ロードバイクやクロスバイク、果てはミニベロからファットバイクまで、趣味で自転車に乗り始めると誰もが最初にぶつかるのがサドルの悩みだと思います。
通勤や通学程度の距離なら我慢できるお尻の痛みでも、休日のポタリングやロングライドでは流石に限界を突破し、行きはルンルン気分で帰りは苦痛で表情が歪む…といった経験も珍しくありません。
私もその例に漏れず、お尻の痛みを少しでも和らげるために数多のサドルを渡り歩きましたが、今ではサドル沼どころか、気になったサドルを試すこと自体が楽しみになってしまいました。
今のところ、手元に残ったサドルは何km走っても痛みの出ない一握りのベストサドルと、そこそこ距離なら走れる幾つかのベターサドルに二極化され、車種や目的によって使い分けされています。
現時点でのマイベストサドルはSERFAS/サーファス製の『RXアドバンス』ですが、巷では神サドルと称されていることを最近知りました。
さてこのサドル、パッドの無いカジュアルパンツのままで100km以上走っても全く痛みが出ない優れモノですが、丸味を帯びたフォルムがギリギリ許せる程度にダサく、恐らくロードバイクでは完全にNGです。
ロードバイクを所持していない私ですら、この座り心地のまま、もう少しだけ見栄えが良ければ…と思うほどですが、実はこのサドルにはその欠点を補うように用途やフォルムの異なる三種類のバージョンが存在しています。
これは全部試さなければなるまい!と三年前から他のサドルに浮気しつつも着々と事を進めていたのですが、最近ようやく全三種類をコンプリート出来ました。
尻痛に悩む方の参考になれば幸いですが、今回はお尻に優しい秀逸サドルと名高い『サーファスRX』シリーズの詳細や使用感の違いについて、簡単に紹介してみます。
サドルは見た目も大事?『サーファスRX』シリーズについて
上画像が件のサーファスRXシリーズで、左から順に『RX ADVANCE/アドバンス』、『MH-RX ハイパフォーマンス』、『RX RR/レースレディ』です。
見た目のボリューム感がそのまま座り心地に比例する感じですが、座面が柔らかく一番お尻に優しいのが、マイベストサドルことRXアドバンスですね。
どのモデルも座面の詰め物がゲルを含む多層構造で、ペダリングに合わせて左右が独立して動くセパレート構造になっています。
中央にサドルを真っ二つにする溝があるお陰で、尿道や会陰部分への圧迫も自然に軽減してくれるのも見逃せない特徴でしょうか。
三種類とも防水仕様ですが、レースレディは座面が硬めの合成レザー素材、アドバンスとハイパフォーマンスは柔らかなフィット感と防水性を兼ね備えたマイクロファイバー素材が使われていて、お尻への馴染み方に結構な違いがあります。
『RX ADVANCE/アドバンス』の感想
私が一番最初に購入したのがこちらのRXアドバンスです。
購入当初はファットバイクに装備させていましたが、何故かその時はお尻に合わず、取外して長い間放置したままでした、後に気まぐれでミニベロに装備したところ、今までの苦労が嘘のようにお尻に馴染み、100kmを超える距離を走ってもお尻に痛みを感じることがありませんでした。
どうやら、乗車姿勢の角度が座り心地に影響していて、姿勢がアップライト気味になるファットバイクとは合わず、上体が水平面に対して45~60度になるミニベロではしっくり来るようですね、おそらくクロスバイクにも良く馴染むでしょう。
ご覧の通り、見た目が野暮ったいのが最大の欠点で、ファットバイクでは違和感の無かったサイズ感もミニベロではより強調されて感じます。
重量は495gとかなり重いですが、値段は三種類の中で最も安価なので、見た目に納得できるなら文句無しに最高の尻痛緩和サドルになるでしょうか。
因みに、RXアドバンスにだけ座面幅の異なるレディース用が準備されています。
『RX RR/レースレディ』の感想
RXアドバンスの見た目のダサさを解消したかった私が次に購入したのが、このRXレースレディです。
上画像では、どうしてもCane Creek製のサスペンションシートポスト『Thudbuster LT』の方に目が行ってしまいますが、RXレースレディと組み合わせるとサイクルショーで見掛けるコンセプト自転車っぽい面持ちになりますね、デザインはお気に入りでした。
さて、重量は320gと軽くなり座面が薄く表面素材もアドバンスよりも硬めだったので過度な期待はしていませんでしたが、予想通りミニベロでは力不足でした、パッド無しのカジュアルパンツでは40kmを超えたあたりからお尻に違和感が出始め、これ以上の距離になるとお尻に苦痛を伴います。
とはいえ、このサドルはロード乗りの方々からの評価がやたらと高く、カジュアルパンツでもロングライドに耐えられる方もチラホラいるそうです、姿勢が前傾気味になるロードバイクでレーパン併用なら、大半の方が尻痛を緩和できるかも知れませんね。
決してカジュアル用ではなく、その名の通りレース向きのコンフォートサドルだと思います。
『MH-RX ハイパフォーマンス』の感想
そして最後に購入したのがこちら、MH-RX ハイパフォーマンスです。
細部や使用感については後述しますが、その見た目通りアドバンスとレースレディの中間くらいの構成になっていて、外観のバランスが大変良いですね。
全く野暮ったく無いとはいいませんが、座面のボリューム感が抑えられクロスバイクはもちろん、ロードバイクでもギリギリ使えるフォルムに仕上がっていて、実際にブルべでの使用例も多いそうです。
重量はジャスト400gとコンフォートサドルでは標準的な値です、私の経験上これ以上の重量でも座り心地がイマイチなコンフォートサドルは腐るほどあるので、逆に『良くこの重さで実現できたな…』と褒めてあげたいくらいでしょうか。
適度に詰め物を減らして、見た目をスポーティーに整えた『RXアドバンス』というのが率直な感想ですが、カジュアルパンツで40km以上走ってもお尻に違和感が出ないのは確かです。
中途半端なコンフォートサドルに散々騙され続けた私としては、最初からこのMH-RX ハイパフォーマンスを購入しておけば良かった…と思わずにはいられませんが、見た目と座面の柔らかさを高いレベルで共存させている良サドルといえます、流石はサーファス自らがRXサドルシリーズの最高峰と称するだけはありますね。
サーファス『MH-RX ハイパフォーマンス』の詳細
前項で軽く説明していますが、MH-RX ハイパフォーマンスの細部を簡単に確認してみます。
RXアドバンスと比べて、座面の詰め物が適度に減らされ、ペダリングしやすいようにノーズも細くシェイプされていますね、個人的には全然アリな見た目ですが世間的にはどうなのでしょうかね?
台紙の裏面にはカタログスペックが記載されていました、パッケージ側には重量420gとありますが、公式HPでは400gと記載されています。
試しに計測してみると実重量は401gでした、公式HPの値が正しいようですね。
手で持ってもコンフォートサドル特有のずっしりとした重量感は無く、見た目よりも軽く感じます。
座面にシーム跡があるので水が染み込んでしまうのでは?と不思議に思ったのですが、防水仕様なのは間違い無いです。
因みに、座面の表面素材はざらつきのある布っぽい質感なので、新品や未洗いのジーンズで乗ると色移りしやすいです。白系の明るい色のパンツで乗る場合には注意が必要で、事前に濡れたウエスで座面をゴシゴシして染料を拭き取ってあげましょう。
サドルの質は裏面をみれば良くわかるといわれますが、高めの価格設定なだけに安サドルにありがちな鋲打ちのステープル仕上げではありませんでした、手抜きの無いしっかりとした作りです。
サドルフレームの青い部分は特殊ラバー製で、地面からの振動や突き上げを吸収する効果があります、RXサドルシリーズの最高峰なだけあって色々な要素が詰め込まれていますね。
後方から見ると、座面のボリューム感が良くわかりますね、5cm弱はあるでしょうか?左右に分かれたセパレート構造もかなり特殊に見えます。
少し気になったのがこの部分です、サドルレール後部に余裕が無く、製品によってはサドルバッグ固定用のブラケットが取付けられない可能性があります。
因みにサドルレールはクロモリ中空タイプでした、見た目の割に重量が400g程度なのも納得ですね。
29erプラスに取付けて試走してみた感想
記録的な暖冬で数日前の積雪がグズグズになっていますが、セミファットの29erプラスに『MH-RX ハイパフォーマンス』を装備して試走してみます。
画像では地表付近に冷気の流れが見えますね、これは寒い訳では無く逆に気温が高過ぎてガスってる状態です、因みにタイヤのノブが低いので空気圧1bar程度では、この緩んだ雪を突破できませんでした…幸先の悪い出だしですね。
さて、新しいサドルにはありがちですが、スタート直後は座骨の定位置がわからず、お尻に落ち着きのない状態が続きます。
RXアドバンスだと、通常よりも前側の位置が一番しっくり来るので、このハイパフォーマンスなら座面中央か少しだけ前位置がベストでしょうか。
よく、座面が柔らかすぎるとペダリングがしづらくなると聞きますが、このシリーズは本当にそのあたりの仕上がりが絶妙で大きな影響は感じませんね。
山間部から沿岸部に20kmほど走ってくると、ご覧の通り雪が全く残っていませんでした。
RXアドバンスほどではないにせよ、少しは野暮ったくなるだろうなぁ~と覚悟をしていましたが、車体がゴツい29erプラスでは逆にバランスが取れている印象でしょうか?水平器で調整しましたが、見た目重視ならノーズはもう少しだけ下げた方が良いかも知れませんね。
サドルレール後部に余裕が無いのが気掛かりでしたが、リクセン&カウルのブラケットは何とか取付けでき、引き続き愛用のマイクロシェルが使えます。
海沿いのダートでしばらく遊んでから帰宅しましたが、変化の大きいコースを40kmほど走っても最後までお尻に痛みは出ませんでした、スタンディングは殆どしていないので、お尻への優しさは間違いなくRXアドバンス譲りです。
唯一気になったのがスイートスポットが意外に狭いことでしょうか、座面がフラットな割に後方部分の座り心地がぎこちなく、サドルの中央から後方に掛けて変化が極端な気がしました。
個人差はあるでしょうが、座骨を落ち着けるなら中央かやや前側あたりがベストポジションですね、ボリュームダウンした分だけ、後方の座り心地はRXアドバンスよりも劣ります。
総評として、コンフォートサドルとしては間違いなくトップクラスだと思います。まだ100km以上のロングライドでは試していないのでベタ褒めは避けますが、個人的にカジュアルパンツで60km前後を耐えられるなら十分に合格点ですね。
まとめ
新たに購入した『MH-RX ハイパフォーマンス』を含むサーファスRXシリーズについて紹介していみましたが、このシリーズは本当にお尻に優しいですね。
記事中でも何度か触れましたが、お尻が痛くならないサドル選びをするには乗車姿勢の把握が結構重要だったりします。
サーファスと同じように、優れたコンフォートサドルをリリースしているセラロイヤルが推している考え方ですが、乗り手の上体が水平面に対して何度なのかによって、選択するサドルの形状が変化します。
これが60度前後で軽くお辞儀をする程度の角度なら、ロードバイクに似合う細身のサドルは素直に諦めましょう…見た目に拘り過ぎるとサドル沼へまっしぐらです。
とはいうものの、見た目のカッコ良いサドルはやっぱり捨て難いですよね?もちろん私もそうです、これを解決する手段は二つ、パッド付きのサイクルインナーパンツを使うか、サドルカバーを使うかのどちらかです。
私はどちらも試しましたが、半信半疑で購入したサドルカバーが思いのほか優秀でした、バックパックなどの収納スペースがあるなら、お尻がヤバいと感じるまではそのままのサドル、その後はサドルカバー装着といった感じに使い分けると、自転車の外観を損なわずに少しだけ見栄を張る事が出来ます。