きなギャップはありませんね。
ちぐはぐになってしまうのでリアタイヤだけの交換は避けたのですが、これなら許容範囲だったかも。
とはいえ画像下の旧モデルの方が茶色に深みがあり、エイジングした皮革製品のような面持ちでしょうか。
兎に角ビードがハマらない…新グラベルキングの取付けに大苦戦
新グラベルキングへの交換に移りますが、シーラント漏れの原因がタイヤのダメージ意外にシーラントの性能不足も濃厚なので、慣れ親しんだスタンズから評判の良いマックオフに鞍替え。
最初はほぼ同性能で少しだけ安価なピーティーズのシーラントを使う予定でしたが、生憎の在庫切れ……みんな考えることは同じみたいです。
ついでに、チューブレスレディはバルブまわりに固着や劣化などのトラブルが起こりやすいので、携行用の予備バルブコアも購入してみました。
余談ですが、マックオフのシーラントに80mlパウチが登場していました。
まだ国内では見掛けませんが、これで予備シーラントの携行が随分と楽になるので、早期の流通に期待したいところ。
一応、バックアップとして評判の良いマクハルも購入してみましたが、後述する理由から使用を見送ることに。
機能は素晴らしいものの、タイヤ&ホイールの脱脂やシーラント除去などの下処理が面倒なのが難点。
まずは旧グラベルキングをホイールから取外しますが、不精したせいで大惨事に。
タイヤ内に予想していた以上のシーラントが残留していて、そこらじゅうがシーラント塗れです。
ブルーシートがあるので後始末には困りませんが、手もベトベトのヌルヌル……
ホイールもご覧の有様で、デリケートなディスクローターまでシーラント塗れにならないかと冷や冷やしました。
ライド中に予備チューブのお世話になる場合も少なからずこうなってしまうので、これが原因でチューブレスレディに嫌気が差して、TPUチューブに乗り換える人が後を絶たないのも納得です。
MTBで何度も経験しているとはいえ、この不快感には慣れそうもありません。
また、作業中に気になったのがシーラントによるビード同士の貼り付きで、ホイールからタイヤを外すのも一苦労。
ライド中のトラブルで予備チューブを使う際は片側のビードしか落とさないので画像のようにはなりませんが、ビード同士が短時間で貼り付ついてしまう現象は初めての経験かも。
シーラントをしっかりと拭き取って乾燥を待てば起こりづらくなりますが、ライド中にそんな余裕はあるはずもなく、予備チューブはブチルではなくシーラントと反応しないTPUチューブを携帯すべきだと再認識しました。
ビード同士でも貼り付いてしまうのですから、ブチルチューブを緊急用のインナーチューブとして使うのはやっぱり気が引けます。
シーラントをふき取った後タイヤ内部を確認してみると、結構なこびり付きが見られます。
チューブレス化してから一年経過していますが、冬季は休眠させていたためその時にできたものでしょうか。
チューブレスレディは長期間乗らないとシーラントがタイヤ内で固化することがあるため、定期的に前後のタイヤを空転させてシーラントを撹拌した方が良いそうですが、乾燥の早い夏場は特に注意したいですね。
ホイール側にもシーラントのこびり付きが見られ、気密が必要なバルブまわりが特に顕著。
仮にマクハルを施工する場合、ホイールのシーラント除去&脱脂はもちろん、バルブまわりも綺麗にしておく必要があるので、マクハルを使うなら新品のチューブレスバルブを準備した方が手っ取り早そう。
ホイール内のシーラントは結構しつこく残るので、マックオフの専用ケミカル「GLUE REMOVER」 があると便利。
パーツクリーナーやシール剥がしでも落とせますが、そこそこ根気のいる作業ですね。バルブ穴も詰まりやすいので、ついでに綿棒でクリーニングしておきます。
スタンズのシーラントはアンモニア入りなのでアルミリムの腐食が心配でしたが、一年程度では特に変化はありませんでした。
リムテープが不要なテープレスリムは便利ですが、テープがない分だけシーラントの影響を受けやすいため、アンモニアフリーのマックオフかピーティーズのシーラントの方が安心できます。
最初に外したリアタイヤと同じ轍を踏まないように、フロントタイヤは手持ちのシリンジでシーラントを抜き取ってから作業。
紙コップには生臭いカフェオレが出現し、70ml以上と予想を大きく超える回収量でした。
チューブレス化した時に60ml注入、その後の一年間で追いシーラント20mlを二回注入しているので、フロントタイヤは一年間で30mlしか目減りしなかったことになります。
旧グラベルキングを外すのに手間取りましたが、ここからが本番。
いきなり結論からお伝えしますが、新グラベルキングは旧モデルよりもビードが上がりやすくなったというのは真実です。
どこにでもある普通のフロアポンプでも一発でビード上げが成功し、バルブコアを外したりビード位置を調整するといった、よくある下準備も一切不要でした。
旧グラベルキングはCO2ボンベでチートしたくらいですから、間違いなくこの点は進化しています。
ビード上げマジで楽勝。
ビード上げ「だけ」は……
ハイ、一長一短なんて言葉がありますが、まさにこれが当てはまります。
確かにビードは格段に上がりやすくなりました、ですが代償としてタイヤがホイールに装着しづらくなったのです。
私の使用しているホイールがマヴィック製のフックレスというのも一因でしょうが、タイヤをホイールにはめる作業で絶望的な気持ちになりました。
タイヤには左右ふたつのビードがありますが、まず第一ビードを素手ではめる時点で当たり前のように苦戦します。
この段階で第二ビードも容易にはまらないことが予想できますが、不慣れな方は無理せずショップにお願いするのが一番の近道です。
ビードをリムのセンター溝に落とし込むといった基本はもちろん、装着前にタイヤを引っ張って延ばすなどの悪あがきもしてみましたが、最終的に成功に導いてくれたのはシュワルベのタイヤレバー方式でした。
このシュワルベのタイヤレバーはビードをクリップで固定できる特徴があり、タイヤ装着を格段に容易にしてくれます。
手持ちがなかったので左右の固定を物干し竿用の洗濯バサミで代用しましたが、【1】ビードを左右から少しづつ追い込む【2】洗濯バサミで元に戻らないように固定【3】タイヤレバー二本をバルブ付近に10cm間隔で挿入【4】タイヤレバーを二本同時にリフトアップ。
この方法でようやくタイヤを装着することができました。
因みに、最後にタイヤレバーを二本使ったのは力を分散させるためで、側面の強度が低いフックレスリムを変形させないようにする配慮です。
他にも、強度があり手にフィットするゴム手袋も必須です。
普通のタイヤならタイヤレバー無しでもはめられるくらい便利なので、はまりづらいタイヤを使っている自覚のある方は、画像の背抜きゴム手袋や滑り止め付き軍手くらいは備えておきましょう。
私も今回苦戦した教訓から、必ず携行品に加えようと心に決めました。
タイヤは一度装着するとビードが緩んでくれるのでここまで苦戦しないとは思いますが、ライド中にチューブを入れる状況は起こらないでくれ……そう祈りたくなる心境です。
タイヤのビードを上げた後は、そのまま一晩放置して空気漏れの状態を確認してからシーラントを注入。
ホイールとビードの密着加減は相当なもので、シーラントを注入しなくても1.0BARが12時間以上維持されていました。
マックオフのシーラントをパウチ容量のちょうど半分となる70mlずつ注入しますが、相変わらず付属の目盛は残量がわかりづらい仕様。
リム内寸22mmのホイールに2.5BARでセットアップした際のタイヤ幅は実寸で36.1mm。
タイヤ幅はカタログペックよりも1mmほど大きく、結果として旧モデルの38Cと比べて遜色のないサイズ感です。
何とかタイヤ交換を完了できたものの、力を加えすぎたせいで知らぬ間にディスクローターに歪みが発生していました。
チューナーで曲げて再調整しましたが、いかに苦戦したかが窺えますね。
あと、今回はマクハルを試さないで正解でした。
マクハルは施工前にタイヤ内部を脱脂する必要があるのですが、その状態を維持したままタイヤをはめる自信はありませんから。
マクハルを使う場合は一度タイヤをはめて十分にビードを馴染ませ、再度タイヤを外してから脱脂する方法が良さそうです。
気になる新グラベルキングの乗り心地は?
シーラント注入後は2.0BARで安定。
新品ということもありますが、タイヤサイドやトレッド面からのシーラント滲みはなく、ビード付近やバルブ付近からも漏れは一切ありませんでした。
タイヤ交換後のサイドシルエットはこんな感じ。
屋外の自然光下だと少しだけタイヤサイドの黄みが強く映りますが、スキンよりもタン寄りな色調ですね。
40kmほど試走してみますが、ギャップを最低限にするタイヤチョイスを意識したせいか、びっくりするほど変化を感じません。
パナレーサー曰く、旧モデルよりもしなやかな乗り心地になっているそうですが、40C以下のノブ無しグラベルキングで、それをハッキリと実感するのは難しそうです。
辛うじて、石畳やレンガ敷きの道を走ると以前よりも力強い振動吸収性と粘りのある走行感を堪能できますが、単にトレッド面が摩耗しておらず空気圧もちょい高めなのが原因かな。
カスタマイズやパーツ交換をした後はプラシーボ効果で過大評価しがちなので、今回は高揚感を差し引いて評価してみました。
私としては、シーラント漏れしなくなっただけでも万々歳です。
まとめ
旧グラベルキングから新グラベルキングへタイヤの交換してみましたが、ビードまわりの仕様変更により思わぬ苦戦を強いられました。
ビード上げが簡単になった代償としてタイヤの装着難易度が上がってしまった……
乗り心地云々よりも、新グラベルキングはそんな感想に落ち着きそうです。
とはいえ、今回のタイヤ交換で幾つかの知見が得られたのは大きな収穫でした。
ゴム手袋とシュワルベ製タイヤレバーの追加や予備チューブのTPU化など、少なからず携行品のブラッシュアップに役立ちそうです。
個人的にチューブレスレディで運用する際は、タイヤの腹を開いてトラブル対応するか、タイヤを腹を全く開かずにトラブル対応するか。
どっち付かずではなく、このどちらかに特化した備えを徹底するのが良い気がしています。