前回のバルブホルダーに関連して、今回もTPUチューブのバルブに纏わる話題。
ご存知の通り、TPUチューブにはバルブが樹脂製と金属製の二種類が存在します。
以前ならTPUチューブを象徴するような存在だった樹脂製バルブですが、現在は諸々の理由から金属製バルブが主流になりつつありますね。
チューブ軽量化のブレイクスルーになった箇所だけに、金属製バルブへの回帰には複雑な心境があるものの、金属製の方が何かと使い勝手が良いのも確かです。

私もファットバイクには樹脂製バルブの「REVOLOOP」
グラベルロードには金属製バルブのパナレーサー「PURPLE LITE」
このふたつの使用歴がありますが、特に深い意図があって使い分けている訳ではありません。
単純に金属バルブのTPUチューブが増えてきたので、興味本位で試してみた……
そんな程度の理由に過ぎませんが、冷静に振り返ってみると両者に違いについてはバルブナットの有無や電動携帯ポンプへの適性くらいしか知見が無かったりします。
学び直しというのもアレですが、今回は自戒も込めてTPUチューブの樹脂製バルブと金属製バルブ、それぞれの長所や短所について簡単にまとめてみました。
【樹脂製バルブ】の長所・短所

まずは古参の樹脂製バルブから。
TPUチューブ普及の立役者となったTubolitoやREVOLOOPの製品が該当し、両ブランドは未だに金属製バルブの製品をリリースしていません。
樹脂製バルブが軽量化を突き詰めたブランドアイコンになっているため、あえて採用しないのかも知れませんが、先駆者だけに金属製バルブにした際のリスクを熟知している可能性も。
【長所】
・バルブコア以外に金属パーツを使っていないため非常に軽量、金属製バルブと比べ最大で10gの重量差も。
・TPU素材同士の熱融着によりバルブ根元の接合精度が高く、空気漏れといった不具合が少ない。
【短所】
・バルブナットが使えないため、空気充填時のバルブ沈み込み、走行時の異音発生、バルブ根元が傷みやすいといった難点がある。
・ハンドポンプ使用時にバルブが曲がりやすく、電動ポンプ使用時は発熱により変形のリスクもある。
・製品によってはバルブコアが着脱不可で、バルブエクステンダー等の拡張性に乏しい。
あらためて羅列してみると、長所は「軽量さ」で一点突破な印象ですね。
バルブが樹脂製ゆえに強度面という短所が嫌でも強調されてしまうものの、ポンピング時に曲がりやすいのは、単に力み過ぎや慣れの問題でもありそう。
また、電動ポンプによる熱変形の問題に関しては、最近の電動ポンプには対策用のアダプターが付属しているため既に解決済みという見方も。
因みに、製品に寄ってはバルブコアが着脱不可……これについては理由を後述するので今は保留。
【金属製バルブ】の長所・短所

そして現在TPUチューブの主流となりつつある金属製バルブ。
意外にも、TPUチューブを最初にリリースしたECLIPSE/エクリプスの製品は金属製バルブだったとのこと。
【長所】
・バルブナットでしっかり固定でき、走行中の異音も予防できる。
・ポンピング時の負荷でバルブが折れる心配がほぼ無く、電動ポンプにも素のままで対応できる。
・従来通りにバルブコアの着脱ができ、バルブエクステンダーやその他の拡張も可能。
【短所】
・金属パーツ多用につき、樹脂製と比べて重量増が避けられない。
・金属とTPUという異素材の接合のため、接続部に破損や空気漏れといった不具合が起こりやすい。
ブチルチューブと同じ金属製になるため使用感は概ね良好なものの、やはり異素材を接合したことによる強度面に不安が残ります。
技術や精度が向上した最近の製品では不具合が出づらくなっているそうですが、冒頭でも触れたパナレーサー「PURPLE LITE」でも頻繁に報告されている問題ですね。
バルブを無造作に抉ると接合部分からポッキリ折れてしまうことがよくあるので、接合部分をリムから上に露出させないように注意したいところ。
バルブコアの増し締めはNG!樹脂製バルブのニッチな弱点

ここからは、樹脂製バルブの長所・短所では触れなかったバルブコアに関するお話。
あまり知られていませんが、強度の劣る樹脂製バルブでバルブ本体の変形よりも厄介なのが、バルブコアによる破損です。
金属製バルブの場合、異素材接合部分が弱点になりやすいと先ほどお伝えしましたが、それは樹脂製バルブも例外ではありません。
樹脂製バルブもバルブコアだけは金属製のため、どうしてもここが弱点になります。
樹脂製バルブはバルブ本体(樹脂製)とバルブコア(金属製)で硬度差があるため、過度な増し締めにより樹脂側のスレッドが舐めてしまうトラブルも珍しくありません。
オーバートルクはもちろんのこと、ねじ込みに時に斜めに挿入されていたり、高温や低温といった熱変化や経年劣化も原因になります。
樹脂側のスレッドを舐めないコツは、バルブコアをギリギリまで手締めしてから、最後に0.25〜0.5Nmくらいの軽い力で仕上げること。
樹脂製バルブのTPUチューブはスレッドが潰れたら即ゴミ箱行きになりますから、空気漏れで済むレベルの締め付け加減がマストです。
余談ですが、CO2インフレーターと樹脂製バルブはあまり相性が良くありません。
私も知りませんでしたが、使用時の極低温で樹脂部分が一時的に脆くなり、その状態でバルブコアを増し締めすると破損を招く恐れがあるとのこと。
もちろん常温に戻れば大丈夫ですが、電動ポンプの高温以外にCO2インフレーターによる低温にも注意が必要なのは盲点でした。
チューブから手っ取り早く空気を抜く目的や、流行りのクリックバルブに交換するためにバルブコアを外すことがありますが、樹脂製バルブは極力バルブコアに手を付けない方が良さそうです。
樹脂製バルブのTPUチューブに、バルブコアが取外せない製品が存在する理由にも納得ですね。
極力、異素材同士の接合部には触って欲しくないということなのでしょう。
まとめ
TPUチューブの樹脂製バルブと金属製バルブの違いについて話題にしてみましたが、私自身はじめて耳にする話も多かったです。
樹脂製バルブと金属製バルブ。
どちらにも一長一短があるものの、樹脂製は使い勝手の悪さに目を瞑って、レースやヒルクライム用として1gでも軽量化したい方向け。
金属製は多少の重量増には目を瞑って、普段使いでの使用感やロングライドでの安定感を重視したい方向け。
そういった棲み分けなるのかも知れませんね。
最近の金属製バルブは樹脂製に迫る軽量化を実現していますが、正直チューブ本体の耐久性には少し不安も。
金属バルブの増量分だけ、チューブ側が薄くなっているのでは……そんな疑いの目を向けてしまいます。

