チューブレス運用が当たり前になった昨今、タイヤのセットアップに悪戦苦闘する姿はもはや風物詩です。
一昔前なら、ビード上げという博打のような儀式が自転車乗りを地獄の底に叩き落としていましたが、最近は少しばかり事情が異なってきている印象。
皮肉なことに、タイヤメーカーがセットアップの容易さを追求した結果、フロアポンプでも簡単にビードは上がるようになったものの、今度はタイヤとリムのフィッティングという初期段階で苦労させられる羽目に。
私自身、これを肌で感じたのはパナレーサーのグラベルキングでしょうか。
リニューアル後の第二世代はビードが格段に上がりやすくなった反面、第二ビードどころか初っ端の第一ビードのすら素手では装着できなかった覚えがあります。
フックレスか否かといったリムとの相性もありますし、私の技量も絡んでいるので万人がそうであるとは言い切れませんが、セットアップの苦戦ポイントが以前とは異なってきているのを実感します。
相変わらず長い前置きでしたが、ここからが本題。
最近のチューブレスタイヤはリムへの着脱で苦戦しがち……
遅ればせながら、この問題を即解決してくれる優れモノの存在を知ります。

それがコチラの「Rotary Tire Tool/ロータリータイヤツール」
MTB用のタイヤインサートで知られるCushCore/クッシュコアがリリースしている、新手のタイヤ着脱工具です。
海外では2026年の春ごろに販売が開始され、日本国内でもようやく取扱いが開始される模様。

スルーアクスル仕様の24~29インチのホイールに対応し、ロータリーの名が示す通りスルーアクスル軸を中心にしてホイール円周をなぞるように回転させて使用します。
テコの原理を利用することで力を加えやすく、セットアップでいたずらに握力を消耗することがありません。
一見すると、タイヤのセットアップにしか使えない印象を受けますが、チューブレスタイヤの取外し用としても機能し、工具の表側と裏側で役割が分担されています。

文章だとイマイチ伝わりませんが、タイヤの装着時には黄緑色のローラーと爪が付いた側を宛がって工具を一回転。
タイヤの脱着時には、ヒンジの付いた中心軸から工具を180度裏返してから一回転させるだけ。

動画サイトでも使用方法を確認でき、これが実に見事。
クッシュコア公式では「タイヤの着脱が分で完了!」的な謳い文句で紹介されていますが、実際は「秒」で完了しているレベルです。
チューブレスタイヤをこんなに淀みなく着脱できるものなのか……
爪やローラーの位置合わせに慣れは必要ですが、そう感嘆してしまうほど作業がスムーズでした。
個人的に一番驚いたのが上画像左の作業風景。
経験上、タイヤの装着はこの段階から難易度が一気に上がるのですが、ロータリータイヤツールは苦戦している気配がゼロ。
過度な力を加えている印象も皆無で、本当に滑らかにチューブレスタイヤが装着できていました。
年々握力の低下を実感しているオッサンなだけに「これは欲しい!」と本気で思ってしまったのですが、ここで残念なお知らせです。
やや大型の工具な上に、ショップで活躍する「プロ仕様」という触れ込み。
もうおわかりですね……
なんと、お値段は$299ポッキリ!
まだ国内での正規価格は不明ですが、50000円前後が濃厚かも知れません。
ぶっちゃけ、気長に待っていれば中華製のパチモノ類似品がお手頃価格で登場しそうな気もしますが、間違いなくゲームチェンジャーになり得る工具です。

因みに、記事中でクッシュコアはタイヤインサートで有名だとお伝えしましたが、タイヤインサートを使用するとチューブレスタイヤの着脱が一気に高難易度化するのはよく知られた話。
そのため、ロータリータイヤツールの登場以前からクッシュコアには拘りのタイヤ用工具が多く、上画像の「Bead Dropper」と「Bead Bro」がその代表格。
個人的にゴツめのタイヤレバー「Bead Dropper」よりもツマミ付きの「Bead Bro」の方が気になっていて、こちらはタイヤビードをリムの中心部分に保持してくれる、今までありそうで無かった代物。
タイヤ着脱時にリム中央の窪みにビードを落とし込むとタイヤの外周長に余裕が生まれ、最後の硬い部分がリムを越えやすくなるのですが、これを意識すると作業中に手が足りなくなることもしばしば。
Bead Broを使うとビード位置を保持したまま両手がフリーに使えるようになるため、タイヤの着脱が通常よりもずっと楽になります。
私の場合、セットアップで苦戦した際には大型の洗濯バサミにこの役割を担わせていましたが、Bead Broの方がしっかりと固定できますし、使い勝手も良さそうですね。
出番はそれほど多くありませんが、チューブレスタイヤのセットアップにいつも悪戦苦闘している私としては、工具箱の片隅に備えておきたくなるツールです。

