長所・短所は?進化する自転車用『ノーパンクタイヤ』あれこれ

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さあ、今日も出発だ!

意気揚々と自転車に跨るも、タイヤはヘコヘコ……

通勤や通学に自転車を使っている人とって、まさに危機的な状況です。

ここしばらく訳あってジテツウしている私ですが、こんな憂き目にあったことが数回も。

幸い複数台持ちだったため遅刻はせずに済んだものの、ファットバイクでの出勤は良くも悪くも目立ち過ぎました。

こういった経験から、出発の30分前には必ずタイヤのチェックをする習慣がつきましたが、通勤や通学途中でパンクしようものなら遅刻はほぼ確定的。

「遅刻しちゃいました~( ゚∀゚) アハハハハ」で済ませられる環境なら良いのですが、世の中には絶対に遅刻できないシュチュエーションも少なくありません。

そこで注目したいのが、自転車用の「ノーパンクタイヤ」です。

随分前から存在してるものの、正直なところ評判は芳しくありません。

通勤・通学中のパンクが不安なら、シュワルベマラソンを使うかチューブレス化すればお悩みは解決。

こういった対策の方がスマートなのは重々承知していますが、今回は密かに進化を続けているノーパンクタイヤの現状にスポットを当ててみました。

確かにパンクはしないけど…「ノーパンクタイヤ」既知のデメリット

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まずは予備知識として、評判の芳しくないノーパンクタイヤの特徴を軽くおさらい。

ぶっちゃけると、ノーパンクタイヤの大半は「パンクしない」という一点以外にメリットがほぼありません。

よく知られているのは、ノーパンクタイヤは内部に空気ではなく専用の代替素材が充填されているためとにかくタイヤが激重

当然のことながら漕ぎ出しも重くなり、電動アシスト自転車でその欠点を補うといった活用法も。

代替素材の影響から、タイヤの重量増・乗り心地の悪化・転がり抵抗の増加、これらの悪条件が前面に押し出される上に、通常のタイヤよりもコスト高という点も足を引っ張ります。

言うまでもありませんが、スポーツ自転車でのサイクリング用途には全くの不向き。

ママチャリ・キッズサイクル・電動アシスト・車椅子・リヤカーといった趣味性よりも実用性を重視した用途に使われているのが実情で、スポ車界隈に進出してくるのにはデメリットの克服が不可欠です。

識者によると、振動吸収性が低下することによりホイールへの負荷が増えるそうで、ただでさえ激重なママチャリの場合だとスポークが折れたりリムが割れたりする事例が多くなるとのこと。

ノーパンクタイヤは元々割高ですし、そういった修理代も嵩むわけですから、コスパの面でもまだまだ改善の余地が残されいると言わざるを得ません。

Tannusがイチオシ!注目の「ノーパンクタイヤ」あれこれ

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ここからは現在市販されているノーパンクタイヤについて触れてみます。

まずはアサヒサイクルの「t-チューブ」で、正確にはノーパンクチューブと言ったほうが適切でしょうか。

タイヤ内には軽量で潰れにくいt-チューブが採用され、内部が中空につき従来のノーパンクタイヤよりも軽量なのが強み。

t-チューブの耐久性は10000kmで交換も可能とのことですが、交換には上画像の専用工具が必要な上に旧タイヤの側面を刃物でぐるりと一周して切り裂く必要があるなど、個人向け製品ではない印象。

一応、専用工具とt-チューブは個人でも購入可能なものの、販売はママチャリの完成車が主体となり、サイズは27インチ用のみとなります。

市販のタイヤとt-チューブの組合せは可能か?

t-チューブの実重量はどれくらいか?

こういった情報に不明瞭な部分も多く、個人が使うようなカスタマイズ向きな製品ではないことは間違いありません。

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お次はshinko/シンコーの製品。

こちらもノーパンクタイヤではなくノーパンクチューブで、パンクレスチューブと呼ばれています。

shinko/シンコーという会社をどこかで聞いた覚えがあったのですが、以前に「棒型チューブ」の記事で紹介したことがありましたね。

キレてるあいつ…ママチャリ・電動で役立つ『棒型チューブ』の話
以前から気になっていた「棒型チューブ」についてあれこれ深掘り。バルブが英式のみという弱点はあるものの、ママチャリやリアハブ式電動ユニットのアシスト自転車に対しては、リアホイールを外さずにチューブ交換が可能という強みを発揮します。

この製品もタイヤとチューブを組み合わせて使うタイプとなり、こちらは市販のタイヤとの組み合わせが可能

タイヤ部分となるシンコーのSR-027という製品にTOBU/東部が手掛ける「T-core/ティーコア」とういパンクレスチューブを組み合わせた製品で、TOBEブランドでならパンクレスチューブ単体での購入もできます。

興味深いことに700x32Cサイズに対応する製品がリリースされていて、グラベルロードやクロスバイクへの導入も視野に。

ノーパンクの要となるT-core/ティーコアには新開発のゴム発泡体が採用され、軽量さとクッション性の両立を実現。

導入も従来のチューブを置き換えるだけなので、タイヤレバーがあれば十分とのこと。

ここまでの情報で、なかなか良いんじゃない?

そう思った方も多いでしょう。

ですが、T-core/ティーコアの重量は24インチ用で一本630gという事実。

正直、新開発なのに全然軽くありませんよね。

従来のノーパンクチューブはどれだけ重かったんだ……という話です。

これが700x32C用となると一本で800g近くになりますし、それにタイヤの重さが加わる訳ですから、ノーパンクと引き換えにMTBやファットバイク並みの足まわりを覚悟しなければなりません。

言い忘れていましたが、T-core/ティーコアは2本セットで¥15000程と高級タイヤが買えてしまうお値段。

辛うじて、shinko/シンコーのタイヤ&チューブセット版が一本¥5000弱と手が届く価格なものの、残念ながら24インチ・26インチ・27インチのママチャリ用しかラインナップされていません。

どんな使用感なのか700C版を興味本位で試してみたい気持ちもありますが、実際に使うなら重量を無視できるイーバイクで使うに限りますね。

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個人的に最も可能性を感じているのが、こちらの「Tannus/タンナス」です。

イタリア発のノーパンクタイヤで「Aither/エイサー」と名付けられたマイクロセル構造ポリマー樹脂を素材とした、チューブ・タイヤ一体型の製品。

この素材は軽量な上に紫外線や温度変化といった化学作用に対して強い安定性を誇り、タイヤ寿命は約10000kmで走行距離6000kmでもトレッドが1mmしか摩耗しないとのこと。

さてこのタイヤ、どうやってリムに取付けるんだ?

そう思った方はビード付近に一定間隔で並んでいる謎の穴を覚えていて下さい。

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上画像はAirless Slickというロードバイク向けのタイヤで、サイズは700x23C

リム内寸13~15mmに対応し、空気圧はクリンチャー換算で7.5bar相当の使用感とのこと。

価格はユーロ換算で一本¥10000弱となりますが、以前は¥5000程度で購入できたそうです。

Tannusが他の製品と一線を画すのはその軽量さで、重量は370gほど。

グラベル用の700x32Cでも650gで、今までのノーパンクタイヤとは雲泥の差ですね。

前述したリムへの取付け方法ですが、タイヤサイドに一定間隔に開いた穴にロックピンを差して、それをリムのビードフックに固定する仕組み。

また、構造でお察しの通りTannusのAirlessシリーズはロックピンで固定するためフックレスリムには未対応です。

ロックピンはリム幅に合わせて数種類付属し、タイヤ一本当たり40本ほど必要。

タイヤ自体はそこそこ軽量なのに、ロックピンを使った分だけ重量増になってしまうのが残念ですが、この部分は今後のバージョンアップに期待したいところ。

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実際にTannusを試した方によると、付属のピンと専用工具だけでは取付けの難易度が高いそうで、画像右にある別売りの専用工具「P-Tool – Airless Tire Assembling Lever」があった方が良いとのアドバイス。

画像左の付属工具でも出来ないことはありませんが、とにかくパワーが必要とのことでした。

因みに、リムテープは不要だそうで、逆に取付けの妨げになってしまうそうです。

さて気になるTannusの使用感ですが、ネガティブに評価するならクリンチャーの代替としてはやはり実力不足。

ポジティブに評価するなら、ノーパンクタイヤの中では1~2段階上の実用レベルにある。

こういった意見になるでしょうか。

海外レビューでも意見はまちまちですが、時速24km以下の低速で平坦なアスファルト上での走行なら、同サイズのクリンチャーと比べても違和感は少なく、乾いた路面でも濡れた路面でもグリップに危うさは無かったそうです。

とはいえ、振動吸収性に劣るのは確かで凹凸の多い道ではそれが如実にあらわれ、時速24kmを超えるとタイヤそのものの転がり抵抗の大きさも実感するように。

クリンチャーとの比較では走行速度が1kmほど低下したそうで、クリンチャーに戻すと飛んでいるような気分だったといった皮肉めいた感想も見られました。

一応、Tannusには100kmほどの慣らし走行が必要らしく、その前後で走行感が結構異なるそうです。

使い始めはコーナリングでプラスチックのような硬さが目立ちますが、慣らしと共にその硬さを感じなくなるとのこと。

簡単にまとめると、重量面はクリンチャーに迫り欠点のひとつが克服されているものの、やはり高速時の転がり抵抗は大きく、非平坦路では振動吸収性の低さを感じやすいというのが率直な評価になるでしょうか。

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余談ですが、国内では武田産業株式会社のCHACLE/チャクルというブランドがTannusのエアレスタイヤを採用していて、完成車での購入も可能。

日本国内にもTannusの公式WEBショップがあるためタイヤ単体での入手にも期待が高まりますが、残念ながらエアレスタイヤだけ何故か取扱いがありません。

Tannusのノーパンクタイヤはミニベロ用の小径タイヤからロードバイクやクロスバイク用の700Cタイヤまで選択肢が潤沢なのも魅力ですから、早々にラインナップに加えて欲しいところでしょうか。

ノーパンクタイヤの代替に「タイヤインサート」という選択肢

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さて、ここまで幾つかのノーパンクタイヤを紹介してみましたが、ノーパンクと引き換えに走りの軽快さを犠牲にするのはどうしても耐えられない……

そんな方のために、ちょうど良い代替案をオマケでご案内。

かなり有名な製品なので今更感がありますが、ロードバイクにはVittoria/ビットリアの「AIR-LINER/エアライナー」がオススメ。

この製品はチューブレス化したタイヤに使用するタイヤインサートと呼ばれるものですが、通常時は空気圧によりタイヤ内で圧縮され、パンク時には隙間を埋めるように復元される優れモノ。

一本あたり39gと軽量につき導入への抵抗感が低く、パンクした際は低速で50kmまでの走行距離をサポートしてくれます。

チューブレスにしか使えませんし、タイヤ内へのインストールにコツも必要ですが、チューブレス化したタイヤは出先での修理に厄介ごとが付き纏うため、もしもの時は頼もしい味方になってくれるでしょう。

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続いては、またもやTannus/タンナスです。

ARMOUR/アーマーと呼ばれるチューブと併用するタイプの珍しいタイヤインサートもリリースしていて、タイヤのパンク耐性を飛躍的に向上させてくれる興味深い製品。

ミニベロ用・ロード用・MTB用とラインナップが充実していて、Tannusエアレスタイヤでは弱かったMTB用タイヤのラインナップを埋める役割も担っている印象。

こちらにも同社のAither/エイサー由来の素材が使われ、タイヤインサート兼パンクガードという特徴を備えるだけでなく、パンクしても時速10km程度の低速なら走行可能という万能っぷり。

グラベルロード向きな700×35-40C用で一本当たり260gと、導入には重量増を覚悟しなければなりませんが、チューブとのハイブリッドなだけにパンク耐性の強化と乗り心地の良さの両立に期待が持てます。

価格は¥5000弱からと同社のエアレスタイヤよりも安価な上にインストールも難しくなく、導入のハードルは割と低め。

因みに、導入後はその性質上ワンサイズ小さなチューブを使用する必要があるとのこと。

まとめ

世間的な評価がイマイチなノーパンクタイヤに注目してみましたが、まだまだ不満は解消されていないものの着実に進化はしているといった印象ですね。

特にTannus/タンナスの健闘が光り、現時点でスポーツサイクルにノーパンクタイヤを導入するのなら、これ一択で間違いないでしょう。

あと数年もすればもう一皮剥けてくれる可能性も感じるので、国内企業の製品にも引き続き頑張って欲しいところ。

ノーパンクタイヤの良し悪しは別にして、絶対に遅刻が出来ない事情をお持ちの方は、試しにTannusを導入してみるのも手でしょうか。

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