本格的なウインターシーズンを前に、ファットバイク本体の軽量化は一段落したものの、装備品や携帯品の軽量化が手付かずのままです。
ファットバイクはロードバイクやクロスバイクよりも携帯品が嵩張り、大型の携帯ポンプは勿論、浮輪と見紛うほど巨大なチューブは、丁寧に折りたたんでも文庫本で2冊分以上の大きさになります。
更に、それらを収納するためのフレームバッグやサドルバッグにも十分なサイズが要求され、携帯ポンプや予備チューブをコンパクト化できれば、同時にこれらの軽量化にも繋がります。
ファットバイクに乗り始めた頃は、これだけタイヤが太ければ滅多にパンクなんでしないでしょ?なんて甘い考えでいましたが、リムストリップ(リムテープ)の劣化によるスローパンクを経験して以来、遠出の際は必ず予備チューブを携帯しています。
正直、予備チューブを携帯していないと精神的な不安も大きいのですが、今回はこのファットバイク用特大チューブを、あえて『携帯しない』方法について考えてみます。
軽量なファットバイク用チューブ2種とサイズ感
前置きとして、ファットバイク用のチューブについて触れておきますが、私が予備チューブとして携帯しているのは”SCHWALBE 26×3.5/4.8 13J-SV”の仏式バルブで、重量はカタログスペックで390gとなっています。
私の知る限り、310gの“SURLY Ultralight Tube”の次くらいに軽量なチューブだったと思いますが、サーリー製よりも1000円ほど安く、入手性も良いのでフロント・リア共にこのチューブを使用しています。
実重量には結構バラつきがあり、私の予備チューブは364gとカタログスペックよりも軽量でした。
折りたたんだ時のサイズは横16cm×縦10cm×厚さ4cmくらいで、ラップやストレッチフィルムで圧縮すると厚さを3cmくらいまで抑えられます。
また、バルブの根元が傷付きやすくなるので注意が必要ですが、円柱状に丸めると直径9cm、高さ10cm程度の握りこぶし大に収まります。
これくらいなら大き目のツールケースやツール缶に納まるのでは?と考えてしまいますが、ギリギリ収納できず、なんとももどかしいサイズ感です。
私が予備チューブを携帯したくない理由として、軽量化以外に予備チューブを折りたたむ際の面倒臭さがあります。
ファットバイク用のチューブは高価ですから、パンクしたチューブは修理して再利用します。
その後、代用した予備チューブを再び携帯できるように、もう一度コンパクトに圧縮するのですが、この作業が兎に角大変で、空気を注入する前と同じサイズに戻る事は殆どありません。
因みに、最軽量のサーリー製とシュワルベ製を比べると、無造作に丸めた時のサイズは上図のような対比となり、重さよりも収納サイズ面での恩恵の方が大きいかも知れません。
どうしても、チューブを携帯する必要があり軽量さを求めるなら、このどちらかを選ぶ事になり、確証はありませんが、サーリー製はチューブのたたみ方次第でツールケースやツール缶に収納できる可能性があります。
SURLY Ultralight Tube 26×3.0–4.7
予備チューブの代用『パンク修理剤』の可能性を探る
冒頭でも触れた様に、ファットバイクの携帯品の軽量化するために、あえて予備チューブを携帯しない方法を模索しています。
単純にパンク修理キットを携帯すれば万事解決じゃない?と思うかも知れませんが、ファットバイク用のチューブはロード用とは比較にならないくらい表面積が広く、石鹸やバケツの使えない出先でパンク穴を見定めるには、相当な慣れが必要になります。
しかも、空気漏れをチェックするだけでも悪夢のようなポンピング回数を強いられ、仮にパンク修理が無事完了したとしても、再びポンピング地獄が待ち構えているのです。
もっと簡単にパンク修理が出来る方法があれば…と考えを巡らせていると、ミニベロの携帯品として持ち歩いているパンク修理剤に思い至ります。
ご存知の方も多いと思いますが、日本で唯一のパンク修理材メーカー”Maruni/マルニ”が製造している瞬間パンク修理剤に“クイックショットK-600”と言う製品があります。
クイックショットは仏式バルブ専用のパンク修理剤で、メーカーによると修理剤とエアーを同時に充填する事で約20秒でパンク修理が完了し、充填後はすぐに走行も可能な優れモノです。
1mm以下の穴に対応し、クイックショット一本につき700Cのタイヤ一本分を修理可能で、使用するとチューブ内には空気と共に泡状のシーラントが注入されます。
注入後、直ぐに走行する事でチューブ内に満遍なく泡状のシーラントが行き渡る仕組みですが、実はこのクイックショット、空気の追い足しが可能なんです。
マルニのHPで閲覧できる説明書によると、空気の追い足しには上画像右のマルニ製“調整式アダプター“が必要だと記載されています。
う~ん、結構面倒くさい仕組みだなぁと思っていると、この調整用アダプターに何故か既視感があります。
よくよく調べてみると、この製品はごく普通のCO2ボンベ用のインフレ―ターで同一形状の製品が様々なメーカーで取り扱われています。私もTNI製のインフレーターを所持しており、マルニ製”調整式アダプター”と全く同じ構造でした。
クイックショット本体は実重量66gと軽量で、サイズは直径34mm、長さ105mmと大変コンパクトです。
ミニベロの予備チューブよりも軽量で仏式バルブとの接続する為のアダプターが付属し、内容量は50mlです。
本来は、アダプターを仏式バルブに取り付けてから、画像の様にクイックショットを押し込みますが、ノズルの先端がしっかりとアダプターにフィットし、シーラントが吹きこぼれづらくなっています。
空気の追い足しを想定して、試しに手持ちのTNI製インフレーターを取り付けてみましたが、ネジ切りタイプになったアタプターの先端は米式バルブとまったく同じサイズです。
対応さえしていればインフレーターは勿論、フロアポンプや携帯ポンプも問題なく使えるので、仮にファットバイクにクイックショットを使用した場合でも、手持ちのCO2ボンベや携帯ポンプで不足している空気圧を補う事が出来ます。
ファットバイクにパンク修理剤は何本必要なのか?
さて、いよいよ本題です。
仕組み的にはチューブレス化に使用されるシーラントを後付けで注入するクイックショットですが、仏式バルブの700Cタイヤ用と明記されているため、ファットバイクに使用するには明らかに力不足です。
一本じゃダメなら複数本使えばいいじゃない!という訳で、ファットバイクに使用する場合は何本必要になるのか概算してみます。
ロードバイクやクロスバイクで一般的な700Cホイールですが、今回は太目の35Cタイヤで計算してみます。
チューブはトーラス形状(ドーナツ状)になっているので少し計算が面倒ですが、700×35Cの場合で体積は約516立方cm、表面積は約1179平方cmになります。
対してファットバイクは26インチホイールに4インチタイヤを使用した場合で体積は約4195立方cm、表面積は約3356平方cmになります。
体積で約8倍、表面積で約2.8倍という結果になり、体積で考えるとクイックショットが八本必要になり、表面積で考えると三本必要になる計算ですが、空気の追い足しが可能である事を考えると、表面積の2.8倍(クイックショット三本分)が現実的な値になりそうです。
さて、クイックショット三本分の総重量は198gですから、チューブ一本分よりは確かに軽量です。ですが、収納スペースはチューブ一本分と大差が無く、携帯する上での利点に乏しい印象でしょうか。
実用レベルにするには、クイックショット二本くらいが理想で、実のところ本場のチューブレス化に使用されるシーラントはファットタイヤ一本分につき60~100mlくらいの注入量です。
注入後は泡と液体と言う違いはありますが、クイックショット二本でシーラントの総容量は100mlですから、計算上では、穴を塞ぐ為の条件を十分に満たしている事になります。
因みに、クイックショット以外にも瞬間パンク修理剤は存在していて、容量と携帯性のバランスを考えるとミニバイク用の修理剤がファットバイクに向いています。
ただし、バルブが米式または英式にしか対応していない場合が殆どなので、注入には別途で密閉性の高い仏式変換アダプターが必要です。
まとめ
私自身、瞬間パンク修理剤をファットバイクに使用したことがないので、結果は想像の域を出ませんが、仮にクイックショットで穴を防ぎきれなかったとしても、泡状になったシーラントが空気圧でパンク穴らから噴き出すので破損個所が特定しやすくなります。
場所がわかれば、後は携帯に便利なイージーパッチ等で塞ぐだけなので、よほど深刻なトラブルでもない限りは、予備チューブなしでも十分対応できると思います。
幸い、使っていないファットバイク用チューブがあるので、故意にパンクさせて実際にテストしてみるのも面白そうですね。
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