いつの間にかボロボロになってるヤツ。
個人的にステムボルトにはそんな印象を持っています。
ここで言うステムボルトはフォークコラム側の二本ではなく、ハンドルクランプ側の四本のこと。
劣化しても走り自体には殆ど影響しないため無関心になりがちですが、信号待ちでふと視線を落とすと、そこにはメッキが剥がれ錆も浮いたステムボルトの姿が……なんてことも。
ステムボルトは車体の真正面に位置するため走行風をモロに受けますし、頭部からの汗や雨粒といった水分も大敵。
その上、完成車のステムボルトには安物のスチール製がお約束ですから、二年も乗れば確実に劣化が始まっていることでしょう。
さて、現在進行形でその憂き目に遭っているのが愛車のグラベルロード。
ライドの度に嫌でも目に入ってしまう部分なだけに、そろそろ何らかの対策をしたくなりました。
対策とは言っても単純にステムボルトを交換するだけですが、今回は劣化したステムボルトを腐食に強いチタン製へと交換。
作業自体は容易なものの、ステムボルトの寸法や選び方、交換する際の注意点について簡単に触れてみます。
素朴な疑問……ステムボルトが劣化しやすい理由とは?

冒頭で殆ど答えを言っちゃってますが、ステムボルトが劣化しやすい理由について少しだけ説明。
流石に駆動系には及ばないものの、実はステムボルトは過酷な環境と負荷に晒されていている自転車パーツのひとつ。
自転車乗りの方なら薄々察していると思いますが、まずは走行風の影響があります。
走行すると大気に含まれる塵や砂粒が真正面のステムボルトに絶えず打ち付けることになり、天然のサンドブラスト効果といった感じに。
これがステムボルトのメッキを徐々に剥がし、そこを腐食点にして錆による更なるメッキの浮き上がりの呼び水に。
また、安価なスチールボルトは層構造のニッケルクロームメッキが施されているため、錆により剥離しやすい性質もあり、これも劣化を後押しする要因のひとつ。

正直な話、車体の真正面にある他のパーツには劣化をあまり感じないため半信半疑ではありますが、ハンドルクランプ側と比べてフォークコラム側のステムボルトは劣化が軽微なのも事実。
あと、これは夏場に実感しやすいですが、頭部から滴る汗を受けやすい位置関係であることも無視できません。
塩分を含んだ汗は金属への腐食性が強いですし、ステムボルトの六角穴は若干上向きのため水分が留まりやすいというマイナス要素も。

汗に限らず、雨水や路面からの水飛沫、洗車時の水滴なども滞留しやすく、文字通りのウィークポイントになってしまいがちです。
グラベルロードのステムボルトも真正面から見るとメッキ剥がれのチッピングだらけ。
六角穴には四本とも小錆も浮いていますが、下側二本のステムボルトの方が陰になっている分だけ劣化が控えめな印象でしょうか。
意外なところでは、工具を使用した際の小さな傷も時間経過により錆を招くそうで、やや強めの締め付けトルクの掛かったステムボルトは劣化が加速する「応力腐食」が起こりやすい状態にあるのも一因だとか。
私自身、ステムボルトは他のボルトよりも傷みが早い気がする……
漠然とそう思っていましたが、ステムボルトのメッキが走行風・砂塵による物理的チッピングで剥がれ、その後に汗・雨水による内部からの腐食膨張により劣化が加速する。
結局のところ、これがステムボルトが劣化しやすいと感じる理由なんでしょうね。
生じた錆が天然のサンドブラスト効果で除去される、そんな面白い現象も起こっていそう。
サイズ選びと電蝕予防が肝心!ステムボルトをチタン製に交換

ステムボルトの交換自体は難しい作業ではありませんが、気を付けるべき点が幾つかありました。
まずはサイズ選び。
六角穴のあるM5規格のボルトではありますが、ステムボルトの長さには大きく分けて16mm、18mm、20mmの三種類があり、18mmが標準的なサイズとのこと。
とはいえ、これは使用しているステムやハンドル径に依存するため、事前に手持ちのステムボルトの実寸サイズを計測するのが基本となり、ついでにワッシャーの有無も確認しておくのが吉。
因みに、ネジピッチは0.8となり市販のステム用ボルトから代替品を選ぶなら、特に気にする必要のない値です。

早速グラベルロードからステムボルトを取り外して実寸サイズを測ってみると、標準サイズである18mmでした。
注意すべきは、この18mmがステムボルトの総寸ではない点。
ボルトの頭部分を除いた「首下長」を測る必要があり、この寸法がサイズ選びの指針となります。
測定の結果、首下長18mm、テーパーヘッド、1mm厚ワッシャー有、チタン製、これらの条件を満たす市販品から選ぶことに。

条件を元に大手ECサイトで早速購入、スモールパーツはメール便で送料が安くなるのが嬉しいですね。
フォークコラム用を含む六本セットも考えましたが、劣化が軽微なので今回はハンドルクランプ用の四本のみ購入。
お値段は六本セットが2000~3000円、四本セットの場合は1500~2000円くらいが相場でしょうか。
一本あたり500円ですから、やっぱりチタン製ボルトは割高に感じます。

重量を測定してみると、スチール製が3.8g、チタン製が2.2gと標準的な値。
微々たるものですが、四本交換で6.4gの軽量化となりました。
余談ですが、ステンレスボルトにチタンメッキなんて紛らわしい製品もあるので、間違えて購入すると後から重さで気付くことに。
さて、あとはセオリー通り対角線の順番でボルトを締め付けトルクレンチで仕上げるだけなのですが、組付けには決して欠かすことのできない鉄の掟が存在します。
これに関しては私自身も不勉強でしたが、チタンは電蝕や冷間圧接による固着を招きやすい金属だそうで、ステムの主素材であるアルミとは特に相性が悪いとのこと。
チタン製のボルトをアルミパーツに使用する際は、最低でもグリスの塗布は必須。

より慎重を期するなら「スレッドコンパウンド」や「アンチシーズ」と呼ばれる、焼き付き・固着防止剤を事前に塗布しておくのが鉄則です。
私は手元に無かったのでシマノのプレミアムグリスで代用しましたが、次の機会には自転車用として入手しやすいパークツールの「ASC-1」を試してみたいところ。
また、ステンレス製のボルトもアルミ素材と相性が悪いそうなので、こちらもグリスやアンチシーズの類を塗布しておくのが無難。
まとめ

チタン製ボルトへの交換は恙なく完了。
一本500円もしただけに、バラ完直後よりも見栄えが良くなったくらい。
以前に6穴式ディスクローターでもチタン製のボルトを試した経験はありますが、固着の件に関しては今回が初耳でした。
ステムボルトくらいの締め付けトルクでは冷間圧接は起こらないという話もありますが、水分が絡む電蝕に関しては場所が場所だけに油断はできません。
チタン製ボルトには「スレッドコンパウンド」や「アンチシーズ」を塗布すべし。
簡単に軽量化できるためチタンボルトには安易に手を出しがちですが、事前にしっかりと弁えておきたい情報でしょうか。

