レバーひとつで伸縮自在、一度使うと手放せなくなる如意棒のようなヤツ…
そう、今やオフ車には欠かせない存在となった『ドロッパーシートポスト』です。
私はこの超便利アイテムをファットバイクとフルサス29erの両方に装備させていますが、前オーナーから譲り受けたフルサス29erのドロッパーシートポストの挙動がどうにも怪しくなってきました。
伸縮部分のガタや空気の混入などは見られないものの、ポストが伸び切った最長時からの伸縮動作に引っ掛かりが生じることが多くなり、不自由を感じることもしばしばです。
ネットの情報を頼りにオーバーホールでもしてみれば?と私の好奇心が囁きかけますが、以前からサイズが若干長い点も気になっていたため、本格的なオンシーズンを前に思い切って買い替え&交換作業をすることに決めました。
一昔前と比べると手の届きやすい価格になり、選択肢も増えたドロッパーシートポストですが、それ故に『どれを選んだら良いの?』といった、ありがちな悩みが尽きません。
今回は、私の購入候補に上ったオススメのドロッパーシートポストを紹介すると共に、サイズの選び方や簡単な取付け方法についても解説してみたいと思います。
実車で計測『ドロッパーシートポスト』のサイズ選択方法
まずは知っているようで意外と知らない、ドロッパーシートポストのサイズの選び方を簡単に説明してみます。尚、呼び名が少し長いので以降は単に『ドロッパーポスト』と記述させて下さい。
下準備として、自分が最も快適にライドできる高さでシートポストを固定します。MTBなら平坦な舗装路をスピーディーに走れるくらいのサドル高がオススメでしょうか。
因みに、上画像では最初からドロッパーポストが装備されていますが、ノーマルポストの方がやりやすいです。
最初に、シートクランプ上面からサドルレールまでの長さ【A】を測ります。
続いて、シートチューブ内の最大クリアランス長【B】を測ります。
端的にいうと、ドロッパーポストは【A】と【B】を足した長さよりも総寸/トータルレングスが短い製品を選ぶのが基本です。
測定方法を少し端折りましたが、【B】はシートポストをフレームの限界まで挿し込み、テープなどで目印をつけて測りましょう。もちろん基準となる点は【A】と同じようにシートクランプ上面です。
【B】はフレーム形状や車種によって結果がまちまちで、シートチューブが途中で『くの字』に曲がっていたり、ボトルケージ用のボルトが邪魔しているようなフレームは短めの傾向です。
逆にストンと底までシートポストが落ちてしまうフレームは【A】+【B】の目安が使えないことがあり、その場合は【A】の長さよりも短いスタックハイトやトラベル長を持つドロッパーポストを選びましょう。
スタックハイトは上画像の白矢印にある『カラー』と呼ばれる出っ張りの下面からサドルレールまでの長さのことで、トラベル長はドロッパーポストが伸縮できる長さのことです。
トラベル長は体型や用途に合わせて、大抵120mm/150mm/180mm/210mm前後の長さで複数準備されていますが、上画像の斜線の範囲にテールライトやフェンダーなどを取付ける予定がある方は、自身が必要とする可動範囲を加味した上で少し短めの製品を選ぶのも手です。
また、ポスト径はΦ27.2mm/Φ30.9mm/Φ31.6mmの三種類が一般的ですが、ロード・グラベル・クロスカントリー用のΦ27.2mmをラインナップしているブランドはごく少数です。
上画像はONEUPのHPに掲載されていた物ですが、こちらの方がスタックハイトやトラベル(ドロップ)長の意味が把握しやすいですね。
取り合えずドロッパーポストのサイズを選ぶ際は、測定した【A】+【B】の長さよりも短い製品または【A】よりもスタックハイトの短い製品を選びましょう。
どれがオススメ?人気&高評価な『ドロッパーシートポスト』
今回のドロッパーポスト買い替えで私自身もどれを選ぶかで悩みましたが、購入の候補に上ったオススメの製品を幾つか紹介してみます。
上画像の左から順番に、トップバッターとなるのはFOX製の『TRANSFER』です。
一昔前なら、このFOX製と並んでTHOMSON製やROCKSHOX製の『Reverb』あたりが鉄板人気でしたが、現在は高価であることに加えてヤグラ部分の使いづらさなどが災いして、若干評価を下げています。
とはいえ、定期的に細かなリニューアルが図られていますし、何よりにゴールドに輝くカシマコートの滑かな動作には、他の製品では得られない満足感がありますね。フロントフォークがカシマコートなら色味を揃える意味でも購入したくなるドロッパーポストです。
続いて左から二番目、BIKE YOKE/バイクヨーク製の『REVIVE』です。
予算に余裕があるなら間違いなくコレ!と思えるくらい優れたドロッパーポストで、手で簡単に押し下げられる動作の軽さ・滑らかさと共にメンテナンス性の高さがピカイチです。
このREVIVEには油圧部分に混入した空気をワンタッチで排出できる機能が備わっていて、空気の混入が原因でサドルに座った時にカクっと少しだけシート高が下がってしまう現象とは無縁でいられます。
以前から気になっていた製品なので、私もこちらを購入する方向に心が動いていましたが、慢性的な在庫不足が祟ってしまい、今回はお流れになってしまいました。
お次は左から三番目、私が実際に購入したONEUP COMPONENTS製の『OneUp V2』ドロッパーポストです。
この製品はとにかく海外でのレビュー評価が高く、『BEST DROPPER POST』で検索すると、どのレビューサイトでも必ず名前の上がる逸品です。
1mm単位でコンパクト化が徹底され、競合製品と比べてもトータルレングスやスタックハイトが抜群に短く仕上がっています。また、付属しているトラベルアジャストシムを使うことで、最大トラベル長から-1cmまたは-2cmの微調整が可能な点も見逃せません。
これだけ高性能にもかかわらず、価格が前述したFOX製やBIKE YOKE製の約半分というのが凄いところで、他のドロッパーポストを霞ませるのに十分な実力を備えています…そりゃみんな買っちゃうでしょコレ。
因みに、予想した通り人気過ぎて万年在庫不足が続いています。ONEUP COMPONENTSは自転車メーカーと同じように一年の内で一度か二度くらいしか生産&リリースしていないので、購入できるタイミングを逃すと半年以上は待たされる羽目になります。
最後は左から四番目、自転車の海外通販で知られるChain Reaction CyclesやWiggleで取扱いのある専売ブランド、Brand-Xの『Ascend II』です。
この製品は有名なので今更説明は不要かも知れませんね、他社製と比べて飛びぬけた特徴を持たず、良い意味で平凡な製品ですが、兎に角コストパフォーマンスに優れます。
私もファットバイクにAscend IIの外装式を使用していますが、今まで不具合に見舞われたことは一度もなく、試しに使ってみたいという方に打って付けなドロッパーポストでしょうか。
こちらも海外レビューサイトでは常連のドロッパーポストですが、ONEUP製の登場で以前よりも価格面での優位性が薄れてしまった印象でしょうか、外装式は相変わらずの高コスパですが内装式の旨味は正直イマイチです。
ついでなので、無線式と外装式のドロッパーポストにも軽く触れておきます。
フレームが内装でも外装でも、ルーティングを一切気にしなくても良いのが無線式の利点ですね。
無線式はROCKSHOX製の『Reverb AXS』あたりが有名ですが、高額すぎて手が出せないとういうのが本音でしょうか、なにせエントリークラスのクロスバイクが二台買えてしまうお値段ですから。
内装未対応のフレームでドロッパーポストを使いたい場合は、画像中央のMAGURA製『VYRON eLECT』や画像右のBrand-X『Ascend II』の外装式などがオススメですね。
MAGURA製は無線式にしては価格が控えめですし、Brand-X『Ascend II』は前述した通りドロッパーポスト中で随一の高コスパを誇ります。
私の好みが多分に含まれる内容になってしまいましたが、内装式で財力に余裕があるならBIKE YOKE製の『REVIVE』、コスパ優先ならONEUP製の『OneUp V2』を選ぶのが吉でしょうか。
それらに加えて、外装式で初ドロッパーポストならBrand-X『Ascend II』で過不足ないと思います。
本当に短い!『OneUp V2』ドロッパーポストの詳細
前述した通り、時期によっては入手困難なONEUP製のドロッパーポスト『OneUp V2』ですが、公式HPにて入荷通知の登録をしてから、およそ二ヶ月待ちで購入することができました。
お値段はONEUP製リモートレバーを含まないポスト単体で$200ほど、追跡番号無しだと日本からでも送料無料で購入できますが、紛失に怯えつつ到着まで半月は待つ必要があります。
パッケージもシンプルですが中身もシンプルで、マニュアルの類は一切付属していません。ドロッパーポスト本体とスモールパーツの小袋だけです。
今回はポスト径がΦ31.6mm、トラベル長150mmの製品を選びましたが、今まで使用していたドロッパーポストと並べてみると、トータルレングスやカラー部分の厚みの違いが如実にわかりますね…とても同じ150mmトラベルとは思えない仕上がりです。
ずっしりと重たいイメージのあるドロッパーポスですが、150mmトラベルで502gと中々軽量ですね。カタログスペックによると、ポスト径Φ30.9mmで120mmトラベルの製品なら重量は435gだそうで、もはや重さが導入の足枷になる時代ではなさそうです。
ヤグラ部分は2ボルト式でサドルの角度は前後ボルトの締め加減で調節します。
上下のヤグラ部分を取外すと米式バルブが露出しますが、公式HPによると定期メンテナンスやオーバーホールの際に、内部の空気圧を250〜300psiに調整する目的で使うようですね。おそらくフロアポンプではなくサスポンプが必要になります。
前述したように動作部分の根元にある『カラー』が大変コンパクトに仕上がっていて、幅は15mmほどしかありません。
このカラー部分の厚みはスタックハイトに影響を及ぼしますが、価格が倍近いBIKE YOKE製でもONEUP製の短さには敵わず、5mmほど長い作りになっているそうです。
ドロッパーポストの終端部分は、ポスト側にシフトケーブルのタイコ部分をクランプする、お馴染みの作りになっていました。
白矢印の部分を押すと反対側の丸枠で囲った部分がシーソーのように持ち上がり、その部分にワイヤーをフックします。
取付け方法の説明で後述しますが、赤矢印部分にシフト用アウターケーブルのエンドキャップを挿し込む仕様になっていて、インストール時にこれを忘れるとリモートレバーを押してもポストが動作してくれません。
最短時と最長時はこんな感じですね、最長が約420mm、最短が約270mmです。
トラベル長を-1cmまたは-2cmに微調整できるので、これ一本で150mmトラベル、140mmトラベル、130mmトラベルといった感じに、三段階の使い方ができます。
スモールパーツの入った小袋には、メンテ用のグリスが少量、トラベルアジャストシム×7、ケーブルバレルが入っていました。
トラベルの微調整方法については公式HPで詳しく解説されていますが、-1cmの場合はシムを3本、-2cmの場合はシムを6本使用するので、どうやら残り一本は予備のようですね。
中央にあるケーブルバレルはシフトケーブルのワイヤーに通してタイコ部分に取付けますが、取付方法の下調べで参考にした幾つかの情報によると、ケーブルバレルを使わず素のタイコのままでもポスト側への接続が可能なようです。
『OneUp V2』ドロッパーポストの取付け方法
今どきのドロッパーポストなら、取付方法はどれも似たり寄ったりなので特に難しい点はありません。
シフトケーブルのタイコがポスト側へ、ワイヤーの末端がリモートレバー側に接続されるケースが殆どです。
取付け前に旧ドロッパーポストを取外していますが、完成車に標準装備されている内装式ドロッパーポストはルーティングが割とシビアですね。
上画像のようにケーブルをフレーム外に露出できないこともあるので、場合によってはケーブルごとリモートレバー本体をハンドルから外して余裕を持たせたり、リモートレバーからシフトケーブルの固定を解除してあげるなどの措置が必要です。
今回は折角なので付属のケーブルバレルを使用してみますが、シフトケーブルの手持ちが無かったり、今使っているケーブルシステムをそのまま引き継ぎたい場合は、タイコをダイレクトにフックさせる方法を試してみましょう。
私は公式HPの方法に倣ってケーブルバレルを使ってみたものの、一度リモートレバーに固定したワイヤーは末端がほつれていたり、固定のトルクでワイヤーが潰れていたりして、ワイヤーを再び各ルートに通す作業で思いのほか苦戦しました。
ケーブルバレルを使うなら、癖のついていない新品のシフトワイヤーに交換した方が手っ取り早く、古いシフトワイヤーをそのまま再利用するつもりなら、最初からケーブルバレルを使わない取付方法を選びましょう。
ケーブルバレルを使わない方法だと、シフトワイヤーをアウターケーブルから一旦引き抜く手間が無いため、実質タイコをポストの末端にポン付けするだけの作業で終了できます。
シフトケーブルの取付けはポストの終端にケーブルバレルないしタイコ部分をフックさせるだけの簡単な作業ですが、上画像のままシートポストを挿し込んでしまうと100%動作しないので注意しましょう。
前述したように、エンドキャップを含むシフトケーブルの末端が赤矢印の部分にしっかり挿入されていないと、リモートレバーが動作してくれません。このあたりはブレーキケーブルやシフトケーブルの仕組みと同じですね。
シフトケーブルを適切に処理したら、後はグリスを薄く塗布したドロッパーポストをシートチューブに挿入するだけです。
挿し込む際にポスト側だけを一方的に押し込むと、フレーム内部でケーブルがたわんでしまい、ポスト終端からエンドキャップが外れたりすることがあるので、ポストをゆっくりと押し込みつつも、リモートレバー側からもケーブルを少しづつ引き出してあげましょう。
ドロッパーポストの取付自体は簡単ですが、内装で見えなくなっているシフトケーブルの状態次第では、リモートレバーを押してもポスト側が上手く反応してくれないことがあります。
インナーワイヤーにレバー操作に反応するテンションを持たせつつも、アウターケーブルの両端がポスト終端とリモートレバーのアジャスター部分にしっかりとフィットしている必要があり、不慣れだと苦戦しがちですね。
最後になりますが、リモートレバー側に固定するワイヤーをいきなり短くカットしてしまうと再調整が難しくなるので、ドロッパーポストの高さ決めが確定し、リモートレバーのレスポンスが十分だと判断できた後に、最後の仕上げとしてワイヤーの終端処理を行いましょう。
『OneUp V2』ドロッパーポストのインプレ、剛性&レスポンスは如何に?
取付け作業が無事終了しリモートレバーのレスポンスにも問題が無かったので、早速『OneUp V2』ドロッパーポストの使用感を確かめてみます。
特に不満が無いので、リモートレバーは引き続き備え付けの物を使用しています。ワイヤーを物理的に引っ張ったり、アジャスターでレスポンスを調節するだけの物なので、特に互換性を気にする必要は無さそうです。
私はレースやシビアなトレイルライドはしないのでリモートレバーに拘りはありませんが、巷ではWolf Tooth/ウルフトゥース製リモートレバーの評判が良いですね。可動部分にベアリングが入っていてレバータッチが繊細でスムーズ…そんな感じなんでしょうか。
新品だけに動作はいたって良好ですね、シャコシャコと小気味よく動いてくれます。もちろんドロッパーポスト最長時からの伸縮にも引っ掛かりは一切なく、納車時から悩まされ続けたストレスから漸く解放されました。
ドロッパーポスト本体の剛性にも頼りなさは感じませんね、上下方向にも軸回転方向にもガタは見られずガッチリとした佇まいです。
まだ内部のグリスが潤沢なせいか、使用後は白矢印の部分に結構な量のグリスが付着しますね。ONEUP公式HPによると内部の定期的なグリスアップが推奨されていて、詳細な方法も説明されていました。
この部分に付着するグリスの量や動作の渋さなどが、メンテナンス時期の目安になるかも知れません。
因みに、私は洗車と同時くらいのタイミングでドロッパーポストの簡易メンテナンスを行い、ケミカルには『Miles Wide Industries ウェットシール』を使っています。
他にも『FINISHLINE マックスフォークスプレー』、『WPL フォークブーストルブ』、『ワコーズ SL シリコーンルブリカント』などが使えますが、ドロッパーポストにも使えるよ!と正式に謳っているのは『WPL フォークブーストルブ』と『Miles Wide Industries ウェットシール』だけだった筈なので、気になる方はこの二つから選びましょう。
まとめ
当初はメンテナンス性に優れるBIKE YOKE製を購入する予定でしたが、今のところ『OneUp V2』ドロッパーポストで大満足な結果です。評判通りの逸品ですし、この価格でこの性能はあり得ないレベルかも知れません。
個人的に一番気に入っているのがトラベル長を最大で2cm減らせる点で、この機能を活用することでサドル高を保ったままカラー下部の非可動スペースを2cmだけ嵩増しすることができます。
『何の意味があるの?』と思ってしまうくらい地味な利点ですが、この空きスペースがあるお陰で、クランプ式のリアフェンダーを取付けられるようになり、オールシーズン走れるセミファット仕様のフルサス29erにとって、何かと都合が良いのですよ。
さて、今回は縁がありませんでしたが、BIKE YOKE製のエア抜き機能や動作の滑らかさなんかも気になりますね…暫くは買い替える必要は無さそうですけど、リッチな御仁は是非お試しあれ。