愛車のファットバイク『アーガス エキスパート』は油圧式ディスクブレーキが標準仕様。
ですが、とある事情から機械式(メカニカル・ワイヤー式)に交換することに。
油圧式よりも制動力に劣る機械式ディスクブレーキにすることはダウングレードに相当し、油圧式を当たり前に使っている方には愚行とも受け取れるでしょう。
数十年ぶりにスポーツ車を購入し、何もかもが初めて尽くしな状態で油圧式どころかディスクブレーキそのものが未体験。
初乗り時には、何気ない停止でジャックナイフしそうになるなど、その軽いタッチと制動力の高さには胆を冷やしつつ驚いたものですが
一年近く使い続ける内に『油圧式は私の性格に不向きなのでは?』そんなふうに思うようになりました。
ディスクブレーキを油圧式から機械式にした理由
前述の通り、油圧式ディスクブレーキの機能面には全く不満が無く、逆にブレーキが効きすぎて困るほど。
あえて機械式にダウングレードしようと思ったのはトラブルが頻発してメンテナンスに手間取るのと、ブレーキからシャリシャリと音がする、俗に言う『引きずり』が煩わしかったからです。
ネット上で調べれば対処法が見つかりますし、キャリパーのセンター出し程度なら大した手間ではありませんが、エア抜きやブレーキフルード交換ともなると、そう簡単には行きません。
また、アーガス エキスパートの油圧式ディスクブレーキはHayes Radar Compという国内では殆ど流通していない製品なのも一因。
メンテナンスの参考になる情報も少なく、エア抜きに必要な器具やメーカー純正のミネラルオイル(シマノ製でもOKらしい)を揃えるだけでも一苦労です。
Hayesは決して悪いブランドではなく米国では愛好者も多いですが、ファットバイクの低い稼働率の割に半年でエア噛みを含む複数回のトラブルに見舞われました。
肝心のライドよりもメンテナンスに時間を取られるのに嫌気が差したのもありますが、機械式に交換すると決めた一番の理由は、前述した『引きずり』が頻発する点です。
ブレーキパッドの減りに関わらず、一定のパッドクリアランスを保ち続けてくれるのが油圧式の利点で、メンテナンスが容易だと言われる所以でもあるのですが、如何せん標準でのクリアランス幅が狭すぎでした。
メーカーに寄って違いはあるものの、ブレーキパッドとローター間のクリアランスは左右を合わせても1mm程度で、ほんの僅かな変化でもブレーキパッドとローターが接触。
事あるごとにシャリシャリと耳障りな引きずり音を奏でます。
軽度であれば普通だという意見も聞きますが、走行音が静かなディスクロードでこの症状が出てしまい、対応にストレスを感じているロード乗りも少なくないとか。
因みに、ディスクブレーキ車には大抵スルーアクスルが採用されていますが、これも引きずりを招いたりします。
私も経験しましたが、スルーアクスルの締め付けトルクやレバーの締め付け加減がある程度一定していないと、ホイール着脱の前と後でバッドクリアランスが狂ってしまいがち。
車載で遠征ライドに赴くも、現地でホイールを取付けて出発したら何故か引きずり音が発生……
パッドスペーサーも使っていて、ピストンも飛び出していない筈なのに何で?
これがよくあるパターンでしょうか。
他にも、路面のからの振動でローターが共振して発生、ブレーキング時の高熱で一時的にローターが変形して発生、長いカーブでホイール軸が僅かに歪んで発生。
こういったレアケースまで含めると『引きずり』が受け入れるべき当たり前な現象にすら思えてきます。
私を含む神経質な方には間違いなく相性が悪いですし、気にしだしたら切りがないのが実情ですが、自分で対処できる余地は可能な限り残しておきたいのが本音でしょうか。
油圧式はパッドクリアランスが自動調整されるかわりに、クリアランス調整が任意にできない。
機械式はパッドクリアランスを手動調整するかわりに、クリアランス調整に自由度がある。
機械式ディスクブレーキに交換することで、制動力やレバータッチの軽さがトレードオフになってしまいますが、トレイルを走らないファットバイクには失っても許せる要素です。
SURLYのファットバイク『WEDNESDAY』は未だに機械式ディスクブレーキが標準ですしね。
シマノ製機械式ディクスブレーキに変更
さて、機械式のディスクブレーキに交換するにあたって候補は三つありました。
一つ目が機械式でありながら対向ピストン仕様の『TRP SPYKE』
二つ目が制動力とクリアランス調整の容易さに定評のある『SRAM AVID BB7』
三つ目がコストパフォーマンスに優れた『SHIMANO BR-M375』
画像の通りBR-M375を購入しましたが、最後まで後ろ髪引かれたのはTRP SPYKEですね。
油圧式と同じ対向ピストンと左右から簡単にクリアランス調整できる機能に強く惹かれました。
露出したケーブルに雪や泥が付着しても制動不能にならない為の細かな工夫にも魅力を感じますね。
【追記】後日、TRP SPYKEにアップグレード。
パッドクリアランスやブレーキの効き具合、レバータッチなどが大変調整しやすく、ディスクブレーキ初心者にも扱いやすい良ブレーキでした。
油圧式と機械式のハイブリッドディスクブレーキとは?
ついでなので機械式や油圧式に続く第三の選択肢こと『ハイブリッド式』にも触れておきます。
ハイブリッド式のディスクブレーキはブレーキレバーやブレーキケーブルは機械式そのまま、キャリパー部分のみが対向ピストンの油圧式という構成。
ブレーキフルードが最小限しか使われておらずホースも不要なため、オイルラインに空気が混入してレバーがスカスカになってしまう『エア噛み』が起こりづらい仕様です。
少量故にフルードの寿命が短いという評価も聞きますが、フルードの交換も可能でミネラルオイルに対応。
ブレーキの引きは機械式より若干軽く、日泉ケーブルなどの摩擦の少ない製品を併用すれば、レバータッチの更なる改善にも期待できます。
気になる制動力ですが、キャリパー内部の構造は油圧式そのものなので機械式以上、エントリークラスの油圧式と同等かそれ未満といったところ。
まだ選択肢が少なく代表的な製品は『TRP HY/RD』かダイアコンペの『JuinTECH R1』くらいしかありませんが、フラットマウント版もラインナップされているせいかロードやグラベルロードで使っている方も多いです。
同じハイブリッド式でも、TRP HY/RDは油圧式と同様にパッドの減りに合わせてクリアランスが自動調整されますが、JuinTECH R1は手動調整のみといった違いがあり、機能的にはHY/RDの方が優れる印象。
因みに、ダイアコンペ製『JuinTECH R1』はASHIMA(アシマ)製ハイブリッドディスクブレーキのOEM品らしく、市場にはダイアコンペ製、ASHIMA(アシマ)製、HTR製の三種類が存在しています。
ブレーキ本体にプリントされたメーカー名は異なりますが仕様は全く同じなので、どれを選んでも差はありません。
まとめ
車種や使用しているブレーキによって『引きずり』が全く起こらない場合もあるそうですが、同じディスクブレーキ車でもエンド幅が極端に広くフレームやフォークが歪みやすいファットバイクだと、些細なことでも症状が出やすくなるのかも知れませんね。
機械式に変更したことで、ブレーキパッドの片減りやローターの変形、ワイヤーへの泥や雪の付着など、機械式ならではの新たな問題も出てきますが、実際に取り付けて試走してみても、今のところ大きな不満点はありません。
最低グレードのBR-M375ですが、調整をしっかりと煮詰めることでフロント・リア共にタイヤをロックできるくらいには仕上がってくれました。
上位グレードから下位グレードまで、卒なく機能してくれるのは流石シマノと言ったところ。
最近のシマノ製油圧式ディスクブレーキはパッドクリアランスを広めに設けているそうなので、引きづりに嫌気が差したら、機械式ではなくこちらに乗り換えるのも手でしょうか。